私は今まで数多くのトレード関連の書籍を読んできましたが、
ここまで金融市場について科学的に正しいモノの見方・考え方
についてとらえている書籍に出会ったことがありません。

前作の『ゾーン 相場心理学入門』も素晴らしい内容でしたが、
『ゾーン最終章 マーク・ダグラスからの最後のアドバイス』は
それ以上にわかりやすくマーク・ダグラスの投資哲学が書かれ
ています。

トレードで勝つには、テクニカル分析やファンダメンタルズ分析
といった相場分析の方法を学ぶ必要があると思っている人がほと
んどだと思いますが、残念ながら相場分析をいくら学んでも着実
に成果を上げることはできません。

では、一貫して高い成果を出しているプロと素人では何が違うの
でしょうか?

今回は、その秘訣を何回かに分けて、紐解いていきたいと思います。

初心者がトレードの世界でたどる典型的な思考パターン

トレード初心者がビギナーズラックで初めての取引で利益を
出すと次のようなことを考えます。

●相場もトレード法もほとんど知らないのに、勝ってお金を
儲けられるのなら、勝つ方法をもっと学べれば、着実に収入
を得られるに違いない。

●こんな簡単に勝てるなら、着実に収入を上げ続けるのも
簡単でないはずがない。利益が得られるトレード機会を
着実に特定するための手法かテクニックを見つけさえすれば、
経済的成功という壮大な夢を実現できる。

●勝つ方法を学べば、トレード法がわかるだろう。

●勝方法を知るほど、損をしなくなるだろう。

これらの言葉すべてが「勝つこと」つまり「勝つ方法を学ぶ
こと」が成功のカギだと考えている点に気づいたでしょうか?

では、勝つ方法をどのように知るのか。

勝つためには次の3点を特定する必要があることに気づきます。

●どの銘柄を選ぶか

●どちらをクリックすべきか(売りか買いか)

●いつクリックすべきか(仕掛けと手仕舞いにふさわしい価格
と時間)

そして、この3点を特定するためには

●テクニカル分析(チャートのパターンで値動きを予測する)

●ファンダメンタルズ分析(需要と供給、評価モデル、公式を
使って値動きを予測する)

●ニュース(時事ニュースに対して市場がどのように反応するか
を予測する)

などの相場分析方法を学ぶことに行き着きます。

一見すると完璧に筋が通っているように見えます。しかし、
この結論の問題点は、トレードの本当の仕組みを理解して
いないからこそ行きつく結論です。

成功に必要なトレードスキルをすべて習得していない人は、
自分の分析が極めて優れていても、長期にわたって利益が
得られるようになるわけではないことがわかりません。

それはなぜなのでしょうか?

相場分析は着実な成果を上げるカギではない理由

一般的には、分析をしたら、そこから結論が導き出され、
目的達成のための戦略を立てる役に立ちます。

正しい手順に従って、必要なことはすべて検討したと思って
いれば、下した結論は何であれ正しいと思いますね。

トレーダーが市場で何等かの相場分析をする場合も、ほぼ
同じような過程をたどります。ただし、とても重大な違い
がひとつあるのです。

例えば、トレードの分析も他の分析と同じような結果を期待
している場合、「相場分析して、トレードの勝ちパターンを
見つけたと確信できる証拠が集まったら、自分の導き出した
トレード手法は正しい」と考えるのは普通です。

言い換えれば、勝てそうに思えないトレードはしないという
ことです。

これは平均的な人や知識不足の人がトレードするときの典型的
な考え方です。トレードがうまくいくと確信できないかぎり、
仕掛けないということです。

しかし、残念ながらこの方法では着実に成果を上げることは
できません。また着実に成果を上げる力があるプロは、絶対に
こういう考え方をしません。

初めてこんなことを聞いた人は奇妙だと思うかもしれませんが、
プロは自分が正しいと確信をもってトレードすることはありません
し、トレードすることを正当化するために、自分を納得させよう
と頭をひねることもありません。

プロは相場分析したら、自分はただしいと思うのではなく、
正しい可能性が高いと思うだけなのです。

あくまで失敗より成功の確率のほうが高いと考えるだけと
いうことです。

なぜプロはこう考えるのか、それは、状況がどれほどよく
見えようと、分析にどれだけ時間と労力を費やそうと、
マーケットはいつ何が起きてもおかしくない以上、相場の
動きで何一つ確実なことはないと思っているからです。

結局、個々のトレードにおいては、相場をいくら分析しよう
が、次の動きは何もわからないということなのです。

また、相場分析で着実に相場が予測できると考えていると
次のような危険があります。

なぜ通常の考え方は危険な間違いに至るのか

理由①

分析をした結果、自分は「分かっている」と確信していると、
このトレードはうまくいかないと気づくのは、最初に大損
しない限りは不可能です。

問題なのは、損をする可能性を考えなくなったら

①うまくいっていないトレード

②勝てる可能性が少なくなったトレード

③仕掛けた当初からまったく勝ち目がなかったトレード

を損が小さいうちに見極めることができません。

自分の分析結果が正しいと信じているからこそ、わずかな
含み損のときには負けているとは思いません。

その結果、失敗をなかなか受け入れられず、気づいたとき
には、大きな含み損を抱えてしまうことになるのです。

このことがわかっていないと、仮に10回連続でトレードで
勝ったとしても、11回目で大きな損をくらい、10回勝った
分の利益をすべて吐き出してしまうこともありえます。

一度の大きな損失でトレードを退場することは一番避ける
べきことであり、自分の分析に確信を持ってしまうと、一発
退場になることがあります。

理由②

「分かっている」と自分が納得してしまっていると、勝っている
ときに利食いに最適な価格や時間に気づくことが難しくなります。

自分の分析どおりに相場が動いているときは、非常に前向きな
感情に包まれています。

ですので、自分の手仕舞いのタイミングを無視したり、思惑通り
の動きが終わりを示しているにも関わらず、このシグナルを無視
しがちです。

そうすると、たいていはその時々の思い付きで利食いをすること
になります。

時には取れたはずの金額よりもはるかに少ない利益で終わるか、
もっと悪いことに含み益が膨らんだあと、結局は損切りして
手仕舞うはめになることもあります。

結局、相場分析だけでは、含み益をあまり減らすことなく、利を
伸ばすスキルを身につけることはできないのです。

理由③

程度の差はあれ、次に何が起こるのか分かっていると思い込むと、
次のようにトレードルールを無視して、トレードを始めてしまい
ます。

●ルールでは仕掛けのシグナルが出ているが、すぐに注文を
せずに、トレードがうまく行くであろう何らかの証拠が得ら
れるまで待つ。

●シグナルが点灯する前に仕掛ける。

●シグナルが点灯するが、うまくいく自信が持てずにトレード
をしないことを決める。しかし、結局は仕掛けていれば利益が
得られたとわかる。

●シグナルが点灯したので仕掛けるが、ルール通りの損切りの
逆指値は置かない。そして、相場が逆行して、損切りの逆指値
を置いていた場合よりもはるかに多額の損失を出す。

●シグナルが点灯したので仕掛けて、損切りの逆指値もおく。
しかし、逆指値に引っかかりそうになる直前にキャンセルして、
逆指値を置いていた場合よりも、はるかに多額の損失を出す。

●シグナルが点灯したので仕掛けて、損切りの逆指値も置く。
しかし、逆指値に引っかかりそうになるたびにずらし続ける。

●シグナルが点灯したので仕掛けて、損切りの逆指値も置く。
しかし、確実に逆指値に引っかかると思い込んで、いくらかでも
損失を減らすために早めに手仕舞う。しかし、最初に置いていた
逆指値には引っかからずに、結局は当初の思惑通りに動いて、
利益を取り損なう。

あなたも今、挙げた例の中で思い当たる節があったのではないでしょうか?

結局、自分が分析の結果導き出した勝ちパターンのルールを
破ってしまっては、そのトレードルールがうまく機能している
のかを判断することはできません。

また、ルールを破るということは、何の分析もしないまま直観で
トレードしているのと同じ状況に自分を貶めていることに気づい
ていません。

たまたまルールを破ってそれが良い結果を生むとトレード初心者
は自分は相場がわかると勘違いをしてしまいます。

その結果、相場の波乱を予想することや、大きな下落に対応する
ための準備を全くしなくなるため、1回のトレードで口座資金を
すべて失うようなトレードをしてしまうのです。

まとめ

いかがでしたでしょうか?

多くのトレーダーが長期間にわたって勝つことができない理由は、
自分の分析結果を信じすぎることにより、あらゆる可能性を考慮
できなくなってしまうからです。

また、多くのトレーダーは相場の動きには一定のルールがあるから
こそ、相場を予測できると考えますが、1回1回のトレードの勝ち
負けを予測することは残念ながらできません。

予測できたと勝手に勘違いをしているだけなのです。

次の記事で、1回1回のトレードの勝ち負けを予測することがいかに
難しいかを具体的に見ていきたいと思います。