2020年の東京オリンピック開催に向けて、ここ数年堅調な動きを
見せているJリート市場。2019年は株式市場も好調でしたが、
それ以上にJリートは盛況でした。
他の資産との相関比較的低いので、ポートフォリオの一部に
組み入れている投資家も多いと思いますが、今日は、
少し変わった分配をしているMHAM Jリートアクティブファンド
(毎月決算型)『愛称:Jインカム』を分析していきます。
今日はこのJインカムについて詳しく見ていきましょう。
MHAM Jリートアクティブファンド『Jインカム』の基本情報
Jインカムの投資対象は?
Jインカムの投資対象は、国内の金融商品取引所に上場している
不動産投資信託証券(Jリート)です。
東証REIT指数(配当込み)をベンチマークとしています。
現時点での組入業種比率は以下の通りです。総合施設やオフィスの
比率が高いことがわかりますね。
※引用:マンスリーレポート
純資産総額は?
純資産総額というのは、あなたを含めた投資家から集めた資金の総額
だと思ってください。
ファンドの純資産総額が小さいと、適切なタイミングで売買できな
かったり、コストが嵩みますので、事前に確認すべきポイントの1つです。
Jインカムの純資産総額は、270億円です。Jリート内で上位ではあります
が、それほど大きいファンドではありません。
ほとんど0だった純資産総額が2014年の後半あたりに一気に
膨れ上がっているのがわかります。
このとき何があったのでしょうか?
実は、その少し前で基準価額が急激に上昇し、2014年の12月の
ひと月40円程度だった分配金をなんと290円払い出しました。
これで分配金利回りが急に高くなり、目先の利益を求めた投資家が
一気に食らいついた形です。
とはいえ、個人的には運用がうまくいったときにしっかりと分配金を
支払うというJインカムの考え方は好きですね。
※引用:マンスリーレポート
実質コストは?
私たちが支払うコストには、目論見書に記載の信託報酬以外に、
株式売買委託手数料や、保管費用、印刷費用などが含まれています。
そのため、実際に支払うコストは、目論見書記載の額より高くなる
のが通例で、実際にかかる実質コストをもとに投資判断をしなければ
なりません。
信託報酬を信用するな。知らないうちに差し引かれている実質コストの調べ方
では、Jインカムの実質コストはどうなっているでしょうか?
Jインカムの実質コストは、1.1%となっています。
アクティブファンドの中ではまだ割安ですが、購入時手数料を
取る時点で、注意しなければなりません。
購入時手数料 | 2.2%(税込)※上限 |
信託報酬 | 1.1%(税込) |
信託財産留保額 | 0.3% |
実質コスト | 1.11%(概算値) |
※引用:最新運用報告書
実質コスト以外にも、多くの投資家が気づいていない
投信運用での成果を出すのに妨げとなる間違った考え方
をまとめました。参考にしてください。
無料ファンド相談から見えた。多くの人が気づいていない投信運用で成果を阻む9つの誤り
MHAM Jリートアクティブファンド『Jインカム』の評価分析
基準価額の推移は?
Jインカムの基準価額の推移を見てみましょう。
分配金を受け取らずに運用に回した場合の基準価額(青線)を
見てみると、2018年以降急上昇しています。
一方で、基準価額も大きく上昇しており、分配金を受け取り
つつも、キャピタルゲインも得ることができるというまさに
毎月分配型ファンドの理想の状況になっています。
※引用:モーニングスター
利回りはどれくらい?
Jインカムの年間平均利回りは+25.23%です。5年平均でも、
7%近い利回りとなっており、REITであれば十分な利回りです。
しかし、同カテゴリー内では真ん中より少し後ろの順位です
ので、パフォーマンスが優れているとは言い難いですね。
ちなみにあなたは実質利回りの計算方法はすでに理解していますか?
もし、理解していないのであれば、必ず理解しておいてください。
平均利回り | %ランク | |
1年 | 25.23% | 74% |
3年 | 10.13% | 85% |
5年 | 6.85% | 64% |
10年 | – | – |
※2019年12月時点
10年間高いパフォーマンスを出し続けている優秀なファンド達も
参考にしてみてください。
10年間圧倒的に高いリターンを出しているJリート ランキング
標準偏差は?
標準偏差は年間の基準価額の変動幅を把握するときに役立ち
ます。
Jインカムの標準偏差を見てみると、7~8程度なので、日経225
に連動するインデックスファンド等と比べるとリスクは約半分
で運用ができるということです。
パフォーマンスも悪くないので、Jリートは非常に魅力的な
投資対象だと思います。
標準偏差から将来リターンがある程度予測できるのはご存じでしょうか?
まだ計算方法を知らないと言う方はこの機会に覚えておいてくださいね。
標準偏差 | %ランク | |
1年 | 7.99 | 40% |
3年 | 8.09 | 56% |
5年 | 8.55 | 41% |
10年 | – | – |
※2019年12月時点
年別の運用パフォーマンスは?
Jインカムの年別のパフォーマンスを見てみると、マイナスの年と
プラスの年が交互に入れ替わっています。
ただ、10%以上のプラスの年が複数年あり、トータルで見ると、
かなりプラスになっています。
年間利回り | |
2019年 | 23.49%(1-9月) |
2018年 | 10.00% |
2017年 | ▲8.18% |
2016年 | 8.40% |
2015年 | ▲4.49% |
2014年 | 27.41% |
※2019年12月時点
考えずに投資をしてしまいがちです。
しかし、「投資は出口戦略にあり」と言われるほど、
重要なテーマです。
ぜひこれを機会に投資の出口戦略を考えてみて
ください。
>>まさか考えたことがない?運用が成功するか失敗するかすべてのカギを握る投信運用の出口戦略
類似ファンドとのパフォーマンス比較
Jインカムへの投資を検討するのであれば、より低コストの
インデックスファンドとパフォーマンスを比較してからでも
損はありません。
今回は、東証REIT指数をベンチマークとする超低コストの
インデックスファンドであるニッセイJリートインデックス
ファンドと比較してみましょう。
黄色がJインカム、赤色がニッセイJリートインデックスファンドです。
残念ながら、JインカムはパフォーマンスでニッセイJリートインデックス
ファンドに負けてしまっています。
今までの分析結果からすると、悪くないように見えますが、
インデックスファンドに負けているようでは、あえて投資
する理由がありませんね。
※引用:モーニングスター
最大下落率は?
Jインカムに投資をするのであれば、過去にどの程度下落したこと
があるのかは知っておきたいところです。
Jインカムは2013年7月設定のまだ歴史が浅いファンドですので、
最大下落率も12.31%とまだ小さいですが、リートですので株式並みに
下落することも十分にあるということを頭の隅に置いてください。
最大下落率を知ってしまうと、少し足が止まってしまうかもしれません。
しかし、以下のことをしっかり理解しておけば、元本割れの可能性を
限りなく低くすることが可能です。
期間 | 下落率 |
1カ月 | ▲6.67% |
3カ月 | ▲11.35% |
6カ月 | ▲12.31% |
12カ月 | ▲8.24% |
※2019年12月時点
分配金は?
次にJインカムの分配金を見てみましょう。
2017年の後半からは毎月80円で推移しています。
普段の分配金は低めに抑え、利益を出せたときは、
臨時で分配金を増やすという運用方法は、私からすると、
理想的な支払い方法だと感じます。
これであれば、タコ足配当が続いて、ファンドの運用が
苦しくなることも少ないですし、投資家からみても、
時々受け取る分配金が増えるというのはありがたいもの
です。
基準価額に対する分配金の割合を示す分配利回りは9%程度
なので、健全な水準です。繰越対象額も毎月大きく増加
しており、分配金余力はこの1年で相当回復しました。
ただ、このブログでは何度も言っていますが、特別な事情が
ない限りは分配型のファンドに投資すべきではありません。
計算するとよくわかる!分配金を受け取ることによるデメリットとは?
分配金 | 当期収益以外 | 繰越対象額 | |
70期 | 80円 | 38円 | 2,115円 |
71期 | 80円 | – | 2,527円 |
72期 | 80円 | – | 2,646円 |
73期 | 120円 | – | 3,013円 |
74期 | 80円 | – | 3,462円 |
75期 | 80円 | – | 3,623円 |
評判はどう?
評判がどうなのかを判断するうえで資金の流出入額が役に立ちます。
資金が流出超過になっているということは、それだけ解約している
人が多いということです。
つまり評判が悪くなっているということですね。
それでは、Jインカムはどうでしょうか?
2019年に入ってからはパフォーマンスが非常に良いので、
毎月分配型ファンドにも関わらず、毎月資金が流入しています。
ただ、調子が良いとわかったタイミングで購入すると、
たいてい翌年は期待したパフォーマンスが得られない
ことが多いので、今から投資する場合は慎重になる必要が
あります。
※引用:モーニングスター
MHAM Jリートアクティブファンド『Jインカム』の今後の見通し
最後にJインカムの今後の見通しを見てみましょう。
分配金の内訳を確認すると、現在80円出している内訳の
ほとんどが当期の収益から出ています。
また繰越対象額が毎月大きく増加しており、分配金余力は
45カ月程度にまで増加しました。
非常に好調なだけに投資をしようと検討している人も多いと
思いますが、やはり、パフォーマンスがインデックス型に
負けているのは問題です。
手数料や信託報酬を高くとっていて、インデックスファンドに
パフォーマンスが負けてしまっていては投資する意味がありません。
どうしても分配金が欲しいという人以外は、Jリートを
購入するのであれば分配金が出ないインデックス型の
ファンドを選んだ方が良いでしょう。
当然ながら、弱点もあります。
今も私は投信運用を続けてはいますが、私がなぜ
投資信託の運用を主軸におかなくなったのか。
その理由をこちらで話をしています。
>>私が痛感する投資信託の限界。多くの投資家が見逃している投信運用の弱点