労働力不足や高齢化社会で活躍されることが期待されているロボティクス。
多くの偉業が業務効率化や働き方改革への対応を迫られる中で、ロボット
関連技術への注目が一層集まっています。
日興アセットからは、日本株式に絞り込んだジャパン・ロボティクス株式
ファンドと、グローバル・ロボティクス株式ファンドの2つが設定されて
おり、グローバル・ロボティクス株式ファンドは1兆円規模の巨大ファンド
になっています。
ジャパン・ロボティクス株式ファンドは1年決算型と年2回決算型が
ありますが、今日は、より人気のある1年決算型を詳しく分析していきます。
ジャパン・ロボティクス株式ファンド(1年決算型)の基本情報
投資対象は?
ジャパン・ロボティクス株式ファンドの投資対象は、日本国内の
ロボティクス関連企業の株式です。
ロボティクス技術が特に目覚ましい発展を遂げているのが、
労働、介護・医療、危険、IoT・AIの4分野となっています。
基本的には、この4分野の銘柄を中心に銘柄を選定していきます。
※引用:交付目論見書
現在の組入銘柄数は60銘柄となっており、組入上位銘柄は以下の
ようになっています。
※引用:マンスリーレポート
あなたはこれを見てどのように感じたでしょうか?
目論見書によると、銘柄選定にはロボティクス関連事業の売上を
計上している、もしくは今後の売上が予測される銘柄を投資対象
とすると記載があり、かなりあいまいになっています。
基本、大手企業であれば、何かしらロボティクス関連ビジネスには
取り組んでいるわけですし、
例えば、ロボティクス事業の売上が全体の50%以上とか、もう少し
こだわりをもって銘柄選定をしてもらったほうが投資家としては、
興味がわきます。
純資産総額は?
続いて、ジャパン・ロボティクス株式ファンドの純資産総額は
どうなっているか見てみましょう。
純資産総額というのは、あなたを含めた投資家から集めた
資金の総額だと思ってください。
ファンドの純資産総額が小さいと、適切なタイミングで銘柄を入れ
替えることができなかったり、ファンドの運用で必ず発生する
運営コストが相対的に高くなるので、ファンドのパフォーマンスを
悪化させる原因になります。
そのため、純資産総額も事前に確認すべきポイントの1つです。
ジャパン・ロボティクス株式ファンドの純資産総額は2017年6月ごろから
急激に成長しており、一時期1000億円まで到達していました。
しかし、その後、パフォーマンスがパッとしなかったことから、
純資産総額を減らしており、現在は600億円程度となっています。
規模の大きさとしては全く問題ありませんね。
※引用:マンスリーレポート
実質コストは?
私たちが支払うコストには、目論見書に記載の信託報酬以外に、
株式売買委託手数料や、保管費用、印刷費用などが含まれています。
そのため、実際に支払うコストは、目論見書記載の額より高くなる
のが通例で、実際にかかる実質コストをもとに投資判断をしなければ
なりません。
信託報酬を信用するな。知らないうちに差し引かれている実質コストの調べ方
ジャパン・ロボティクス株式ファンドの実質コストは1.785%と
割高です。
これに加え、購入時手数料と合わせれば初年度は5%超の
コストがかかってきますので、慎重な判断が必要です。
購入時手数料 | 3.3%(税込)※上限 |
信託報酬 | 1.705%(税込) |
信託財産留保額 | 0 |
実質コスト | 1.785%(概算値) |
※引用:最新運用報告書
と聞かれてあなたは何と答えますか?
もし『ファンド選び』だと思ったとしたら、あなたはドツボに
はまっていますので、こちらの記事を読んでみてください。
>>無料ファンド相談から見えた。多くの人が気づいていない投信運用で成果を阻む9つの誤り
ジャパン・ロボティクス株式ファンド(1年決算型)の評価分析
基準価額の推移は?
ジャパン・ロボティクス株式ファンドの基準価額は2018年以降
伸び悩んでいましたが、コロナショックで急落したあとの反発で
最高値を更新するまでになりました。
コロナショックで人々のライフスタイルが変わる中、ロボの
活用の場面が増え、業績に繋がった企業が多かったのだと
思います。
※引用:モーニングスター
利回りはどれくらい?
つづいて、ジャパン・ロボティクス株式ファンドの運用実績を
見てみましょう。
直近1年間の利回りは8.29%となっています。
3年平均利回りも6%台なので、悪くない数値です。
ちなみにあなたは実質利回りの計算方法はすでに理解していますか?
もし、理解していないのであれば、必ず理解しておいてください。
平均利回り | 2020年8月 | |
1年 | 8.29% | |
3年 | 6.04% | |
5年 | – | |
10年 | – |
※2020年8月時点
10年間高いパフォーマンスを出し続けている優秀なファンド達も
参考にしてみてください。
10年間圧倒的に高いリターンを出している国内大型株式ファンドランキング
同カテゴリー内における利回りランキング(上位●%)の変化
ジャパン・ロボティクス株式ファンドは、国内大型グロース
カテゴリーに属しています。
投資をするのであれば、同カテゴリーでも優秀な
パフォーマンスのファンドに投資をすべきなので、
同カテゴリー内でもパフォーマンスのランキングは
事前に調べておいて損はありません。
ジャパン・ロボティクス株式ファンドは、1年、3年平均
ともに上位30%以内にランクインしており、非常に優秀な
パフォーマンスを残していることがわかります。
平均利回り(上位●%) | 2020年8月 | |
1年 | 26% | |
3年 | 11% | |
5年 | – | |
10年 | – |
※2020年8月時点
年別のパフォーマンスは?
では、ジャパン・ロボティクス株式ファンドの年別の
パフォーマンスを見てみましょう。
2018年は大きなマイナスになりましたが、それ以外の年
では、非常に素晴らしいパフォーマスを残しています。
年間利回り | |
2020年 | 7.45%(1-6月) |
2019年 | 23.74% |
2018年 | ▲19.36% |
2017年 | 36.09% |
2016年 | 9.12% |
※2020年8月時点
考えずに投資をしてしまいがちです。 しかし、「投資は出口戦略にあり」と言われるほど、
重要なテーマです。 ぜひこれを機会に投資の出口戦略を考えてみて
ください。 >>まさか考えたことがない?運用が成功するか失敗するかすべてのカギを握る投信運用の出口戦略
インデックスファンドとのパフォーマンス比較
高コストのアクティブファンドに投資を検討するのであれば、
事前に低コストのインデックスファンドとパフォーマンスを
比較しておいて損はありません。
今回は、国内株の代表的な指標である日経225に連動する
ニッセイ 日経225インデックスファンドとパフォーマンス
を比較しました。
ニッセイ 日経225インデックスファンドが上回っている
期間のほうが長いですが、コロナショック後に、ついに
ジャパン・ロボティクス株式ファンドが逆転しました。
やはり急落相場では銘柄を自由に入れ替えできるアクティブ
ファンドに歩がありますね。
※引用:モーニングスター
ジャパン・ロボ | ニッセイ 日経225 | |
1年利回り | 8.29% | 2.84% |
3年平均 | 6.04% | 4.79% |
5年平均 | – | 2.81% |
10年平均 | – | 10.34% |
※2020年8月時点
類似ファンドとのパフォーマンス比較
せっかくアクティブファンドに投資をするのであれば、
大型株カテゴリーの中でも優秀なファンドに投資をしたい
と思うもの。
今回は、同じく国内大型株カテゴリーで中長期で高い
パフォーマンスの残しているスパークスの厳選投資
とパフォーマンスを比較しました。
さすがに厳選投資に勝つほどの実績まではないようですね。
※引用:モーニングスター
ジャパン・ロボティクス株式ファンドも決して悪いファンド
ではないですが、中長期で安定して高いパフォーマンスを
出し続けている厳選投資と比較をすると、
あえて、ジャパン・ロボティクス株式ファンドを選択する
理由と言うのは見つかりません。
ジャパン・ロボ | 厳選投資 | |
1年 | 8.29% | 9.86% |
3年 | 6.04% | 9.23% |
5年 | – | 8.07% |
10年 | – | 16.23% |
※2020年8月時点
最大下落率は?
ジャパン・ロボティクス株式ファンドに投資をするのであれば、
事前に最大でどの程度下落するかは確認しておいたほうが安心です。
ジャパン・ロボティクス株式ファンドはまだ運用期間短いので、
そこまで大きな下落は経験していませんが、2018年10月~12月で
20%程度の下落が最大となります。
最大下落率を知ってしまうと、少し足が止まってしまうかもしれません。
しかし、以下のことをしっかり理解しておけば、元本割れの可能性を
限りなく低くすることが可能です。
期間 | 下落率 |
1カ月 | ▲13.22% |
3カ月 | ▲21.32% |
6カ月 | ▲15.81% |
12カ月 | ▲19.36% |
※2020年8月時点
評判はどう?
ジャパン・ロボティクス株式ファンドの評判はネットでの書き込み
などで調べる方法もありますが、評判を知るうえで一番役に立つのが、
月次の資金流出入額です。
資金が流入しているということは、それだけジャパン・ロボティクス
株式ファンドを購入している人が多いということなので、評判が良い
ということです。
ジャパン・ロボティクス株式ファンドは2018年6月以降資金が
流出しつづけています。
やはりパフォーマンスで日経225に連動するインデックスファンド
とほぼ互角の戦いをしていることが原因でしょう。
※引用:モーニングスター
ジャパン・ロボティクス株式ファンドの評価まとめと今後の見通し
いかがでしょうか?
まずロボティクスといったテーマ型のファンドを標榜している
場合、本当にロボティクス関連の銘柄が選別されているのかを
チェックする必要があります。
ジャパン・ロボティクス株式ファンドの場合は、ロボティクス事業の
売上が計上されるか、今後計上されるという非常にあいまいな基準に
なっており、
実際はロボティクス以外の要因でのほうが株価が動く銘柄が
含まれている可能性があります。
このあたりは販売会社もわざと旬なワードで投資家を集めて、
回転売買させるのが目的ですので、しっかりと内容を吟味する
必要があるでしょう。
ジャパン・ロボティクス株式ファンドは国内大型株ファンドの
中では決して悪いパフォーマンスではありません。
拮抗はしていましたが、日経225に連動するインデックスファンド
にも負けていません。
ただ、厳選投資のようなほかにもっと優れたファンドがあるので、
国内株のアクティブファンドに投資をするのであれば、どうしても
優先順位としては少し落ちるでしょう。
当然ながら、弱点もあります。 今も私は投信運用を続けてはいますが、私がなぜ
投資信託の運用を主軸におかなくなったのか。 その理由をこちらで話をしています。 >>私が痛感する投資信託の限界。多くの投資家が見逃している投信運用の弱点