近年、米国株への投資が注目を集めるようになり、個別株
への投資や米国株指数に連動するインデックスファンドに
投資をする投資家が増えています。
米国株というと、基本的には米国の大型株が中心で、小型株
へ投資できるアクティブファンドというのはかなり数が限ら
れています。
そんな米国の小型株に投資ができるベイビューアセットの
USマイクロキャップ株式ファンドを今日は徹底分析して
いきます。
USマイクロキャップ株式ファンドの基本情報
投資対象は?
USマイクロキャップ株式ファンドの投資対象は、バリュ
エーション(企業価値)が適正で、中長期的に高成長が
期待できる米国マイクロキャップ株式です。
マイクロキャップ株式というのは、一般的に時価総額ベース
で10億米ドル未満の超小型企業を指します。
以下の図をみてもらうとよりイメージがわくかと思いますが、
ラッセル指数の構成銘柄でみると、約1500社が該当します。
ただし、時価総額ベースで見ると全体のわずか1%程度しか
ないというのが特徴です。
※引用:マンスリーレポート
通常、企業を分析するアナリストというのは、大型株で
あるほどアナリストの人数が多くなります。
それは、大型株ほど多くのファンドが組み入れています
ので、分析した情報を欲しがる企業が多いということです。
一方で、マイクロキャップ株式の場合、アナリストが3.3人
しかいません。
かつ、誰もカバレッジしていない銘柄が300銘柄近くあり
ます。
つまり、マイクロキャップ株式のファンド情報を入手する
のは非常に難しいということがわかります。
一方で、多くのアナリストが情報を入手出来ていないから
こそ、割安のバリューエーションの銘柄が存在している
可能性は大いにあり、大きな利益を狙える銘柄が隠れて
いるとも言えます。
※引用:交付目論見書
マイクロキャップ株と大型株では、実はセクター別の構成
比はかなり異なっています。
というのも、グローバルなIT企業が多い大型株とは対照的に、
マイクロキャップ株はヘルスケアや金融といった米国内向け
のビジネスを展開する企業が中心となっています。
ある意味、好調な米国経済を支えているのは、マイクロ
キャップ株式であり、今後トランプ氏の政策によって一番
恩恵を受ける可能性があるのがマイクロキャップ株式である
と言われています。
※引用:マンスリーレポート
ちなみにどのような企業の社債が組み入れられているか
で言うと、以下のように公益が約40%、通信が約30%、
エネルギーが約15%となっています
純資産総額は?
投資を検討するうえで、純資産総額は必ず確認するように
してください。
純資産総額は大きいほうが、ファンドマネージャーが資金
を運用する際に効率よくできたり、保管費用や監査費用が
相対的に低くなりますので、コストが低く抑えられます。
また投資信託の規模が小さくなると運用会社自体がその
投資信託に力を注がなくなりパフォーマンスが悪くなる
こともありますので注意が必要です。
USマイクロキャップ株式ファンドは2019年2月に設定以来、
着実に純資産を増やしており、現在は約80億円となっています。
後述しますが、米国大型株と異なり、パフォーマンスが
芳しくないこともあり、純資産の増加額はあまり大きく
ありません。
※引用:マンスリーレポート
実質コストは?
投資信託には、購入時の手数料や信託報酬の他にも費用が
かかっていることをご存知ですか?
これを実質コストと言いますが、実質コストには、株式売買
手数料や有価証券取引税、監査費用などが含まれています。
特に純資産総額が小さいときには、信託報酬より実質コストが
かなり割高になっている場合もあるので、注意が必要です。
信託報酬を信用するな。知らないうちに差し引かれている実質コストの調べ方
USマイクロキャップ株式ファンドの実質コストは2.80%と
異常に高くなっています。
これは、純資産が小さかったので、銘柄の入れ替えやその他
のコストが相対的に高くなってしまっていることと、マザー
ファンドの運用指図に関する報酬として年0.6%も投資顧問
会社に支払っている影響です。
パフォーマンスがすこぶる良いのであれば、検討しなくも
ないですが、さすがにこの実質コストの高さだと投資を
検討する気にはなれません。
購入時手数料 | 3.3%(税込)※上限 |
信託報酬 | 2.134%(税込) |
信託財産留保額 | なし |
実質コスト | 2.80%(概算値) |
※引用:最新運用報告書
実質コスト以外にも、多くの投資家が気づいていない
投信運用での成果を出すのに妨げとなる間違った考え方
をまとめました。参考にしてください。
無料ファンド相談から見えた。多くの人が気づいていない投信運用で成果を阻む9つの誤り
USマイクロキャップ株式ファンドの評価分析
基準価額の推移は?
USマイクロキャップ株式ファンドの基準価額は運用から
約1年経ちますが、ほぼ基準価額近辺で推移しています。
米国大型株は2019年大きく上昇したことを考えると、
かなり期待外れの結果だったと言えるでしょう。
後述しますが、米国株の指数に連動するインデックス
ファンドにパフォーマンスでかなりの差をつけられています。
※引用:モーニングスター
利回りはどれくらい?
USマイクロキャップ株式ファンドはまだ運用から1年
経っていませんので、今後随時更新していきます。
平均利回り | %ランク | |
1年 | – | – |
3年 | – | – |
5年 | – | – |
10年 | – | – |
※2020年2月時点
標準偏差は?
標準偏差も運用期間が1年経ち次第、随時更新していきます。
標準偏差 | %ランク | |
1年 | – | – |
3年 | – | – |
5年 | – | – |
10年 | – | – |
※2020年2月時点
年別のパフォーマンスは?
USマイクロキャップ株式ファンドの年別のパフォーマンス
も見てみましょう。
2019年は+7.48%でした。
一見すると、まずまずのように見えますが、2019年はほと
んどの株式ファンドが10%を超えるリターンをたたき出して
います。
その中で、10%を超えられないというのは、やはり期待はずれ
としか言えません。
年間利回り | |
2019年 | +7.48% |
※2020年2月時点
考えずに投資をしてしまいがちです。 しかし、「投資は出口戦略にあり」と言われるほど、
重要なテーマです。 ぜひこれを機会に投資の出口戦略を考えてみて
ください。 >>まさか考えたことがない?運用が成功するか失敗するかすべてのカギを握る投信運用の出口戦略
インデックスファンドとのパフォーマンス比較
USマイクロキャップ株式ファンドに投資を検討する上で、
より低コストのインデックスファンドとパフォーマンスを
比較しておいて損はありません。
今回は、米国大型株の代表的な指数であるs&p500に連動
するeMAXIS Slim 米国株式(S&P500)と米国大型株~小型株
まで幅広く分散投資ができる楽天・全米株式インデックス
ファンドと比較をしてみました。
結果はご覧の通りです。USマイクロキャップ株式ファンド
だけ見るも無残な結果となっています。
さすがにこれだけパフォーマンスで差を付けられ、コスト
でもボロ負けしているファンドにあえて投資をする気には
なれません。
※引用:モーニングスター
評判はどう?
それでは、USマイクロキャップ株式ファンドの
評判はどうでしょうか?
ネット等で口コミを調べることもできますが、資金の流出入
を見ることで、評判がわかります。
評判がよければ、資金が流入超過になりますし、評判が悪く
なっていれば、資金が流出超過になります。
USマイクロキャップ株式ファンドは設定から数カ月順調に
純資産を増やしていましたが、しかしパフォーマンスが奮わ
ないことから、どんどん流入額が減ってきています。
流入超過なので、購入している人のほうが多いのですが、
設定当初と比べるとかなり勢いは落ちています。
米国株式のインデックスファンドとパフォーマンスを比較
するとあえて投資をしようとは思えませんね。
※引用:モーニングスター
USマイクロキャップ株式ファンドの今後の見通し
日本国内の場合、小型株ファンドは非常に好調で、中長期で
みると、大型株よりパフォーマンスで圧倒的な差をつけています。
一方で、米国株の場合、S&P500やNYダウなど日本株とは
くらべものにならないくらい大型株に勢いがあるため、
マイクロキャップ株式のパフォーマンスが劣ってしまいます。
低コストでマイクロキャップ株式に投資ができるのであれば、
投資を検討する余地もありますが、
さすがに年2%以上の信託報酬を支払ってまで、たいした成果
のでていないファンドにお金を払うのは得策とは思えません。
2020年の米大統領選挙で再度トランプ氏が当選し、米国に
有利な経済政策を持続するとなると、マイクロキャップ株式
も大きな恩恵を受けるので、注目はしていきたいとは思いますが、
今のタイミングであえて投資をする気にはなれません。
当然ながら、弱点もあります。 今も私は投信運用を続けてはいますが、私がなぜ
投資信託の運用を主軸におかなくなったのか。 その理由をこちらで話をしています。 >>私が痛感する投資信託の限界。多くの投資家が見逃している投信運用の弱点