高配当株投資について勉強を始めると必ず聞くのが「連続増配株」という言葉。
何となく話を聞くと、連続増配株に投資をしたほうがいい気になるのですが、しっかりと理解してから投資を始めないと、実は目的に合わない投資を選択してしまっているかもしれません。
今日は、高配当株投資をするなら、配当利回り重視か、連続増配重視かどちらでいくべきかについて徹底解説していきます。
連続増配企業に投資する意味とは?
まず、増配とは、企業が配当金を増やすことですが、連続増配株というのは、配当金を毎年もしくは一定のペースで増やし続けている銘柄を指して使われます。
100円だった配当金が、110円、120円、130円・・・・と毎年増えていくイメージですね。
連続増配と聞くと、「毎年、配当金を増やしてくれるなんて良い企業だね」くらいにしか思わない人もいると思いますが、実は長期に渡って配当を増やし続けるのは、そう簡単なことではありません。
配当金は企業の利益から支払われます。利益が出なかったり、利益の蓄えがなければ、配当金を出すことすら出来ません。
つまり、配当金を毎年出し続けるだけでも、優良な企業なわけです。
さらにここで毎年配当金を増やすということは、長期に渡って業績を伸ばしたり、一時的に業績が落ちても配当が出せるように、しっかりと利益を蓄えている一部の優良企業にしかできません。
つまり、連続増配している企業への投資=財務健全性の高い優良企業への投資という公式が自然と成り立つわけですね。
では、なぜ連続増配株がここまで注目されているのか、連続増配株のメリット・デメリットをもっと具体的に見ていきましょう。
連続増配株のメリット
メリット①保有しているだけで毎年配当金が増えていく。
「毎年配当金が増える」と何気なく書いていますが、冷静に考えると、これはかなり凄いことです。
普通、受け取る利益を増やすためには投資元本を増やす必要があります。
例えば、投資元本10,000円に対して、100円の配当金を受け取っていた場合、配当金を110円受け取りたいと思ったら、投資資金を11,000円に増やすのが普通です。
それが投資資金は同じままで配当金だけが勝手に増えていくというのは他の投資ではありえないことです。
メリット②株主還元の意識が高く、減配や無配になるリスクが低い
連続増配をしている企業の経営陣は、配当を減配したり、無配にしたときの株価への影響力を理解しています。
そのため、できる限り、配当を続けようという意識を皆が持っているため、他の高配当株と比べて、減配・無配になるリスクが低いです。
投資家からすると、一番困るのが減配・無配なので、そのリスクが低いのは大きなメリットですね。
③暴落相場で下落耐性のある銘柄が多い
連続増配株には花王、小林製薬、ユニ・チャーム、KDDIといった成熟企業が多いです。
そのため、大きな暴落相場が来ても、他の株式と比べると下落幅が抑えられるというメリットがあります。
配当株投資では、株価が横這いか上昇していて、配当金だけ毎年安定して受け取れるのが理想ですので、下落しにくいというのも大きなメリットになります。
④財務健全性が優れている
配当金は企業の利益から支払われるので、企業の利益が伸びていかなければ、配当金を増やすこともできません。
企業によっては粉飾決算をして、見かけの業績を良く見せたりする企業もありますが、配当金を払い出す=利益がちゃんと出ている証拠でもあるので、堅実な経営が出来ている企業であることが、配当金からもわかるので、安心できます。
では、続いてデメリットについて見ていきます。
連続増配株のデメリット
デメリット①配当利回りが相対的に低い
日本株の配当利回りランキング上位に来る銘柄の中でも人気の高いJT(日本たばこ産業)は配当利回りがなんと7%以上あります。
東芝やジャフコも6%台です。その配当利回りと比べると、連続増配株として人気のある花王やKDDIは3%前後となっているのが現状です。
3%でも貯金の利率に比べれば、はるかに高い利回りですが、他の高配当利回り株と比較をすると、配当利回りは相対的に低くなっています。
デメリット②増配率は大きくないので資産形成に時間がかかる
毎年配当金が増えるとは言っても、毎年2倍になるようなものではありません。
例えば、花王であれば、直近3年間の増配率は年6.2%となっており、配当利回りは2.86%です。もし、今、花王の株を購入すると、単純計算3年後の配当利回りは3.43%程度になることになります。
仮にJTや東芝、ジャフコくらいの配当利回りに成長するには、10年以上かかることになりますね。
デメリット③時間をかけている間に配当政策が変わる可能性あり
連続増配株は、基本、毎年増配をしていきますが、業績の悪化に伴い、仕方なく減配をする可能性もあります。
そうすると、長期で保有を続けることで、高い配当利回りを目指すという当初のプラン自体が崩壊してしまう可能性があります。
米国ではAT&Tという大手通信会社が35年連続増配を続けていましたが、2021年に増配がストップしたことで大騒ぎになりました。
ですので、長期間増配を続けているからと言って安心できるわけではないということです。
デメリット④相対的に株価が高い
連続増配企業は優良企業であるため、株価が高くなる傾向があります。
割安な株に投資をするというスタンスではないため、注意が必要です。
連続増配株の具体例
ここで、連続増配株と言われても、どんな銘柄があるのかピンと来ない人もいると思いますので、具体的な銘柄を紹介していきましょう。2023年2月時点で連続増配年数が長い銘柄から並べています。
連続増配年数 | 増配率(直近3年) | 配当利回り(予想) | 最低投資額 | |
花王 | 32年 | 1.20倍 | 2.86% | 51.74万円 |
SPK | 24年 | 1.19倍 | 2.91% | 15.11万円 |
三菱HCキャピタル | 23年 | 1.19倍 | 4.68% | 6.61万円 |
小林製薬 | 22年 | 1.25倍 | 0.92% | 91.90万円 |
USS | 22年 | 1.31倍 | 3.17% | 21.29万円 |
日本でも20年以上増配を続けている企業があり、配当利回りも3%前後のものが多く、悪くないと言えますね。
増配率も3年で1.2倍前後ですから、まずまずです。唯一ネックになってくるのは、最低投資額が大きい銘柄もあるため、なかなか気軽に手を出せないという人もいるかもしれません。
連続増配株の探し方
では、具体的に連続増配株はどうやって探すのがいいのでしょうか?
①投資雑誌等の増配株特集で探す。
誰もが簡単に調べられる方法と言う意味で、一番手っ取り早いのがこの方法です。
連続増配株は人気のコンテンツの1つであるため、定期的に特集が組まれています。ダイヤモンド・ザイはよく特集をやっていますね。
ただ、問題点としては(1)連続増配年数(2)増配率(3)配当利回り(4)投資金額等かなり基本的な情報が載っているだけで、配当の推移や財務状況を確認することはできません。
結局、ランキング上位の銘柄を調べた後、バフェットコードなどで分析しなおす必要はあります。
②マネックス証券 銘柄スカウター(10年スクリーニング)
2つ目はマネックス証券の口座を持っている方限定にはなりますが、銘柄スカウターという検索サービスを使うと、直近10年までの連続増配年数をもとにスクリーニングすることができます。
ここに紹介した以外の方法で探そうとすると、いくつかツールはあるのですが、個人の方が作ったツールしかなく、すでにデータの更新が止まっていたりするので、あまりおすすめはできません。
さて、ここまでが連続増配株を買う際の注意点や連続増配株の魅力についてお話ししました。
ここからは、JTや東芝のような高配当利回り株を買うべきなのか、連続増配株を買うべきなのか、どうするべきなのかについてお話しします。
まず、連続増配株と比べたときの高配当利回り株について改めてメリットとデメリットを整理しておきます。
高配当利回り株のメリット
メリット①連続増配株と比較して初めから高い配当金がもらえる。
安全性は別として、配当利回りの高い株だと10%を超えるようなものまであります。
もちろん、高配当を維持できるかが大きな問題ではありますが、単純計算10年あれば、元本を回収できてしまうわけです。
連続増配株では良くて4~5%ですので、高い配当を初めから狙いに行くのであれば、高配当利回り株を狙っていくほうが有利と言えます。
高配当利回り株のデメリット
デメリット①連続増配株と比べて暴落相場に弱い
高配当利回りの株式の株式の中にも財務健全性が優れた株もありますが、何かしらの理由があって、株価が下落し、高配当利回り株になっていることも多く、連続増配株と比較をすると、下落耐性が弱い銘柄があります。
高配当利回り株の具体例
2023年2月時点で配当利回りが高い順に並べています。10%超えの配当利回りを見ると、どうしても魅力的に感じてしまいますね。
ただ、業績悪化により株価が下落し、配当利回りが高くなっているような株もあるので、配当利回りが高い=良い株と決めつけないでください。毎月分配型のファンドと同じですね。
配当利回り | 1株配当 | 最低投資額 | |
商船三井 | 17.02% | 560円 | 32.90万円 |
日本郵船 | 16.06% | 510円 | 31.75万円 |
NSユナイテッド海運 | 8.73% | 355円 | 49.65万円 |
乾汽船 | 8.65% | 173円 | 20万円 |
三井松島HD | 8.29% | 270円 | 32.55万円 |
結論、高配当利回り?連続増配?どちらを選ぶべき?
さて、ここまで高配当利回り株か連続増配株かどちらに投資をするべきか見てきました。どちらも一長一短あると思った人が多いのではないでしょうか。
この議論に決着をつける上で大事になるのが、投資目的です。投資目的に応じて、投資スタイルは変える必要があるので、その点を整理してみます。
では①老後、セミリタイア後の定期収入②老後に向けた長期の資産形成という2つの目的で見ていきます。
①老後・セミリタイア後の定期収入
まず老後・セミリタイア後の定期収入目的の場合は、高配当利回り株を選択するべきです。
連続増配株は10年20年かけて配当を育てていくものなので、今、不労所得が欲しい人にとっては最適な手段にはなりません。
ですので、今すぐ高い配当が受け取れる株を中心に銘柄を選択するのが最善です。(もちろん配当利回りの高さだけで選んではいけませんよ。)
②老後に向けた長期の資産形成
この目的の場合は少し複雑です。
どちらも配当を再投資していくことにはなりますが、連続増配株は20年30年の長期に渡り配当を育てることで、元から高い配当を出していた高配当株よりも高い配当を出す株に生まれ変わる可能性があるからです。
ただ、こちらも①辛抱強く待ち続ける必要がある点と②連続増配が途絶えてしまうリスクを考えると、最初から高い利回りの株に投資をして、再投資をしていくのが良いのでは?と思います。
以上のことから、どんな目的で投資をするにしても、連続増配株よりも、高配当利回り株を中心に投資をしていくのがよいと思います。
中には、三菱HCキャピタルやUSSのように高配当利回り×連続増配というどちらの条件も満たしている銘柄もあるので、そういった銘柄もポートフォリオに組み入れていくのがおすすめです。