iDeCoやつみたてNISAの普及に伴い、投資信託に関心をよせる人が年々増加しています。私のところにもiDeCoやつみたてNISAについての質問を受ける機会も多くなってきました。
貯蓄から投資という流れが少しずつではあるものの、浸透し始めていることはうれしいものです。
ただ、何の知識もないまま、THEOやWealth naviといったロボアドの言うがままに投資信託を購入してみたり、いまだに証券会社や銀行の窓口販売員の言いなりになって、たいした成果も出せていない投資信託を購入している人を見ると、何とも残念な気持ちになります。
株やFX、投資信託というのは、他の様々な投資と比べても法整備がされており、素人の投資家が参入しやすくなっていますが、素人がいきなり手を出しても勝てるものではありません。
まして、放ったらかしにしておいて適切な投資判断ができるわけもなく、多くの投資家が投資を甘くみているように感じます。
投資信託においても最低限、押さえておいたほうがよいポイントがあり、その点が押さえられているかを確認するだけでも将来の資産の成長度合いに大きく影響します。
今日は、そんな投資信託の選び方について細かく説明していきます。
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1アセットクラスの選定
投資信託の正しい選び方<第1ステップ>はアセットクラスの選定です。
アセットクラスというのは、株式、債券、REIT、コモディティといった資産の種類のことです。
細かく分けるときりがありませんが、多くの証券会社や運用会社で分類されている区分としては、国内大型株式、国内中小型株式、先進国株式、新興国株式、国内REIT、海外REIT、国内債券、先進国債券、新興国債券、バランス、その他程度に分けられます。
どのようなアセットクラスを保有するかで、あなたのリターンは大きく変わってくるわけですが、どのようにアセットクラスを選べば良いのでしょうか。
それはアセットクラスごとに1年間で期待できるリターンの目安というものがあります。この数値を参考にあなたが1年間でどの程度資産を増やしたいかによって、アセットクラスを決定してください。
期待利回り | アセットクラス |
0~1% | 国内債券 |
1~3% | バランス、先進国債券 |
3~5% | 国内REIT、海外REIT、新興国債券 |
5~10% | 国内大型株式、先進国株式、新興国株式 |
10%以上 | 国内中小型株式 |
これだけ見ると、10%超のリターンが狙える国内中小型株式が良いと思うかもしれませんが、その分リスクは大きいので、プラスが大きい分、マイナスになったときの下落も大きいということを忘れてはいけません。
また、アセットロケーションがリターンの源泉であり、とにかく重要であると言う話を聞いたことがあるかもしれません。
アセットアロケーションというのは、アセットクラスをどのような比率で保有するのかを決定することだとお考え下さい。
アセットアロケーションを適切に管理するには、保有ファンド間の相関係数や、各ファンドの標準偏差をもとに計算しなければならず、正直投資を始めたばかりの人が計算するのは不可能に近いので、あまり深く考えなくてもいいです。
また複数のファンドを保有したほうがリスクが下がると思いがちですが、よくわかっていない人が複数のファンドを保有すると、逆にリスクが高まったり、収益の機会損失につながります。
ですので、まずは自分のお気に入りの1本を選ぶことを考えてください。
あとからファンドの追加はいくらでもできるので、まず1本を選ぶ方法についてしっかり覚えるのがよいでしょう。
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2長期の運用実績の優れた投資信託から絞り込む
投資信託の選び方<ステップ2>は長期の運用実績をもとにした投資信託の絞り込みです。
ここで気を付けていただきたいのが、運用期間が短く中長期の運用実績がわからない投資信託に投資をしてはいけません。
投資信託についてある程度知識のある方であれば、新規設定の投資信託には投資をしないほうがよいという話を聞いたことがあるかもしれません。
運用期間が短い投資信託というのは、たまたま株式市場の環境が良好だったため高いリターンを実現できた場合や、たまたま銘柄選定がうまくいったということもあり得るからです。
こう考えるとわかりやすいかもしれません。
10年間プロテニスプレイヤーとして常にランキング上位に入っている選手と今年きらぼしのごとく現れ、上位にランクインしたプロテニスプレイヤーがいたとして、来年以降も安定的に上位のランクを維持できる可能性が高いのはどちらかを考えてみてください。
もちろん、今年初めて上位にランクインしたプロテニスプレイヤーも今後、活躍するかもしれませんが、10年間上位に入っているプロテニスプレイヤーのほうが、来年も活躍できる可能性は高いでしょう。
ですので、できる限り長期で高いパフォーマンスの投資信託を選択したほうがよいわけですが、10年超もトラックレコードのある投資信託が少ないもの事実です。
ですので、5年超の運用実績のある投資信託の中から、高い実績を出しているファンドを選ぶようにしましょう。
またパフォーマンスが高い低いの判断は、同じアセットクラス内のランキングを確認することで、どの位置にいるかがわかります。モーニングスター等のサイトで順位は確認することが可能です。
一番の理想は毎年上位10%に入るパフォーマンスの投資信託ですが、そこまで絞り込むとほぼほぼ見つかりませんので、毎年安定的に上位30%以内に入っているようなファンドであれば、十分高いパフォーマンスが期待できます。
以下に、アセットクラス別に10年間利回りランキングを用意していますので、こちらを参考にファンドを選んでいきましょう。
このステップまでで5本くらいまでに絞り込んでおくのが理想です。
ちなみに一般的に記載されているファンドのリターンはあなたの手元に残るお金とは違います。手元に本当に残るお金がいくらになるのかは計算できるようになっておいてください。
利回り計算で一番重要!あなたは投資信託の実質利回りを計算できますか?
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3インデックスファンドとのパフォーマンス比較
投資信託の選び方<ステップ3>はインデックスファンドとのパフォーマンス比較です。
アクティブファンドへの投資を検討している場合には、自分が検討しているファンドがインデックスファンドよりも高い成果を残しているのか確認することが必要です。
低コストで運用できるインデックスファンドに負けている、もしくはインデックスファンドとトントンの運用をおこなっているようなファンドでは、高いコストを支払ってまでアクティブファンドに投資をする必要がありません。
仮にインデックスファンドへの投資を検討している場合には、同じベンチマークを採用しているインデックスファンドとパフォーマンスを比較しておきましょう。
信託報酬は低くても実質コストが実は高いため、パフォーマンスが劣っていることもあり得ます。
以下に、各アセットクラスの代表的なインデックスファンドを紹介しておきます。
自分が投資しようとしているファンドが下のインデックスファンドよりも優れた成果を残せているか必ず確認しましょう。
アセットクラス | ファンド |
国内大型株式 国内中小型株式 |
emaxis slim 国内株式TOPIX ニッセイ 日経225 インデックスファンド |
先進国株式 | eMAXIS Slim 先進国株式インデックス |
新興国株式 | eMAXIS Slim 新興国株式インデックス |
国内REIT | ニッセイJリートインデックスファンド |
海外REIT | ニッセイ Gリートインデックスファンド |
国内債券 | たわらノーロード国内債券 |
先進国債券 | たわらノーロード先進国債券 |
新興国債券 | iFree新興国債券インデックス |
バランス | eMAXIS Slim バランス( 8資産均等) |
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4手数料のチェック
投資信託の選び方<ステップ4>は手数料の確認です。
ここまでのステップで、パフォーマンスとしては自分が満足できるファンドが見つかっているはずです。
ここからは、パフォーマンス以外の点をチェックしていきます。
まずは、コストです。コストには大きくわけて2つあります。1つ目は購入時手数料、2つ目は信託報酬です。
信託財産留保額といって解約時に支払う費用もありますが、多くの場合かかりませんので、購入時の段階でチェックはしなくても大丈夫です。
アクティブファンドの場合は、購入時手数料が3%程度取られるものが多いです。
ただ、販売会社によっては、購入時手数料を無料にしていたり、安くしていたりするので、しっかり比較するようにしましょう。
ただし、矛盾するようですが、コストが低いファンドだから単純に良いファンドというわけではありません。
そして、信託報酬にも注意が必要です。あなたがよく目にする信託報酬以外にも実際には運用コストがかかっており、運用益の中から、こっそり差し引かれているのです。
これを実質コストと言います。
海外の投資信託を組入れているファンドは実質コストが高くなる傾向がありますので、目論見書などに記載されている信託報酬だけでなく実質コストをしっかり確認してから投資判断するようにしましょう。
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5純資産総額のチェック
投資信託の選び方<ステップ5>は純資産総額の規模の確認です。
純資産総額が小さいと運用を効率よく行うことができないため、コストが高くつく傾向にあります。
また純資産総額が小さいと早期償還されるリスクもあるため、確認しておいて損はありません。
5年超運用がつづいているアクティブファンドの場合、ほぼこの条件はクリアしていることが多いですが、目安として純資産総額が10億円以上あるかは確認しておいてください。
できれば50億円超はあったほうが安心です。
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6標準偏差のチェック
投資信託の選び方<ステップ6>は標準偏差の確認です。
ここからは、細かい確認をしていきます。
統計学に詳しくない人にとっては、標準偏差という難しい言葉を聞くだけで嫌になるかもしれませんが、確認しておいて損はありません。
標準偏差を調べることでわかるのは、今後1年間で基準価額がどの程度変動する可能性があるのかということです。
もちろん確率論の世界の話ですので、100%正しいということはありませんが、この変動幅を事前に把握しておくことで、急な相場の下落が来た時でも冷静に対処することができます。
また運用スタイルとして、値動きの大きい運用をしているのか値動きが小さい運用をしているのかを判断するのにも使えます。
詳細はこちらから確認してください。
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7最大下落率のチェック
投資信託の選び方<ステップ7>は最大下落率の確認です。
長期で運用をしていれば、必ず下落相場に直面することがあります。
最悪なのは、大きく下落した局面で、パニックになり保有していたファンドを売却してしまうことです。
中長期ではプラスのリターンが出ることが分かっていても、大きな下落相場が来ると、自分をコントロールできなくなってしまう人が多いのも事実。
標準偏差からもどの程度下落する可能性があるのかは予測することができますが、過去に実際の下落率を確認しておくことで、慌てることなく長期保有を継続できます。
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8運用体制のチェック
投資信託の選び方<ステップ8>は運用体制のチェックです。
これはできるのであればということで書いておきたいと思います。
投資信託が高いパフォーマンスを維持できる源泉となっているのは、ファンドマネージャーを中心として運用チームの力あってのことです。
ですので、ファンドマネージャーが変わったり、運用体制が大きく変更されたりすると、運用方針が変わりパフォーマンスに影響が出ることは間違いありません。
運用会社によっては、現在の運用体制を記載している会社もありますが、運用体制が書いていない会社では、直接問い合わせで聞いてみたり、セミナーで質問してみたりして、現状の運用体制がいつからのものなのか、直近で変更の予定はないのかなど聞いてみるとよいでしょう。
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9おまけ
私個人としては、おすすめしませんが、毎月分配型のファンドを探している場合、もうひとつ確認しておかなければいけないポイントがあります。
それは、毎月の分配金がファンドの収益から支払われているかと言う点です。
仮に分配金が当期の収益から支払われていない場合は、あなたの投資した元本から市は割られている可能性が高く、ただただあなたの投資元本が減っているだけの可能性があります。
運用報告書を確認することで、分配金の内訳をチェックできますので、必ず確認しておいましょう。
また、分配金を支払う余力があとどの程度の期間残っているのかも確認をおきましょう。
これも運用報告書の繰越対象額を分配金の金額で割ることでざっと計算することが可能です。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
正直なところ、ロボアドバイザーや証券会社・銀行の販売員に投資信託を教えてもらったほうが楽であることには間違いありません。
しかし、他人任せの投資というのは100%酷い目にあいます。
これは私の経験だけでなく、様々な投資を経験したことがある人であれば、たいていの人が同じことを言います。
結局、楽して儲けようなどという甘い発想は捨てなければいけないということです。
投資信託の場合は、まだ下落したとしても10~20%程度ですむことが多いので、そこまで大きなダメージを受けないかもしれませんが、2018年世間を騒がせたセナ―の仮想通貨案件やケフィアのオーナー案件に、万が一投資をしてしまっていたら、一銭も戻ってきません。
今は、そのような投資話があなたのもとには届いていないかもしれませんが、今後、投資をやっていくのであれば、必ずそのような投資話を耳にする機会もあるでしょう。
そんな時、他人任せの投資癖がついている人は、こういった美味しい話を友人から紹介されたときに、見分けることができる力が当然つきませんので、コロリと騙されてしまいます。
少しずつでも自分の投資力を磨いていけば、数年後にはあなたの投資力は大きく成長しているはずです。今日、ご紹介した投資信託の選び方でさえ、ほとんどの人がやっていないと思います。
ですので、投資信託については、今日私が紹介した方法をマスターしていただき、自分の投資力アップにつなげていただければと思います。
投信運用は長期投資が前提なので、つい出口戦略を考えずに投資をしてしまいがちです。
しかし、「投資は出口戦略にあり」と言われるほど、重要なテーマです。ぜひこれを機会に投資の出口戦略を考えてみてください。
>>ここまで考えるのが本当の資産運用。多くの投資家が考えられていない投信運用の出口戦略とは最後に、投信運用には多くのメリットもありますが、当然ながら、弱点もあります。
今も私は投信運用を続けてはいますが、私がなぜ投資信託の運用を主軸におかなくなったのか。その理由をこちらで話をしています。
>>なぜ私が投信運用に限界を感じたのか。多くの投資家が見逃している投信運用の弱点