債券や債券ファンドに投資を検討している人であれば、
一番チェックしておかなければいけないのが、格付会社
による格付です。
大概、売りに出ている債券や債券ファンドは「リスクは
高くありません。」と謳っていますが、実際どの程度
リスクが低いのか具体的に把握している人は少ないので
はないでしょうか?
また信用格付けは格付会社によって、評価の仕方が異な
っていますので、同じ格付でもデフォルト率が若干変わ
ってきます。
そこで、今回は主要な格付け会社別に、格付のランクで
どの程度デフォルト率(元本や利息の支払いが滞る率)に
差があるのかを具体的に見ていきたいと思います。
信用格付とは
格付というのは、スタンド―ド・アンド・プアーズやムー
ディーズといった格付会社が債券やその発行体に対して
付与するもので、企業業績や財務内容などを分析して、
債券の利息の支払いや元本の返済が滞らないかの安全度
を測るものです。
以下の図のように、AAAの評価が一番高く、SD/Dが一番
最低の格付となります。
一般的に格付がBBB以上の債券は投資適格債券と呼ばれ
ており、相対的にリスクが低く、投資のプロである機関
投資家が投資対象とみなしている債券です。
BB以下の債券は投資不適格債券と呼ばれており、ハイ
リスクな債券ファンドを組成したりするときなど以外
にはリスクが高いため、機関投資家も目を向けません。
債券の安全性を測る指標として使えるのは、各格付の累積
デフォルト率という指標です。
今回は経過年数を5年で統一してわかりやすくしていますが、
5年前の時点でAAAの評価だった企業が5年後の時点でどの
程度デフォルトしているかを率で表しています。
つまり、償還期限が5年ある債券を購入するときに、5年
以内に購入した債券がデフォルトする確率を表している
とも言えます。
なお、デフォルトの定義は各社判断が微妙に異なってい
ますが、今回はそこまで細かく調べるのが目的でないの
で考慮しないこととします。
また、計測期間が長いほど累積平均デフォルト率は高く
なりますが、その点も今回は考慮しないことにしています。
それでは、格付け会社ごとの累積デフォルト率を見ていき
ましょう。
信用格付会社別の累積デフォルト率を比較
今回は4社の信用格付会社をピックアップしています。
世界的に有名な格付会社であるスタンダード・アンド・
プアーズとムーディーズ。そして国内の代表的な格付
会社であるJCRとR&Iの2社を比較しました。
Standard & Poor’s(スタンダード・アンド・プアーズ)
格付カテゴリー | 累積平均デフォルト率(5年) |
AAA | 0% |
AA | 0% |
A | 0.17% |
BBB | 1.79% |
BB | 4.93% |
B | 21.62% |
CCC/C | 22.38% |
※1981年~2017年
※対象:503社
Moody’s(ムーディーズ)
格付カテゴリー | 累積平均デフォルト率(5年) |
AAA | 0% |
AA | 0% |
A | 0.25% |
BBB | 0.70% |
BB | 4.51% |
B | 9.40% |
CCC/C | 29.03% |
※1990年~2017年
※対象:263社
格付投資情報センター(R&I)
格付カテゴリー | 累積平均デフォルト率(5年) |
AAA | 0% |
AA | 0.06% |
A | 0.49% |
BBB | 1.01% |
※1978年~2017年
※対象:1518社
日本格付研究所(JCR)
格付カテゴリー | 累積平均デフォルト率(5年) |
AAA | 0% |
AA | 0.09% |
A | 0.50% |
BBB | 2.71% |
BB | 14.35% |
B | 57.00% |
CCC/C | 61.54% |
※2000~2017年
※対象:記載なし
4社を比較してみると、どの格付会社でもA以上の評価が
ついていれば、5年以内にデフォルトする確率は1%以下
であることがわかります。
BBB評価になると、格付け会社によって0.5%~3.0%程度
の幅があるようです。
BB以下の格付になると一気にデフォルト率が上がること
から、投資対象としてはリスクが高すぎるように感じますね。
とにかく自分で債券を購入する場合は最低BBB、理想で
いえば、AA以上の格付がついている企業の債券にするのが
よさそうです。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
債券のリスクが高い低いと抽象的な言葉で議論するよりも、
具体的に何%程度のリスクなのかわかると投資判断がしや
すくなったのではないでしょうか。
格付は民間企業が営利目的で行っているため(格付をして
ほしいという企業からお金をもらっているため)、100%
信用できる指標かというと疑問が残りますが、少なくとも
過去の実績をみれば、投資判断する上で十分に役立つ指標
だと思っています。