恐怖指数関連のトレードをしている人であれば、ロール
オーバーの仕組みを理解しておかなければ、なぜ米国VI
ベアETFが上昇し、なぜ米国VIブルETFや米国VIが下落
するのか理解できません。
なかなかこのロールオーバーについて詳しく説明している
人がいませんでしたので、今日は時間を使って説明してい
きたいと思います。
ロールオーバーとは
ロールオーバーとは、簡単に言ってしまうと、満期を迎
える先物を売却し、満期が先の先物を買い直すことです。
具体的な話に入る前に、先物取引を理解していないと、
このあとの話がわからないと思いますので、先物取引が
良くわからないという人はこちらを確認しておいてくだ
さい。
今回は、ロールオーバーを具体的にイメージできるように
VIX指数先物を例にとって説明していきます。
では、早速説明していきましょう。
まず、あなたは1月限(Jan)の先物を保有していたとします。
VIX指数先物の表を見ると、1月限の先物の価格が13.100、
2月限の先物の価格が15.210となっています。
ここで、1月限の先物の満期が来る前に一度VIX指数先物を
13.100で売却し、2月限の先物を15.210で買い直すことを
ロールオーバーと言います。
なぜ満期前に売却するのかと言えば、先物の価格は満期に
近づけば近づくほど、原資産の価格に近づいていきます。
つまり、VIX指数先物であれば、VIX指数に近づいていく
わけです。
そして、通常、VIX指数先物のほうがVIX指数よりも価格が
高いので、満期に近づけば近づくほど、VIX指数先物の価格
はVIX指数の価格に近づくために下がっていきます。
つまり、翌月以降も先物を保有しておきたい場合、満期まで
待って決済をするよりも、満期前に差金決済をしたほうが
損失がわずかですが少なく済むということです。
ロールオーバーすると損失が出る?
ロールオーバーについて理解する上で、もう一つ重要な
ことを話しておきます。
それは、先物の価格がコンタンゴの状態のときは、ロール
オーバーすることにより差損が出るということです。
コンタンゴが何かわからない人はこちらで確認してください。
さきほどの例で言えば、1月限を13.100で売って、2月限を
15.210で買い戻すわけですので、2.110ドルの差損が発生
します。
特に、VIX指数関連の先物の場合、仕組み上コンタンゴの
状態になりやすく、以下の図をみてもらうとわかりますが、
直近10年間では80%以上の期間でコンタンゴとなっています。
(赤線以上がコンタンゴ。赤線以下がバックワーデーション。)
ですので、VIX指数先物のETFやETNはロールオーバー
するごとに価格が下落していくという特性を持っている
わけですね。
ここまで読めば、ロールオーバーについて大方イメージが
ついたと思います。
ただ、恐怖指数の先物のETFやETNは短期なのか中期なの
かでロールオーバーの仕方が変わってきます。
そこで、今回は一番知名度が高いS&P500 VIX短期先物指数の
ロールオーバーについて掘り下げてみてみましょう。
VIX短期先物指数のロールオーバーとは
ここでは、VIX短期先物指数のロールオーバーについて
具体的に見ていきます。
VIX短期先物指数というのは、満期が1カ月になるように
直近の限月(第一限月)の先物と翌月の限月(第二限月)
の先物をロールオーバーしていきます。
もう少し具体的にイメージしてもらえるように以下の表を
用意しました。
0日目を見てください。これは第一限月の先物を30枚持っ
ている状態です。1日経過後は第一限月の先物を1枚売却し、
第二限月の先物を1枚購入します。
これにより第一限月の先物の比率が96.7%、第二限月の
先物の比率が3.3%となります。2日経過後は、さらに1枚
第一限月の先物を1枚売却し、第二限月の先物を1枚購入
します。
これにより第一限月の先物の比率が93.3%、第二限月の
先物の比率が6.7%となります。このようにして、直近の
限月の先物と翌月の先物をロールオーバーして満期が1カ月
に調整していくのが、VIX短期先物指数です。
まとめ
いかがでしょうか?
先物のロールオーバー自体はどこでも行われることな
のですが、VIX指数先物やVSTOXX指数先物をロール
オーバーすると、特徴的な値動きをすることになります。
これを期にロールオーバーはマスターしておいてください