VIX指数については、名前を聞いたことがある人もいる
と思いますが、S&P 500 VIX 短期先物指数については、
ほとんど聞いたことがないと思います。
しかし、VIXに関連する投資をする上で、S&P 500 VIX
短期先物指数については必ず知っておかなければなりま
せん。
と言うのも、VIX指数関連の商品はS&P 500 VIX 短期
先物指数に連動して設計されていることが多いからです。
今日は、そのS&P 500 VIX 短期先物指数について、どの
ような指数なのかを徹底分析していきます。
S&P 500 VIX 短期先物指数とは?
まず、S&P 500 VIX 短期先物指数について説明する上で、
VIX指数(ボラティリティ・インデックス)について理解
しておかなければなりません。
VIX指数とは、CBOE(シカゴオプション取引所)がアメ
リカの主要株価指数であるS&P500のオプション取引の
値動きをもとに算出したものです。
そして、VIX短期先物指数とは、VIX指数の先物の第一限月
と第二限月をロールオーバーした場合のリターンを指数化
したものです。
※第一限月とは直近30日以内に満期がくる先物のこと。
先物取引がわからない人のために簡単に先物について説明
しておきましょう。
先物取引は将来のあらかじめ決められた期日に、特定の
原資産(日経平均株価、金、原油など)を現時点で取り
決めた価格で売買することを約束した取引です。
例えば、現時点で原油価格が10,000円だったとして、
今後、1カ月で大きく原油価格が上昇することが予測
されていたとします。
あなたは1カ月後に、原油を購入しなければいけない予定
があり、このまま何もせず1カ月後を待っていると、原油
の仕入れ単価が非常に高くなってしまうと悩んでいます。
このような状況のときに使えるのが先物取引です。
先物取引では、1カ月後に10,000円で購入する約束(取引)
をすることができます。
1カ月後(満期)、原油価格が12,000円になっていたと
すると、あなたは10,000円で原油価格が購入できますの
で、2000円分得をすることになります。
逆に、1カ月後(満期)に原油価格が9000円に下がって
いた場合、10,000円で購入することになりますので、
1,000円の損をすることになります。
通常であれば、現時点での価格で取引をしますが、将来
の商品を現在の価格で取引すること約束するというのが
先物取引です。
S&P 500 VIX 短期先物指数のロールオーバーとは?
S&P 500 VIX 短期先物指数について、理解するうえで、
ロールオーバーについてもしっかりと理解をしておかな
ければいけません。
ロールオーバーとは、期日前のポジションを売却して、
期先のポジションに乗り換えることを言います。
以下の表を見ると、ロールオーバーのイメージがつ
くかもしれません。
表の見方は、まず今日時点(0日時点)では、第一限月
の先物を100%保有していたとします。
では、1日経過するとどうなるのでしょうか?
1日経過すると、第一限月の先物の保有比率が96,7%に
下がり、第二限月の先物の保有比率が3.3%に上昇します。
これはつまり、第一限月の先物を全体の資産のうち
3.3%ほど売却し、第二限月の先物を3.3%分購入した
ということです。
2日経過すると、第一限月の先物の保有比率は93.3%に
下落し、第二限月の先物の保有比率が6.7%まで上昇し
ています。
このように、期近の先物を一定額売却し、期先の先物を
一定額購入する手法をロールオーバーと言います。
この説明でよくわからないという人はさらに詳しく
こちらで解説していますので、参考までに読んで
みてください。
S&P 500 VIX 短期先物指数はなぜ下落するのか
さて、ここからが本題ですが、S&P 500 VIX 短期先物
指数のチャートの値動きを見ていると一つの疑問に行き
当たります。
それは、以下の図のように安定的に右肩下がりのチャー
ト(紫)となっていることです。
なぜ、このように右肩下がりのチャートになるのでしょ
うか?またこれは一時的に右肩下がりのチャートになっ
ているのでしょうか?
結論を言ってしまえば、S&P 500 VIX 短期先物指数は
構造的な要因から必ず下落する方向にチャートが推移す
る仕組みになっています。
これにはさきほど説明したようにS&P 500 VIX 短期先物
指数がロールオーバーして算出した指数であることと、
VIX指数先物の場合は、コンタンゴの状態あることが多く、
期先の先物ほど価格が高くなる傾向にあるからです。
実際に以下の図を見てもらったほうがイメージがわく
かもしれません。
この図を見ると、第一限月(Jan)のVIX先物の価格は
13.100に対して、第二限月(Feb)のVIX先物の価格は
15.210となっています。
ここでロールオーバーすると、13.100のVIX先物を
売って、15.210のVIX先物を買うことになりますの
で、当然損失が発生します。
このように期先の先物の価格のほうが高いコンタンゴの
状態だと、毎日のロールオーバーにより、価格は自然と
下落していくことになるわけです。
一方で、相場に波乱が起こると、以下の図のように、
期近の先物のほうが価格が高くなり、期先の先物のほう
が価格が低くなります。
つまり、第一限月(Mar)を売って、第二限月(Apr)を買い
ますので、54.450-44.800分の利益が出ます。つまり、
S&P 500 VIX 短期先物指数は自然と上昇していくこと
になるわけです。
VIX指数の値動き自体が以下の図のように1年を通して
80~90%は平穏な状況なのでコンタンゴの状態で、
10~20%の期間だけバックワーデーションになります。
コンタンゴの状態のほうが圧倒的に長いということは
ロールオーバーするたびに、損失が発生することにな
りますので、価格も下落を続けるというわけです。
まとめ
いかがでしたでしょうか?S&P 500 VIX 短期先物指数が
下落を続ける指数であることを知っている人はいると
思いますが、なぜ下落を続けるのかその仕組みまで理解
できている人はかなり少ないでしょう。
値動きの仕組みをしっかりと理解すれば、自分が投資を
していても不安になることはありません。
次回以降で、S&P 500 VIX 短期先物指数をトレードにどう
生かすのかを紹介していきます。