VIX指数関連のCFDに投資をしようとすると、米国VI、
米国VIブルETF、米国VIベアETFの3つのどれかから
選択することになります。(GMOクリック証券の場合)
それぞれ異なる特徴をもっているので、状況に合わせて
使いわければよいのですが、毎月ほぼ上位の取引額を
誇るのが米国VIです。
今日は、この米国VIの特徴と売買戦略について徹底
分析していきたいと思います。
米国VIとは?
では、まず米国VIとは何なのか見ていきましょう。
米国VIとはシカゴ・オプション取引所(CBOE)で取引
されているVIX指数先物に連動するCFDです。
厳密に言えば、第一限月(満期まで30日以内)のVIX
指数先物に連動しています。
VIX指数先物というのは、その名の通りVIX指数の先物
です。
ここでよく勘違いをする人がいますが、VIX指数とVIX
指数の先物というのは、まったく別のものです。
VIX指数自体は実体のない指数なので、取引できませんが、
VIX指数先物は取引できます。
ここで注意が必要なのは、日経平均株価と日経平均先物
の場合、ほぼ同じような値動きとなりますが、VIX指数
とVIX指数先物の場合は同じ動きになりません。
このVIXの仕組みをよく理解しておかないと米国VIの投資
で失敗することになります。
米国VIの値動きは?
それでは、早速米国VIのチャートを見てみましょう。
VIX指数のチャートを見たことがある人であればすぐ
気づきますが、米国VIの値動きは、VIX指数のチャー
トと非常によく似た形状をしています。
つまり、S&P500が大きく下落したときに、チャートが
急上昇するという特徴を持っていることがわかります。
ここで注意しなければいけないことがあります。
一見するとVIX指数と同じような動きをしているので、
米国VIを安値で買って、急騰するタイミングまで待てば
よいと考えるかもしれません。
しかし、次に説明するように、チャート上ではVIX指数と
同じような値動きをしているように見えるのですが、実際
は右肩下がりに価値は下落しているのです。
そのため、米国VIを安値で買って急騰を待つという戦略は
儲かるように見えて、実際には損をすることになります。
米国VIの価格調整とは
さて、ここまで読み進めると、なぜ米国VIの買い戦略が
有効でないのかよくわからないという人もいると思います
ので、その理由を説明していきます。
日経225や原油、VIX指数の先物のCFDには価格調整という
調整が行われます。この価格調整というのが、元凶なの
ですが、これは、いったいどのような機能なのでしょうか?
まず、先物の特性について改めて理解をしておく必要が
あります。
先物取引というのは、決められた期日に、決められた
品物を現時点で決めた価格で売買することを約束する
取引です。
つまり、現時点でVIX指数が15だったとして、3カ月後に
VIX指数を15で購入するという約束をするのが先物取引
です。
CFDが参照する先物には期限(満期)がありますので、
満期以降は当然その先物は取引ができません。一方で
CFDには期日がないので、先物が期日を迎える前に、
期近から期先へと変更する必要が出てきます。
米国VIの場合は第一限月(満期まで30日以内)の先物が
対象なので、この先物が満期を迎える前に新しい先物を
購入する必要があるのです。
これをロールオーバーと言います。
ロールオーバーについて詳しく知りたい方はこちらの
記事で詳しくまとめていますので、読んでみてください。
では、なぜロールオーバーをすると、問題なのでしょうか。
それは、期近の先物と期先の先物の価格が異なるからです。
コンタンゴの状態であれば、期先の先物のほうが価格が
高くなり、バックワーデーションの状態であれば、期近
の先物のほうが価格が高くなります。
つまり、コンタンゴの状態でロールオーバーすると、損失
が出て、バックワーデーションの状態でロールオーバー
すると利益が出るということになります。
コンタンゴとバックワーデーションで利益や損失が出る
イメージがわかないという方はこちらで詳しく解説して
いますので、みておいてください。
ここで、米国VIについてあたらめて考えてみますが、
米国VIが連動しているVIX指数先物の場合、コンタン
ゴの状態であることがほとんどであるため、ロール
オーバーすると米国VIの価格が下落してしまうこと
になります。
つまり、何もしなければどんどん下落していってしま
うわけです。
それを防ぐという意味で価格調整が行われます。
米国VIの日足チャートを実際にみてみるとイメージが
湧くと思います。以下のようにひと月に1度チャートが
窓を開けています。
本来であれば、窓をあげずに下落をし続けているはずなの
ですが、価格調整が行われることで、チャートが大きく
上昇しています。
このように、窓をあけて調整が行われると、米国VIの
買いポジションを持っていると価格の上昇に伴い、利益
が増えるのでは?と考える人もいると思います。
しかし、残念ながらそうはなりません。
結論としては、米国VIの買い側はこの上昇した分を調整
するための毎月1回、価格調整額という名目で資金が差し
引かれます。なので、実質的には±0ということです。
逆に米国VIの売りポジションを持っていると、価格上昇に伴い、
利益が減ることになります。ですので、毎月1回、価格調整額と
いう名目で資金が増えます。なので実質的には±0になります。
なので、米国VIのチャートを見るだけでは気づきませんが、
チャートは実質的に右肩下がりに下落しています。つまり、
売り戦略が圧倒的に有利ということです。
米国VIを活かしたおすすめの投資戦略は?
繰り返しになりますが、米国VIはチャート上ではあまり
下落をしていないように見えたとしても、VIX指数先物の
CFDである米国VIは仕組み上、下落方向に圧力がかかって
います。
価格調整について知らないとつい買いポジションを保有
してしまう人もいるのですが、チャート上では損失がで
なくても、価格調整により損失が膨らむことを忘れては
いけません。
ですので、基本的にVIX指数の急上昇を狙って、買いポジ
ションを保有するのは得策ではありません。
たしかに、今回のコロナショックでは、米国VIがリーマン
ショック時を超える水準にまで達しました。運よく米国VI
を保有していた人は、大きな利益を得ることができています。
しかし、それはあくまでたまたまであり、今回のコロナ
ショックがここまで大きな影響があると思っていた人は
ほとんどいないはずです。
そうなると、米国VIを売りポジションから入るほうが戦略
上は優れていることになります。
仕組み上、下落していくわけですので、当然と言えば当然
です。
一番理想なのは、VIX指数が急騰して、米国VIも急騰した
タイミングで売りをしかけることですが、このチャンスは
年に数回しかないだけでなく、売りの規制がかかることも
あるので、タイミングがよくなければ、エントリーできま
せん。
また、米国VIを売りポジションから入る場合、VIX指数が
急騰したときに強制ロスカットに合わないようにしなけれ
ばすべての投資資金を失うことになります。
今回のコロナショックで、米国VIが20前後になったタイ
ミングで売り戦略をとった人は、とてつもない含み損を
抱えることになり、精神的に耐えられず、なくなくロス
カットした人もたくさんいます。
売りの戦略は損失無限大の戦略ですので、米国VIが予想
に反して、上昇を続けると、どこまでも損失が膨らみます。
この精神的なダメージに対して、毅然とした態度でいら
れるかがすべてを分けるといっても過言ではありません。
少なくとも、大儲けをしようと少し無理をした金額での
投資は絶対しないようにしましょう。レバレッジ5倍なの
で、気を抜いているととてつもない損失を出す可能性も
あります。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
米国VIはGMOクリック証券でも非常に人気の商品なので、
さすがに仕組みを知っている人のほうが多いのでは?と
思いますが、米国Ⅵの仕組みを知らずに投資をするのは、
致命的です。
コロナショック時にも多くの投資家が遊び半分で米国VI
の投資をはじめ、痛い目にあっています。
少なくとも米国VIのようなハイリスクの商品は、全力で
投資をして儲けるCFDではありません。お小遣いを稼ぐ
程度の気持ちで金額も抑えながら、投資をするのがちょ
うど良い塩梅です。