VIX関連銘柄の投資を推奨しているブロガーさんの中
には、米国VIベアETFの積立投資をおすすめしている
人がいます。
積立投資というのは、中長期的に右肩上がりに相場が
上昇していくことを前提に考えれば、相場の予測も必要
なく、ただ毎月一定額を購入するだけなので、非常に
有効な投資方法です。
そして、米国VIベアETFの場合、株式等とは異なり、
年間利回りも高いので、うまく運用ができれば、複利
効果も重なってとてつもないリターンが期待できます。
しかし、米国VIベアETFで積立投資をするには大きな
デメリットが存在します。
その点を考慮せずに積立投資をはじめれば、ほぼ間違
いなく退場することになるでしょう。
米国VIベアETFが積立投資に向いていると言われる理由
まず、米国VIベアETFが積立投資に向いていると言われ
る理由について改めて考えてみたいと思います。
投資初心者の方の中には、積立投資をしていれば、基本
的に負けることはないと思っている人もいるようですが、
決してそのようなことはありません。
以下のシュミレーションで確認してみましょう。
次の図はあるCFDの8カ月の累積リターンのシュミレー
ションを表しています。
パターンAの場合は1カ月目▲10%、2カ月+10%(累計0%)・・・と
いった見方をします。
パターンBの場合は1カ月目+10%、2カ月目+10%(累計20%)・・と
いう見方になります。
8カ月目の累積リターンは±0なので、このCFDがどの
パターンで収益を上げたとしても、累積リターンは
変わりません。
では質問です。
8カ月間の累積リターンはどのパターンでも同じですが、
毎月1万円ずつこのCFDを購入したとすると、時価総額
(積立金+運用益)は同じになるでしょうか?
結論を言ってしまうと、3パターンのどの運用がされる
かで時価総額は全く変わります。
仮にパターンBのような運用がされてしまうと、元本割れ
となってしまうのです。
一方で、パターンCのような運用がされれば、積立金を
大きく上回る運用益を手にすることができます。
ここで、非常に重要なのは、パターンCのように一時的
に運用がうまく行かなかったとしても、最終的にもとの
水準まで戻ってこれば、十分大きなリターンを得ること
ができるという点です。
逆に言えば、パターンBのような運用になる可能性のあ
る商品で積立投資はしてはいけないということになります。
ここで非常に重要なのは、米国VIベアETFの場合、仕組み
上、上昇圧力がかかりますので、必ず右肩上がりに価格は
上がっていきます。
ですので、積立当初運用がうまく行かなかったとして、
最後には必ず上昇します。
投資の世界では基本的に「絶対」はないのですが、米国VI
ベアETFの場合は、仕組み上、上昇するようになっています
ので、絶対右肩上がりに上昇すると言えるのです。
まだこの仕組みが理解できないという方は、こちらの記事
を読んでみてください。
S&P500 VIX短期先物指数とは?なぜ下落を続けるのか?
米国VIベアETFはSVXYというETFを参照していますが、
SVXYはS&P500 VIX短期先物指数のインバース型の商品
となっています。
インバース型というのは、逆の動きをするという意味
ですね。
なので、S&P500 VIX短期先物指数がなぜ仕組み上、
下落をつづけるのかを理解できれば、そのインバース
型のSVXYがなぜ上昇しつづけるのかを理解できます。
この仕組みをしっかりと理解できているかどうかで、
いざというときの判断に大きな影響を与えます。
必ず理解していおいてください。
SVXYの利回りから考える米国VIベアETFの積立シュミレーション
では、次に年間 12万円をSVXYに投資をし、20年間
積立てつづけた場合に資産がいくらになるのかシュ
ミレーションしてみましょう。
SVXYは2018年のVIXショック以降リスクを半分に
抑えたので、期待リターンは下がりますが、年10%
程度は期待できるでしょう。
そこで、年10%で複利運用ができたとしたときにどの
程度、純資産額(積立額+運用益)が増加したかを確
認してみます。
なんと20年間で積立額の3倍超の資産を築くことが
できる想定です。
ここまでの話を聞くと米国VIベアETFを積立で活用する
のは賢い方法だと思うかもしれません。
しかし、実は大きな落とし穴が隠されています。
それが私が米国VIベアETFで積み立てをおすすめしない
理由です。
米国VIベアETFで積立投資をおすすめしない理由
あなたはVIXショックをご存じでしょうか?
2018年1月に起きた大事件で、VIX関連銘柄に投資をし
ていた人であれば知らない人はいない事件です。
以下のチャートを見れば一目でわかりますが、それまで
順調に右肩上がりに成長していた米国VIベアETFが最高
値から90%超近く下落しました。
これを期に米国VIベアETFのリスクは半分に設定が変更
されたほどです。
このような大暴落は通常起こりえないとされていました
が、実際には多くの投資家の資産が焼け野原となりました。
私がここまで米国VIベアETFの積立をおすすめしないと
言い続けている理由というのは、このような暴落が次に
起きたときに対処法がないと考えているからです。
積立のメリットは何も考えずに毎月一定額を積立つづける
ことにあります。相場が上がろうが下がろうが関係なくです。
しかし、米国VIベアETFでの投資においては、この大暴落
が起きるかもしれない想定で投資戦略を考えなければ、
いずれ必ず資産を吹き飛ばすことになります。
そうなるとロスカットの注文は必須になると思いますが、
ロスカットの注文をしていては、積立投資にならないでしょう。
(相場が下落するとロスカットされてしまうため)
となると、結局のところ積立投資というのは成立しえず、
適切なタイミングでエントリーし、ロスカット注文を入れ
ておいて、適切なタイミングで売却するというトレードで
しか利益をあげることは難しいと思います。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
米国VIベアETFは積立投資の対象として色々優れたポイ
ントを持っているのは事実なのですが、VIXショックの
ような大暴落を起こすようでは残念ながら積立投資には
向きません。
ですので、くれぐれも米国VIベアETFの積立投資で資産
を増やそうなどとは考えないでください。