日経225オプション取引は、「あらかじめ定められた期日(満期日)にあらかじめ定められた価格(権利行使価格)で日経平均を買う権利または売る権利を売買する取引」です。
そのため、「権利の売買」の仕組みをしっかり理解することがとても重要になってきます。
※ちなみに『オプション』とは、「選択・権利」という意味です。
権利=オプション売買のイメージとは?
『権利=オプションの売買』のイメージを掴んでもらう上で役立つのが、保険会社と保険加入者の間で行われている生命保険の契約です。これも実は『権利の売買』が行われています。
権利の買い手:保険加入者Aさん
権利の売り手:生命保険会社
権利の内容:65歳までにAさんが亡くなった場合、遺族に保険金3000万円を支払う。
難しく書いてあるように見えますが、シンプルに保険会社の生命保険にAさんが加入したと思ってください。
オプションの売買では買い手がいれば、必ず売り手がいます。つまりあなたがオプションを買いたいと思ったら、売りたい人が1人いないと売買が成立しないということです。このあたりは株でも同じ仕組みですね。
今回は「65歳までにAさんが亡くなった場合、保険会社が遺族に保険金3000万円を支払う」という権利を生命保険会社とAさんで売買します。
権利(オプション)を買ったAさんは、月単位か年単位かの違いはありますが、保険料(オプション購入費用)を支払う必要があります。一方、オプションを売った保険会社は、Aさんから保険料(オプション購入費用)を受け取ることができます。
権利を買ったAさんは、購入費を支払うことで、65歳までに万が一のことがあれば、遺族に保険会社から保険金3000万円を支払ってもらうことができます。一方、権利を売った保険会社は購入費を受け取る代わりに、Aさんに万が一のことがあった場合は、遺族に保険金3000万円を支払うことになります。
なぜこの権利の売買が成立するのかと言えば、権利を買うAさんからすると、少額の費用を支払って権利を買っておけば、万が一の時に3000万円の保険金を遺族が受け取れます。
一方の権利を売る保険会社は、万が一のときには大きな保険金を支払う必要がありますが、そもそも起きる確率は低いので、少額の費用がチリツモとなって儲かります。(保険会社が都内の一等地に立派なビルを建てられる理由がコレです。)
ですので、両者にメリットがあるため、権利の売買が成立するというわけです。
『権利を買う』というのは権利を保有するということなので、イメージが湧きやすいですが、『権利を売る』というのはイメージしづらいかもしれません。
そのため、『権利を売る』=保険会社の立場になると覚えるのがいいと思います。権利を売った相手方(Aさん)が権利を使おうとしたときに、必ず応じなければいけない義務を負うのが権利の売り手と考えるといいですね。
権利=オプション売買を日経225オプションで考えてみる
さて、話を戻して、日経225オプションの売買で考えてみましょう。
例えば、現在が8/20で、日経平均の現在値が28000円の時、「満期日時点(9/10)で日経平均を30,000円で買う」というコール・オプション(権利)があったとします。
日経225オプションでは、この権利を買いたい投資家と売りたい投資家で売買していきます。なので、投資家は生命保険会社の立場として参加もできるし、保険加入者の立場としても参加できるということです。
では、それぞれの立場でなぜ日経225オプションを買いたい、売りたいと思うのでしょうか。
コールの買い手は、現在値の28,000円から予想価格(権利行使価格)まで2000円離れていますので、そう簡単には日経平均が30,000円を超えないことはわかっています。
ただ、万が一、30,000円を超えるようなことがあれば、投資元本が10倍、20倍にも増える可能性があるので、一攫千金を狙って確率は低くてもオプション料を支払う価値があると考えているため、コールを買いたいと思うわけです。
一方、コールの売り手も、現在値の28,000円から予想価格(権利行使価格)まで2000円の距離がありますので、そう簡単には日経平均が30,000円を超えないことはわかっています。
ここで買い手の思惑と違うのは、大穴狙いで、コールの買いに回るのではなく、確率的に今回もどうせ満期日までに権利行使価格までは到達しないので、少額でのオプション料だけでもコールの買い手からもらっておこうと思い、オプションの売りに回るというわけです。
ですので、予想価格(権利行使価格)30,000円という値を見ているにもかかわらず、それぞれの投資家の思惑が異なるため、買い手と売り手の間でオプションの売買が成立するということですね。
せっかくなので、プット・オプションの場合も見てみましょう。
例えば、現在が8/20で、日経平均の現在値が28000円の時、「満期日時点(9/10)で日経平均を25,000円で売る」というプット・オプション(権利)があったとします。プット・オプションでも、この権利を買いたい投資家と売りたい投資家で売買していきます。
では、それぞれの立場でなぜ日経225オプションを買いたい、売りたいと思うのでしょうか。
まずプット・オプションを買う側の思惑としては、現在値の28,000円から権利行使価格まで3000円の距離がありますので、そう簡単には日経平均が25,000円を割り込むことはないと思っています。
ただ、万が一、25,000円を割り込むようなことがあれば、投資元本が10倍、20倍にも増える可能性があるので、一攫千金を狙って確率は低くてもオプション料を支払う価値があると考えているため、プット・オプションを買いたいと思うわけです。
一方、プットの売り手も、現在値の28,000円から権利行使価格まで3000円の距離がありますので、そう簡単には日経平均が25,000円を割り込むことはないとわかっています。
ここで買い手の思惑と違うのは、大穴狙いで、プット・オプションの買いに回るのではなく、確率的に今回もどうせ満期日までに権利行使価格までは下落してこないので、少額でのオプション料だけでもプット・オプションの買い手からもらっておこうと思い、オプションの売りに回るというわけです。
プット・オプションでも、権利行使価格25,000円という同じ値を見ているにもかかわらず、それぞれの投資家の思惑が異なるため、買い手と売り手の間でオプションの売買が成立するということですね。
厳密に言うと、少し違う部分もあるのですが、日経225オプションの権利を売買するイメージがつけばここではOKです。
権利の行使、権利の放棄のイメージとは?
続いて、権利の売買と並行して覚える必要があるのが、権利の行使と権利の放棄です。
「権利の行使」というのは、その名の通り、オプションの買い手が持っている権利を使うことを指します。ちなみに権利の行使・放棄ができるのは満期時点のみとなります。
例えば、さきほど説明した保険の例で言えば、Aさんが交通事故で亡くなると、Aさんが保有していた「権利が行使」され、保険会社から遺族に保険金3000万円が支払われることになります。
オプションの買い手であるAさんが権利行使をした場合、オプションを売っている保険会社は必ず権利行使に応じる必要があり、拒絶することはできません。これがオプションの絶対的なルールです。
一方で、Aさんが65歳まで事故にも遭わず、健康だった場合、権利を行使する場面がありませんので、「権利を放棄」することになります。
この場合、オプションの売り手である保険会社は、オプションの買い手であるAさんから権利行使されることはなくなりますので、今までに受け取っていた保険料がまるまる利益になると言えます。
基本的にオプションの買い手は権利行使をすると、今までに支払ってきたお金以上の恩恵を受けられますが、権利放棄になってしまうと、今まで支払ってきたお金はドブに捨てることになります。
オプションの売り手はオプションが権利放棄となると、買い手から受け取ったオプション料がまるまる儲けとなりますが、買い手がオプションの権利を行使すると、買い手から受け取っていたオプション料以上の支出が発生しますので、大きな損失を被ることになります。
これが権利行使と権利放棄のイメージです。
権利の行使、権利の放棄を日経225オプションで考えてみる
これを日経225オプションで改めて見ていきます。まず日経225オプションの場合、権利行使、権利放棄ができるのは、満期日のみです。これはとても重要なことなので絶対忘れないようにしてください。
その上で、例えば、現在が8/20で、日経平均の現在値が28000円の時、「満期日時点(9/10)で日経平均を30,000円で買う」というコール・オプション(権利)があったとします。
では、オプションの買い手が満期日に権利行使するときはどんなときでしょうか。それは日経平均株価が満期時点で、30,000円を超えていた時です。
仮に満期日の日経平均が31,000円だったとしましょう。
オプションの買い手は、日経平均を30,000円で買う権利を持っているわけですから、権利行使をして30,000円で日経平均を買って、現在値の31,000円で売れば1,000円分の利益が出ます。取引単位は1000倍なので、1000×1000で100万円の利益が出ることになるわけです。権利行使しない手はないですね。
つまり、オプションの買い手は、満期日に日経平均が権利行使価格より高くなっていれば、権利を行使することで、利益が出ますので、権利行使することになります。
一方、仮に満期日の日経平均が29,000円だったとしましょう。
オプションの買い手は日経平均を30,000円で買う権利を持っているわけですから、権利を行使して、30000円で日経平均を買って、現在値の29,000円で売ると、1000円分の損失が出ます。取引単位は1000倍なので、100万円の損失を被ることになるわけです。
つまり、オプションの買い手は権利を行使してしまうと、大きな損をすることになるので、権利行使価格まで到達しなければ、権利を放棄することになります。
まとめると、コールの買い手は、満期日に権利行使価格を日経平均株価が超えてきたのであれば、権利を行使し、超えなければ放棄する。ということです。これはコール・オプション、プット・オプションに関係なく共通しています。
教科書では学べない実践で使えるマメ知識
日経225オプションの仕組みを学ぶときは、オプションの買い手と売り手が必ず1セットで存在していると覚えておいてください。
そして、買い手の思惑と売り手の思惑はほぼ真逆です。コールの買い手が日経平均が満期までに30000円を超えると思い買うとすると、コールの売り手は、日経平均が満期までに30000円を超えないと思い、オプションを売ります。
当然ですが、その結果として、コールの買い手が権利行使をして利益を得たとしたら、コールの売り手はその分、損失が出ます。逆に、コールの買い手が権利を放棄して損失がであれば、コールの売り手はその分利益が出ます。
常に表裏一体の関係であることを意識するとオプションの理解が早まると思います。