投資信託の中には、1日の日経平均株価の騰落率の2倍や
3倍の値動きをするものがあります。
ブル型ファンド、ベア型ファンドなどと呼ばれることが
ありますが、ある指標の騰落率のマイナス1倍の推移を
するのがインバース型ETFです。
今日は、このインバース型ETFをどのように活用するの
かを見ていきたいと思います。
インバース型ETFとは?
まず、インバース型ETFとは何なのか説明します。
インバース型とは、ある指標(例えば日経平均株価など)
の日々の変動率に一定のマイナスの倍率を乗じて算出
されるインバース型指標に連動するETFです。
例えば、マイナス1倍のインバース型ETFであれば、日経
平均株価が1日で10%上昇したとすると、10%×(-1倍)で
-10%下落することになります。
下の図は日経平均株価に対してマイナス1倍のインバース
指数です。図をみたほうが簡単に理解できるかもしれま
せんね。
なぜこのようなインバース型ETFが存在しているか。
大きく2つの理由があります。
一つ目は、一般的な株や投資信託ではロング(買い)
しかできませんので、下落相場時には指をくわえて、
動向を見守るしかありません。
もちろん、信用取引口座を開設して、空売り(高く
売って、後から安く買い戻す)すれば、下落相場でも
利益を上げることができますが、信用取引口座を開設
するのも手間ですし、なじみのない空売りをするのも
一苦労です。
そこで、普段からよく使っている株や投資信託を購入
するのと同じ方法で、下落相場で利益を狙えるのが
インバース型ETFというわけです。
ですので、明らかに相場が下落しているようなときは、
インバース型ETFを購入することで利益を狙えます。
二つ目の理由は、長期保有を前提として、投資信託や
株を保有していると、下落相場でも軽々しくは保有資産
を売却することができません。
というよりは一時的な下落である可能性もあるので、
ここで売却することがデメリットにもなりえます。
そんなときに、例えば、日経平均株価に連動するイン
デックスファンドを保有している場合、相場が下落し
始めたら、インバース型ETFを購入することで、リスク
ヘッジをすることが可能となります。
つまりインデックスファンドを保有していることによる
マイナス分と日経平均株価に連動するインバース型ETFを
保有していることによるプラス分が相殺されるので、下落
の影響をゼロにすることができるというわけです。
インバース型ETFに投資するときの注意点
インバース型ETFがどのようなシーンで利用されるのかは
わかったと思いますが、インバース型ETFをトレードする
上で1つ気を付けなければいけないことがあります。
それは、日経平均株価に対して、マイナス1倍のインバース型
ETFの場合、100%日経平均株価と逆の動きをするわけではない
ということです。
◆相場下落時
1日目 | 2日目 | 3日目 | 4日目 | 5日目 | |
日経平均株価 | 10,000円 | 8,000円 | 6,400円 | 5,760円 | 7,488円 |
前日比 | - | ▲20% | ▲20% | ▲10% | +30% |
インバース指数 | - | +20% | +20% | +10% | ▲30% |
インバース型ETF | 10,000円 | 12,000円 | 14,400円 | 15,840円 | 11,088円 |
◆相場上昇時
1日目 | 2日目 | 3日目 | 4日目 | 5日目 | |
日経平均株価 | 10,000円 | 12,000円 | 14,400円 | 15,840円 | 11,088円 |
前日比 | - | +20% | +20% | +10% | ▲30% |
インバース指数 | - | ▲20% | ▲20% | ▲10% | +30% |
インバース型ETF | 10,000円 | 8,000円 | 6,400円 | 5,760円 | 7,488円 |
相場下落時を見ると、日経平均が5日間で10,000円から
7,488円にまで2512円下落するのに対して、インバース型
ETFは10,000円から11,088円と1,088円しか上昇しません。
つまり、日経平均株価と全く逆の動きをするわけではない
ということです。
日経平均株価に連動するインデックスファンドを100万円分
保有していて、大きく下落したときに、マイナス1倍のイン
バース型ETFを100万円保有したとしても、日経平均の下落分
をカバーできないということです。
一方で、相場が下落するであろうと思い、日経平均株価に連動
するインバース型ETFを100万円分保有したときに、予想に
反して相場が上昇すると、インバース型ETFは5日間の日経平均
の上昇分(1088円)以上のマイナスが出てしまいます。
このように、前日の日経平均株価の騰落率の●倍変動するといった
設計をすると、日経平均株価と全く逆の動きになるということは
ありません。
どうしてこうなるのか混乱してしまう人もいるかもしれませんが、
これは複利で運用されていることによる影響です。
インバース型ETFにはどのような商品がある?
日本の証券会社で取引できるインバース型ETFの本数は
かなり少ないのですが、現在取引できる銘柄を紹介して
いきます。
対称指標 | 名称 | |
TOPIXインバース(-1倍)指数 | TOPIXベア上場投信 | |
TOPIXダブルインバース(-2倍)指数 | TOPIXベア2倍上場投信 | |
日経平均インバース・インデックス | 日経平均ベア上場投信 | |
日経平均ダブルインバース・インデックス | 日経平均ベア2倍上場投信 |
では、VIX関連の商品でインバース型の商品はどのようなものが
あるかも紹介していきます。
一番身近なもので言えば、米国VIベアETFが挙げられます。
米国VIベアETFはGMOクリック証券のバラエティCFDで
取引できます。
続いて、米国VIベアETFが実際に連動しているSVXYが
あります。米国VIベアETFを購入せずとも、SVXYを直
接購入することもできます。
あとは、少しなじみがないかもしれませんが、ZIVやEXIV
という商品も実はVIX関連のインバース型商品です。
対象となっている指数が違いますので、分散投資をする
というのも有効な戦略になりえます。
対称指標 | 名称 | |
S&P500 VIX短期先物指数 | SVXY | |
S&P500 VIX短期先物指数 | 米国VIベアETF | |
S&P500 VIX中期先物指数 | ZIV | |
VSTOXX短期先物指数 | EXIV |
まとめ
いかがでしたでしょうか?
あまり中身をよく理解しないまま、対象指数(日経平均やTOPIX)と
逆の動きをするETFだと思っていると、対象指数が大きく上昇して
しまうと、対象指数の変動幅以上の損失が出てしまいます。
また、リスクヘッジ目的でインバース型ETFを保有すると、
対象指数の下落幅に対して、思ったよりもヘッジができな
かったりしてしまいます。
私個人の意見としては、インバース型ETFを利用して、下落相場
に備えるくらいであれば、オプションのプットを購入したほうが、
下落相場で収益機会を得ることができると思います。