昨年から急に人気が爆発しはじめたレバレッジ型ファンド
ですが、海外には日本ではまだ設定されていないかなり
マニアックなレバレッジ型ファンドがいくつも存在して
います。
その一つが、今回ご紹介する金鉱株の指数に3倍のレバ
レッジをかけて投資ができるDirexion デイリー金鉱株ブル
3倍ETF『NUGT』です。
「有事のゴールド買い」と言われるようになって久しい
ですが、今回のコロナショックでは一時的に金価額が上昇
したのち、ゴールドも売られてコロナショック以前の水準
を下回るという異常事態となっています。
ゴールドの市況はそのような状況ですが、果たしてゴールド
を採掘するような企業の株式(金鉱株)は果たしてどうなので
しょうか?
今日はNUGTについて徹底分析していきます。
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『NUGT』Direxion デイリー金鉱株ブル3倍ETFの基本情報
投資対象は?
NUGTの投資対象は先進国および新興国を含むグローバル
市場でビジネス展開している企業の中で、主に金や銀の
採鉱にかかわっている企業の株式です。
日次の値動きがNYSE Arca金鉱株インデックスの3倍となる
投資成果を目指します。
国別の構成銘柄を見てみると、カナダが約50%、アメリカが
約20%、オーストラリアが約15%とあまりお目にかからない
構成比となっています。
純資産総額は?
NUGTの純資産総額は約400億円程度で、そこそこ大きな
規模のファンドであることがわかります。
実質コストは?
続いて、NUGTの実質コストを見てみましょう。
運用報酬や、運営費用、ファンドにかかる手数料などを
すべて含めると、1.17%かかります。
また証券会社によりますが、日本円を米ドルに換えるため
の為替手数料やETFを購入するときにかかる売買手数料が
別途かかります。
それを考えると、日本のインデックスファンドもかなり
安くなってきたことがよくわかりますね。
購入時手数料 | 証券会社による |
実質コスト | 1.17%(税込) |
『NUGT』Direxion デイリー金鉱株ブル3倍ETFの評価分析
基準価額をどう見る?
続いてNUGTの直近10年間の基準価額の推移を見てみ
ましょう。
ブル型ETF(株価が上昇していれば、その3倍のペース
で上昇していくはず)であるにもかかわらず、この約10
年間で金鉱株がいかに下落したかがよくわかります。
2015年以降は並行線に見えてしまうので、もう少し期間
を短くしてみましょう。
これが直近3年間の基準価額の推移です。
レバレッジがかかっているので、当然といえば当然なの
ですが、方向感なく上下に大きく変動しています。
直近のコロナショックの影響は強烈で、約80%近く資産
が目減りしています。
コロナショックで金価格は上昇していたころからも、
金と金鉱株ETFはまったく別物だということがわかります。
利回りはどれくらい?
続いてNUGTの利回りを見てみましょう。
直近で大きく下げたこともあり、利回りは見るも無残な
結果となっています。
インバース型のETFであれば、当然の結果なのですが、
NUGTは値下がりに期待して投資をするようなETFでは
なく、値上がりに期待して投資をするブル型ETFです。
そこから考えると悲惨ですね。何より、直近の大暴落で
資産を削られた人はかなり多いでしょう。
年間利回り | |
1年 | ▲68.65% |
3年 | ▲44.64% |
5年 | ▲40.62% |
10年 | - |
※2020年3月時点
年別のパフォーマンスは?
続いてNUGTの年別のパフォーマンスを見てみましょう。
S&P500に3倍のレバレッジをかけて運用するSPXLなど
はマイナスの年もありましたが、総じてプラスのリター
ンの年がほとんどでした。
しかし、NUGTはマイナスリターンの年のほうが多く、
金鉱株が総崩れしていると言っても過言ではない状況
です。
さすがにこれではNUGTに投資をする気にはなれません。
年間利回り | |
2019年 | 100.67% |
2018年 | ▲44.52% |
2017年 | 3.73% |
2016年 | 57.33% |
2015年 | ▲78.24% |
2014年 | ▲59.28% |
2013年 | ▲95.00% |
2012年 | ▲43.94% |
2011年 | ▲47.85% |
※2020年3月時点
投信運用は長期投資が前提なので、つい出口戦略を考えずに投資をしてしまいがちです。
しかし、「投資は出口戦略にあり」と言われるほど、重要なテーマです。ぜひこれを機会に投資の出口戦略を考えてみてください。
>>まさか考えたことがない?運用が成功するか失敗するかすべてのカギを握る投信運用の出口戦略NUGTとSPXのパフォーマンス比較
NUGTへの投資を検討している人であれば、少なくとも
米国を代表するS&P500へのインデックス投資よりも
パフォーマンスが優れていなければ、投資するに値し
ません。
そこでNUGTとSPXの過去5年間のパフォーマンスを比較
してみました。
結果は、NUGTが95%のマイナス。SPXは14.49%のプラス
となっています。
直近3年間のパフォーマンスを見ても、NUGTは83%の
マイナスに対して、SPXは2.79%のプラスです。
この結果を見る限り、レバレッジをかけてNUGTで運用
するよりもS&P500に単純に連動するETFで投資としては
十分であることがわかります。
レバレッジをかけて運用するのであれば、少なくとも
NUGTをあえて選ぶ理由は全く見つかりません。
どこで買えるの?
NUGTは人気の海外ETFですので、海外ETFを扱っている
証券会社であれば、購入できると思って間違いありません。
ネット証券で言えば、SBI証券、楽天証券、マネックス証券
など有名どころの証券会社であればどこでも購入することが
できます。
『NUGT』Direxion デイリー金鉱株ブル3倍ETFの評価まとめ
いかがでしたでしょうか?
基本的にブル型のファンドは上昇することを前提に
レバレッジをかけて投資をしていくのですが、金鉱株
はパフォーマンスが悪すぎて、悲惨な状況となっています。
改めて、ゴールドと金鉱株は全く別物であるという認識を
持たなければいけません。
またパフォーマンスを見ると、S&P500よりもはるかに
劣っていますので、現状あえてNUGTへの投資を検討する
必要もないと思います。
大きく下落しているからこそ、チャンスだという意見も
聞こえてきそうですが、過去のパフォーマンスを見る限り、
NUGTが今後、大きく反転上昇していくイメージもありません。
下落したからこそ、狙っていくというのであれば、NUGT
ではなく、TECLやSPXLのほうがはるかに高いリターンを
期待できると思います。
最後に、投信運用には多くのメリットもありますが、当然ながら、弱点もあります。
今も私は投信運用を続けてはいますが、私がなぜ投資信託の運用を主軸におかなくなったのか。その理由をこちらで話をしています。
>>私が痛感する投資信託の限界。多くの投資家が見逃している投信運用の弱点