近頃、「アクティブ運用よりもインデックスファンドのようなパッシブ運用のほうが効率がいいし、優れている。」というようなことを言う人が増えていますが、資産運用業界にいる人間からすると、この議論は大きな誤解の下に語られています。
こうした議論は、アクティブ運用のファンドマネージャーで長期的にベンチマークをアウトパフォームした例が少ないというデータによるものが多いですが、
そもそもアクティブ運用というものが何なのか理解しないまま議論が進んでいるためこのようなことが起きると思っています。
アクティブ運用とパッシブ運用におけるベンチマークの違い
まず、パッシブ運用の場合は決められたベンチマークに追随するように投資信託の中身を入れ替えていくという、まさに指標としての意味合いを持っています。
日経225やTOPIX、NYダウ、S&P500がまさにこれです。
一方で、アクティブ運用におけるベンチマークというのは、そもそも運用会社に勤めるファンドマネージャーの人事評価を適切に評価するために作られたものです。
サラリーマンファンドマネージャーの人事評価は、下げ相場をうまく凌いだかなど、数値で冷静に評価をしてあげないと、運用成果がマイナスだから単純にダメ、罰点というようなつけ方では、上げ相場時のファンドマネージャーと下げ相場時のファンドマネージャーでの運不運の差が大きすぎることになってしまい、率先してファンドマネージャーをやりたいとう人間がいなくなってしまうからなのです。
そして、アクティブ運用におけるベンチマークというのは、そもそも適切に設定するのが難しく、何となくで決まってしまっていることも多いということを知っておかなければなりません。
アクティブ運用におけるベンチマーク設定のむずかしさ
ここで一つ具体例をあげてみましょう。
例えば日本株100%で構成されている投資信託があったとして、「相場状況に応じて最大30%まで外国株式を投資対象として組み入れます」と謳っていたとします。
この場合、適切なベンチマークはどうなるでしょうか?
日本株100%の状態であれば、TOPIXでよいかもしれませんが、機動的に外国株式が組み込まれてしまったら、当然TOPIXをベンチマークにするのはふさわしくありません。
当然、適切な外国株式のベンチマークと合成したベンチマークにする必要があるわけですが、そう簡単にころころベンチマークを変えるわけにもいきませんので、とりあえずTOPIXにしておくかということになってしまいます。
このようにアクティブ運用の場合は、運用手法上、適切なベンチマークを設定することが難しい場合も多く、適切に設定されているとは言えないケースも多いのが実情なのです。
これは、身長を測定しようとしているのに、握力計を使おうとしているようなものです。
アクティブ運用におけるベンチマークは後付け
通常のアクティブ型と呼ばれる投資信託の場合、運用のテーマやスキームが決まってから、後付けで「TOPIXをベンチマークにして大丈夫ですよね?」などど、商品開発側から運用部門へ確認を入れて、運用部門がしぶしぶ承諾するというのが通常の流れです。
正直な話、上記のように適切なベンチマーク設定が行われていないことも多々あるのです。
もちろん、利益を出すために運用をするわけですが、もともと運用手法に合った適切なベンチマークが設定されないことも多いので、ベンチマークに対して、アウトパフォームしたしないという議論がそもそもおかしいと言えます。
以前に、裁量労働制の適用範囲を拡大の件で、裁量労働制に関するアンケートデータが不適切ということで、国会が紛糾しましたが、まさにあの不適切なデータがベンチマークのようなものですね。
適切に設定されていないベンチ―マークをもとに、いい悪いを議論しても意味がないということです。
ベンチマークに勝つだけであれば簡単
実は、運用方針、運用目的、運用スキーム、運用ポリシーなどに沿った最適なベンチマークさえ選んで運用を始めれば、ベンチマークをアウトパフォームすること自体は難しくないです。
仮にTOPIXをベンチマークとして選定していた場合をみてみましょう。
あり得ない想定ではありますが、もし孫さんがアップルのCEOのティム・クックと大喧嘩をして、今後、iphoneを供給しないといったニュースが報道されたらどうでしょう。
間違いなくソフトバンクの株価は急落します。
インデックスファンドであれば、TOPIXに追随する必要があるため、ソフトバンク株を手放すわけにはいきません。
しかし、もしこの発表と同時に、組み入れ銘柄からソフトバンクを外すことができれば、そのマイナスの影響は一切ファンドの足を引っ張らないので、TOPIXの下落の何%かは回避することができます。
その後、事態を重く見た孫さんが、アップルに詫びを入れて、従来通りの取引になると発表されたら、その段階で買い戻せば、間違いなくTOPIXに連動したインデックス型の投資信託より良い成果を出せるわけです。
東芝やシャープといった銘柄も、もし早い段階で銘柄を外すことができていれば、TOPIXをベンチマークとしたインデックスファンドよりアウトパフォームするのは当然ですよね。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
パッシブ運用は単純にベンチマークとして設定されているインデックスファンドをもとにパフォーマンスを計測できますが、アクティブ運用の場合は簡単にはいかないのです。
そもそも、アクティブ運用というのは、ベンチマークは関係なく、とにかく大きな収益を狙う運用をするファンドです。
ベンチマークを超えた超えないは正直あまり意味がないのです。
実際、近年の論調のようにパッシブ運用のほうが優れていると言わていますが、私が分析した結果を見ると、一概に、そうも言えないことがわかると思います。
【衝撃の検証結果】インデックスファンドVSアクティブファンド。結局優れているのはどっち?
アクティブ運用の投資信託でも優れた投資信託が存在しますので、表面的な意見に流されないようにしてください。
投信運用は長期投資が前提なので、つい出口戦略を考えずに投資をしてしまいがちです。
しかし、「投資は出口戦略にあり」と言われるほど、重要なテーマです。ぜひこれを機会に投資の出口戦略を考えてみてください。
>>まさか考えたことがない?運用が成功するか失敗するかすべてのカギを握る投信運用の出口戦略最後に、投信運用には多くのメリットもありますが、当然ながら、弱点もあります。
今も私は投信運用を続けてはいますが、私がなぜ投資信託の運用を主軸におかなくなったのか。その理由をこちらで話をしています。
>>なぜ私が投信運用に限界を感じたのか。多くの投資家が見逃している投信運用の弱点