インターネットで投資信託関連の記事を見ていると、2~3日に1回の頻度で新規の投資信託が設定されていることに気が付くと思います。
なぜこんなに多くの投資信託が新規で登場するのでしょうか?
今日は、新規募集の投資信託について運用会社・販売会社・投資家の視点からメリット・デメリットを見ていきたいと思います。
運用会社が新規募集の投資信託を作る理由は?
言うまでも無く、運用会社が新規募集の投資信託を設定する理由は、変化の激しい投資家の需要や市況環境に応じた新商品をマーケットに投じることで自社の運用資産を増やし、収益を増やせるからです。
しかし、新規の投資信託を設定することは運用会社にとって相応にコストと手間が掛かるために、一番望ましい姿はむやみに新規の投資信託を設定することなく、限られたラインナップの投資信託を償還まで残高を伸ばしていくことなのです。
この姿を理想的に体現している会社の一つが、レオス・キャピタルワークスという会社です。
代表の藤野さんは有名人なので、あなたもご存じかもしれません。
同社は独立系の小規模かつ歴史が浅い運用会社であり、運用する公募投資信託はわずか3本ですが、同一のマザーファンドである「ひふみマザーファンド」に投資することで運用を極力効率化し、良好な運用パフォーマンスによる投資家の支持も相俟って運用残高は2018年2月末の純資産残高は7,000億円超。
運用会社80社中20位と驚異的な効率性を実現している運用会社です。(ただし、実質的に日本株運用のみであることに対する、ビジネスポートフォリオ上の懸念はありますが。)
他方、一般的な国内の運用会社はどうでしょうか。
公募の投資信託について言えば、販売会社と運用会社が商品コンセプトをすり合わせた上で設定するものですが、実際は投資家の口座を握っている販売会社主導で行われることが一般的です。
そして販売会社が新規の投資信託を設定する理由の一つは、一重に新規の投資信託であることを売りにセールスし、販売手数料を得るためです。
そのため、数年前に金融庁の指摘が入るまでは、多くの証券会社で運用会社に新規の投資信託をほぼ毎月1本のペース、しかも専属販売で設定させ、投資家は過去に販売した投資信託を解約させた代金で購入させ(いわゆる回転売買)、販売手数料を荒稼ぎしているケースが横行していました。
運用会社としては、いくら新規で投資信託を設定してもすぐに販売会社が顧客に働きかけることにより解約され残高が消失してしまうために、非常に不毛な時期が長かったのです。
しかし、金融庁の証券会社に対する指摘もあり、現在はそのようなことはほぼ無くなりました。
新規募集の投資信託を購入するメリットは?
新規募集する投資信託は、AIやロボ、フィンテックといった今流行りのテーマであることが多いです。
流行りのテーマはマーケットも大きく成長していく分野ですので、少なくとも数年間は利益を享受できる可能性が高いというメリットがあります。
2017年もAIやロボ、フィンテックといったテーマ型の投資信託はかなり高パフォーマンスでした。
ただし、マーケットが伸び悩むようなテーマの投資信託は利益を得ることは難しいのでしっかり判別する必要はあります。
新規募集の投資信託を購入するデメリットは?
新規の公募投資信託設定が企画される際、販売会社や運用会社もできる限りはお客様の運用パフォーマンスを向上させたいと考えています。
ただ、自分たちで1から考えるというのは、とても時間がかかりますので、一般的には、すでに海外で運用されていて、パフォーマンスも好調な投資信託を日本で販売できるような形にアレンジするというのが一般的です。
一見すると問題ないように見えますが、ここに大きな問題点があります。
それは、すでに海外である程度人気が出ていて、それなりにパフォーマンスが良好ということは、すでに海外の投資家の多くがその投資信託を保有していて、含み益の状態にあるということです。
もちろん、日本で設定されてからも、順調に伸びていくファンドもありますが、すでに株価がピークに近くなってしまっていることも多々あります。
そのため「日本人投資家だけが逃げ遅れる」と言われたりしますね。
また、もう1つのデメリットとしては、すでに海外で運用されていて運用実績のあるファンドはいいのですが、運用実績がほぼないファンドもあります。
過去の運用実績をすべて信じるべきではありませんが、少なくともどのような運用ができるのか実績もないうちから無理に投資をする理由というのは何もありません。
これらを考慮すると、投資信託を新規設定時に購入するメリットは皆無です。
設定され運用が開始してから、マーケット環境とパフォーマンスを検討してから購入しても何ら遅くありません。
まとめ
新規設定される投資信託というのは、テーマも魅力的なので何かワクワクしてしまいますし、パンフレットや販売資料もかなり作りこまれていることが多いです。
その結果、つい買いたい気持ちが湧いてくるのもわかるのですが、やはりここは冷静になることをおすすめします。
6000本以上のファンドがすでに運用されていて、その中には10年以上優れた運用を続けているファンドもあるわけです。
あえて、何もまだわからない未知の投資信託に投資をする理由というのは、ないと思います。
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