完全成功報酬型のロボットアドバイザーをリリースして
一躍有名となったのが、フィンテック・ベンチャーの
SUSTENキャピタル・マネジメントです。
これにより、投資家と運用会社は「資産を増やす」という
ただ1つの目的を共有し、同じ方向を向いて資産運用に
取り組むことできます。
ただ、「完全成功報酬型」という今まであまり馴染みのない
手数料体系は、そもそもお得なのかどうなのかわからない
という人も多いと思いますので、
インデックスファンドとの手数料とも比較しながら、SUSTENを
徹底分析していきます。
SUSTEN(サステン)の基本情報
SUSTENはフィンテック・ベンチャーのSUSTENキャピタル・
マネジメントが提供するロボアドバイザーです。
口座を開設し、入金してしまえば、銘柄選定や売買、
リバランス等を含めすべてSUSTENが自動で対応してくれます。
現在はPCとスマホで提供されており、アプリはまだありません。
最低投資金額は10万円なので、他のロボアドと変わらないですね。
簡単な質問に答えると9つのタイプから、あなたにおすすめの
ポートフォリオが提案されます。(ポートフォリオの種類は
36種類あります。)
ちなみに私は左上の「信頼の世界経済タイプ」でした。
※引用:SUSTEN HP
ポートフォリオの決定ロジックは、どのロボアドでもブラック
ボックスなので、ここで優劣の議論をしても仕方ありません。
正しく質問に答えて、あとはお任せするようにしましょう。
さて、SUSTENの評判はどうなのか、周りの声をまず聞いて
みましょう。
SUSTEN(サステン)の評判はどう?
Twitterでの投稿を見てみると、成功報酬型という手数料体系に
期待している投資家も多いです。
投資業界では、どうしても投資家側と販売者側が同じ方向を向けない
ことが多いわけですが、成果報酬型であれば、投資家も販売者側も
パフォーマンスを向上させるという1点において、同じ方向を向ける
ので、そこを評価している声が多いですね。
実際、私もこの点はとても評価ができると思っています。
ただし、利益を出せない=会社の利益がゼロということに
なりますので、リリース直後に下落相場が始まってしまうと
会社の存続がすぐに危ぶまれる可能性があります。
実際の運用パフォーマンスがどうなのかというと、
36種類のポートフォリオがあるので、一概にいい悪いは
言えませんが、苦戦していることはわかります。
投資対象は?
さて、ここからはSUSTENのサービスの詳細を
見ていきましょう。
SUSTENの投資対象は世界の株式、債券、通貨、
デリバティブとなっています。
実際には、バンガードやステート・ストリート、
ブラックロックのETFを購入して投資をしていきます。
あなたがSUSTENに資金を入金すると、あなたの資産は
3つのポートフォリオに分散投資をされます。
その3つというのが、
- グローバル資産分散ポートフォリオ(Red)
- グローバル債券ポートフォリオ(Blue)
- グローバル複合戦略ポートフォリオ(Green)
です。
ここから3つのポートフォリオについて解説していきます。
グローバル資産分散ポートフォリオとは?
グローバル資産分散ポートフォリオは日本を含む世界の
株式市場全体の値動きに長期的に連動する投資成果を
目指して運用されます。
現在、組み入れられているのは、以下の4つのETFです。
VTI、VEA、VWOはウェルスナビやTHEOでも組み入れ
られており、メジャーなETFです。
全世界の株式に投資ができるVTではなくVTI、VEA、VWOに
分散投資をしているのは、投資比率を柔軟にコントロール
できるようにするためです。(手数料も若干ですが、有利になります。)
ティッカー | ETF概要 | 組入比率 |
VTI | 米国株 | 42.8% |
VEA | 先進国株 | 28.3% |
VWO | 新興国株 | 20.7% |
JNK | ハイ・イールド社債 | 2.3% |
短期金融資産 | 5.9% |
※引用:2022年1月レポート
今は、4本のETFで構成されていますが、目論見書を見ると、
バンガードのVanguardシリーズ、ブラック・ロックのiShares
シリーズ、ステート・ストリートのSPDRシリーズから
14本が投資対象の候補となっていますので、今後、組み入れ
られる銘柄は変わっていきそうです。
グローバル債券ポートフォリオとは?
グローバル債券ポートフォリオは長期的に日本を含む
先進国の投資適格債券市場の値動きに連動する投資成果を
目指して運用されます。
現在、組み入れられているのは、BND及びBNDXの2銘柄です。
ティッカー | ETF概要 | 組入比率 |
BND | 米国投資適格債券 | 42.0% |
BNDX | 米国以外の投資適格債券 | 41.8% |
短期金融資産 | キャッシュ | 16.2 |
※引用:2022年1月レポート
目論見書を見ると、ブラックロックのiSharesシリーズと
バンガードのVanguardシリーズから6本のET Fが投資候補と
なっていますので、こちらも今後組み入れ比率は変わってきそうです。
グローバル複合戦略ポートフォリオとは?
SUSTENのCIO山口氏曰く、このグローバル複合戦略
ポートフォリオというのが、他社にはない独自性のある
ポートフォリオと言っています。
具体的な戦略まではわかりませんが、先物のロングも
ショートも活用し、できるだけ株式相場との連動性を
抑えた運用がされるポートフォリオとなっています。
組入比率 | |
外国債券 | 74.4% |
短期金融資産 | 25.6% |
※引用:2022年1月レポート
長期的に日本の短期金利を上回る投資成果を目指して
運用すると書かれていますので、インフレヘッジ用の
超安定ポートフォリオなのだと思われます。
参考までに、私の「信頼の世界経済タイプ」の3つの
ポートフォリオの比率は以下のようになっています。
質問の回答によって、このポートフォリオの比率が
変わる仕組みです。
組入比率 | |
グローバル資産分散ポートフォリオ | 86.66% |
グローバル債券ポートフォリオ | 6.66% |
グローバル複合戦略ポートフォリオ | 6.66% |
3つのポートフォリオが重なっているので、複雑に感じて
しまうかもしれませんが、私のポートフォリオの組入比率は
このようになっていました。
これだけ見ると、いわゆるバランスファンドのようにしか
見えないため、どこまでSUSTENの運用がすごいのかは
わかりかねます。
SUSTEN(サステン)の手数料体系とは?
では、SUS TENの手数料の一覧を見てみましょう。
SUSTENの手数料は以下のようになっており、通常の
ロボアドによくある年間管理費は発生しません。
銀行振込 | ※投資家負担 |
積立 | 無料 |
出金手数料 | 400円(税抜) |
為替手数料 | 無料 |
売買手数料 | 無料 |
リバランス | 無料 |
成功報酬 | 運用益に応じて |
その代わりに、毎月、運用益が出たら、その運用益から成功報酬を
支払うというHWM(ハイ・ウォーター・マーク)方式を採用しています。
HWM方式では、過去の最高評価額(総資産が最も多くなったとき)を
基準に、その評価額を上回った分を運用益と考え、成果報酬が発生します。
それまでの最高評価額が30万円だった場合、最高評価額が40万円まで
増えると、10万円が運用益となり、この運用益に対して、一定の
成功報酬を支払うということになります。
具体的にどういう仕組みなのかというと、下図を見てもらったほうが
わかりやすいでしょう。
厳密には少し違いますが、理解する上では役立ちます。
※引用:SUSTEN HP
あなたは4月末から運用を開始しました。
5月末に最高評価額を更新した場合、4月末の最高評価額との
差分を運用益とし、この運用益の一部を成功報酬として
SUSTENに支払います。
6月は運用がうまくいかずに最高評価額を更新しなかったので、
手数料の支払いはありません。
7月は6月末と比べると若干プラスの運用ができましたが、7月末
時点では5月末の最高評価額を超えていませんので、手数料の
支払いは発生しません。
8月は運用が大きくプラスとなり、8月末時点で5月時点の最高
評価額を大きく超えました。
ですので、5月末の最高評価額を超えた分に対して、一定の成功
報酬を支払うことになります。
少し複雑に感じるかもしれませんが、要は、あなたの資産が
最高額を更新したら、更新した分に対して一定額の成功報酬を
支払うということです。
HWM方式が投資家にとってメリットが大きいのは、運用会社は
本気で運用しなければ、報酬が一切受け取れないということです。
ウェルスナビやTHEOといった他のロボアドであれば、最悪、
運用がずっとマイナスだったとしても、年間の管理費1%を
受け取れます。
ですので、パフォーマンスが悪くても、「長期で保有することが
大事なんですよ」とでも言って、投資家に解約さえされないように
フォローをしていれば、最悪、管理費は毎年受け取れるわけです。
一方で、完全成功報酬型のSUSTENの場合、何が何でも成果を
出さなければ、一銭も報酬を受け取れないので、必死さが違います。
どちらの手数料体系の運用会社にお金を預けたほうが必死に
あなたの資金を増やしてくれそうかは言わずもがなですね。
さて、成功報酬型の手数料体系は、投資家にとってもフェアな
仕組みになっていることはわかっていただけたと思います。
ただ、フェアな仕組みだったとしても、手数料(報酬)が
高いのか安いのかは別問題です。
現在のSUSTENの手数料率は、最高評価額(資産が一番
増えた時の金額)に応じて、以下のようになっています。
この手数料率は先ほど説明したように、資産が増えた分に
対してかかってくるものなので、資産全体にかかってくる
信託報酬や管理費よりも数字が大きくなっています。
会員ランク | 最高評価額(資産額の最高値) | 手数料率 |
ステージ1 | 80万円未満 | 1/6 |
ステージ2 | 80~200万円未満 | 1/7 |
ステージ3 | 200~500万円未満 | 1/8 |
ステージ4 | 500万円以上 | 1/9 |
ただ、これだけ見ても、結局、成功報酬として支払う手数料が
高いのか安いのかわかりません。
そこで、今回は、もしeMAXIS バランス(8資産均等型)をSUSTENと
同じ成功報酬で運用したら、どの程度の成功報酬(手数料)が発生する
のか調べ、
毎年、信託報酬を支払う場合と比べてどちらが割安なのかを
検証していきます。
今回、eMAXIS バランス(8資産均等型)を選択した理由としては、
- 手数料の割安なインデックスファンドだから
- SUSTENも株式や債券を組み入れたバランス型のファンドだから
- eMAXIS バランス(8資産均等型)は運用期間が長いので、
検証期間を長く取れるから
という3つを選定しています。
eMAXIS バランス(8資産均等型)の過去のパフォーマンスを使ってSUSTENの手数料を徹底検証
さて、下の表が2012年以降のeMAXIS バランス(8資産均等型)の
データです。
期間内最高値というのは、ファンドの基準価額を示しており、
HWM方式でいう最高評価額だとお考え下さい。
運用益とは、前年の最高値を更新をした分の金額を表しています。
期間内最高値(円) | 運用益(円) | |
2021年 | 25,016 | 3,012 |
2020年 | 22,004 | 513 |
2019年 | 21,491 | 1,153 |
2018年 | 20,338 | 393 |
2017年 | 19,945 | 968 |
2016年 | 18,072 | 0 |
2015年 | 18,977 | 636 |
2014年 | 18,341 | 2,878 |
2013年 | 15,463 | 3,316 |
2012年 | 12,147 | 2,438 |
2012年1月1日 | 9,709 |
※SUSTENの場合は、毎月末に期間内最高値を判定するので、完全に正しい数値を算出できてはいません。あくまで参考値としてご活用ください。
上記の運用益に手数料率を掛け合わせたものが成功報酬額に
なります。
SUSTENの場合、最も資産額が多かったときの金額に応じて
会員ランク(手数料率)が変わりますので、ランクごとの
報酬額を算出しています。
また、近年非常に人気の高いeMAXIS バランス(8資産均等型)の
改良版であるeMAXIS Slim バランス(8資産均等型)の信託報酬率
0.154%をもとに、毎年支払う信託報酬額も算出しました。
S1 | S2 | S3 | S4 | 信託報酬0.154% | |
2021年 | 502 | 430 | 376 | 334 | 35.9 |
2020年 | 86 | 73 | 64 | 57 | 29.5 |
2019年 | 192 | 165 | 144 | 128 | 30.5 |
2018年 | 66 | 56 | 49 | 44 | 29.6 |
2017年 | 161 | 138 | 121 | 108 | 29.0 |
2016年 | 0 | 0 | 0 | 0 | 26.0 |
2015年 | 106 | 91 | 80 | 71 | 27.3 |
2014年 | 480 | 411 | 360 | 320 | 25.3 |
2013年 | 553 | 474 | 415 | 368 | 21.3 |
2012年 | 406 | 348 | 305 | 271 | 16.8 |
合計 | 2,552 | 2,186 | 1,912 | 1,670 | 271.1 |
※信託報酬額の算出は、1年のうちの最高値と最安値の平均値×信託報酬率で算出しています。あくまでも参考値としてご活用ください。
こうしてみると、どのステージだったとしても、近年の
超低コストのインデックスファンドのほうが手数料は
はるかに安いということがわかります。
では、ウェルスナビやTHEOのように管理費として年間1%の
報酬を受け取っている会社と比べると、手数料は安いでしょうか?
S3 | S4 | 信託報酬0.154% | 管理費1% | |
2021年 | 376 | 334 | 35.9 | 233 |
2020年 | 64 | 57 | 29.5 | 191 |
2019年 | 144 | 128 | 30.5 | 198 |
2018年 | 49 | 44 | 29.6 | 192 |
2017年 | 121 | 108 | 29.0 | 189 |
2016年 | 0 | 0 | 26.0 | 169 |
2015年 | 80 | 71 | 27.3 | 177 |
2014年 | 360 | 320 | 25.3 | 164 |
2013年 | 415 | 368 | 21.3 | 138 |
2012年 | 305 | 271 | 16.8 | 109 |
合計 | 1,912 | 1,670 | 271.1 | 1,760 |
ステージ4と管理費1%の手数料の場合でだいだいトントンと
いう結果となりました。
どちらにしても近年の超低コストのインデックスファンドと
比べると手数料では見劣りする結果となりました。
ただ、1つ注意点としては、2012年~2021年というのは
株式市場が総じて好調だったこともあり、成果報酬型の
手数料が高くなっています。(運用益が多いため、報酬が増える)
これが2006年~2015年など、リーマンショックを挟むと
SUSTENの手数料はかなり少なくて済むと思います。
とは言え、インデックスファンドが割安であることは
間違いないですね。
今後、預かり資産額が増えて、SUSTENの手数料率がもっと
下がってくると、さらに魅力が高まってくるといえるでしょう。
とはいえ、SUSTENの成功報酬型の手数料については、
多くの投資家が期待を寄せているのも事実です。
SUSTENに投資するメリットは?
さて、ここまでSUSTENについて分析してきました。
ここからは私が思うSUSTENに投資をするメリット
についてお話しします。
①少額から投資を始められる。
やはり今までにないロボアドの仕組みだからこそ、10万円
という金額から投資を試せるというのは大きなメリットです。
②成功報酬型なので、運用がうまくいっていなければ手数料を取られない。
さきほどの比較表を見てしまうと、成功報酬で取られる
金額が大きいので、SUSTENに投資をするメリットは
ないように感じてしまうかもしれません。
しかし、今後の株式市場はある程度、下落することは想定
されており、その場合は手数料がゼロで運用できると
いうのは悪くないです。
③利益を追求するという同じ目的をもって投資ができる
成功報酬型だからこそですが、SUSTENもファンドの運用益を
出さなければ、会社が破綻してしまいます。
そのために必死に成果を出そうと頑張ってくれますので
一蓮托生感が出てとても良いと思います。
では、デメリットはどのようなことが考えられるでしょうか。
SUSTENに投資するデメリットは?
①手数料は総じて高い。
成功報酬型だからこそではありますが、さきほど比較を
したように一般的な水準と比べると、間違いなく手数料は
高いです。
それでも運用をお任せできますし、運用がうまく行って
いないときは手数料が取られませんので、それはそれで
いいという人もいるかもしれません。
②ヘッジファンド運用だから安心というわけではない
SUSTENのポートフォリオは、絶対収益追求型といって、
相場が上昇しても下落しても利益が追求できるような
ヘッジファンド型の運用をしています。
一見すると、「すごい!」と思ってしまいがちですが、
実際には大したパフォーマンスを出せていないヘッジ
ファンドもたくさんあります。
現状で言うと、SUSTENも大した成果を出せていないので、
注意が必要です。
③運用がうまく行かず破綻リスクあり
せっかく長期運用目的でSUSTENを始めたとしても、
下落相場が始まってしまうと、SUSTENは収入がゼロの
状態が続きますので、手元資金が尽きてしまう可能性
があります。
そうなると、当然サービスは終了するしかなくなり、
長く続けたくても続けられない状態に陥るリスクが
あります。
SUSTEN(サステン)の評価まとめ
私の友人が古くから成功報酬型の資産運用サービスを提供しており、
「いつか運用会社の報酬体系も成功報酬型のHWM方式になればなあ」
とは思っていましたが、
運用会社側からすると、株式相場に大きく収益が影響されるので、
「信託報酬という安定収入を捨てて、成功報酬型に切り替えるという
判断を運用会社がするのは難しいだろうなあ」とも思っていました。
そんな中、この旧態依然とした資産運用業界の手数料モデルに
切り込んだSUSTENの挑戦は素晴らしいと思っています。
ただ、現状で言えば、管理費年1%をとっているロボアドサービスと
比べて、手数料が大きく割安であると言える水準ではなく、今後、
手数料率が下がってくることに期待したいところです。
とはいえ、今まで販売員に好き放題手数料をだまし取られてきた
投資家がほとんどですので、真の意味で投資家に伴奏してくれる
サービスというのは、多くの投資家が待ち望んでいます。
ぜひSUSTENにはこの成功報酬型モデルの先駆者として業界を
牽引してほしいと思います。