一般に分散投資の必要性を説明するとき、「卵を1つの籠に盛ってはいけない」とよく言われます。
卵を1つの籠にもってしまうと、もしその籠を落としてしまったら、全部の卵が一度に割れてしまうから危険だということですね。
あなたも1度は聞いたことがあるのではないでしょうか?
この説明自体に、間違いはなく、正しいことを伝えようとしているのですが、実はこれだけでは十分だと言えません。
むしろ、中途半端な理解は誤解しているに等しく、危険な場合があります。
今日は、その点についてお話しします。
別の籠に分けても、なぜ分散投資にならないのか
イメージがしやすいように例で説明しましょう。
あなたは分散投資を実践するため、複数の籠にわけて卵を入れました。
そして、その籠を同じ1つのテーブルに載せていたとしましょう。
籠をひとつ落とすだけであれば、他の籠の卵は守られますが、もし、そのテーブルに誰かが躓いて、テーブルごと倒してしまったら、複数の籠の卵もろとも床に落ちてしまうことになり、複数に分けた意味がなくなってしまいます。
そんなことは滅多に起こらないと思うかもしれませんが、株の世界では、このようにある国で起きた経済イベントが他の国にまで波及するということが頻繁に起きるようになっています。
もう少し具体的な例で説明しましょう。
久しく高成長が期待されていた中国経済も数年前から成長が減速しています。
それまではGDP成長率が10%を超える勢いでしたが、8%になり、6%になりという具合に減速していいました。
当然、中国株の値上がりには陰りが出ましたが、中国経済の成長鈍化は、思わぬ波及効果を豪州にもたらしました。
鉄鉱石や石炭の輸出で知られる豪州の大きな輸出先が中国だったというわけです。
中国の景気鈍化は当然、鉄鉱石の輸入やそれを製鉄するときに燃料として使う石炭の輸入を急速にスローダウンさせました。
その結果、豪州景気は悪化してしまったわけです。
豪州中央銀行は、利下げをして、景気刺激策を講じたわけですが、その結果、豪ドルが売られ、対円でも円高が進む結果となりました。
「風が吹いたら桶屋が儲かる」というような連鎖話ですが、まさにこのような経済の連鎖が頻繁に起こるのです。
もし、このとき、中国株と豪州の資源株、豪ドル建ての債券などに分散投資をしていたら、どうなっていたでしょうか?
一見すると、アセット・クラスは新興国株と新興国債券に分散されているから大丈夫かと思ってしまいそうですが、結果としては、中国経済というテーブルがひっくり返ったことにより、新興国株も新興国債券もダメージを受け、大きな損失を出すことになってしまいました。
こうした事例が頻発することもあり、最近では「下手の分散、休むに似たり」とか「分散投資のつもりの、ただの散漫投資」等と揶揄されたりするわけですね。
分散投資の本当の効用を得るには、それなりの計算が必要
分散投資を適切に行う、もしくは適切に行われているかの確認は、過去のヒストリカル・データとパソコンがあれば、誰でも簡単に計算できます。
逆に、それがないと本当に分散できているのかを確認することは、ほぼ不可能です。
もし、販売員から「分散投資の意味も込めて、こちらの投資信託にも投資をしましょう。」なんて言われたときは要注意です。
尤もらしく聞こえるかもしれませんが、まず間違いなく細かい分析は行っていません。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
分散投資も実は奥が深いことを少しだけでもわかっていただけたでしょうか。
闇雲に異なるアセット・クラスの投資信託を保有するだけでは、同じテーブルに載っている状態になっているかもしれません。
特に投資信託や株、債券といったペーパーアセットに分散しただけで、分散投資できていると勘違いしている人はかなり危険です。
本当の分散投資はまったく別物だと私は考えていますので、興味のある方はこちらの記事も読んでみてください。
投信運用は長期投資が前提なので、つい出口戦略を考えずに投資をしてしまいがちです。
しかし、「投資は出口戦略にあり」と言われるほど、重要なテーマです。ぜひこれを機会に投資の出口戦略を考えてみてください。
>>ここまで考えるのが本当の資産運用。多くの投資家が考えられていない投信運用の出口戦略とは最後に、投信運用には多くのメリットもありますが、当然ながら、弱点もあります。
今も私は投信運用を続けてはいますが、私がなぜ投資信託の運用を主軸におかなくなったのか。その理由をこちらで話をしています。
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