マメ知識

バランス型の投資信託を複数保有するメリット・デメリットは?

金融庁肝煎りの「つみたてNISA」制度が始まり、早数年。

つみたてNISAの投資対象は「長期の積立・分散投資に適した一定の投資信託」と定義されており、実際に選定された投資信託を見ると、ETFなどインデックス系に次いでバランス型投資信託が多く選定されています。

そのため、何も気にせずバランス型ファンドを複数保有している人が近年増えてきています。

しかし、金融庁からお墨付きを得ていると言う理由で、バランスファンドを複数本保有するのは何か良いことがあるのでしょうか?

今日は、そのあたりについて詳しく見ていきます。

そもそもバランス型の投資信託のメリットは?

運用の世界であまりにも有名な諺に、「一つのカゴに全ての卵を盛るな」というものがあります。

これは、投資対象資産や銘柄を複数以上のものに投資していれば、そのうちの一つの資産が値下がりするリスクが発生したとしても、他の資産でカバーできるという分散投資効果の基本的な考え方ですね。

複数の資産に分けて投資すること、ある一定度の多くの銘柄に分けて、投資することは、中長期的に安定的した運用を実現する必須条件であるとも言えます。

投資信託のメリットのひとつは少額資金でも分散投資を実現できるというものですが、そのメリットを更に追求したものがバランス型の投資信託です。

なお、これの対極に位置するのがAIファンドやインド株式ファンドなど、分散投資の基本的な考え方は残しつつも特定のセクターに傾倒した投資を行う「テーマ型」の投資信託です。

バランス型の投資信託とは、一般的に信託約款であらかじめ投資対象と投資対象の組み入れ上限を定めて、中長期的に安定した運用成果の実現を目指すものです

基本的にミドルリスク・ミドルリターンの商品設計であり、「固定資産配分型」であることから運用コストも相対的に低いため、投資信託の初心者には向いており、プロの機関投資家である銀行や年金基金もこの類の投資信託を自らの資産で保有しているケースが多いです。

バランス型の投資信託と混同されやすい分散投資型ファンドとして、アセット・アロケーション型の投資信託があります。

これは投資対象や投資対象の組入上限を定めることはせず、市況の変動等によりファンドマネージャーの判断で機動的に投資対象や投資割合を変更してリターンの最大化を目指すものです。

ただし、ファンドマネージャーの運用巧拙に依存するアクティブ運用の度合いが強いことから、運用報酬がバランス型の投資信託よりも高くなりがちなこと、そもそも機動的かつ戦略的なアセット・アロケーションはプロのファンドマネージャーでも非常に難しいため、コストに見合ったリターンが得られるかは疑問です。

少なくとも私は、パフォーマンス面で成功していると言えるようなアセット・アロケーション型の投資信託を殆どみたことがありません。

したがって、アセット・アロケーション型の投資信託よりも十分な分散投資がなされコストが安いメリットがあるバランス型の投資信託をお勧めしたいと思います。

バランス型の投資信託を複数保有することによるメリットは?

では、そんなバランス型の投資信託を複数保有することによるメリットはあるのでしょうか?

ひとつあげるとすれば、バランス型の投資信託と言っても、運用会社によって運用方針が異なるため、パフォーマンスには差がつきます。

ですので、複数保有することでファンドマネジャーを分散し、パフォーマンスを平準化できると言う点はあるでしょう。

ただし、株式の比率を5%から10%に引き上げたり、わずかにアセットアロケーションの変更をしてもパフォーマンスにはほとんど差がつきません。

バランス型の投資信託を複数保有することによるデメリットは?

では、バランス型の投資信託を複数保有することによるデメリットはあるのでしょうか?

まず、バランス型の投資信託の多くは、TOPIXや野村BPI総合など、どのファンドも似たようなベンチマークに連動するインデックスファンドを組み入れています。

ですので、見た目は違うように見えるのですが、中身を詳しくみると、ほとんど同じ内容になっていることが多いです。

そのため、複数のバランス型のファンドを保有しても、1本のバランス型ファンドを保有しても、投資している対象はほとんど変わらないということが多々あります。

わずかな差しか生まれないのであれば、わざわざバランスファンドを複数持つ必要はありません。

もし、もう少しリスクを取りたいのであれば、別の株式型の投資信託を複数保有するほうがよいでしょう。

もう1つは、バランス型の投資信託は1本で複数の投資信託に分散できる反面、自分がどのような投資信託を保有しているか把握するのに手間がかかります。

これがさらに複数のバランス型の投資信託を保有するとなれば、結局何にどれだけ投資しているのか判断するのは困難なります。

自分が保有している投資信託がどのような資産構成になっているかわらかない時点で、それ以上投資するのはおすすめできません。

以上のことから、私はバランス型の投資信託を複数保有するメリットは薄いと考えており、1本で十分だと思います。

おすすめのバランス型投資信託は?

そもそも論として、私はバランス型の投資信託に投資することに対して否定的です。

バランス型ファンドの本当のデメリット。なぜ私はおすすめしないのか

ただ、あえておすすめの投資信託を選ぶとすれば、それは、三菱UFJ国際投信が設定・運用するeMAXIS Slim バランス(8資産均等型)です。

このファンドのメリットは、投資対象のアセットクラスが8つと十分に分散されている上に、購入時手数料ゼロはもちろんのこと信託報酬が0.209%程度と、類似する投資信託と比較したコストの安さです。

つみたてNISA対象商品に選定されていることも納得ができます。投資信託初心者の方に、うってつけと言えるでしょう。

また少し手数料は高くなりますが、アクティブファンドの中にも優秀なバランスファンドがあります。

こちらのファンドも一度検討する価値はあると思います。

投資のソムリエの評価や評判は?今後の見通しは?

まとめ

今後もよほどのことが無い限り、バランス型の投資信託は個人向け投資信託の主流であり続けると思います。

しかし、バランス型の投資信託の多くはETFなどにより、個人でも限りなく複製可能なものが多いのです。

投資初心者の方はバランス型の投資信託を投資の入門とし、中級・上級の投資家へと段を進めて欲しいと思います。

投信運用は長期投資が前提なので、つい出口戦略を考えずに投資をしてしまいがちです。

しかし、「投資は出口戦略にあり」と言われるほど、重要なテーマです。ぜひこれを機会に投資の出口戦略を考えてみてください。

>>ここまで考えるのが本当の資産運用。多くの投資家が考えられていない投信運用の出口戦略とは

最後に、投信運用には多くのメリットもありますが、当然ながら、弱点もあります。

今も私は投信運用を続けてはいますが、私がなぜ投資信託の運用を主軸におかなくなったのか。その理由をこちらで話をしています。

>>なぜ私が投信運用に限界を感じたのか。多くの投資家が見逃している投信運用の弱点

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ネコみたいに気楽に生きたい投資マニア いのねこ

【理論より実践】で役立つ投資情報を配信中。投資歴20年超。元大手証券マン。投資経験は100案件超。 【保有資格】1級ファイナンシャルプランニング/プライマリープライベートバンカー/MBA/証券外務員一種/宅地建物取引士/AFP/相続診断士/競売不動産取扱主任者/

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