多くの投資信託の入門書や解説記事などに、投資信託の購入時のチェックポイントとして、トラックレコードが最重要ポイントとして書かれていることが多いです。
確かにトラックレコードはないよりはあったほうが良いのですが、トラックレコードはあくまで過去の通信簿です。
小学校や中学校で神童と呼ばれ、のちは博士か大臣かと言われてきた人でも社会に出てみるとただの人に成り下がることはよくあることです。
過去は必ずしも未来を保証するものではないのですが、どうやら多くの方は過去の通信簿を見て、将来について確信を持ってしまうことが多いように感じます。
そういった考えに警鐘を鳴らす意味も込めて、今日は何を見るべきなのかをお話ししていきます。
投資信託のトラックレコードだけの分析はお粗末
一般的に投資信託のパフォーマンス分析と言えば、トラックレコードから何らかの数値を算出して、それらに評価を与えるのが主流です。
証券アナリスト協会のテキストや投資理論の教科書にもそう書いてあるので、そう思ってしまいがちです。
一般の人であれば、「過去のトラックレコードを分析した結果、Aファンドが極めて魅力的なファンドであることがわかりました」と詳細に分析されたエクセルシートでも見せられれば、多くの人は納得してしまうかもしれません。
実際に話をするときは、わかりやすいので、こういった資料を使うのもわかりますが、ただの数値分析からでは、本当の姿は見えてきませんし、ましてや将来を予測するには、お粗末な分析としか言えないのです。
私はトラックレコードが不要というわけではありません。
しかし運用側の内情をよく知っているからこそ、トラックレコード以外にも見るべき点はたくさんあるといえるのです。
本当にみるべきはファンドマネージャーの癖
では、トラックレコードで本当に見るべきものは何なのか。
それはファンドマネージャーの癖です。
癖は、回転率に出る場合もありますし、逆張り・順張りといった投資手法に出ることもあります。
業種の偏りや大型株・中小型株といったサイズの偏りに現れることもあります。
じっくり引き付けて、引っ張るタイプかもしれないし、飛び乗り飛び降りるタイプかもしれません。
単純に基準価額の過去の推移から計算したシャープレシオやインフォメーションレシオなどと呼ばれる数値の分析をしただけでは、ファンドマネージャーの癖を見分けることはほぼ不可能です。
またファンドマネージャーが交代すれば、運用パフォーマンスに必ず影響が出ます。
例えば、過去10年間にファンドマネージャーが3人交代していた場合に、この10年の運用パフォーマンスをひとくくりにして、投資信託の評価をすることにどれほどの意味があるでしょうか。
少なくとも、現在のファンドマネージャーが運用を開始したタイミングからの運用実績を確認しなければ、その投資信託の本当の姿を理解することはできないでしょう。
そんな細かいことまで調べてられないという声が聞こえてきそうですが、あなたが苦労して稼いだお金を投資するわけです。
もしあなたが結婚相手を選ぶときに、相手の性格や志向をよく知らずに結婚しようと思いますか?
もちろん、一部の人はその場の勢いでということもあるかもしれませんが、多くの人は、相手のことをよく知ってから結婚するかを決めるはずです。
それと同じくらい投資先を選ぶことは慎重に選ぶべきです。
よく調べもせず投資をして、損をしてきた人を多くみてきたからこそのアドバイスだと受け取ってください。
なかなか、一個人投資家がファンドマネージャーの話を聞ける機会はないですが、投資信託の伝票や帳簿類などを運用会社に開示請求することは可能です。
一度、興味のある投資信託があれば、開示請求して資料を取り寄せてみても面白いかと思いますよ。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
私たちは将来の予測をするときに、過去の動きを分析することで、そこに法則があるように感じてしまいます。
しかし、多くの場合、そこには法則はなく、たまたま法則のように見えるものがあるだけなのです。
ファンドマネージャーや熟練の投資家は必ずと言っていいほど、このことを理解しています。
もちろん、今すぐこの思考ができるようになる必要はありませんが、プロと同じ思考ができるようになれば、その分結果もついてくるはずです。
投信運用は長期投資が前提なので、つい出口戦略を考えずに投資をしてしまいがちです。
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