誰でも一度手にした値上がり益は手放したくないものです。
一度よい水準かなと思うところまで値上がりしたのに、
利確し損ねたときは、かなり失望してしまいます。

そのため「一度値上がりしたら、そこから値下がりしない
投資信託は作れないものか」という宿題は常に商品開発現場で
要望されていました。

そんな中、昨年の7月に設定された投資信託でとても面白い仕組みの
投資信託が登場しました。

「SMBC・アムンディ プロテクト&スイッチファンド
愛称:あんしんスイッチ」です。

すでに2000億を突破し、非常に人気の商品となっています。
人気であることはいいのですが、本当にあんしんな仕組みに
なっているのでしょうか?

そのあたりを徹底分析していきます。

あんしんスイッチの基本情報

投資対象は?

投資対象は、世界の株式、債券、短期金融資産など、さまざまな
資産へ投資をし、資産配分を機動的に変更することにより、安定的な
収益を目指します。

直近の資産配分比率は株式20%、債券50%、短期金融資産30%となっており、
かなり低リスクな運用となっています。

組入銘柄の上位を見てみると、ETFを中心に19銘柄を保有しています。

1位のアムンディ S&P500 ETFと4位のアムンディ MSCI EMU ETF以外は
すべて債券となっています。

仕組みは?

続いてあんしんスイッチの仕組みについて細かく見てみましょう。

私の周りでも、仕組みをよく理解しないで購入してしまっている人が
ほとんどでとても危険だと思っています。

あんしんスイッチとはそもそも何なのか。下図を見てもらうとわかりやすい
ですが、これはプロテクトラインという仕組みで、どんなに基準価額が
下がったとしてもプロテクトラインの金額までは元本を保証しますよと
いうものです。

そして、基準価額が上がるごとにプロテクトラインも上昇するのですが、
いったん上昇したプロテクトラインはなんと下がりません。

このように基準価額が上がり続ける図があると、初心者の投資家は、
値下がりしない=損しないように見えるので、まぁよく売れる商品設計に
なっていると思います。

まず間違いなく、販売会社側の強い要望から作られた投資信託であると
うかがえますね。

実際は、基準価額が下がり続けて、プロテクトラインに達すると、
その時点でプロテクトラインの金額で払い戻しされます。

もし設定時の10000円で購入した人は、初めはプロテクトラインが9000円ですが、
プロテクトラインが1段あがり、10000円になれば、もう損することはないということです。

純資産総額は?

続いて、あんしんスイッチの純資産総額を見てみましょう。

純資産は金額が小さいと運用パフォーマンスに大きな影響を与えるため
注意が必要ですが、あんしんスイッチはすでに2000億円以上となっているので、
その心配はなさそうです。

1年たたずに2000億あつまるというのは、相当人気が集まっていますね。
ただ、予想通りと言いますか、パフォーマンスが優れないため、直近では、
伸び悩んでいます。

実質コストは?

続いてあんしんスイッチのコストを見てみましょう。

運用管理費用(信託報酬・保証料)が1.44%となっており、
ETFを投資対象としている割にはかなり高い設定になっています。

注目すべきは運用会社の親会社向けの保証料が年0.22%含まれている点です。

これは、すなわち投資スキームとして元本の保全を図るダイナミック・
アセット・アロケーションなどによって、プロテクトラインを保全する
のではなく、実は単純に運用会社であるアムンディの親会社にあたる
クレディ・アグリコル・エス・エーを保証銀行として、もしプロテクトラインが
割れた場合には、その保証を任せたスキームとなっています。

いわば、損害保険料のようなものです。

なので、イメージは損害保険付きの投資信託のようなもので、あなたは
損害保険料を支払う代わりに、投資信託が大きく下がった場合は、
プロテクトラインの金額まで保証しますよということですね。

購入時手数料 0
信託報酬 1.4404%(税込)
信託財産留保額 0
実質コスト 1.7687%(税込)

※第1期(決算日2018年7月11日)参照

あんしんスイッチの評価分析

基準価額の推移は?

直近の基準価額を下に載せました。

2018年1月末の市場の暴落以降、リスクの取れない運用が続いており、
上昇のきっかけを全くつかめていないといった状況です。

このような運用では、皆さんが期待しているプロテクトラインの
上昇は当分起きないでしょう。

利回りはどう?

あんしんスイッチの利回りを見てみましょう。
直近1年間の利回りは▲0.90%となっています。


※2018年9月時点

評判はどう?

あんしんスイッチの評判はネットでの書き込みなどで調べる方法も
ありますが、評判を知るうえで一番役に立つのが、月次の資金流出入額です。

資金が流出しているということは、それだけあんしんスイッチを解約している人が多い
ということなので、評判が悪くなっているということです。

あんしんスイッチは直近まで資金の流入が毎月続いていましたが、
ついに資金が流出するようになりました。今後もこのようなパフォーマンスが続くと
資金流出が続き、悪い評判がどんどん出てくるでしょう。

あんしんスイッチの今後の見通し

この投資信託で負けないためには、自分が購入した基準価額より、
プロテクトラインが上に設定されることが必要になります。

商品パンフレットを見ますと、まあキレイに右肩上がりに
プロテクトラインが上がっていくようなイメージを想起させるように
書かれていますが、プロテクトラインが1段上がるには
どの程度のハードルなのか検証してみましょう。

まず元本水準である10000円にプロテクトラインが上がるためには、
基準価額が10600円になる必要がありますので、年6%のリターンあれば
いいように見えます。

しかし、信託報酬分が年1.44%ほどありますので、実質年7.44%ほどは
プラスが出なければいけないということですね。

さらに上述しましたが、「世界の株式・債券・短期金融資産など、
さまざまな資産へ投資し、資産配分を機動的に変更することにより、
基準価額がプロテクトラインを上回るように運用しつつ、
安定的な収益の獲得を目指すので、リスクをとって
株式に100%投資するようなことはしないということですね。

現在の、運用報告書を見てみると、株式20%、債券50%、短期金融資産30%
となっています。債券は米国債程度の期待リターンだと考え、約2.5%と過程すると、

組入比率 期待リターン
株式 20% 30.95%
債券 50% 1.25%
短期金融資産 30% 0%
100% 7.44%

どうでしょう?

細かく検証してみると、プロテクトラインが一段上がるためには、
株式で30%以上のリターンを出さなくてはなりません。

そして、現在組入られている株式はインデックス型のETFなので、
良くて年10%程度のリターンでしょう。

こう考えると、いかにプロテクトラインが上がるのが、
難しいかわかっていただけたのではないでしょうか?

まとめ

いかがでしたでしょうか?
あんしんスイッチの仕組みは面白いとは思いますので、
今後も注目していきたいとは思いますが、私の予想では、
プロテクトラインが右肩上がりに上昇する前に
あんしんスイッチが発動してしまうと思います。

結局、さきほどの表にもある通り、元本の安全性を意識するあまり、
かなり慎重な運用しかできません。そうすると、株式の割合を
下げるしかなく、株式の比率が下がれば、その分プロテクトラインが
一段上に上がる可能性も低くなってしまいます。

あんしんスイッチに加え、販売手数料もゼロ、解約時の信託財産留保額も
ゼロということで、購入者側から見ると手が出てしまいそうな商品ですが、
資産を増やすという本来の目的から考えると、果たして良い商品なのかと
疑問に思ってしまいます。