誰でも一度手にした値上がり益は手放したくないもの
です。

一度よい水準かなと思うところまで値上がりしたのに、
利確し損ねたときは、かなり失望してしまいます。

そのため「一度値上がりしたら、そこから値下がりしない
投資信託は作れないものか」という宿題は常に商品開発
現場で要望されていました。

そんな中、とても面白い仕組みの投資信託が登場し、
一世を風靡したのが、SMBC・アムンディ プロテクト
&スイッチファンド『愛称:あんしんスイッチ』です。

一時期は2000億を突破し、非常に人気の商品となって
いましたが、今回のコロナショックでプロテクトライン
ぎりぎりまで下落してしまっています。

今日は、あんしんスイッチの人気がなぜ落ちてきている
のかも含め徹底分析していきます。


SMBC・アムンディ プロテクト&スイッチファンド『あんしんスイッチ』の基本情報

投資対象は?

投資対象は、世界の株式、債券、短期金融資産など、
さまざまな資産へ投資をし、資産配分を機動的に変更
することにより、安定的な収益を目指します。

資産配分比率は株式が約17%、債券が約50%、残りが
短期金融資産となっており、かなり低リスクな運用と
なっています。


※引用:マンスリーレポート

国別の資産構成比でみると、米国、欧州の順に比率が
高くなっています。直近では短期金融資産の比率が30%
以上と高めの設定になっており、かなりリスクを警戒
している様子がうかがえます。

ただし、この短期金融資産部分は手数料だけはかかりま
すので、このまま長い間この運用が続くと投資家として
はかなり厳しいですね。


※引用:マンスリーレポート

組入銘柄の上位を見てみると、ETFを中心に23銘柄を保有
しています。

ごらんのとおり上位はほとんど債券ETFとなっており、
かなりリスクが抑えられていることがわかります。


※引用:マンスリーレポート

仕組みは?

続いてあんしんスイッチの仕組みについて細かく見てみ
ましょう。

私の周りでも、仕組みをよく理解しないで購入してしま
っている人がほとんどでとても危険だと思っています。

あんしんスイッチとはそもそも何なのか。下図を見てもらう
とわかりやすいですが、これはプロテクトラインという仕組み
で、どんなに基準価額が下がったとしてもプロテクトラインの
金額までは元本を保証しますよというものです。

そして、基準価額が上がるごとにプロテクトラインも上昇する
のですが、いったん上昇したプロテクトラインはなんと下がり
ません。


※引用:交付目論見書

このように基準価額が上がり続ける図があると、初心者の
投資家は、値下がりしない=損しないように見えるので、
まぁよく売れる商品設計になっていると思います。

まず間違いなく、販売会社側の強い要望から作られた投資
信託であるとうかがえますね。

実際は、基準価額が下がり続けて、プロテクトラインに達
すると、その時点でプロテクトラインの金額で払い戻しされ
ます。

もし設定時の10000円で購入した人は、初めはプロテクト
ラインが9000円ですが、プロテクトラインが1段あがり、
10000円になれば、もう損することはないということです。

ただ、残念なことに直近のコロナショックの影響で、あと
少しで償還されてしまう水準です。

似たような仕組みのアムンディ・ダブルウォッチはコロナ
ショックであえなく償還となってしまったので、あんしん
スイッチもかなり危険な水準であることは間違いありま
せん。


※引用:交付目論見書

純資産総額は?

続いて、あんしんスイッチの純資産総額を見てみましょう。

純資産は金額が小さいと運用パフォーマンスに大きな影響
を与えるため注意が必要ですが、あんしんスイッチは2000
億円以上の規模となっていましたが、パフォーマンスが優れ
ないため、資金の流出が続いています。

それでも未だ1600億円以上はありますので、いかに人気が
高いかよくわかります。


※引用:マンスリーレポート

実質コストは?

続いてあんしんスイッチの実質コストを見てみましょう。

運用管理費用(信託報酬・保証料)が1.203%となっており、
ETFを投資対象としている割にはかなり高い設定になって
います。

注目すべきは運用会社の親会社向けの保証料が年0.22%
含まれている点です。

これは、すなわち投資スキームとして元本の保全を図る
ダイナミック・アセット・アロケーションなどによって、
プロテクトラインを保全するのではなく、

実は単純に運用会社であるアムンディの親会社にあたる
クレディ・アグリコル・エス・エーを保証銀行として、
もしプロテクトラインが割れた場合には、その保証を
任せたスキームとなっています。

いわば、損害保険料のようなものです。

なので、イメージは損害保険付きの投資信託のようなもので、
あなたは損害保険料を支払う代わりに、投資信託が大きく
下がった場合は、プロテクトラインの金額まで保証しますよ
ということですね。

どちらにしても実質コストは1.3%を超えてきており、運用益
のほとんどが運用会社の手数料となってしまっています。

購入時手数料 0
信託報酬 1.203%(税込)
信託財産留保額 0
実質コスト 1.38%(概算値)

※引用:最新運用報告書

SMBC・アムンディ プロテクト&スイッチファンド『あんしんスイッチ』の評価分析

基準価額の推移は?

あんしんスイッチの基準価額を見てみましょう。

2029年3月のコロナショックの影響で、今までないほど
基準価額が暴落しています。

コロナショックの影響の恐ろしさを物語っていますね。

なにより厳しいのはここから挽回したいところでは、
ありますが、リスクの高い運用をすると、下限の
プロテクトラインに引っかかってしまう可能性が
あります。

ある意味、運用会社の腕の見せ所と言えそうです。


※引用:モーニングスター

利回りはどう?

あんしんスイッチの利回りを見てみましょう。

直近1年間の利回りは▲7.72%です。リスクを取らない運用
をしていたにもかかわらず、この下落幅は並大抵のことで
はありません。

下限のプロテクトラインに引っかかるリスクはかなり後退
しましたが、いまだプロテクトラインが一段上がるためには
時間がかかりそうです。

ちなみにあなたは実質利回りの計算方法はすでに理解していますか?
もし、理解していないのであれば、必ず理解しておいてください。

これがわかっていないとマズイ。実質利回りの計算方法。

平均利回り %ランク
1年 ▲7.72% 88%
3年
5年
10年

※引用:2020年4月時点

標準偏差は?

あんしんスイッチの基準価額の変動が大きいかを調べる
には標準偏差を確認しましょう。

標準偏差は9.20とこのポートフォリオの割りには相当
高くなっています。コロナショック前までは4%程度
だったので、変動幅が2倍くらいに増えています。

標準偏差から将来リターンがある程度予測できるのは
ご存じでしょうか?

まだ計算方法を知らないと言う方はこの機会に覚えて
おいてくださいね。

本当にできてる?標準偏差から予測する将来リターンの計算方法

標準偏差 %ランク
1年 9.20 86%
3年
5年
10年

※引用:2020年4月時点

年別のパフォーマンスは?

あんしんスイッチの年別のパフォーマンスも見てみましょう。

2018年は1年間で約5%ほども下落しましたが、2019年には
下落分を取り戻すパフォーマンスとなっていました。

しかし、直近コロナショックの影響で、2020年はすでに
10%近く下落しています。

残念ながらここからはプロテクトラインにタッチしてし
まうかしないかギリギリの戦いがつづくと思います。

正直投資家からすると保有しているメリットがほとんど
ありません。。

年間利回り
2020年 ▲9.96%(1-3月)
2019年 6.56%
2018年 ▲4.98%
2017年

※引用:2020年4月時点

類似ファンドとのパフォーマンス比較

あんしんスイッチへの投資を検討する上で、類似ファンド
とのパフォーマンスを比較しておいて損はありません。

今回は、低コストのバランスファンドとして非常に人気
の高いeMAXIS Slim バランス(8資産均等型)と比較して
みます。

あんしんスイッチの値動きが小さかったため、eMAIXS
Slim バランスの値動きが異常に大きく見えますが、マイ
ナス幅はほぼ同程度の水準となっています。

ここからはリスクのとれるeMAXIS Slim バランスのほうが
大きく上昇していく可能性は高いと言えます。

プロテクトラインが決まってしまっている分、運用に制限が
かかってしまうので何より厳しいですね。


※引用:モーニングスター

最大下落率は?

あんしんスイッチに投資をする前に、最大でどの程度下落
する可能性があるのかを知っておくことは非常に重要です。

どの程度下落する可能性があるかを把握しておけば、大きく
下落した相場でも落ち着いて保有を続けられるからです。

特にプロテクトラインと距離が近づいてくると不安に感じる
人もいると思いますので、確認するようにしてください。

あんしんスイッチの最大下落率は3カ月で▲9.96%です。
10%強下げるとプロテクトラインに引っかかりますので、
ギリギリのところで耐えています。

期間 下落率
1カ月 ▲8.72%
3カ月 ▲9.96%
6カ月 ▲9.15%
12カ月 ▲7.72%

※引用:2020年4月時点

評判はどう?

あんしんスイッチの評判はネットでの書き込みなどで調べる
方法もありますが、評判を知るうえで一番役に立つのが、
月次の資金流出入額です。

資金が流出しているということは、それだけあんしんスイ
ッチを解約している人が多いということなので、評判が
悪くなっているということです。

あんしんスイッチは直近まで資金の流入が毎月続いていま
したが、ついに資金が流出するようになりました。

2019年にはパフォーマンスもかなり回復してはきたものの、
資金流出が続いており、評判は下がる一方となっています。


※引用:モーニングスター

SMBC・アムンディ プロテクト&スイッチファンド『あんしんスイッチ』の今後の見通し

この投資信託で負けないためには、自分が購入した基準
価額より、プロテクトラインが上に設定されることが必要
になります。

商品パンフレットを見ますと、まあキレイに右肩上がりに
プロテクトラインが上がっていくようなイメージを想起
させるように書かれていますが、プロテクトラインが1段
上がるにはどの程度のハードルなのか検証してみましょう。

まず元本水準である10000円にプロテクトラインが上がる
ためには、基準価額が10600円になる必要がありますので、
年6%のリターンあればいいように見えます。

しかし、信託報酬分が年1.44%ほどありますので、実質
年7.44%ほどはプラスが出なければいけないということ
ですね。

さらに上述しましたが、「世界の株式・債券・短期金融
資産など、さまざまな資産へ投資し、資産配分を機動的に
変更することにより、基準価額がプロテクトラインを上回
るように運用しつつ、安定的な収益の獲得を目指すので、

リスクをとって株式に100%投資するようなことはしない
ということです。

現在のポートフォリオをベースに考えると、株式約20%、
債券約50%、短期金融資産約30%となっています。

債券は米国債程度の期待リターンだと考え、約1%と過程
すると、株式ファンドで年間30%の利益を出さなければ、
プロテクトラインが一段上がる7.44%以上の利益を生み
出すことができない計算となります。

組入比率 想定リターン内訳
株式 約20% 6.94%
債券 約50% 0.5%
短期金融資産 約30% 0%
100% 7.44%

どうでしょう?

こう考えると、いかにプロテクトラインが上がるのが、
難しいかわかっていただけたのではないでしょうか?

まとめ

いかがでしたでしょうか?

タイミングが悪かったと言えば、それまでなのですが、
コロナショックの影響はあまりにも甚大な被害をもたら
しました。

正直、この状況からプロテクトラインが1段上がるまで
には相当おおきな壁があります。

何より、あと1%程度下落すると、プロテクトラインに
のってしまうので、リスクを取った運用をしたくても
できません。

2020年4月に信託報酬を下げたのもコストの影響で
プロテクトラインにひっかからないようにするため
の戦略の1つでしかありません。

ここから大きく巻き戻すには相当難易度の高い運用
が求められますので、正直安くないコストを払い続ける
よりもファンドを乗り換えるほうが賢明だと思います。