一時期は一兆円近くの規模があった大和投信のハイグレード・オセアニア・ボンド・オープン(毎月分配型)『愛称:杏の実』。当時、流行りのオーストラリア建て公社債を中心に投資し、安定的な高い利回りの確保を目指したファンドです。

近年の毎月分配型ファンドへの逆風と、パフォーマンスがそもそも悪いことにより資金がどんどん流出していますが、今はどのような状態なのでしょうか?

今日は『杏の実』について徹底分析していきたいと思います。

「杏の実って投資対象としてどうなの?」

「杏の実って持ってて大丈夫なの?」

「杏の実より良いファンドってある?」

といったことでお悩みの方は、この記事を最後まで読めば、悩みは解消すると思います。


ハイグレード・オセアニア・ボンド・オープン 『杏の実』の基本情報

投資対象は?

ハイグレード・オセアニア・ボンド・オープン『杏の実』の投資対象はオーストラリア・ドル建て及び、ニュージーランド・ドル建ての公社債に投資します。

債券ファンドでは、組入られている債券の格付を必ずチェックする必要があります。格付というのは、償還時までの債券の元本、利息の支払いの健全性をランク付けしたものです。

一般的に、BBB(Baa)以上の格付は投資適格債券と呼ばれており、リスクは低いとみなされています。杏の実では、取得時において、格付がAA以上の公社債に絞っているので、デフォルトのリスクは低いと言えます。

現在、豪ドル建て債券とニュージーランドドル建て債券の比率は、9:1程度になっています。


※引用:マンスリーレポート

組入上位銘柄を見てみると、州債が一番高く、次いで、政府機関債、国際機関債、国債と続きます。ポートフォリオの最終利回りは4.3%ありますので、何も売買せずに受け取れる利益としては、なかなかではないでしょうか。


※引用:マンスリーレポート

つみたてNISAとiDeCoの対応状況は?

つみたてNISAやiDeCoで積立投資を検討している人も多いと思いますが、残念ながらどちらも対応していません。

つみたてNISA iDeCo
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※2022年10月時点

純資産総額は?

続いて、ハイグレード・オセアニア・ボンド・オープン『杏の実』の純資産総額はどうなっているか見てみましょう。

純資産総額というのは、あなたを含めた投資家から集めた資金の総額だと思ってください。ファンドの純資産総額が小さいと、適切なタイミングで銘柄を入れ替えることができなかったり、コストが割高になることがあります。

また、純資産総額が大きく減少していると、ファンドの組み替えがうまくできず、予期せぬマイナスを生む可能性がありますので、事前に確認すべきポイントの1つです。

まさか知らない?絶対知っておきたい純資産総額のマメ知識

ハイグレード・オセアニア・ボンド・オープン『杏の実』の純資産総額は、現在1348億円となっており、毎年純資産総額が減っているとはいえ、未だ高い人気を誇っています。


※引用:マンスリーレポート

実質コストは?

私たちが支払うコストには、目論見書に記載の信託報酬以外に、株式売買委託手数料や、保管費用、印刷費用などが含まれています。

そのため、実際に支払うコストは、目論見書記載の額より高くなるのが通例で、実際にかかる実質コストをもとに投資判断をしなければなりません。

信託報酬を信用するな。知らないうちに差し引かれている実質コストの調べ方

『杏の実』の実質コストは1.40%となっており、パフォーマンスの割にかなり割高となっています。債券ファンドはただでさえ利回りが低いので、こんなに取られては投資家の手元に利益が残りません。

投資信託の手数料は安ければ安いほどいいという勘違い

購入時手数料 2.2%※上限
信託報酬 1.375%(税込)
信託財産留保額 0
実質コスト 1.40%(概算値)

※引用:最新運用報告書

「ファンドの運用で成果を出すために一番大事なことは何ですか?」と聞かれてあなたは何と答えますか?

もし『ファンド選び』だと思ったとしたら、あなたはドツボに
はまっていますので、こちらの記事を読んでみてください。

>>無料ファンド相談から見えた。多くの人が気づいていない投信運用で成果を阻む9つの誤り

ハイグレード・オセアニア・ボンド・オープン『杏の実』の評価分析

基準価額をどう見る?

ハイグレード・オセアニア・ボンド・オープン『杏の実』の基準価額は、コロナショックで一時は大きく下落したあと、ゆるやかに上昇しています。

分配金を受け取らずに運用した場合の基準価額(青)を見ても、緩やかですが、上昇はしていますので、分配金もファンドの収益から支払われていますし、投資元本も増えるという理想の状態になっています。


※引用:モーニングスター

利回りはどれくらい?

ハイグレード・オセアニア・ボンド・オープン『杏の実』の利回りを見てみましょう。

直近1年間の利回りは+4.45%となっています。豪ドル円がまた円安の方向に推移し始めたのが大きな要因ですね。

3年、5年、10年平均利回りもプラスとなっており、中長期で見ると、豪ドル円が円安に推移し始めたため、パフォーマンスが全体的に回復してきています。

ちなみにあなたは実質利回りの計算方法はすでに理解していますか?もし、理解していないのであれば、必ず理解しておいてください。

これがわかっていないとマズイ。実質利回りの計算方法。

平均利回り
1年 +4.45%
3年 +4.92%
5年 +0.91%
10年 +2.74%

※2022年10月時点

同カテゴリー内での利回りランキングは?

ハイグレード・オセアニア・ボンド・オープン『杏の実』は国際債券のオセアニアカテゴリーに属しています。

投資をするのであれば、同じカテゴリーでも優秀なパフォーマンスのファンドに投資をすべきなので、同カテゴリー内でもパフォーマンスのランキングは事前に調べておいて損はありません。

ハイグレード・オセアニア・ボンド・オープン『杏の実』は、長期で見ると、平均的な水準ですが、直近3年は上位20~30%程度にランクインしており、優秀な成果を残しています。

上位●%
1年 20%
3年 23%
5年 52%
10年 58%

※2022年10月時点

年別の運用利回りは?

ハイグレード・オセアニア・ボンド・オープン『杏の実』の年別の運用パフォーマンスも下に載せておきます。

総じて、プラスの年のほうが多くはなっていますが、予測がしづらい為替の影響を大きく受けることを考えると積極的に投資をしようとは思いません。

年間利回り
2022年 +2.46%(1-9月)
2021年 +2.35%
2020年 +5.99%
2019年 +2.83%
2018年 ▲8.68%
2017年 +6.88%
2016年 ▲3.11%
2015年 ▲8.33%
2014年 +13.05%

※2022年10月時点

投信運用は長期投資が前提なので、つい出口戦略を考えずに投資をしてしまいがちです。

しかし、「投資は出口戦略にあり」と言われるほど、重要なテーマです。ぜひこれを機会に投資の出口戦略を考えてみてください。

>>ここまで考えるのが本当の資産運用。多くの投資家が考えられていない投信運用の出口戦略とは

類似ファンドとの利回り比較

ハイグレード・オセアニア・ボンド・オープン『杏の実』への投資を検討しているのであれば、他の毎月分配型のファンドと比較をしておいて損はありません。

あまり類似したファンドがないのですが、今回は、世界の公社債に分散投資ができるグローバル・ソブリン・オープン(毎月決算型)とパフォーマンスを比較してみました。


※引用:モーニングスター

コロナショック時はグローバル・ソブリン・オープンが圧勝していましたが、2021年以降は杏の実が逆転しました。ただ、基準価額の変動を見ればわかるとおり、かなり値動きが大きいので、安定運用したい人はグロソブのほうがまだよいでしょう。

ちなみに、もう少し長期のパフォーマンスで2つのファンドを比較してみましょう。

杏の実 グロソブ
1年 +4.45% +0.97%
3年 +4.92% +2.06%
5年 +0.91% +1.17%
10年 +2.74% +3.95%

※2022年10月時点

長期のパフォーマンスになるとグローバル・ソブリン・オープンのほうが勝っています。短期的には杏の実ですが、長期的に安定しているグロソブの方が魅力的ですね。

最大下落率は?

投資するのであれば、ファンドがどの程度下落する可能性があるのかは知っておきたいところです。

もちろん標準偏差から変動幅を予測することはできますが、やはり過去にどの程度下落したことがあるのかを調べるのがよいでしょう。

ハイグレード・オセアニア・ボンド・オープン『杏の実』は2008年8月~2009年1月の間に最大36.05%下落しています。

期間 下落率
1カ月 ▲18.51%
3カ月 ▲31.11%
6カ月 ▲36.05%
12カ月 ▲31.23%

※2022年10月時点

債券ファンドはリスクが低いと思われがちですが、タイミングが悪ければ、債券でもこれくらいの下落はあり得ると思っておいたほうがよいでしょう。

最大下落率を知ってしまうと、少し足が止まってしまうかもしれません。しかし、以下のことをしっかり理解しておけば、元本割れの可能性を限りなく低くすることが可能です。

元本割れを回避するためにできるたったひとつのこととは?

分配健全度はどれくらい?

分配金を毎月受け取っていると、受け取っていることに安心してしまい、自分の投資元本からの配当なのか、ファンドの収益からの配当なのか調べなくなります。

そこで、分配金がファンドの収益からちゃんと支払われているのかを調べるときに役立つのが分配健全度です。

分配健全度とは、1年間の分配金の合計額と基準価額の変動幅をもとに、あなたが受け取った分配金の約何%がファンドの収益によるものなのかを計算できる指標です。

基準価額の変動幅 1年間の分配合計額 分配健全度
▲9円 120円 93%

※2021/11/02~2022/11/01

ハイグレード・オセアニア・ボンド・オープン『杏の実』の直近1年間の分配健全度は93%となっています。

分配健全度は100%を切ると、一部ファンドの収益以外から分配金が支払われていることを意味しますが、0%を下回るということは、ファンドの収益からの支払いは一切ないということを意味します。

93%ということは、ほぼすべての配当金をファンドの運用益から出すことができているので、健全な水準だと言えます。

分配金利回りはどれくらい?

毎月分配型のファンドに投資をしている場合、どれくらいの分配金が受け取れるのかを知るために分配金利回りを参考にします。

ただし、投資信託の場合、分配金利回りだけをみていると、受け取っている分配金がファンドの収益から出ているものなのか、投資元本が削られているのか、判断できません。

そのため、ファンドの運用利回りと分配金利回りを比較して、ファンドの運用利回りのほうが高ければ、あなたが受け取っている分配金がファンドの運用の収益から支払われていると判断することができます。

運用利回り 分配金利回り
1年 +4.45% 2.3%
3年 +4.92%
5年 +0.91%
10年 +2.74%

※2022年10月時点

ハイグレード・オセアニア・ボンド・オープン『杏の実』の分配金利回りは2.3%です。

利回りを低いと感じる人も多いかもしれませんが、ファンドの運用利回りから言えば、かなり妥当な線です。本来はこれくらいの分配金利回りでないとダメなんですよね。

分配金余力はどれくらい?

毎月分配型ファンドに投資をしている場合、もう1つ気になるのが今後いつごろ、減配されそうかという点です。

そんなときに役立つのが分配金余力という考え方です。分配金余力というのは、今の分配金の水準をあと何か月続けられそうかを判断するための指標です。

明確にこの水準になったら減配されるという指標ではありませんが、12カ月を切ったファンドはたいてい近々、減配されることが多いです。

ハイグレード・オセアニア・ボンド・オープン『杏の実』の分配金余力は、あと18カ月程度となっており、危険な水準になっています。このままいくと、今年中にさらに減配されることもあるかもしれません。

分配金 繰越対象額 分配金余力
216期 10円 165円 17.5カ月
217期 10円 163円 17.3カ月
218期 10円 163円 17.3カ月
219期 10円 161円 17.1カ月
220期 10円 165円 17.5カ月
221期 10円 163円 17.3カ月
222期 10円 161円 17.1カ月
223期 10円 165円 17.5カ月
224期 10円 163円 17.3カ月
225期 10円 165円 17.5カ月
226期 10円 171円 18.1カ月
227期 10円 170円 18.0カ月

※引用:最新運用報告書

為替の推移は?

杏の実への投資をするのであれば、為替の推移は非常に重要なポイントです。

というよりもほとんど為替の如何でファンドのパフォーマンスが決まっているといっても過言ではありません。

杏の実は2020ごろまで円高傾向がずっと続いていたこともあり、パフォーマンスは悲惨な状態となっていましたが、2020年から円安が進み、ようやくパフォーマンスが戻ってきました。

ただ、どちらにしても為替の如何でファンドのパフォーマンスが大きく変わるようなファンドというのは私はあまりおすすめしません。(先が読めないギャンブルのようなものです)

評判はどう?

ハイグレード・オセアニア・ボンド・オープン『杏の実』の評判はネットでの書き込みなどで調べる方法もありますが、評判を知るうえで一番役に立つのが、月次の資金流出入額です。

資金が流出しているということは、それだけハイグレード・オセアニア・ボンド・オープン『杏の実』を解約している人が多いということなので、評判が悪くなっているということです。

毎月分配型でタコ足配当を続けており、かつ毎年減配をしていますので、当然の結果と言えば、当然なのですが、とにかく評判が落ちています。


※引用:モーニングスター

ハイグレード・オセアニア・ボンド・オープン『杏の実』の評価まとめと今後の見通し

オーストラリアの債券は利回りが高いからという理由で、杏の実に投資をし始めた人が多いかもしれません。

しかし、根本的に債券と債券ファンドは別物です。そのため、債券の利回りが高くても債券ファンドの利回りも高いということにはなりません。なので、現時点で債券ファンドに積極的に投資をしていくメリットを私は感じません。

また杏の実は分配金は健全な水準で分配されていますが、豪ドル円の為替の影響を大きく受けるため、そもそも運用利回りが安定しません。

豪ドル円が円安に進めば、運用利回りは大きくプラスになりますが、円高に進めば大きくマイナスになります。ただ、豪ドル円の将来予測をするのは、不可能に近く実質的には神頼みするしかない状況です。

安定した分配金を受け取りたいのであれば、ファンドの運用が安定していることが第一条件ですので、杏の実に投資をしている人は改めて考え直したほうがよいと思います。

最後に、投信運用には多くのメリットもありますが、当然ながら、弱点もあります。

今も私は投信運用を続けてはいますが、私がなぜ投資信託の運用を主軸におかなくなったのか。その理由をこちらで話をしています。

>>なぜ私が投信運用に限界を感じたのか。多くの投資家が見逃している投信運用の弱点