一時期は一兆円近くの規模があった大和投信のハイグレード・
オセアニア・ボンド・オープン(毎月分配型)『愛称:杏の実』。

 

当時、流行りのオーストラリア建て公社債を中心に投資し、
安定的な高い利回りの確保を目指したファンドです。

 

近年の毎月分配型ファンドへの逆風と、パフォーマンスがそもそも
悪いことにより資金がどんどん流出していますが、今はどのような
状態なのでしょうか?

 

今日は『杏の実』について徹底分析していきたいと思います。

 

 

ハイグレード・オセアニア・ボンド・オープン 『杏の実』の基本情報

投資対象は?

ハイグレード・オセアニア・ボンド・オープン『杏の実』の投資対象
はオーストラリア・ドル建て及び、ニュージーランド・ドル建ての
公社債に投資します。

 

オーストラリア債とニュージーランド債の比率は、オーストラリア債の
比率が高くなるように調整されています。

 

債券ファンドでは、組入られている債券の格付を必ずチェックする
必要があります。

 

格付というのは、償還時までの債券の元本、利息の支払いの健全性を
ランク付けしたものです。

 

一般的に、BBB(Baa)以上の格付は投資適格債券と呼ばれており、
リスクは低いとみなされています。

 

杏の実では、取得時において、格付がAA以上の公社債に絞っている
ので、デフォルトのリスクは低いと言えます。

 

現在、豪ドル建て債券とニュージーランドドル建て債券の比率は、
9:1程度になっています。


※引用:マンスリーレポート

 

組入上位銘柄を見てみると、州債が一番高く、次いで、政府機関債、
国際機関債、国債と続きます。

 

ポートフォリオの最終利回りは0.8%しかありませんので、何も売買
せずに受け取れる利益としては、かなり小さいです。

 


※引用:マンスリーレポート

 

純資産総額は?

続いて、ハイグレード・オセアニア・ボンド・オープン『杏の実』
の純資産総額はどうなっているか見てみましょう。

 

純資産総額というのは、あなたを含めた投資家から集めた資金の
総額だと思ってください。

 

ファンドの純資産総額が小さいと、適切なタイミングで銘柄を入れ
替えることができなかったり、コストが割高になることがあります。

 

また、純資産総額が大きく減少していると、ファンドの組み替えが
うまくできず、予期せぬマイナスを生む可能性がありますので、
事前に確認すべきポイントの1つです。

まさか知らない?絶対知っておきたい純資産総額のマメ知識

 

ハイグレード・オセアニア・ボンド・オープン『杏の実』の
純資産総額は、現在1800億円となっており、毎年純資産総額が
減っているとはいえ、未だ高い人気を誇っています。

 

いわゆるタコ足配当の毎月分配型ファンドとは違い、堅実に
分配金を支払っているので、その点は非常に評価できますね。


※引用:マンスリーレポート

 

実質コストは?

私たちが支払うコストには、目論見書に記載の信託報酬以外に、
株式売買委託手数料や、保管費用、印刷費用などが含まれています。

 

そのため、実際に支払うコストは、目論見書記載の額より高くなる
のが通例で、実際にかかる実質コストをもとに投資判断をしなければ
なりません。

信託報酬を信用するな。知らないうちに差し引かれている実質コストの調べ方

 

『杏の実』の実質コストは1.40%となっており、パフォーマンス
の割にかなり割高となっています。

 

少なくとも収益のうち半分くらいは運用会社に取られてしまって
いるので、投資家側としては割にあいません。

投資信託の手数料は安ければ安いほどいいという勘違い

購入時手数料 2.2%※上限
信託報酬 1.375%(税込)
信託財産留保額 0
実質コスト 1.40%(概算値)

※引用:最新運用報告書

 

実質コスト以外にも、多くの投資家が気づいていない
投信運用での成果を出すのに妨げとなる間違った考え方
をまとめました。参考にしてください。

無料ファンド相談から見えた。多くの人が気づいていない投信運用で成果を阻む9つの誤り

 

ハイグレード・オセアニア・ボンド・オープン『杏の実』の評価分析

基準価額の推移は?

ハイグレード・オセアニア・ボンド・オープン『杏の実』の
基準価額は、直近3年間で15%ほど下落しています。

 

分配金を受け取らずに運用した場合の基準価額(青)を見ると、
ほとんど変化していないことから、ファンドの運用自体が
うまくいっていなかったことがわかります。

 

ただ、それでも基準価額の下落幅はかなり抑えられており、
比較的健全な運用がなされています。

 


※引用:モーニングスター

 

利回りはどれくらい?

ハイグレード・オセアニア・ボンド・オープン『杏の実』の
利回りを見てみましょう。

 

直近1年間の利回りは0.48%とかろうじてプラスの状況です。

 

3年、5年平均利回りもマイナスとなっており、運用会社と
販売会社だけが信託報酬で毎年儲かっているという理不尽
な構造になっています。

 

コロナ前の状況と比較をしてみると、そこまで大きな変化は
ないことから、もともと運用がうまくいっていないファンド
であったと言えますね。

 

ちなみにあなたは実質利回りの計算方法はすでに理解していますか?
もし、理解していないのであれば、必ず理解しておいてください。

これがわかっていないとマズイ。実質利回りの計算方法。

平均利回り 2020年1月 2020年7月
1年 2.83% 0.48%
3年 0.12% ▲1.69%
5年 ▲2.27% ▲1.82%
10年 3.50% 3.86%

※2020年7月時点

 

同カテゴリー内における利回りランキング(上位●%)の変化

ハイグレード・オセアニア・ボンド・オープン『杏の実』は
国際債券のオセアニアカテゴリーに属しています。

 

投資をするのであれば、同じカテゴリーでも優秀なパフォーマンス
のファンドに投資をすべきなので、同カテゴリー内でもパフォー
マンスのランキングは事前に調べておいて損はありません。

 

ハイグレード・オセアニア・ボンド・オープン『杏の実』は、
どの期間においても、下位20~30%程度にランクインしており、
たいした結果を残せてはいません。

 

半年前と比較するとわずかに順位を上げていますが、ほとんど
誤差の範囲ですね。

2020年1月 2020年7月
1年 83% 63%
3年 85% 77%
5年 84% 91%
10年 88% 83%

※2020年7月時点

 

年別のパフォーマンスは?

ハイグレード・オセアニア・ボンド・オープン『杏の実』の年別の
運用パフォーマンスも下に載せておきます。

 

2014年からのトータルリターンはかろうじてプラスの状態で、
運用会社と販売会社だけが儲かる構造となっています。

 

この利回りでは、さすがに投資をしたいとは思えませんが、
未だに1000億円以上の純資産があることに驚きを隠せません。

年間利回り
2020年 0.27%(1-6月)
2019年 2.83%
2018年 ▲8.68%
2017年 6.88%
2016年 ▲3.11%
2015年 ▲8.33%
2014年 13.05%

※2020年7月時点

 

投信運用は長期投資が前提なので、つい出口戦略を
考えずに投資をしてしまいがちです。

しかし、「投資は出口戦略にあり」と言われるほど、
重要なテーマです。

ぜひこれを機会に投資の出口戦略を考えてみて
ください。

>>ここまで考えるのが本当の資産運用。多くの投資家が考えられていない投信運用の出口戦略とは

 

類似ファンドとのパフォーマンス比較

ハイグレード・オセアニア・ボンド・オープン『杏の実』への
投資を検討しているのであれば、他の毎月分配型のファンドと
比較をしておいて損はありません。

 

今回は、世界の公社債に分散投資ができるグローバル・ソブリン・
オープン(毎月決算型)
とパフォーマンスを比較してみました。

 

結果はグローバル・ソブリン・オープンの圧勝です。

 

オーストラリア、ニュージーランドの債券だけに投資を
するよりも世界の公社債に投資をしたほうがパフォー
マンスは良いということです。

 

分配金の支払いで言えば、杏の実のほうが望ましい形
ですが、パフォーマンスがマイナスではそもそも話に
なりませんね。

 


※引用:モーニングスター

 

ちなみに、もう少し長期のパフォーマンスで2つのファンドを
比較しています。

 

10年平均利回りで見ると、トントンのパフォーマンスですが、
5年平均利回りはグローバル・ソブリン・オープンのほうが
勝っています。

 

この2ファンドの比較では、安定的に運用できているグロソブに
軍配が上がりますね。

杏の実 グロソブ
1年 0.48% 3.61%
3年 ▲1.69% 1.51%
5年 ▲1.82% ▲0.02%
10年 3.86% 3.86%

※2020年7月時点

 

最大下落率は?

投資するのであれば、ファンドがどの程度下落する可能性が
あるのかは知っておきたいところです。

 

もちろん標準偏差から変動幅を予測することはできますが、
やはり過去にどの程度下落したことがあるのかを調べるの
がよいでしょう。

 

ハイグレード・オセアニア・ボンド・オープン『杏の実』は
2008年8月~2009年1月の間に最大36.05%下落しています。

 

債券ファンドはリスクが低いと思われがちですが、タイミングが
悪ければ、債券でもこれくらいの下落はあり得ると思っておいた
ほうがよいでしょう。

 

最大下落率を知ってしまうと、少し足が止まってしまうかもしれません。
しかし、以下のことをしっかり理解しておけば、元本割れの可能性を
限りなく低くすることが可能です。

元本割れを回避するためにできるたったひとつのこととは?

期間 下落率
1カ月 ▲18.51%
3カ月 ▲31.11%
6カ月 ▲36.05%
12カ月 ▲31.23%

※2020年7月時点

 

分配健全度はどれくらい?

分配金を毎月受け取っていると、受け取っていることに安心
してしまい、自分の投資元本からの配当なのか、ファンドの
収益からの配当なのか調べなくなります。

 

そこで、分配金がファンドの収益からちゃんと支払われている
のかを調べるときに役立つのが分配健全度です。

 

分配健全度とは、1年間の分配金の合計額と基準価額の変動幅を
もとに、あなたが受け取った分配金の約何%がファンドの収益
によるものなのかを計算できる指標です。

基準価額の変動幅 1年間の分配合計額 分配健全度
6円 120円 95%

※2019/7/29~2020/7/28

 

ハイグレード・オセアニア・ボンド・オープン『杏の実』の
直近1年間の分配健全度は95%となっています。

 

分配健全度は100%を切ると、一部ファンドの収益以外から
分配金が支払われていることを意味しますが、0%を下回る
ということは、ファンドの収益からの支払いは一切ない
ということを意味します。

 

ハイグレード・オセアニア・ボンド・オープン『杏の実』は
近年の毎月分配型ファンドの中ではかなり健全なファンドで、
健全度は95%で、ほぼファンドの収益で分配金を賄えて
います。

 

あとはパフォーマンスがもっと伸びてこれば、よりおすすめ
しやすくなりますね。

 

分配金利回りはどれくらい?

毎月分配型のファンドに投資をしている場合、どれくらいの
分配金が受け取れるのかを知るために分配金利回りを参考
にします。

 

ただし、投資信託の場合、分配金利回りだけをみていると、
受け取っている分配金がファンドの収益から出ている
ものなのか、投資元本が削られているのか、判断できません。

 

そのため、ファンドの運用利回りと分配金利回りを比較して、
ファンドの運用利回りのほうが高ければ、あなたが受け取って
いる分配金がファンドの運用の収益から支払われていると
判断することができます。

 

ハイグレード・オセアニア・ボンド・オープン『杏の実』の
分配金利回りは2.4%です。

 

利回りを低いと感じる人も多いかもしれませんが、ファンドの
運用利回りから言えば、かなり妥当な線です。

 

少なくともタコ足配当ファンドではないので、あなたの受け取
っている配当のほとんどはファンドの収益から支払われています。

運用利回り 分配金利回り
1年 0.48% 2.4%
3年 ▲1.69%
5年 ▲1.82%
10年 3.86%

※2020年7月時点

 

分配金余力はどれくらい?

毎月分配型ファンドに投資をしている場合、もう1つ気になる
のが今後いつごろ、減配されそうかという点です。

 

そんなときに役立つのが分配金余力という考え方です。

 

分配金余力というのは、今の分配金の水準をあと何か月
続けられそうかを判断するための指標です。

 

明確にこの水準になったら減配されるという指標では
ありませんが、12カ月を切ったファンドはたいてい近々、
減配されることが多いです。

 

ハイグレード・オセアニア・ボンド・オープン『杏の実』の
分配金余力は、あと14カ月程度となっており、かなり
危険な水準になっています。

 

このままいくと、今年中にさらに減配されることもあるかも
しれません。

分配金 繰越対象額 分配金余力
192期 10円 113円 12.3カ月
193期 10円 117円 12.7カ月
194期 10円 116円 12.6カ月
195期 10円 121円 13.1カ月
196期 10円 119円 12.9カ月
197期 10円 120円 13.0カ月
198期 10円 124円 13.4カ月
199期 10円 126円 13.6カ月
200期 10円 126円 13.6カ月
201期 10円 123円 13.3カ月
202期 10円 126円 13.6カ月
203期 10円 128円 13.8カ月

積立NISAとiDeCoの対応状況は?

積立NISAやiDeCoで積立投資を検討している人も多いと
思います。

 

そこで、積立NISAやiDeCoの対応状況をまとめました。

積立NISA iDeCo
× ×

※2020年7月時点

評判はどう?

ハイグレード・オセアニア・ボンド・オープン『杏の実』の評判は
ネットでの書き込みなどで調べる方法もありますが、評判を知るうえで
一番役に立つのが、月次の資金流出入額です。

 

資金が流出しているということは、それだけハイグレード・オセアニア
・ボンド・オープン『杏の実』を解約している人が多いということなので、
評判が悪くなっているということです。

 

毎月分配型でタコ足配当を続けており、かつ毎年減配をしていますので、
当然の結果と言えば、当然なのですが、とにかく評判が落ちています。


※引用:モーニングスター

 

ハイグレード・オセアニア・ボンド・オープン『杏の実』の評価まとめと今後の見通し

オーストラリアの債券は利回りが高いからという理由で、
杏の実に投資をし始めた人が多いかもしれません。

 

しかし、根本的に債券と債券ファンドは別物です。

 

そのため、債券の利回りが高くても債券ファンドの
利回りも高いということにはなりません。

 

さらにコロナショックの影響で債券に買いが集まり、
債券の利回りが低下しています。

 

現時点で債券ファンドに積極的に投資をしていく
メリットを私は感じません。

 

また杏の実は分配金は健全な水準で分配されて
いますが、根本的にファンドの運用利回りが
低すぎます。

 

これでは、運用会社と販売会社を儲けさせるため
だけに投資をするようなものなので、他のファンド
に乗り換えることを強くおすすめします。

 

 

最後に、投信運用には多くのメリットもありますが、
当然ながら、弱点もあります。

今も私は投信運用を続けてはいますが、私がなぜ
投資信託の運用を主軸におかなくなったのか。

その理由をこちらで話をしています。

>>なぜ私が投信運用に限界を感じたのか。多くの投資家が見逃している投信運用の弱点