リスクを取りたくない日本人から圧倒的な支持を集めている
バランス型ファンド。
その中でも着実に純資産総額を増やしているのがJPMベスト・
インカムです。
債券の比率が高く、リスクの低い運用がされているように
見えますが、実際のところはそういうわけではありません。
あなたが期待しているような運用になっていないかもしれません
ので、注意が必要です。
JPM ベスト・インカムは毎月決算型と年1回決算型がありますが、
今日は、人気の高い毎月決算型を中心に分析していきます。
年1回決算型を保有しているもしくは検討している人も参考に
なると思いますよ。
JPM ベスト・インカム(毎月決算型)の基本情報
投資対象は?
投資対象は、世界の債券、株式、リートで、高いインカム収益と
値上がり益が期待できるアセットクラスに分散投資をしていきます。
インカム収益というのは、「債券の利息」や「株式の配当金」など
一定期間ごとに受け取ることのできる収益のことで、安定した収益
が期待できるのが特徴です。
価格の下落分を安定したインカム収益で補うことで、プラスの
リターンを維持すると書かれていますが、残念ながら、そううまく
行くわけではないので、軽々しく信用してはいけません。
※引用:交付目論見書
通常のバランスファンドですと、債券部分はリスクの低い債券を
中心に組み込みますが、JPM ベスト・インカムの場合は債券の中
でもリスクの高いハイ・イールド債券や新興国債券を中心に組み
込まれています。
債券と名前はついているものの、株式のように値動きをすることが
多いので、注意が必要です。
現在の組入構成は下図のようになっており、株式27%、債券54%、
その他18%となっています。
一見、債券の割合が高くなっており、リスクを抑えた運用がされて
いるように見えますが、さきほど言った通りリスクの高い債券に
投資をしており、かなり値動きしますので、リスクが分散されている
とは言いづらい状況です。
※引用:マンスリーレポート
株式部分の構成比率を見てみると、北米と欧州で80%ほどを占め、
残りの20%が新興国とオセアニア地域となっています。
※引用:マンスリーレポート
続いて、組入られている債券部分の格付評価を見てみましょう。
格付というのは、投資した元本と利息がちゃんと支払われるか
どうかを評価したものです。
BB以下の評価の債券は投資不適格債券といって、一般的に機関投資家
はリスクが高いため手を出しません。
JPM ベスト・インカムでは、約70%がリスクの高い債券に投資されています。
※引用:マンスリーレポート
純資産総額は?
続いて、純資産総額はどうなっているか見てみましょう。
純資産総額というのは、あなたを含めた投資家から集めた資金の
総額だと思ってください。
ファンドの純資産総額が小さいと、適切なタイミングで銘柄を入れ
替えることができなかったり、純資産総額が大きく減少していると、
ファンドの組み替えがうまくできず、予期せぬマイナスを生む
可能性がありますので、事前に確認すべきポイントの1つです。
JPM ベスト・インカムは2017年の終わりごろまで安定的に
純資産を増やしていましたが、2018年以降は純資産の増加が
とまっています。
それでも、純資産総額は2200億円はありますので、規模
としては全く問題ありません。
※引用:マンスリーレポート
実質コストは?
私たちが支払うコストには、目論見書に記載の信託報酬
以外に、株式売買委託手数料や、保管費用、印刷費用など
が含まれています。
そのため、実際に支払うコストは、目論見書記載の額より
高くなるのが通例で、実際にかかる実質コストをもとに
投資判断をしなければなりません。
信託報酬を信用するな。知らないうちに差し引かれている実質コストの調べ方
JPM ベスト・インカムの実質コストは1.62%となっており、
かなりコストが高いです。
購入時手数料と併せて5%近くになりますので、本当に良い
ファンドでないとおすすめできません。
購入時手数料 | 3.3%(税込)※上限 |
信託報酬 | 1.62%(税込) |
信託財産留保額 | 0 |
実質コスト | 1.62%(概算値) |
※引用:最新運用報告書
実質コスト以外にも、多くの投資家が気づいていない
投信運用での成果を出すのに妨げとなる間違った考え方
をまとめました。参考にしてください。
無料ファンド相談から見えた。多くの人が気づいていない投信運用で成果を阻む9つの誤り
JPM ベスト・インカム(毎月決算型)の評価分析
基準価額をどう見る?
JPM ベスト・インカムの現在の基準価額は、ゆるやかに
下落を続けていましたが、コロナショックの影響で、17%
ほど下落してしまいました。
安定運用を目指している投資家にとって、この下落幅は
かなり大きかったのではないでしょうか。
分配金再投資基準価額が上昇しているにもかかわらず、
基準価額が下落しているのは、過剰な分配が原因ですね。
※引用:モーニングスター
利回りはどれくらい?
JPM ベスト・インカムの直近1年間の利回りは▲11.88%と
なっています。同カテゴリー内でも下位20%なので、今回
のコロナショックでは迅速にポートフォリオを組み替え
れなかったということですね。
また、3年平均、5年平均利回りもマイナスになっている
ことから、これでは高いコストを支払ってまで投資を
するメリットがあるとは思えません。
ちなみにあなたは実質利回りの計算方法はすでに理解
していますか?
もし、理解していないのであれば、必ず理解しておいて
ください。
平均利回り | %ランク | |
1年 | ▲11.88% | 86% |
3年 | ▲3.27% | 86% |
5年 | ▲1.50% | 71% |
10年 | – | – |
※2020年4月時点
10年間高いパフォーマンスを出し続けている優秀なファンド達も
参考にしてみてください。
10年平均利回りランキングで見る圧倒的に優れた投資信託まとめ
標準偏差は?
標準偏差は基準価額の変動幅の大きさを比較するときに
役立ちます。
JPM ベスト・インカムの標準偏差は通常8前後ですが、
コロナショックの影響で、15くらいまで上昇しています。
こういったコロナショックのときに、標準偏差が大きく
上昇するファンドというのは、ある意味、急落相場に
弱いということでもありますので、注意が必要です。
標準偏差から将来リターンがある程度予測できるのはご存じでしょうか?
まだ計算方法を知らないと言う方はこの機会に覚えておいてくださいね。
標準偏差 | %ランク | |
1年 | 15.06 | 85% |
3年 | 9.66 | 78% |
5年 | 8.57 | 67% |
10年 | – | – |
※2020年4時点
年別の運用パフォーマンスは?
JPM ベスト・インカムの年別の運用パフォーマンスを見て
みると、プラスを出しては、それを上回るマイナスを出し、
と、とても残念な運用になっています。
債券の比率が50%を超えているので、リスクは小さいと
思われがちですが、リスクの高いハイイールド債券で運用
しており、あなたが思っている以上に値動きが大きい可能性
があるので、注意してください。
年間利回り | |
2020年 | ▲15.69%(1-3月) |
2019年 | +11.70% |
2018年 | ▲7.77% |
2017年 | +6.50% |
2016年 | +4.94% |
2015年 | ▲1.40% |
※2020年4月時点
考えずに投資をしてしまいがちです。
しかし、「投資は出口戦略にあり」と言われるほど、
重要なテーマです。
ぜひこれを機会に投資の出口戦略を考えてみて
ください。
>>ここまで考えるのが本当の資産運用。多くの投資家が考えられていない投信運用の出口戦略とは
類似ファンドとのパフォーマンス比較
JPM ベスト・インカムは通常のバランス型ファンドよりも幅広い
アセットクラスに分散していますが、果たして、その効果はある
のでしょうか?
ここで、バランス型ファンドで非常に人気の高い、eMAXIS Slim
バランス(8資産均等型)と比較してみました。
結果は、JPMベスト・インカムの惨敗です。構成比率に
違いがあるので、一概には比較できませんが、これを
見る限りはJPMベスト・インカムを選択する理由は
ありません。
※引用:モーニングスター
最大下落率は?
投資を検討するうえで、標準偏差などから、価格変動の
範囲をある程度は予想できますが、やはり実際に下落した
度合いをみたほうがイメージがわきます。
JPM ベスト・インカムでは、2020年1月~2020年3月までの間に
最大15.69%下落しています。
運用期間がまだ短いからというのもありますが、リターンの割り
に下落幅は大きいですね。
最大下落率を知ってしまうと、少し足が止まってしまうかもしれません。
しかし、以下のことをしっかり理解しておけば、元本割れの可能性を
限りなく低くすることが可能です。
期間 | 下落率 |
1カ月 | ▲14.48% |
3カ月 | ▲15.69% |
6カ月 | ▲14.31% |
12カ月 | ▲11.88% |
※2020年4月時点
分配金の推移は?
つづいて分配金の推移を見ていきましょう。
分配金は2015年ごろからずっと毎月30円の分配金が出ています。
基準価額に対する分配金の割合を示す分配利回りは4%程度
なので、無理な分配をしているというわけではありません。
実際、分配金もファンドの収益から支払われています。
ただし、分配金余力が20カ月程度しかないことから、分配金の
減額が近々行われる可能性は十分にあります。
また、このブログでは何度も言っていますが、特別な事情がない限りは
毎月分配型のファンドに投資すべきではありません。
計算するとよくわかる!分配金を受け取ることによるデメリットとは?
分配金 | 当期収益以外 | 繰越対象額 | |
55期 | 30円 | – | 591円 |
56期 | 30円 | 3円 | 587円 |
57期 | 30円 | – | 589円 |
58期 | 30円 | – | 591円 |
59期 | 30円 | 4円 | 586円 |
60期 | 30円 | – | 588円 |
評判はどう?
JPM ベスト・インカムの評判はネットでの書き込みなどで
調べる方法もありますが、評判を知るうえで一番役に立つ
のが、月次の資金流出入額です。
資金が流入しているということは、それだけJPM ベスト・
インカムを購入している人が多いということなので、評判が
良いということです。
JPM ベスト・インカムは2018年までは、毎月、資金流入
していましたが、2019年以降は流出超過となっています。
やはりバランス型のインデックスファンドにパフォーマンスで
負けているようでは、積極的に投資をしようとは思えないと
いうことでしょう。
※引用:モーニングスター
JPM ベスト・インカム(毎月決算型)の今後の見通し
いかがでしたでしょうか?
一言でバランス型ファンドといっても、組入られている
ファンドやアセットクラスによって、パフォーマンスは
全く変わってきます。
JPM ベスト・インカムで言えば、リスクの高い債券の比率
が高いため、あなたが想定している安定した運用というのが
実現できない可能性があります。
ファンドを購入した後だとなかなか勉強する気が起きない
と思いますので、本当に自分の要望がかなうファンドなのか
購入する前にしっかり考えるくせをつけてくださいね。
ただ、根本的に私はバランスファンドはあまりおすすめしません。
バランス型ファンドの本当のデメリット。なぜ私はおすすめしないのか
当然ながら、弱点もあります。
今も私は投信運用を続けてはいますが、私がなぜ
投資信託の運用を主軸におかなくなったのか。
その理由をこちらで話をしています。
>>なぜ私が投信運用に限界を感じたのか。多くの投資家が見逃している投信運用の弱点