アセットマネジメントOneが運用する、新光 US-REIT オープン『ゼウス』。
ファンド名称の「新光」は、アセットマネジメントOneの前身の
一社である新光投信がこの投資信託を設定した名残です。
一時は国内公募投資信託の純資産ランキングで常に上位に位置して
いたため、「ゼウス」の名を聞いたことがある人は多いと思いますが、
最近は完全に凋落気味です。
なお、新光 US-REIT オープン『ゼウス』には毎月決算型と年1回決算型
がありますが、今回はより人気の高い毎月決算型について分析していきます。
「 新光 US-REIT オープン『ゼウス』って投資対象としてどうなの?」
「 新光 US-REIT オープン『ゼウス』って持ってて大丈夫なの?」
「 新光 US-REIT オープン『ゼウス』より良いファンドってある?」
といったことでお悩みの方は、この記事を最後まで読めば、
悩みは解消すると思います。
新光 US-REIT オープン『ゼウス投信』の基本情報
投資対象は?
新光 US-REIT オープン『ゼウス』は、米国に上場している不動産
投資信託証券(US-REIT)に投資し、安定した収益の確保を目指します。
REITというのは投資家から集めた資金を使って、オフィスビル・
商業施設、賃貸住宅などを保有し、賃貸料や不動産売買で収益を
上げています。
その収益の大部分を配当金という形で投資家に分配している
という仕組みですね。
※引用:交付目論見書
上位に組み込まれている銘柄は、40銘柄で構成されており、インフラ、
森林、貸倉庫、データセンター、住居と幅広く分散されています。
※引用:マンスリーレポート
運用の特徴は?
運用はアメリカの大手運用会社であるインベスコ社に委託しており、
アセットマネジメントOneの役割は実質的に運用業務以外の投資信託
の管理や販売会社向けのセールス業務などに留まっています。
したがって、運用パフォーマンスはインベスコ社の手腕次第という
ことになります。
インベスコは全世界で100兆円を超える資産を運用しており、
アメリカでの不動産運用では約2兆円超・業界第4位の運用残高を
誇る、世界有数の独立系資産運用会社です。
つみたてNISAとiDeCoの対応状況は?
新光 US-REIT オープン『ゼウス』のつみたてNISAや
iDeCoの対応状況を見ておきましょう。
残念ながらどちらも対応していません。
つみたてNISA | iDeCo |
× | × |
※2021年9時月点
純資産総額は?
続いて、純資産総額はどうなっているか見てみましょう。
純資産総額というのは、あなたを含めた投資家から集めた資金の
総額だと思ってください。
投資信託の純資産総額が小さいと、適切なタイミングで銘柄を入れ
替えることができなかったり、純資産総額が大きく減少していると、
投資信託の組み替えがうまくできず、予期せぬマイナスを生む可能性
がありますので、事前に確認すべきポイントの1つです。
テーマ型であること、毎月分配型であること、分配金がタコ足である
こと、信託報酬と購入時手数料が高いことなど、金融庁が批判対象と
した投資信託の条件をほぼ全て満たしていることから既存受益者の
解約が進んでいます。
それでも、新光 US-REIT オープン『ゼウス』の純資産総額は
5000億円弱と、ピーク時の半分以下にはなっていますが、
未だに人気が非常に高いです
※引用:マンスリーレポート
実質コストは?
私たちが支払うコストには、目論見書に記載の信託報酬以外に、
株式売買委託手数料や、保管費用、印刷費用などが含まれています。
そのため、実際に支払うコストは、目論見書記載の額より高くなる
のが通例で、実際にかかる実質コストをもとに投資判断をしなければ
なりません。
信託報酬を信用するな。知らないうちに差し引かれている実質コストの調べ方
新光 US-REIT オープン『ゼウス』の実質コストは1.76%と
なっており、REITカテゴリーの中では、割高となっています。
運用実績が優れないのにこのコストは高すぎますね。
購入時手数料 | 3.3%※上限 |
信託報酬 | 1.683%(税込) |
信託財産留保額 | 0.1% |
実質コスト | 1.76%(概算値) |
※引用:最新運用報告書
と聞かれてあなたは何と答えますか?
もし『ファンド選び』だと思ったとしたら、あなたはドツボに
はまっていますので、こちらの記事を読んでみてください。
>>無料ファンド相談から見えた。多くの人が気づいていない投信運用で成果を阻む9つの誤り
新光 US-REIT オープン『ゼウス投信』の評価分析
基準価格をどう見る?
新光 US-REITオープン『ゼウス』の基準価額は直近3年間で
10%ほど下落しています。
驚くほど基準価額が低いため、よほど運用パフォーマンスが
悪いのではないかと勘繰ってしまいますが、この基準価額の
低さには別の理由があります。
これはインカムゲインやキャピタルゲインなどの運用パフォーマンス
を超えた金額を分配しているということであり、ファンドの資産を
切り崩して分配を行っているからです。
いくら運用パフォーマンスをあげても、それを超える分配金を払い
出すために投資信託の資産を切り崩せば純資産額も減少するので、
基準価額は低下します。
※引用:モーイングスター
利回りはどう?
新光 US-REIT オープン『ゼウス』の利回りを見ていきましょう。
直近1年間の利回りは33.45%となっています。
また、どの期間においても7%程度の利回りは確保できています。
ただし、この利回りだけを見て、投資判断をしてはいけません。
他の類似ファンドとパフォーマンスを比較してから投資を
するようにしてください。
ちなみにあなたは実質利回りの計算方法はすでに理解していますか?
もし、理解していないのであれば、必ず理解しておいてください。
平均利回り | |
1年 | +33.45% |
3年 | +9.18% |
5年 | +7.26% |
10年 | +12.03% |
※2021年9時月点
同カテゴリー内での利回りランキングは?
新光 US-REIT オープン『ゼウス』は、国際RIETの
特定地域カテゴリーに属しています。
投資をするのであれば、同じカテゴリーでも優秀なパフォーマンス
のファンドに投資をすべきなので、同カテゴリー内でもパフォー
マンスのランキングは事前に調べておいて損はありません。
新光 US-REIT オープン『ゼウス』は、直近1年間は平均的な
水準ですが、3年、5年、10年平均利回りでは平均以上の順位には
なっています。
ただ、この順位だと、もっと優れたファンドがある可能性が高い
ですので、しっかりと比較をしてから投資を検討するように
してください。
上位●% | |
1年 | 51% |
3年 | 23% |
5年 | 39% |
10年 | 35% |
※2021年9時月点
年別の運用利回りは?
つづいて、新光 US-REIT オープン『ゼウス』の年別のパフォーマンス
を見てみましょう。
2016、2018、2020年はマイナスとなっており、直近の数年間はかなり
苦戦していることがよくわかります。
リートに投資をする人というのは分配金目当ての投資家が多いので、
理想でいえば、毎年安定してプラスの運用ができるに越したことは
ありません。
ただ、ファンドの運用というのは、このようにマイナスの年も
多々ありますので、事前にしっかりと理解しておいてください。
年間利回り | |
2021年 | +29.64%(1-6月) |
2020年 | ▲15.79 |
2019年 | +24.34% |
2018年 | ▲8.66% |
2017年 | +2.55% |
2016年 | ▲0.26% |
2015年 | +0.93% |
2014年 | +45.71% |
※2021年9時月点
考えずに投資をしてしまいがちです。 しかし、「投資は出口戦略にあり」と言われるほど、
重要なテーマです。 ぜひこれを機会に投資の出口戦略を考えてみて
ください。 >>ここまで考えるのが本当の資産運用。多くの投資家が考えられていない投信運用の出口戦略とは
インデックスファンドとのパフォーマンス比較
新光 US-REIT オープン『ゼウス』に投資をする前に
より低コストで運用できるインデックスファンド
とのパフォーマンスは比較しておいて損はありません。
今回は、S&P米国リート指数に連動するeMAXIS 米国リート
インデックスとパフォーマンスを比較してみました。
※引用:モーニングスター
直近3年間のパフォーマンスはかなり競っていますが、わずかに
新光 US-REIT オープン『ゼウス』のほうがパフォーマンスは
上です。
より長期の5年平均利回りを比較してみても、ゼウスの
ほうがわずかにパフォーマンスで上回っています。
この程度の差なのであれば、あえて高いコストのアクティブ
ファンドに投資をせずとも、低コストのインデックスファンドに
投資をすれば十分です。
新光 US-RIET | eMAXIS 米国リート | |
1年 | +33.45% | +41.94% |
3年 | +9.18% | +8.96% |
5年 | +7.26% | +7.21% |
10年 | +12.03% | – |
※2021年9時月点
類似ファンドとのパフォーマンス比較
新光 US-REIT オープン『ゼウス』への投資を検討するので
あれば、同じくUSリートに投資をしているアクティブファンド
と最低でもパフォーマンスは比較しておきましょう。
今回は、ゼウス同様、米国リートに投資をしていて、いまだに
非常に人気のあるフィデリティ・USリートBとダイワ・US-REIT
オープンBと比較をしてみました。
※引用:モーニングスター
投資対象は米国リートにもかかわらず、かなり大きくパフォーマンスに
差がつきました。
ダイワ・US-RIET・オープンBコースと比べると10%近く差がついて
しまっていますので、そもそも毎月分配型の米国リートファンドに
投資をするかどうかという問題はあるものの、投資をするのであれば、
ダイワ・US-RIET・オープンBコースに投資をするほうが賢明でしょう。
新光 US-RIET | フィデリティUSリート | |
1年 | +33.45% | +39.28% |
3年 | +9.18% | +11.09% |
5年 | +7.26% | +8.52% |
10年 | +12.03% | +14.08% |
※2021年9時月点
最大下落率は?
新光 US-REIT オープン『ゼウス』に投資をするのであれば、
最大でどの程度下落する可能性があるのかは知っておきたい
ところです。
標準偏差などから推定することもできますが、過去にどの程度
下落しているかもひとつの参考になります。
REITであれば、株式ほどリスクは高くないであろうと思いがちですが、
新光 US-REIT オープン『ゼウス』は2008年9月~2009年2月の
1年間で、最大▲59.04%下落しており、かなりリスクが高いことが
わかります。
REITは普段の値動きは株式よりも堅調ですが、下落するとなると、
株式ファンドよりも急速に下落する傾向があるので、要注意です。
ちなみにあなたは実質利回りの計算方法はすでに理解していますか?
もし、理解していないのであれば、必ず理解しておいてください。
期間 | 下落率 |
1カ月 | ▲31.23% |
3カ月 | ▲48.83% |
6カ月 | ▲59.04% |
12カ月 | ▲56.63% |
※2021年9時月点
分配健全度はどれくらい?
分配金を毎月受け取っていると、受け取っていることに安心
してしまい、自分の投資元本からの配当なのか、ファンドの
収益からの配当なのか調べなくなります。
そこで、分配金がファンドの収益からちゃんと支払われている
のかを調べるときに役立つのが分配健全度です。
分配健全度とは、1年間の分配金の合計額と基準価額の変動幅を
もとに、あなたが受け取った分配金の約何%がファンドの収益
によるものなのかを計算できる指標です。
基準価額の変動幅 | 1年間の分配合計額 | 分配健全度 |
394円 | 300円 | 231% |
※2020/9/25~2021/9/27
新光 US-REIT オープン『ゼウス』の直近1年間の分配健全度は
231%となっています。
分配健全度は100%を切ると、一部ファンドの収益以外から
分配金が支払われていることを意味しますが、0%を下回る
ということは、ファンドの収益からの支払いは一切ない
ということを意味します。
100%を超えているということは、受け取った分配金以上に
ファンドが運用益を出しているということなので、まさに
理想の状態と言えます。
直近1年間は米国リートがコロナショックで暴落した後なので、
パフォーマンスも良好だったということもあり、分配金を
すべて運用益から払い出すことができていますが、この
分配金利回りを考えると、長くは続かないでしょう。
分配金利回りはどれくらい?
毎月分配型のファンドに投資をしている場合、どれくらいの
分配金が受け取れるのかを知るために分配金利回りを参考
にします。
(分配金利回りは基準価額に対する分配金合計額で計算が
できます。)
ただし、投資信託の場合、分配金利回りだけをみていると、
受け取っている分配金がファンドの収益から出ている
ものなのか、投資元本が削られているのか、判断できません。
そのため、ファンドの運用利回りと分配金利回りを比較して、
ファンドの運用利回りのほうが高ければ、あなたが受け取って
いる分配金がファンドの運用の収益から支払われていると
判断することができます。
新光 US-REIT オープン『ゼウス』の分配金利回りは13%を
超えており、かなり高めの設定となっています。
ファンドの運用利回りよりも分配金利回りが高くなって
いますので、あなたが受け取っている分配金の一部は
あなたが投資した元本が戻ってきているだけということになります。
これでは分配金利回りが高くても全く意味がありません。
未だ多くの投資家が勘違いをしながら、分配金利回りが
高いファンドに投資をしていますが、くれぐれも気を
つけてほしいと思います。
運用利回り | 分配金利回り | |
1年 | +33.45% | 13.5% |
3年 | +9.18% | |
5年 | +7.26% | |
10年 | +12.03% |
※2021年9時月点
分配金余力はどれくらい?
毎月分配型ファンドに投資をしている場合、もう1つ気になる
のが今後いつごろ、減配されそうかという点です。
そんなときに役立つのが分配金余力という考え方です。
分配金余力というのは、今の分配金の水準をあと何か月
続けられそうかを判断するための指標です。
明確にこの水準になったら減配されるという指標では
ありませんが、12カ月を切ったファンドはたいてい近々、
減配されることが多いです。
新光 US-REIT オープン『ゼウス』の分配金余力は、ま90カ月
近くありますので、減配の心配はないと言えます。
ただし、分配利回りがかなり高くなっており、今後急速に
分配金余力が減少していくと思われるので、油断はできな
い状況です。
分配金 | 繰越対象額 | 分配金余力 | |
184期 | 25円 | 2,599円 | 105.0カ月 |
185期 | 25円 | 2,576円 | 104.0カ月 |
186期 | 25円 | 2,554円 | 103.2カ月 |
187期 | 25円 | 2,534円 | 102.4カ月 |
188期 | 25円 | 2,509円 | 101.4カ月 |
189期 | 25円 | 2,487円 | 100.5カ月 |
190期 | 25円 | 2,467円 | 99.7カ月 |
191期 | 25円 | 2,442円 | 98.7カ月 |
192期 | 25円 | 2,420円 | 97.8カ月 |
193期 | 25円 | 2,400円 | 97.0カ月 |
194期 | 25円 | 2,376円 | 96.0カ月 |
195期 | 25円 | 2,354円 | 95.2カ月 |
評判はどう?
ネットでの書き込みなどで調べる方法もありますが、
評判を知るうえで一番役に立つのが、月次の資金流出入額でしょう。
資金が流入しているということは、それだけ、このファンドを
購入している人が多いということなので、評判がいいということです。
ほぼ全期間において資金が流出超過となっており、投資家が資金を
引き上げていることがよくわかります。
直近1年はパフォーマンスがまだマシだったので少し資金が戻って
きていた時期もありますが、総じてタコ足配当を続けている
ファンドということで、評判はよくなることはないと思われます。
※引用:モーニングスター
新光 US-REIT オープン『ゼウス投信』の評価まとめと今後の見通し
いかがでしょうか?
世界のリート指数は、年平均利回りにして5%程度の運用は
十分に期待ができます。
ただし、新光 US-REIT オープン『ゼウス』の分配金利回りは
13%台であり、明らかに過剰な分配をしていますので、今後、
減配と、基準価額の大幅下落は避けられません。
ただ、改めてになりますが、ファンドの運用利回りと分配金利回り
は全くの別物です。
運用利回り10%と言えば、100万円を投資した場合、年10万円
の運用益を受け取ることができます。
一方で、分配金利回り10%という場合は違います。
仮にファンドの運用利回りが3%しかなくても分配金利回りを
10%にすることはできるのです。
その結果、100万円投資をして、ファンドの運用益は3万円
しかないにもかかわらず、あなたは10万円の分配金を受け取る
ことになります。
では、運用益と分配金の差額の7万円はどこから出てきている
のかと言えば、あなたの投資した元本の100万円から支払われて
いるのです。
つまり、分配金利回りがいくら高くても、ファンドの運用利回り
が低ければ、まったく意味がないということです。
毎月分配型ファンドは私はそもそもおすすめはしませんが、
それでも投資をしたいという場合、ファンドの選定基準は
分配金利回りが高いか低いかではありません。
ファンドの運用利回りがちゃんとプラス(大きいほど良い)で、
運用利回りの範囲内か、少し超える程度で分配金を出している
ファンドを選ぶべきです。
新光 US-REIT オープン『ゼウス』はインデックスファンドと
比較をしてもパフォーマンスはトントンですし、あえて投資を
するなら、まだインデックスファンドに投資をするべきです。
現状、明らかに過剰な分配を続けていることから、
基準価額の下落は止まらず、数年先には減配を繰り返さざるを
えない状況に追い込まれることが目に見えています。
この事実にしっかりと気づいていただき、毎月分配型の
ファンドでももっと健全に運用しているファンドに見直し
をしたほうがよいと思います。
当然ながら、弱点もあります。 今も私は投信運用を続けてはいますが、私がなぜ
投資信託の運用を主軸におかなくなったのか。 その理由をこちらで話をしています。 >>私が痛感する投資信託の限界。多くの投資家が見逃している投信運用の弱点