毎月分配型のファンドと言えば、REIT型や債券型、バラ
ンス型のファンドが多いですが、一部株式型のファンド
が存在します。
ピクテ・グローバル・インカム株式ファンドやLM・オー
ストラリア好配当株ファンドが有名どころでしょうか。
株式ファンドの中でも新興国株式型で毎月分配のファンド
というのは非常に数が少ないのですが、多くの投資家から
資金を集めているのが、ピクテ新興国インカム株式ファンド
(毎月決算型)です。
今日は、ピクテ新興国インカム株式ファンド(毎月決算型)
について独自目線で分析していきます。
「ピクテ新興国インカム株式ファンド(毎月決算型)って投資対象としてどうなの?」
「ピクテ新興国インカム株式ファンド(毎月決算型)って持ってて大丈夫なの?」
「ピクテ新興国インカム株式ファンド(毎月決算型)より良いファンドってある?」
といったことでお悩みの方は、この記事を最後まで読めば、
悩みは解消すると思います。
ピクテ新興国インカム株式ファンド(毎月決算型)の基本情報
投資対象は?
ピクテ新興国インカム株式ファンド(毎月決算型)の投資
対象は、新興国の好配当利回りの株式です。
約70か国6000銘柄の中から銘柄を絞り込み、最終的に100~
200銘柄まで絞り込みます。現在は61銘柄となっています。
国別の組入状況を見てみると、台湾、中国、韓国の順に高く
なっていますね。
※引用:マンスリーレポート
つみたてNISAとiDeCoの対応状況は?
ピクテ新興国インカム株式ファンド(毎月決算型)の
つみたてNISAとiDeCoの対応状況を確認しておきましょう。
残念ながらどちらも対応していません。
つみたてNISA | iDeCo |
× | × |
※2022年2月時点
純資産総額は?
投資を検討するうえで、純資産総額は必ず確認するように
してください。
純資産総額が多いほうが、ファンドマネージャーが資金を
投資する際に有利であったり、保管費用や監査費用が相対的
に低くなりますので、優れた投資信託と言えます。
また投資信託の規模が小さくなると運用会社自体がその
投資信託に力を注がなくなりパフォーマンスが悪くなる
こともありますので注意が必要です。
ピクテ新興国インカム株式ファンド(毎月決算型)は
2015年頃は7000億円を超える規模になっていましたが、
基準価額の下落とともに、純資産を減らしています。
パフォーマンスがそこまで優れていないにもかかわらず
高い分配をしてきた結果と言えるでしょう。
それでも980億円程度の規模はありますので、
大きなファンドですので、規模の問題はありません。
※引用:マンスリーレポート
実質コストは?
投資信託には、購入時の手数料や信託報酬の他にも費用が
かかっていることをご存知ですか?
これを実質コストと言いますが、実質コストには、株式売買
手数料や有価証券取引税、監査費用などが含まれています。
特に純資産総額が小さいときには、信託報酬より実質コスト
がかなり割高になっている場合もあるので、注意が必要です。
信託報酬を信用するな。知らないうちに差し引かれている実質コストの調べ方
ピクテ新興国インカム株式ファンド(毎月決算型)の実質
コストは2.03%とかなり割高です。
それに加えて高い購入時手数料もかかりますので、おすすめ
しづらいファンドですね。
後述しますが、パフォーマンスがインデックスファンドに
負けてしまっているので、投資する価値を見出せません。
購入時手数料 | 3.3%(税込)※上限 |
信託報酬 | 2.015%(税込) |
信託財産留保額 | 0.3% |
実質コスト | 2.03%(概算値) |
※引用:最新運用報告書
「ファンドの運用で成果を出すために一番大事なことは何ですか?」と聞かれてあなたは何と答えますか?
もし『ファンド選び』だと思ったとしたら、あなたはドツボに
はまっていますので、こちらの記事を読んでみてください。
ピクテ新興国インカム株式ファンド(毎月決算型)の評価分析
基準価額をどう見る?
ピクテ新興国インカム株式ファンド(毎月決算型)の基準価額は
コロナショック時まで下落を続けていました。
しかし、分配金を3分の1に減配したことで、基準価額の下落は
緩やかになり、2020年後半から上昇しています。
それでも基準価額が2000円台ということで、今までいかに
ひどい分配をつづけてきたのかがよくわかります。
※引用:モーニングスター
利回りはどれくらい?
ピクテ新興国インカム株式ファンド(毎月決算型)の
直近1年間の利回りは17.38%です。
3年、5年、10年平均利回りも7%程度は維持できているので、
過剰な分配をしさえしなければ、いい結果です。
ちなみにあなたは実質利回りの計算方法はすでに理解していますか?
もし、理解していないのであれば、必ず理解しておいてください。
平均利回り | |
1年 | 17.38% |
3年 | 11.24% |
5年 | 8.16% |
10年 | 6.98% |
※2022年2月時点
10年間高いパフォーマンスを出し続けている優秀なファンド達も
参考にしてみてください。
10年間圧倒的に高いリターンを出している海外株式ファンドランキング
同カテゴリー内での利回りランキングは?
ピクテ新興国インカム株式ファンド(毎月決算型)は、
エマージング(複数国)株式カテゴリーに属しています。
投資をするのであれば、同じカテゴリーでも優秀な
パフォーマンスのファンドに投資をすべきなので、
同カテゴリー内でのパフォーマンスのランキングは
事前に調べておいて損はありません。
10年のみ下位にランクしていますが、1年・3年・5年は
上位20%程度でランクしていますので、優れた成果を
残していると言えます。
上位●% | |
1年 | 13% |
3年 | 22% |
5年 | 23% |
10年 | 75% |
※2022年2月時点
年別の運用利回りは?
ピクテ新興国インカム株式ファンド(毎月決算型)の
年別のパフォーマンスも見てみましょう。
マイナスの年は2桁以上のマイナスが出ており、先進国株式
と比べると、パフォーマンスにムラがあります。
年間利回り | |
2021年 | +20.86% |
2020年 | +0.14% |
2019年 | +24.88% |
2018年 | ▲16.11% |
2017年 | +22.81% |
2016年 | +5.95% |
2015年 | ▲19.36% |
2014年 | +7.34% |
※2022年2月時点
投信運用は長期投資が前提なので、つい出口戦略を考えずに投資をしてしまいがちです。
しかし、「投資は出口戦略にあり」と言われるほど、重要なテーマです。ぜひこれを機会に投資の出口戦略を考えてみてください。
>>ここまで考えるのが本当の資産運用。多くの投資家が考えられていない投信運用の出口戦略とは類似ファンドとのパフォーマンス比較
ピクテ新興国インカム株式ファンド(毎月決算型)に投資をする
のであれば、より低コストで投資ができるインデックスファンド
とパフォーマンスを比較してからでも損はありません。
今回は、新興国株式の代表的な指数であるMSCIエマージング
・マーケット・インデックスをベンチマークとするeMAXIS
新興国株式インデックスと比較をしました。
※引用:モーニングスター
終始、パフォーマンスはかなり拮抗していますが、
直近では、ピクテ新興国インカム株式ファンドに
軍配が上がっています。
10年平均利回りだけは、eMAXIS 新興国株式のほうが
優れているようですね。
平均利回り | ピクテ新興国 | eMAXIS新興国株式 |
1年 | 17.38% | ▲1.31% |
3年 | 11.24% | 8.22% |
5年 | 8.16% | 7.43% |
10年 | 6.98% | 7.69% |
※2022年2月時点
最大下落率は?
ピクテ新興国インカム株式ファンド(毎月決算型)に投資
をする前に、最大でどの程度下落する可能性があるのかを
知っておくことは非常に重要です。
どの程度下落する可能性があるかを把握しておけば、大きく
下落した相場でも落ち着いて保有を続けられるからです。
それではここでピクテ新興国インカム株式ファンド(毎月
決算型)の最大下落率を見てみましょう。
最大下落率はリーマンショック時で▲56.05%となっています。
さすがにここまでの下落はそうそう来ないと思いますが、
株式ファンドですので、大きく下落することもあることを
忘れないようにしてください。
最大下落率を知ってしまうと、少し足が止まってしまうかも
しれません。
しかし、以下のことをしっかり理解しておけば、元本割れの
可能性を限りなく低くすることが可能です。
期間 | 下落率 |
1カ月 | ▲31.84% |
3カ月 | ▲48.65% |
6カ月 | ▲54.43% |
12カ月 | ▲56.05% |
※2022年2月時点
分配健全度はどれくらい?
分配金を毎月受け取っていると、受け取っていることに安心
してしまい、自分の投資元本からの配当なのか、ファンドの
収益からの配当なのか調べなくなります。
そこで、分配金がファンドの収益からちゃんと支払われている
のかを調べるときに役立つのが分配健全度です。
分配健全度とは、1年間の分配金の合計額と基準価額の変動幅を
もとに、あなたが受け取った分配金の約何%がファンドの収益
によるものなのかを計算できる指標です。
基準価額の変動幅 | 1年間の分配合計額 | 分配健全度 |
84円 | 60円 | 240% |
※2021/2/25~2022/2/25
ピクテ新興国インカム株式ファンド(毎月決算型)の
直近1年間の分配健全度は240%となっています。
分配健全度は100%を切ると、一部ファンドの収益以外から
分配金が支払われていることを意味しますが、240%の
場合は、すべてファンドの収益から分配金が支払われている
ことを意味しています。
分配金利回りを1桁前半に抑えたことで、健全な分配が
できるようになっていますね。
分配金利回りはどれくらい?
毎月分配型のファンドに投資をしている場合、どれくらいの
分配金が受け取れるのかを知るために分配金利回りを参考
にします。
(分配金利回りは基準価額に対する分配金合計額で計算が
できます。)
ただし、投資信託の場合、分配金利回りだけをみていると、
受け取っている分配金がファンドの収益から出ている
ものなのか、投資元本が削られているのか、判断できません。
そのため、ファンドの運用利回りと分配金利回りを比較して、
ファンドの運用利回りのほうが高ければ、あなたが受け取って
いる分配金がファンドの運用の収益から支払われていると
判断することができます。
ピクテ新興国インカム株式ファンド(毎月決算型)の
分配金利回りは約3%なので、ファンドの収益から考えても
健全な水準です。
運用利回り | 分配金利回り | |
1年 | 17.38% | 3.08% |
3年 | 11.24% | |
5年 | 8.16% | |
10年 | 6.98% |
※2022年2月時点
分配金余力はどれくらい?
毎月分配型ファンドに投資をしている場合、もう1つ気になる
のが今後いつごろ、減配されそうかという点です。
そんなときに役立つのが分配金余力という考え方です。
分配金余力というのは、今の分配金の水準をあと何か月
続けられそうかを判断するための指標です。
明確にこの水準になったら減配されるという指標では
ありませんが、12カ月を切ったファンドはたいてい近々、
減配されることが多いです。
ピクテ新興国インカム株式ファンド(毎月決算型)の
分配金余力は、まだ240カ月程度ありますので、当面
減配される心配はないでしょう。
分配金 | 繰越対象額 | 分配金余力 | |
150期 | 5円 | 1,182円 | 237.4カ月 |
151期 | 5円 | 1,183円 | 237.6カ月 |
152期 | 5円 | 1,185円 | 238カ月 |
153期 | 5円 | 1,188円 | 238.6カ月 |
154期 | 5円 | 1,192円 | 239.4カ月 |
155期 | 5円 | 1,195円 | 240カ月 |
156期 | 5円 | 1,196円 | 240.2カ月 |
157期 | 5円 | 1,199円 | 240.8カ月 |
158期 | 5円 | 1,202円 | 241.4カ月 |
159期 | 5円 | 1,205円 | 242カ月 |
160期 | 5円 | 1,208円 | 242.6カ月 |
161期 | 5円 | 1,209円 | 242.8カ月 |
評判はどう?
それでは、ピクテ新興国インカム株式ファンド(毎月決算型)の
評判はどうでしょうか?
ネット等で口コミを調べることもできますが、資金の流出入
を見ることで、評判がわかります。
評判がよければ、資金が流入超過になりますし、評判が悪く
なっていれば、資金が流出超過になります。
ピクテ新興国インカム株式ファンド(毎月決算型)は2016年
以降大きく資金が流入して以来、毎月資金が流出しています。
パフォーマンスが優れないというのももちろんありますが、
近年の毎月分配型ファンドへの厳しい目線が影響している
のでしょう。
※引用:モーニングスター
ピクテ新興国インカム株式ファンド(毎月決算型)の今後の見通しと評価まとめ
いかがでしょうか?
まず覚えておいてほしいのは、新興国株式というのは、
各種アセットクラスの中で値動きがかなり大きい部類に
入るということです。
年2桁の下落も平気で起こりえます。
分配金を受け取るには、安定した利益を出し、安定した
配当を受け取るのが一番です。そう考えると、新興国
株式で毎月分配金を受け取るという発想自体があまり
得策とは言えません。
ピクテ新興国インカム株式ファンドは分配金利回りが
以前は10%を超えており、タコ足配当を続けていましたが、
大きく減配したことで、今は健全な水準にまではなりました。
分配金余力も200か月以上ありますので、減配の心配も
ないと言えます。
ただ、根本的に分配金を狙うのであれば、もう少し、
パフォーマンスが優れていて、分配金もたくさん出る
ファンドを選んだほうが目的に合うと思います。
アライアンス・バーンスタインの米国成長株投信など
は分配型でもおすすめですね。
最後に、投信運用には多くのメリットもありますが、当然ながら、弱点もあります。
今も私は投信運用を続けてはいますが、私がなぜ投資信託の運用を主軸におかなくなったのか。その理由をこちらで話をしています。
>>なぜ私が投信運用に限界を感じたのか。多くの投資家が見逃している投信運用の弱点