近年、医療業界では、AIやロボットによる診療や治療、IoTによる遠隔医療システム、次世代シーケンサーによる遺伝子情報に基づく個別医療の実現など、テクノロジー主導のイノベーションが次々と起こっています。
こうした先進医療の分野には、先進的な技術力をもつIT企業が続々と市場に参入しており、今後の成長に期待が持てます。
今日は、そんな先進医療に特化した野村ACI先進医療インパクト投資を独自目線で徹底分析していきます。
こんなことがわかる
- 野村ACI先進医療インパクト投資って投資対象としてどうなの?
- 野村ACI先進医療インパクト投資って持ってて大丈夫なの?
- 野村ACI先進医療インパクト投資より良いファンドってある?
野村ACI先進医療インパクト投資には為替ヘッジあり/なし、資産成長型/予想分配金提示型の組み合わせで、4つのコースがあり、その中でも、今日は一番人気のあるBコース(為替ヘッジあり、資産成長型)について分析します。
A、C、Dコースを検討中の方も参考になるように書いていますので、一度読んでみて下さいね。
野村ACI先進医療インパクト投資 Bコース(為替ヘッジなし 資産成長型)の基本情報
投資対象は?
野村ACI先進医療インパクト投資は新興国を含む世界各国の先進医療関連企業の株式に投資をしていきます。
インパクト投資というのは、社会的な課題の解決に取り組む企業に投資をすることで、投資収益と社会課題の解決の両方を追求する投資のことです。
野村ACI先進医療インパクト投資では、①革新的治療の提供、②医薬品・医療サービスへのアクセス、③医療費削減のソリューション、④効果的な医療機器・サービスの提供を投資のテーマとして、銘柄を選定していきます。
テーマ別の銘柄数は以下のようになっています。
※引用:マンスリーレポート
また国別の構成比を見てみると85%近くがアメリカ株式となっており、実質、米国株ファンドと言っても差し支えなさそうです。
※引用:マンスリーレポート
実際の組入上位銘柄は以下のようになっており、医療テクノロジー系の銘柄が多くなっています。
※引用:マンスリーレポート
運用体制は?
実質的な運用はアメリカン・センチュリー・インベストメンツ(ACI)が行います。ACIは約60年間、質の高いアクティブ運用を行っています。
また、ACIの創業者が設立した非営利団体「ストワーズ医学研究所」がACIの実質的な支配株主となっており、ACIの配当がストワーズ医学研究所の活動原資となっており、医学・医療の発展に貢献しています。
名実ともに、投資収益と社会課題への取り組みを実践している企業と言えるでしょう。
純資産総額は?
純資産総額というのは、あなたを含めた投資家から集めた資金の総額だと思ってください。
ファンドの純資産総額が小さいと、適切なタイミングで売買できなかったり、コストが嵩みますので、事前に確認すべきポイントの1つです。
野村ACI先進医療インパクト投資 Bコースは現在約644.3億円ほどの規模です。
Aコース~Dコースの純資産の合計をすると1,300億円を超えてきており、ここまで資金を集めることができているのは、投資で収益だけでなく、社会課題も解決できるということで、多くの投資家の心をつかんだようです。
規模としては全く問題ないレベルですね。
※引用:マンスリーレポート
実質コストは?
私たちが支払うコストには、目論見書に記載の信託報酬以外に、株式売買委託手数料や、保管費用、印刷費用などが含まれています。
そのため、実際に支払うコストは、目論見書記載の額より高くなるのが通例で、実際にかかる実質コストをもとに投資判断をしなければなりません。
野村ACI先進医療インパクト投資Bコースの実質コストは1.835%とかなり割高です。
購入時手数料を合わせると、5%を超えてくるため、相当優れたパフォーマンスが優れていなければ投資する気になれない水準です。
購入時手数料 | 3.3%(税込)※上限 |
信託報酬 | 1.815%(税込) |
信託財産留保額 | 0.3% |
実質コスト | 1.835%(概算値) |
※引用:最新運用報告書
「ファンドの運用で成果を出すために一番大事なことは何ですか?」と聞かれてあなたは何と答えますか?
もし『ファンド選び』だと思ったとしたら、あなたはドツボに
はまっていますので、こちらの記事を読んでみてください。
野村ACI先進医療インパクト投資 Bコース(為替ヘッジなし 資産成長型)の独自評価と分析
基準価額をどう見る?
野村ACI先進医療インパクト投資Bコースの基準価額の推移を見てみましょう。大きく上下に変動しながらも、上昇を続けています。
※引用:ウエルスアドバイザー
利回りはどれくらい?
つづいて、野村ACI先進医療インパクト投資Bコースの運用実績を見てみましょう。
平均利回り | |
1年 | +13.49% |
3年 | +7.39% |
5年 | +14.57% |
10年 | - |
※2024年9月時点
直近1年間の利回りは+13.49%、5年平均利回りも+14.57%なのでパフォーマンスは悪くないように見えます。
ただ、この利回りだけを見て、投資判断をしてはいけません。他のファンドと利回りを比較してから投資をするようにしてください。
同カテゴリー内での利回りランキングは?
野村ACI先進医療インパクト投資Bコースは、海外株式の北米カテゴリーに属しています。
投資をするのであれば、同じカテゴリーでも優秀なパフォーマンスのファンドに投資をすべきなので、同カテゴリー内でのパフォーマンスのランキングは事前に調べておいて損はありません。
野村ACI先進医療インパクト投資Bコースは、どの期間で見ても、下位30%に入っており、他にもっと優秀なファンドがたくさんあることがわかります。
上位●% | |
1年 | 73% |
3年 | 75% |
5年 | 74% |
10年 | - |
※2024年9月時点
年別のパフォーマンスは?
野村ACI先進医療インパクト投資Bコースは2019年~2024年まで毎年2桁プラスとなっており、2022年も株式ファンドの多くが下落する中で、マイナス幅をかなり抑えられています。
ただ、大きくプラスになっていないということもあり、トータルで見ると、同カテゴリーの中でも劣った利回りになってしまっています。
年間利回り | |
2024年 | +18.44(1月-6月) |
2023年 | +9.67% |
2022年 | ▲3.31% |
2021年 | +27.85% |
2020年 | +12.31% |
2019年 | +22.73% |
※2024年9月時点
投信運用は長期投資が前提なので、つい出口戦略を考えずに投資をしてしまいがちです。
しかし、「投資は出口戦略にあり」と言われるほど、重要なテーマです。ぜひこれを機会に投資の出口戦略を考えてみてください。
>>ここまで考えるのが本当の資産運用。多くの投資家が考えられていない投信運用の出口戦略とはインデックスファンドとのパフォーマンス比較
高コストのアクティブファンドに投資をするのであれば、その前に類似のインデックスファンドとパフォーマンスを比較をしてみると、より正確に投資判断ができるようになります。
野村ACI先進医療インパクト投資Bコースは90%が米国株式なので、S&P500に連動する米国株式ファンドであるeMAXIS Slim米国株式(S&P500)とパフォーマンスを比較してみました。
※引用:ウエルスアドバイザー
直近3年間では、ほぼ全期間において、eMAXIS Slim米国株式(S&P500)のほうがパフォーマンスで上回っています。
では、より長期のパフォーマンスはどうでしょう?
野村ACI先進医療 | slim 米国株式(S&P500) | |
1年 | +13.49% | +24.15% |
3年 | +7.39% | +19.11% |
5年 | +14.57% | +22.66% |
10年 | - | - |
※2024年9月時点
5年平均利回りでも、大きく差をつけられており、これでは高いコストを支払ってまで、野村ACI先進医療インパクト投資に投資をしようとはなりませんね。
Aコース、Bコース、Cコース、Dコースどれがいいの?
さて、野村ACI先進医療インパクト投資に投資をする上で、Aコース~Dコースでどれに投資をすればよいのか悩む人も多いと思います。
そこで、A~Dコースのパフォーマンスを比較しました。
※引用:ウエルスアドバイザー
直近のパフォーマンスで見ると、為替ヘッジ無で分配金無のBコースと為替ヘッジ無分配金有のDコースがほぼ同じようなパフォーマンスですね。
為替ヘッジはヘッジコストが割高である点と、今後、長期的に見れば円安方向に進んでいくことを考えると、ヘッジ無を選択しておけばいいと思います。
最大下落率は?
投資信託は最低でも5~10年は投資をする気でなければ、投資をする意味がありませんが、その最大の障壁となりえるのが、資産の減少です。
特に20%や30%の下落相場を始めて経験すると、資産の減少額に耐えきれなくなり、本来手放すべきタイミングではないときに慌てて売却してしまいがちです。
そのため、事前にどの程度下落する可能性があるのかを知っておくことで、急落相場に遭遇しても、精神的に余裕を持って投資を続けられます。
それではここで野村ACI先進医療インパクト投資Bコースの最大下落率を見てみましょう。
期間 | 下落率 |
1カ月 | ▲13.07% |
3カ月 | ▲11.77% |
6カ月 | ▲9.08% |
12カ月 | ▲9.60% |
※2024年9月時点
最大下落率は2022年1月の1カ月で▲13.07%となっています。
下落率が非常に小さいというのは、高評価のポイントではありますが、その分リターンも小さいのが残念です。
評判はどう?
評判がどうなのかを判断するうえで資金の流出入額が役に立ちます。資金が流入超過になっているということは、それだけ購入している人が多いということです。つまり評判が良いということです。
それでは、野村ACI先進医療インパクト投資はどうでしょうか。
2020年以降、大半の期間で資金が流出しており、評判は良くないようですね。インデックスファンドにパフォーマンスで負けてしまっているので、当然と言えば、当然です。
※引用:ウエルスアドバイザー
NISAとiDeCoの対応状況は?
投資をしようとする際、NISAやiDeCoの制度を使って投資を検討している人も多いと思うので、NISAやiDeCoの対応状況を見ていきます。
野村ACI先進医療インパクト投資はNISAに対応していますので、投資をする場合はNISAを積極的に活用しましょう。
NISA | iDeCo |
〇 | × |
※2024年9月時点
野村ACI先進医療インパクト投資 Bコース(為替ヘッジなし 資産成長型)の個人的評価まとめと今後の見通し
いかがでしょうか?
医療というテーマは今後社会的な課題になるのは間違いないのですが、過去に医療をテーマにしたテーマ型ファンドは色々と登場しているものの、長期間に渡って、高いパフォーマンスを出し続けているファンドというのは、私は見たことがありません。
先進医療×AI、ロボ、5Gといった今、話題のテーマなので、期待したいところではありますが、購入時手数料、信託報酬ともにかなり高く、インデックスファンドにもパフォーマンスで負けてしまっているので、厳しいですね。
インデックスファンドの中にも、先進医療に関する銘柄が含まれていますので、実際には先進医療系の銘柄に投資をできていることになりますし、はるかに低コストで投資ができるので、まずはeMAXIS Slim米国株式(S&P500)を選択しておけば十分だと思います。
最後に、投信運用には多くのメリットもありますが、当然ながら、弱点もあります。
今も私は投信運用を続けてはいますが、私がなぜ投資信託の運用を主軸におかなくなったのか。その理由をこちらで話をしています。
>>なぜ私が投信運用に限界を感じたのか。多くの投資家が見逃している投信運用の弱点