2016年のファンド オブ ザ イヤーにつづき、2019年に2度目の受賞となった三菱UFJ/マッコーリー グローバル・インフラ債券ファンド<為替ヘッジなし>(毎月決算型)『愛称:世界のいしずえ』。
世界のインフラ関連企業の債券に投資をしていくファンドですが、手堅い債券ファンドということで注目が集まっています。
世界のいしずえは為替ヘッジあり/なしと毎月決算型/1年決算型と4種類のファンドがありますが、今回は一番人気の高い為替ヘッジ無し・毎月決算型を徹底分析していきます。
どちらにしても世界のいしずえの購入を検討している人には参考になると思います。
「世界のいしずえって投資対象としてどうなの?」
「世界のいしずえって持ってて大丈夫なの?」
「世界のいしずえより良いファンドってある?」
といったことでお悩みの方は、この記事を最後まで読めば、悩みは解消すると思います。
三菱UFJ/マッコーリー グローバル・インフラ債券ファンド<為替ヘッジなし>(毎月決算型)『愛称:世界のいしずえ』の基本情報
投資対象は?
世界のいしずえの投資対象は、世界のインフラ関連企業が発行する米ドル建ての債券です。インフラ関連企業というのは、日常生活に不可欠な公益、通信、エネルギー、運輸などの企業のことを指します。
インフラ企業は各国の社会基盤を支えているので、収益が安定しており、配当も安定しているというのが一般的な考え方です。
※引用:交付目論見書
債券ファンドの場合、組み入れられている債券の格付けを必ず確認しましょう。信用力が低い債券が多数組み入れられていると、リターンは高くなるものの、デフォルトのリスクが高まりますので、注意が必要です。少なくとも投資適格格付でいうBBB以上は必要ですね。
※引用:交付目論見書
世界のいしずえに組み入れられている債券は約420ありますが、債券の格付と国別の構成比は以下のようになっています。
BBB格が約70%ということで、投資適格級の債券ではありますが、比較的リスクは高め(リターンが高い)債券が中心です。
ただ、日本で誰もが知っているような企業もBBB格程度ですので、一般的に考えれば、デフォルトするリスクが高いような債券ではありませんね。国別の構成比を見ると、アメリカが約89%となっており、実質米国の社債ファンドと言っても差し支えないでしょう。
※引用:マンスリーレポート
ちなみにどのような企業の社債が組み入れられているかで言うと、以下のように公益が約44%、通信が約35%、エネルギーが約13%となっています。
※引用:マンスリーレポート
純資産総額は?
投資を検討するうえで、純資産総額は必ず確認するようにしてください。
純資産総額は大きいほうが、ファンドマネージャーが資金を運用する際に効率よくできたり、保管費用や監査費用が相対的に低くなりますので、コストが低く抑えられます。
また投資信託の規模が小さくなると運用会社自体がその投資信託に力を注がなくなりパフォーマンスが悪くなることもありますので注意が必要です。
世界のいしずえは2017年頃から着実に増加しており、現在の純資産総額は約1422億円です。純資産総額の推移を見ても、最近になって日の目を浴びるようになったファンドであることがわかります。規模の大きさとしては全く問題ないですね。
※引用:マンスリーレポート
実質コストは?
投資信託には、購入時の手数料や信託報酬の他にも費用がかかっていることをご存知ですか?
これを実質コストと言いますが、実質コストには、株式売買手数料や有価証券取引税、監査費用などが含まれています。特に純資産総額が小さいときには、信託報酬より実質コストがかなり割高になっている場合もあるので、注意が必要です。
信託報酬を信用するな。知らないうちに差し引かれている実質コストの調べ方
世界のいしずえの実質コストは1.34%と債券ファンドにしては、かなり割高です。それに加えて高い購入時手数料もかかりますので、購入した初年度は最低でも3.5%近く資産が目減りしてしまいます。
購入時手数料 | 2.2%(税込)※上限 |
信託報酬 | 1.32%(税込) |
信託財産留保額 | なし |
実質コスト | 1.34%(概算値) |
※引用:最新運用報告書
「ファンドの運用で成果を出すために一番大事なことは何ですか?」と聞かれてあなたは何と答えますか?
もし『ファンド選び』だと思ったとしたら、あなたはドツボに
はまっていますので、こちらの記事を読んでみてください。
三菱UFJ/マッコーリー グローバル・インフラ債券ファンド<為替ヘッジなし>(毎月決算型)『愛称:世界のいしずえ』の評価分析
基準価額をどう見る?
世界のいしずえの基準価額は直近3年間で20%程度値下がりしています。
一方で、分配金を受け取らずに再投資して運用した場合の基準価額(青線)は10%ほど上昇していますので、リターンに対して、過剰な分配が行われているということがわかります。
ただし、基準価額が10,000円を大きく下回っていないため、悪質な分配は行われていないようですね。
※引用:ウエルスアドバイザー
利回りはどれくらい?
世界のいしずえの直近1年間の利回りは+5.68%で、3年、5年、10年平均利回りではどの期間でも4%を超えています。債券ファンドで平均利回りが4%あれば十分と言えるでしょう。
社債というのは、債券ではあるものの、企業業績にかなり影響されます。企業業績が好調であれば、社債も買われるという構造がありますので、2019年以降は株式市場が好調だったこともあり、社債も大きく価格を伸ばしたということです。
ちなみにあなたは実質利回りの計算方法はすでに理解していますか?もし、理解していないのであれば、必ず理解しておいてください。
平均利回り | |
1年 | 5.68% |
3年 | 3.98% |
5年 | 4.54% |
10年 | 5.05% |
※2023年10月時点
同カテゴリー内での利回りランキングは?
世界のいしずえは、日本を除くグローバル債券カテゴリーに属しています。
投資をするのであれば、同じカテゴリーでも優秀なパフォーマンスのファンドに投資をすべきなので、同カテゴリー内でのパフォーマンスのランキングは事前に調べておいて損はありません。
世界のいしずえは、どの期間においても上位30%程度にはランクインしており、10年平均利回りで上位10%以内にランクインしているので、かなり優秀な成果を残しています。
上位●% | |
1年 | 31% |
3年 | 32% |
5年 | 18% |
10年 | 9% |
※2023年10月時点
年別の運用利回りは?
世界のいしずえの年別のパフォーマンスも見てみましょう。
年別の運用利回りを見ることで、平均利回りを見るだけではわからない基準価額の変動の大きさを知ることができます。
平均利回りで見ると、年4%程度になりますが、毎年のパフォーマンスで見ると、毎年かなり開きがあることがわかります。この変動を投資する前に知っておかないと、「思っていたのと違う!」と思ってしまうかもしれませんので、ご注意ください。
年間利回り | |
2023年 | +10.38%(1-9月) |
2022年 | ▲6.23% |
2021年 | +8.10% |
2020年 | +0.77% |
2019年 | +15.05% |
2018年 | ▲6.39% |
2017年 | +2.63% |
2016年 | +3.69% |
2015年 | ▲4.96% |
※2023年10月時点
投信運用は長期投資が前提なので、つい出口戦略を考えずに投資をしてしまいがちです。
しかし、「投資は出口戦略にあり」と言われるほど、重要なテーマです。ぜひこれを機会に投資の出口戦略を考えてみてください。
>>まさか考えたことがない?運用が成功するか失敗するかすべてのカギを握る投信運用の出口戦略インデックスファンドとのパフォーマンス比較
世界のいしずえに投資を検討する上で、類似ファンドとのパフォーマンス比較をしてみましょう。
まったく同じというファンドがありませんので、今回は先進国債券のインデックスファンドで代表的なeMAXIS Slim 先進国債券インデックスとたわらノーロード先進国債券とパフォーマンスを比較してみました。
※引用:ウエルスアドバイザー
直近3年間においては、ほぼ全期間において、世界のいしずえは先進国債券インデックスファンドを上回っていることがわかります。
これであれば、高いコストを支払ってでも投資をする価値があると言えます。
最大下落率は?
世界のいしずえに投資をする前に、最大でどの程度下落する可能性があるのかを知っておくことは非常に重要です。どの程度下落する可能性があるかを把握しておけば、大きく下落した相場でも落ち着いて保有を続けられるからです。
それではここで世界のいしずえの最大下落率を見てみましょう。
期間 | 下落率 |
1カ月 | ▲11.31% |
3カ月 | ▲9.90% |
6カ月 | ▲8.71% |
12カ月 | ▲11.53% |
※2023年10月時点
世界のいしずえの最大下落率は2015年3月~2016年2月の1年間で▲11%となっており、株式ファンドと比べれば、下落幅は相当抑えられています。ただ、大きな下落を嫌って、債券ファンドを選んだ人からすると、それでも大きな下落幅に感じるかもしれません。
まあとはいえ、許容できる範囲内の下落幅ではあると思います。
分配健全度はどれくらい?
分配金を毎月受け取っていると、受け取っていることに安心してしまい、自分の投資元本からの配当なのか、ファンドの収益からの配当なのか調べなくなります。
そこで、分配金がファンドの収益からちゃんと支払われているのかを調べるときに役立つのが分配健全度です。
分配健全度とは、1年間の分配金の合計額と基準価額の変動幅をもとに、あなたが受け取った分配金の約何%がファンドの収益によるものなのかを計算できる指標です。
基準価額の変動幅 | 1年間の分配合計額 | 分配健全度 |
▲415円 | 840円 | ▲50% |
※2022/10/13~2023/10/12
世界のいしずえの直近1年間の分配健全度は▲50%となっています。
分配健全度は100%を切ると、一部ファンドの収益以外から分配金が支払われていることを意味しますが、100%を超えるファンドはほとんどありません。
その中で、マイナスというのは受け取った分配金のすべてがファンドの運用益以外から支払われていることを意味するので、投資した元本から切り崩されていると考えてください。
分配金利回りはどれくらい?
毎月分配型のファンドに投資をしている場合、どれくらいの分配金が受け取れるのかを知るために分配金利回りを参考にします。(分配金利回りは基準価額に対する分配金合計額で計算ができます。)
ただし、投資信託の場合、分配金利回りだけをみていると、受け取っている分配金がファンドの収益から出ているものなのか、投資元本が削られているのか、判断できません。
そのため、ファンドの運用利回りと分配金利回りを比較して、ファンドの運用利回りのほうが高ければ、あなたが受け取っている分配金がファンドの運用の収益から支払われていると判断することができます。
運用利回り | 分配金利回り | |
1年 | 5.68% | 9.3% |
3年 | 3.98% | |
5年 | 4.54% | |
10年 | 5.05% |
※2023年10月時点
世界のいしずえの分配金利回りは9%を超えており、かなり高めの設定となっています。世界のいしずえの利回りは平均して4%程度ですので、残りの5%分は投資家の元本から補填されているというわけですね。
つまりは典型的なタコ足配当になっているということです。
分配金余力はどれくらい?
毎月分配型ファンドに投資をしている場合、もう1つ気になるのが今後いつごろ、減配されそうかという点です。そんなときに役立つのが分配金余力という考え方です。
分配金余力というのは、今の分配金の水準をあと何か月続けられそうかを判断するための指標です。
明確にこの水準になったら減配されるという指標ではありませんが、12カ月を切ったファンドはたいてい近々、減配されることが多いです。
世界のいしずえの分配金余力は、減配したことで、まだ40カ月弱ありますが、分配金利回りとファンドのパフォーマンスを考慮すると、今後、どんどん減っていくことは明らかです。
分配金 | 繰越対象額 | 分配金余力 | |
120期 | 70円 | 3,021円 | 44.16カ月 |
121期 | 70円 | 2,976円 | 43.51カ月 |
122期 | 70円 | 2,938円 | 42.97カ月 |
123期 | 70円 | 2,903円 | 42.47カ月 |
124期 | 70円 | 2,858円 | 41.83カ月 |
125期 | 70円 | 2,813円 | 41.19カ月 |
126期 | 70円 | 2,777円 | 40.67カ月 |
127期 | 70円 | 2,729円 | 39.99カ月 |
128期 | 70円 | 2,682円 | 39.31カ月 |
129期 | 70円 | 2,638円 | 38.69カ月 |
130期 | 70円 | 2,601円 | 38.16カ月 |
131期 | 70円 | 2,555円 | 37.5カ月 |
評判はどう?
それでは、世界のいしずえの評判はどうでしょうか?
ネット等で口コミを調べることもできますが、資金の流出入を見ることで、評判がわかります。評判がよければ、資金が流入超過になりますし、評判が悪くなっていれば、資金が流出超過になります。
世界のいしずえは2017年以降、毎月資金流入が大きくなっており、人気が出てきていることがわかります。これもすべては分配金利回りが高いからなのですが、タコ足配当になっているこのファンドに投資をするのはおすすめできません。
それにしても、毎月分配型のファンドにしては珍しいくらい毎月資金が流入しており、人気の高さが伺えますね。
※引用:ウエルスアドバイザー
NISAとiDeCoの対応状況は?
世界のいしずえのNISAとiDeCoの対応状況を確認しておきましょう。
NISAは対応していますが、iDeCoは残念ながら対応していません。
NISA | iDeCo |
○ | × |
※2023年10月時点
三菱UFJ/マッコーリー グローバル・インフラ債券ファンド<為替ヘッジなし>(毎月決算型)『愛称:世界のいしずえ』の評価まとめと今後の見通し
世界のいしずえは2019年~2020年のパフォーマンスは目を見張るものがありましたが、ファンドの実態の収益力としては良く見積もっても4~5%程度だと思います。
そう考えると、分配利回りは9%近くあり、明らかにファンドの収益力以上の分配金が支払われています。
今は基準価額がまだ10000円近辺なので、安心だと思っている人もいるかもしれませんが、今後、ファンドのパフォーマンスが落ちれば、基準価額の下落に歯止めがかからなくなります。
また現状、典型的なタコ足配当になっていますので、くれぐれも今から投資をしようとは思わないでください。今投資をするのであれば、米国債のほうがはるかにおすすめです。
最後に、投信運用には多くのメリットもありますが、当然ながら、弱点もあります。
今も私は投信運用を続けてはいますが、私がなぜ投資信託の運用を主軸におかなくなったのか。その理由をこちらで話をしています。
>>私が痛感する投資信託の限界。多くの投資家が見逃している投信運用の弱点