2016年のファンド オブ ザ イヤーにつづき、2度目の受賞
となった三菱UFJ/AMP グローバル・インフラ債券ファンド
<為替ヘッジなし>(毎月決算型)『愛称:世界のいしずえ』。
世界のインフラ関連企業の債券に投資をしていくファンド
ですが、2019年は15%以上のリターンとなり、大きく注目
を集めています。
世界のいしずえは為替ヘッジあり/なしと毎月決算型/1年
決算型と4種類のファンドがありますが、今回は一番人気
の高い為替ヘッジ無し・毎月決算型を徹底分析していきます。
どちらにしても世界のいしずえの購入を検討している人
には参考になると思います。
世界のいしずえの基本情報
投資対象は?
世界のいしずえの投資対象は、世界のインフラ関連企業が
発行する米ドル建ての債券です。
インフラ関連企業というのは、日常生活に不可欠な公益、
通信、エネルギー、運輸などの企業のことを指します。
インフラ企業は各国の社会基盤を支えているので、収益が
安定しており、配当も安定しているというのが一般的な
考え方です。
※引用:マンスリーレポート
債券ファンドの場合、組み入れられている債券の格付けを
必ず確認しましょう。
信用力が低い債券が多数組み入れられていると、リターン
は高くなるものの、デフォルトのリスクが高まりますので、
注意が必要です。
少なくとも投資適格格付でいうBBB以上は必要です。
※引用:マンスリーレポート
世界のいしずえに組み入れられている債券は約250あり
ますが、債券の格付と国別の構成比は以下のようになっ
ています。
BBB各が約80%ということで、投資適格級の債券では
ありますが、比較的リスクは高め(リターンが高い)
債券が中心です。
ただ、日本で誰もが知っているような企業もBBB格程度
ですので、一般的に考えれば、デフォルトするリスクが
高いような債券ではありませんね。
国別の構成比を見ると、アメリカが85%を超えおり、実質
米国の社債ファンドと言っても差し支えないでしょう。
※引用:マンスリーレポート
ちなみにどのような企業の社債が組み入れられているか
で言うと、以下のように公益が約40%、通信が約30%、
エネルギーが約15%となっています。
※引用:マンスリーレポート
純資産総額は?
投資を検討するうえで、純資産総額は必ず確認するように
してください。
純資産総額は大きいほうが、ファンドマネージャーが資金
を運用する際に効率よくできたり、保管費用や監査費用が
相対的に低くなりますので、コストが低く抑えられます。
また投資信託の規模が小さくなると運用会社自体がその
投資信託に力を注がなくなりパフォーマンスが悪くなる
こともありますので注意が必要です。
世界のいしずえは2017年頃から着実に増加しており、現在
の純資産総額は約480億円です。
純資産総額の推移を見ても、最近になって日の目を浴びる
ようになったファンドであることがわかります。
※引用:マンスリーレポート
実質コストは?
投資信託には、購入時の手数料や信託報酬の他にも費用が
かかっていることをご存知ですか?
これを実質コストと言いますが、実質コストには、株式売買
手数料や有価証券取引税、監査費用などが含まれています。
特に純資産総額が小さいときには、信託報酬より実質コストが
かなり割高になっている場合もあるので、注意が必要です。
信託報酬を信用するな。知らないうちに差し引かれている実質コストの調べ方
世界のいしずえの実質コストは1.344%と債券ファンドに
しては、かなり割高です。
それに加えて高い購入時手数料もかかりますので、購入
した初年度は最低でも3.5%近く資産が目減りしてしまい
ます。
購入時手数料 | 2.2%(税込)※上限 |
信託報酬 | 1.32%(税込) |
信託財産留保額 | なし |
実質コスト | 1.344%(概算値) |
※引用:最新運用報告書
実質コスト以外にも、多くの投資家が気づいていない
投信運用での成果を出すのに妨げとなる間違った考え方
をまとめました。参考にしてください。
無料ファンド相談から見えた。多くの人が気づいていない投信運用で成果を阻む9つの誤り
世界のいしずえの評価分析
基準価額の推移は?
世界のいしずえの基準価額は2018年~2019年については、
あまり上下せずに12000円近辺をほぼ水平に推移しています。
一方で、分配金を受け取らずに再投資して運用した場合の
基準価額(青線)は15%ほど上昇していますので、分配金の
支払いと基準価額の上昇がちょうどトントンとなっている
ことがわかります。
2017年以降、毎月の分配金を大幅に増額した影響で今は
10000円を超えていますが、今後は、間違いなく基準価額
の下落に歯止めがかからなくなります。
※引用:モーニングスター
利回りはどれくらい?
世界のいしずえの直近1年間の利回りは+16.71%と債券ファ
ンドとしては、信じられないくらい高いリターンとなって
います。
社債というのは、債券ではあるものの、企業業績にかなり
影響されます。
企業業績が好調であれば、社債も買われるという構造が
ありますので、2019年は株式市場が好調だったこともあり、
社債も大きく価格を伸ばしたということです。
ただ、組入られている社債の最終利回りは3%台ですので、
今後もこの流れが続くとはあまり思わないほうが健全です。
ちなみにあなたは実質利回りの計算方法はすでに理解
していますか?
もし、理解していないのであれば、必ず理解しておいて
ください。
平均利回り | %ランク | |
1年 | 16.71% | 4% |
3年 | 4.59% | 6% |
5年 | 1.85% | 3% |
10年 | – | – |
※2020年2月時点
標準偏差は?
標準偏差まで確認する人はあまりいませんが、世界のいし
ずえの基準価額の変動幅の大きさを知るには役立ちます。
世界のいしずえの標準偏差は期間によってかなり差が出て
います。
4程度であれば、株式ファンドと比べると、かなり基準価額
の変動が小さいと言えますが、7程度だと、J-REITとほぼ
標準偏差は変わりません。
少なくとも一般的な債券ファンドよりもリスクは大きい
ファンドだということですね。
まだ計算方法を知らないと言う方はこの機会に覚えておいて
くださいね。
標準偏差 | %ランク | |
1年 | 3.92 | 65% |
3年 | 5.49 | 73% |
5年 | 7.33 | 73% |
10年 | – | – |
※2020年2月時点
年別のパフォーマンスは?
世界のいしずえの年別のパフォーマンスも見てみましょう。
こう見ると、2019年は確かに優れた結果を残していること
がわかりますが、2015年~2018年は利益を相殺してしまう
ような状況で、正直、そこまで良いパフォーマンスとは言え
ません。
年間利回り | |
2019年 | +15.05% |
2018年 | ▲6.39% |
2017年 | +2.63% |
2016年 | +3.69% |
2015年 | ▲4.96% |
※2020年2月時点
考えずに投資をしてしまいがちです。
しかし、「投資は出口戦略にあり」と言われるほど、
重要なテーマです。
ぜひこれを機会に投資の出口戦略を考えてみて
ください。
>>ここまで考えるのが本当の資産運用。多くの投資家が考えられていない投信運用の出口戦略とは
インデックスファンドとのパフォーマンス比較
世界のいしずえに投資を検討する上で、類似ファンドとの
パフォーマンス比較をしてみましょう。
まったく同じというファンドがありませんので、今回は
先進国債券のインデックスファンドで代表的なeMAXIS
Slim 先進国債券インデックスとたわらノーロード先進国
債券とパフォーマンスを比較してみました。
こう比較をしてみると、世界のいしずえは先進国債券イン
デックスファンドと比べると、かなりボラティリティが
大きいことがわかります。
直近では確かに世界のいしずえがパフォーマンスで勝って
いるのですが、インデックスファンドのほうがパフォーマ
ンスが高い時期もあるので、評価に悩みます。
5年平均利回りで見ると、世界のいしずえはプラスのリタ
ーンで終わっていますのが、eMAIXS Slim 先進国債券イ
ンデックスファンドはマイナスに転換してしまっています
ので、世界のいしずえに歩があると言っていいでしょう。
※引用:モーニングスター
最大下落率は?
世界のいしずえに投資をする前に、最大でどの程度下落
する可能性があるのかを知っておくことは非常に重要です。
どの程度下落する可能性があるかを把握しておけば、大きく
下落した相場でも落ち着いて保有を続けられるからです。
それではここで世界のいしずえの最大下落率を見てみましょう。
最大下落率は▲11%となっており投資家としてもこの程度で
下落が収まっていると安心して投資ができますね。
期間 | 下落率 |
1カ月 | ▲6.14% |
3カ月 | ▲9.90% |
6カ月 | ▲8.71% |
12カ月 | ▲11.53% |
※2020年2月時点
分配金の内訳と余力は?
毎月分配型のファンドに投資をするのであれば、分配金が
ちゃんとファンドの収益で賄われているのか確認しておいて
損はありません。
世界のいしずえでは、分配金が当期の収益以外から支払わ
れているケースが多々見られます。
世界のいしずえは2016年まで配当利回りをかなり抑えていた
のですが、2017年から毎月分配金を100円に大幅に増額しました。
そのため、2017年以降は明らかにタコ足配当が続いています。
2019年はまだ良かったのですが、明らかにファンドの収益力
よりも高い分配金を出し続けていますので、今後もタコ足配当
が続くのは間違いありません。
また、このブログでは何度も言っていますが、特別な事情が
ない限りは毎月分配型のファンドに投資すべきではありません。
計算するとよくわかる!分配金を受け取ることによるデメリットとは?
分配金 | 当期収益以外 | 繰越対象額 | |
84期 | 100円 | 66円 | 4,435円 |
85期 | 100円 | 0円 | 4,442円 |
86期 | 100円 | 71円 | 4,373円 |
87期 | 100円 | 0円 | 4,471円 |
88期 | 100円 | 76円 | 4,396円 |
89期 | 100円 | 72円 | 4,325円 |
評判はどう?
それでは、世界のいしずえの評判はどうでしょうか?
ネット等で口コミを調べることもできますが、資金の流出入
を見ることで、評判がわかります。
評判がよければ、資金が流入超過になりますし、評判が悪く
なっていれば、資金が流出超過になります。
世界のいしずえは2017年以降、毎月資金流入が大きくなって
おり、人気が出てきていることがわかります。
ただ、これには運用会社の作戦があり、ファンドオブザイヤー
を受賞すると同時に、分配金を毎月30円から毎月100円に切り
上げたことが原因です。
そのため、目先の分配利回りの高さにつられて、このファンド
を購入している人が増えているというのが実像です。
※引用:モーニングスター
世界のいしずえの今後の見通し
世界のいしずえは2019年のパフォーマンスは目を見張る
ものがありましたが、ファンドの実態の収益力としては
良く見積もっても5%程度だと思います。
そう考えると、分配利回りは10%近くあり、明らかにファ
ンドの収益力以上の分配金が支払われています。
今は基準価額が10000円を超えていますので、安心だと
思っている人もいるかもしれませんが、今後、ファンド
のパフォーマンスが落ちれば、基準価額の下落に歯止め
がかからなくなります。
くれぐれも安易に投資をしないよう注意をしてください。
当然ながら、弱点もあります。
今も私は投信運用を続けてはいますが、私がなぜ
投資信託の運用を主軸におかなくなったのか。
その理由をこちらで話をしています。
>>なぜ私が投信運用に限界を感じたのか。多くの投資家が見逃している投信運用の弱点