ここ数年、なかなか良い結果が出ていない米国リートですが、未だ根強い人気がある岡三アセットのワールド・リート・セレクション(米国)『愛称:十二絵巻』。
十二絵巻は、毎月決算型と1年決算型、為替ヘッジあり/なしの4種類がありますが、今日は、一番人気が高い毎月決算型の為替ヘッジなしについて徹底分析していきます。
1年決算型を保有している、もしくは検討している人にも役立つように書いていますので、参考にしてみてください。
「十二絵巻って投資対象としてどうなの?」
「十二絵巻って持ってて大丈夫なの?」
「十二絵巻より良いファンドってある?」
といったことでお悩みの方は、この記事を最後まで読めば、悩みは解消すると思います。
ワールド・リート・セレクション(米国)『十二絵巻』の基本情報
投資対象は?
十二絵巻の投資対象は、USリート・マザーファンドはの投資を通じて、米国のリートに投資していきます。
リートとは、投資家から集めた資金を不動産(オフィスビル、賃貸マンション、ショッピングセンター、ホテル等)に投資し、不動産から得た賃貸収入や売却益を投資家に分配する仕組みの商品です。
※引用:交付目論見書
組入銘柄数は36銘柄となっており、米国リートの銘柄数が約150銘柄ですので、かなり絞り込んで運用していることがわかります。
細かく組入銘柄をみても、イメージがわかないと思いますので、セクター別の構成比を見ていきましょう。
様々なセクターに満遍なく分散投資していることがわかります。米国リート全体のポートフォリオとそこまで大きく変わっていませんね。
※引用:マンスリーレポート
純資産総額は?
続いて、純資産総額はどうなっているか見てみましょう。純資産総額というのは、あなたを含めた投資家から集めた資金の総額だと思ってください。
純資産総額が多いほうが、ファンドマネージャーが資金を投資する際に有利であったり、他の投資家の解約の際の影響が小さくなりますので、優れた投資信託と言えます。
投資信託の規模が小さくなると運用会社自体がその投資信託に力を注がなくなりパフォーマンスが悪くなることもありますので注意が必要です。
十二絵巻は現在、304億円ほどあり、規模としては全く問題ありません。毎月分配型ファンドに対する風当たりが強くなっているので、その影響も大きいですね。
※引用:マンスリーレポート
実質コストは?
私たちが支払うコストには、目論見書に記載の信託報酬以外に、株式売買委託手数料や、保管費用、印刷費用などが含まれています。
そのため、実際に支払うコストは、目論見書記載の額より高くなるのが通例で、実際にかかる実質コストをもとに投資判断をしなければなりません。
信託報酬を信用するな。知らないうちに差し引かれている実質コストの調べ方
十二絵巻の実質コストは1.74%となっています。購入時手数料と併せると初年度は5%以上取られますので、おすすめしづらいファンドです。
購入時手数料 | 3.3%(税込)※上限 |
信託報酬 | 1.65%(税込) |
信託財産留保額 | 0.3% |
実質コスト | 1.74%(概算値) |
※引用:最新運用報告書
「ファンドの運用で成果を出すために一番大事なことは何ですか?」と聞かれてあなたは何と答えますか?
もし『ファンド選び』だと思ったとしたら、あなたはドツボに
はまっていますので、こちらの記事を読んでみてください。
ワールド・リート・セレクション(米国)『十二絵巻』の評価分析
基準価額をどう見る?
十二絵巻の基準価額は、3年間で30%近く上昇しています。
一方、分配金を受け取らずに運用した場合の基準価額(青線)は直近3年間で50%以上、上昇していますので、運用自体はうまく行っていることがわかりますね。
ただ、基準価額が2000円台ですので、いままでいかに無謀な分配を続けてきたかがよくわかります。
※引用:ウエルスアドバイザー
利回りはどれくらい?
十二絵巻の直近1年間の利回りは+3.28%となっています。5年、10年平均は8%台ですが、3年平均利回りは15%を超えており、高いパフォーマンスとなっています。
ただ、この利回りだけを見て判断してはいけません。類似ファンドとのパフォーマンスをしっかりと比較した上で投資をするようにしてください。
ちなみにあなたは実質利回りの計算方法はすでに理解していますか?もし、理解していないのであれば、必ず理解しておいてください。
平均利回り | |
1年 | +3.28% |
3年 | +15.85% |
5年 | +8.50% |
10年 | +8.41% |
※2023年10月時点
10年間高いパフォーマンスを出し続けている優秀なファンド達も参考にしてみてください。
10年間圧倒的に高いリターンを出している海外REIT ランキング
同カテゴリー内での利回りランキングは?
十二絵巻は、国際RIETの特定地域カテゴリーに属しています。
投資をするのであれば、同じカテゴリーでも優秀なパフォーマンスのファンドに投資をすべきなので、同カテゴリー内でもパフォーマンスのランキングは事前に調べておいて損はありません。
十二絵巻は、直近1年を除いて上位30%程度にランクインしており、非常に優秀な成果を残しています。
上位●% | |
1年 | 67% |
3年 | 33% |
15% | |
10年 | 28% |
※2023年10月時点
年別のパフォーマンスは?
十二絵巻の年別のパフォーマンスは以下のようになっています。
思った以上にマイナスで終わっている年が多いですね。
投資家の方の中には、毎年安定してプラスのリターンを出していると勘違いをしている人もいるのですが、実際はこのように良い年と悪い年があることを忘れないでください。
年間利回り | |
2023年 | +6.78(1-9月) |
2022年 | ▲14.56% |
2021年 | +62.83% |
2020年 | ▲11.72% |
2019年 | +24.81% |
2018年 | ▲8.32% |
2017年 | +1.74% |
2016年 | ▲3.84% |
2015年 | ▲0.90% |
2014年 | +47.44% |
※2023年10月時点
投信運用は長期投資が前提なので、つい出口戦略を考えずに投資をしてしまいがちです。
しかし、「投資は出口戦略にあり」と言われるほど、重要なテーマです。ぜひこれを機会に投資の出口戦略を考えてみてください。
>>ここまで考えるのが本当の資産運用。多くの投資家が考えられていない投信運用の出口戦略とはインデックスファンドとの利回り比較
十二絵巻に投資をするのであれば、より低コストで米国リートに投資ができるインデックスファンドとパフォーマンスを比較しておいて損はありません。
今回は、S&P 米国RIET指数に連動するeMAXIS 米国リートインデックスとパフォーマンスを比較しました。
※引用:ウエルスアドバイザー
直近3年間では、ほぼ全期間において、十二絵巻がインデックスファンドを上回る結果となりました。
これであれば少なくとも高いコストを支払って米国リートに投資をする価値があると言えますね。
十二絵巻 | eMAIXS 米国リート | |
1年 | +3.28% | +6.42% |
3年 | +15.85% | +17.24% |
5年 | +8.50% | +7.50% |
10年 | +8.41% | - |
※2023年10月時点
より長期のパフォーマンスで比較しても十二絵巻のほうが優れているので、高いコストを支払う価値がありそうです。
類似ファンドとの利回り比較
十二絵巻に投資をするのであれば、同じくアクティブファンドで、米国リートに投資をしているファンドとパフォーマンスを比較してからでも遅くありません。
今回は、十二絵巻と同じく、毎月分配型のダイワ・USリート・オープン・Bコースと比較をしました。
※引用:ウエルスアドバイザー
直近3年間のパフォーマンスは、競ってはいますが、終始、ダイワ・USリート・オープン・Bコースが勝っています。
もう少し長期のパフォーマンスでも比較をしてみても、ダイワ・USリート・オープン・Bコースのほうがパフォーマンスで上回っており、これであれば、あえて十二絵巻に投資をするメリットはないでしょう。
十二絵巻 | ダイワUS-REIT | |
1年 | +3.28% | +5.95% |
3年 | +15.85% | +17.80% |
5年 | +8.50% | +9.90% |
10年 | +8.41% | +10.26% |
※2023年10月時点
最大下落率はどれくらい?
投資するにあたって、最大どの程度下落する可能性があるのか知っておくことは非常に重要です。先に下落幅を知っておくことで、大きく下落したときも、慌てて売らずに冷静な判断ができるようになります。
期間 | 下落率 |
1カ月 | ▲37.07% |
3カ月 | ▲57.01% |
6カ月 | ▲64.68% |
12カ月 | ▲65.16% |
※2023年10月時点
十二絵巻の最大下落率は、2008年4月~2009年3月で▲65.16%となっています。リターンのわりに、下落したときのインパクトが大きすぎるので、正直、保有したいと思えません。
最大下落率を知ってしまうと、少し足が止まってしまうかもしれません。しかし、以下のことをしっかり理解しておけば、元本割れの可能性を限りなく低くすることが可能です。
分配健全度はどれくらい?
分配金を毎月受け取っていると、受け取っていることに安心してしまい、自分の投資元本からの配当なのか、ファンドの収益からの配当なのか調べなくなります。
そこで、分配金がファンドの収益からちゃんと支払われているのかを調べるときに役立つのが分配健全度です。
分配健全度とは、1年間の分配金の合計額と基準価額の変動幅をもとに、あなたが受け取った分配金の約何%がファンドの収益によるものなのかを計算できる指標です。
基準価額の変動幅 | 1年間の分配合計額 | 分配健全度 |
▲56円 | 120円 | 53% |
※2022/10/18~2023/10/17
十二絵巻の直近1年間の分配健全度は53%となっています。
分配健全度は100%を切ると、一部ファンドの収益以外から分配金が支払われていることを意味しますが、0%を下回るということは、ファンドの収益からの支払いは一切ないということを意味します。
十二絵巻の分配健全度は50%程度なので、あなたが直近1年間に受け取った分配金の半分は、投資元本から支払われているということです。
分配金利回りはどれくらい?
毎月分配型のファンドに投資をしている場合、どれくらいの分配金が受け取れるのかを知るために分配金利回りを参考にします。
ただし、投資信託の場合、分配金利回りだけをみていると、受け取っている分配金がファンドの収益から出ているものなのか、投資元本が削られているのか、判断できません。
そのため、ファンドの運用利回りと分配金利回りを比較して、ファンドの運用利回りのほうが高ければ、あなたが受け取っている分配金がファンドの運用の収益から支払われていると判断することができます。
運用利回り | 分配利回り | |
1年 | +3.28% | 5.8% |
3年 | +15.85% | |
5年 | +8.50% | |
10年 | +8.41% |
※2023年10月時点
十二絵巻の分配金利回りは5.8%と高めです。
ファンドの運用利回りを見てみると、8%程度で運用できている期間もあるので、何とかファンドの収益で分配金を賄える水準と言えますね。
分配金余力はどれくらい?
毎月分配型ファンドに投資をしている場合、もう1つ気になるのが今後いつごろ、減配されそうかという点です。
そんなときに役立つのが分配金余力という考え方です。分配金余力というのは、今の分配金の水準をあと何か月続けられそうかを判断するための指標です。
明確にこの水準になったら減配されるという指標ではありませんが、12カ月を切ったファンドはたいてい近々、減配されることが多いです。
十二絵巻の分配金余力は、70カ月程度なのでまだ大丈夫でしょう。
分配金 | 繰越対象額 | 分配金余力 | |
223期 | 10円 | 810円 | 82.0カ月 |
224期 | 10円 | 800円 | 81.0カ月 |
225期 | 10円 | 793円 | 80.3カ月 |
226期 | 10円 | 793円 | 80.3カ月 |
227期 | 10円 | 792円 | 80.2カ月 |
228期 | 10円 | 786円 | 79.6カ月 |
229期 | 10円 | 782円 | 79.2カ月 |
230期 | 10円 | 775円 | 78.5カ月 |
231期 | 10円 | 766円 | 77.6カ月 |
232期 | 10円 | 763円 | 77.3カ月 |
233期 | 10円 | 755円 | 76.5カ月 |
234期 | 10円 | 747円 | 75.7カ月 |
※引用:最新運用報告書
評判はどう?
十二絵巻の評判はネットでの書き込みなどで調べる方法もありますが、評判を知るうえで一番役に立つのが、月次の資金流出入額でしょう。
資金が流出しているということは、それだけこのファンドを解約している人が多いということなので、評判が悪いということです。
十二絵巻は、2021年に50%の減配となってから、毎月資金が流出超過となっています。ファンド自体のパフォーマンスは悪くなく、分配利回りも適正な水準ですが、無知な人たちがタコ足配当ファンドに目がくらんで資金を移動させているのだと思います。
※引用:ウエルスアドバイザー
NISAとiDeCoの対応状況は?
十二絵巻のNISAやiDeCoの対応状況ですが、残念ながら、両方とも対応していません。
NISA | iDeCo |
× | × |
※2023年10月時点
ワールド・リート・セレクション(米国)『十二絵巻』の評価まとめと今後の見通し
十二絵巻に期待できる利回りは中長期で見ても、年利で6~7%程度だと思います。そういう意味では、現在の十二絵巻の分配金利回りは5.7%前後ですので、悪くない水準ではあります。
毎月分配金をもらえていると、自分のファンドがどのような状況(タコ足配当)になっているのか気づくのに遅くなりがちです。
毎月分配型の投資信託は今でも年金変わりの手段として非常に人気がありますが、毎月年金のように配当金を受け取れるという表面的なメリットだけにフォーカスしていてはいけません。
銘柄の選定においては、あなたが選んだ投資信託がしっかりと利益を上げてくれなければ、意味がありません。
米国リートのインデックスファンドや他の米国RIETのアクティブファンドに投資をするよりは、まだ良いですが、そもそも論として、米国リートに投資をすべきなのかは検討したほうがよいと思います。
毎月分配金をもらいたいのであれば、他にもっとパフォーマンスが優れたファンドがありますし、パフォーマンスにこだわるのであれば、あえてリートでなくても構わないと思います。
最後に、投信運用には多くのメリットもありますが、当然ながら、弱点もあります。
今も私は投信運用を続けてはいますが、私がなぜ投資信託の運用を主軸におかなくなったのか。その理由をこちらで話をしています。
>>なぜ私が投信運用に限界を感じたのか。多くの投資家が見逃している投信運用の弱点