日興アセットマネジメントが設定する、「中華圏株式ファンド」
(愛称:チャイワン)。

 

設定は2010年10月であり、当時はまだ毎月分配型ファンドが
毎月のように乱立していた時期でした。

 

しかし、「中国株で毎月分配」のコンセプトは当時としても斬新
であり、業界では驚きと懐疑の声が上がったものです。

 

今日は、「チャイワン」の特徴と今後の中国株式市場を交えた
ファンドの見通しについて徹底分析していきます。

 

 

中華圏株式ファンド(毎月分配型)「チャイワン」の基本情報

投資対象は?

投資対象は中国経済圏(中国・香港・台湾)の株式です。

 

中国株式の比率が85%程度となっています。組入銘柄数は86銘柄、
上位銘柄を見てみると、テンセント、ピンアン保険、台湾セミ
コンダクタ―が続きます。

 

上位銘柄はどこも有名な企業ばかりです。

 


※引用:マンスリーレポート

 

運用の特徴は?

中華圏株式ファンド「チャイワン」は、同じ日興AMが運用する
「チャイナランド株式ファンド(適格機関投資家専用)」にほぼ
100%投資します。

 

そこから「チャイナランド株式マザーファンド」と「中国A株マザー
ファンド」というマザーファンドを通じて運用対象の株式を買い付けて
います。

 

中華圏株式ファンド「チャイワン」が設定された当時、中国は外国人
による自国の上場株式への投資や人民元の保有に制限を設けていました。

 

具体的には、外国人が中国株式に投資するためには「QFII(適格海外
機関投資家)」と呼ばれる資格を取得しないと、自国の通貨を人民元に
両替して中国株式を購入することができなかったのです。

 

受益者が個人である「チャイワン」ではQFIIの資格を取得できないため、
日興アセットマネジメントは「チャイナランド株式ファンド(適格機関
投資家専用)」でQFIIを取得することで中国株式への投資を可能にして
いたものと思われます。

 


※引用:交付目論見書

 

純資産総額は?

続いて、純資産総額はどうなっているか見てみましょう。

 

純資産総額というのは、あなたを含めた投資家から集めた資金の
総額だと思ってください。

 

ファンドの純資産総額が小さいと、適切なタイミングで銘柄を入れ
替えることができなかったり、純資産総額が大きく減少していると、
ファンドの組み替えがうまくできず、予期せぬマイナスを生む可能性
がありますので、事前に確認すべきポイントの1つです。

まさか知らない?絶対知っておきたい純資産総額のマメ知識

 

「チャイワン」の純資産総額は一時期1000億円を越えていましたが、
パフォーマンスの悪化に伴い大きく減少し、370億円程度まで減少
しています。

 

規模としてはまったく問題ありませんね。


※引用:マンスリーレポート

 

実質コストは?

私たちが支払うコストには、目論見書に記載の信託報酬以外に、
株式売買委託手数料や、保管費用、印刷費用などが含まれています。

 

そのため、実際に支払うコストは、目論見書記載の額より高くなる
のが通例で、実際にかかる実質コストをもとに投資判断をしなければ
なりません。

信託報酬を信用するな。知らないうちに差し引かれている実質コストの調べ方

 

中華圏株式ファンド「チャイワン」の実質コストは1.78%となっており、
近年のファンドの信託報酬からするとかなり割高です。

 

不可解なのは購入手数料が、なぜか最大で3.85%もかかる点です。

 

販売会社が投資信託の販売に要する事務コストは投資対象が日本株で
あろうと中国株であろうと変わらないはずなので、販売会社に
「チャイワン」を優先的に売らせるべくこのようなインセンティブを
与えたと見るべきでしょう。

投資信託の手数料は安ければ安いほどいいという勘違い

購入時手数料 3.85%(税込)
信託報酬 1.76%(税込)
信託財産留保額 0.5%
実質コスト 1.78%(概算値)

※引用:最新運用報告書

実質コストを加味しても、チャイワンよりはるかに優れた海外株式ファンドランキング

中華圏株式ファンド(毎月分配型)「チャイワン」の評価分析

基準価格の推移は?

チャイワンの基準価額は直近3年間で45%ほど下落しています。

分配金を受け取らずに運用に回した場合の基準価額(青線)を
見てみると、コロナショックで下落したとはいえ、3年間で
20%ほど増えていますので、過剰な分配が行われていることが
ここからもわかります。

 


※引用:モーニングスター

 

利回りはどれくらい?

チャイワンの利回りを見てみましょう。直近1年間の
利回りは9.70%となっています。

 

半年前と比べると平均利回りはだいぶ落ちましたが、
コロナショックで大きくマイナスにならなかった
という点は勢いのある中国株ならではの値動きです。

 

ちなみにあなたは実質利回りの計算方法はすでに理解していますか?
もし、理解していないのであれば、必ず理解しておいてください。

これがわかっていないとマズイ。実質利回りの計算方法。

平均利回り 2020年1月 2020年7月
1年 31.14% 9.70%
3年 9.09% 4.34%
5年 2.51% ▲1.38%
10年

※2020年7月時点

 

同カテゴリー内における利回りランキング(上位●%)の変化

チャイワンは国際株式の中国カテゴリーに属しています。

 

投資をするのであれば、同じカテゴリーでも優秀なパフォーマンス
のファンドに投資をすべきなので、同カテゴリー内でもパフォー
マンスのランキングは事前に調べておいて損はありません。

 

チャイワンは、もともと平均的なパフォーマンスでしたが、
コロナショック前と比べると、全体的に順位を落としている
ことがわかります。

2020年1月 2020年7月
1年 39% 65%
3年 52% 61%
5年 69% 72%
10年

※2020年7月時点

 

年別のパフォーマンスは?

チャイワンの年別の運用パフォーマンスも見てみましょう。

 

大きくプラスのリターンを出している年もありますが、大きく
マイナスとなっている年の下落幅も大きく、かなり変動が大きい
ことがわかります。

 

トータルではプラスのリターンとなっていますが、この変動の
大きさは投資初心者には耐えられないと思いますので、あまり
おすすめはしません。

年間利回り
2020年 0.80%(1-6月)
2019年 31.14%
2018年 ▲26.19%
2017年 34.12%
2016年 ▲15.06%
2015年 2.65%
2014年 34.23%

※2020年7月時点

 

投信運用は長期投資が前提なので、つい出口戦略を
考えずに投資をしてしまいがちです。

しかし、「投資は出口戦略にあり」と言われるほど、
重要なテーマです。

ぜひこれを機会に投資の出口戦略を考えてみて
ください。

>>ここまで考えるのが本当の資産運用。多くの投資家が考えられていない投信運用の出口戦略とは

 

類似ファンドとのパフォーマンス比較

アクティブファンドに投資をするのであれば、同カテゴリーの
アクティブファンドとパフォーマンスを比較してから投資を
しても遅くはありません。

 

今回は、毎月分配型の株式ファンドであるアライアンス・バーン
スタインの米国成長株投信Dコースとパフォーマンスを比較しま
した。

 

一目でわかるとおり、チャイワンの完敗です。

 

中国株は成長著しいイメージがあるかもしれませんが、米国株
と比べるとどうしてもパフォーマンスで劣ります。

 

毎月分配型で分配金を受け取りたいのであれば、パフォー
マンスが高いファンドを選ぶにようにしてください。

 


※引用:モーニングスター

 

5年以上の長期の利回りでみても、米国成長株投信Dコース
のほうが圧倒的に優れています。

 

チャイワン 米国成長株投信
1年 9.70% 21.99%
3年 4.34% 16.96%
5年 ▲1.38% 12.39%
10年

※2020年7月時点

 

最大下落率は?

投資するのであれば、物件満彩がどの程度下落する可能性が
あるのかは知っておきたいところです。

 

もちろん標準偏差から変動幅を予測することはできますが、
やはり過去にどの程度下落したことがあるのかを調べるのが
よいでしょう。

 

チャイワンは、2015年6月~2016年5月で最大▲41.51%の下落と
なっています。

 

リーマンショックでなくても40%超の下落を記録していますので、
相場が荒れるとさらに大きい下落が起きるかもしれません。

 

考えなしの長期保有が自分の首を絞めますが下落したからといって
すぐ売却してしまうと一番損失が大きくなりますので、注意して
くださいね。

期間 下落率
1カ月 ▲19.23%
3カ月 ▲31.91%
6カ月 ▲25.57%
12カ月 ▲41.51%

※2020年7月時点

 

 

分配健全度はどれくらい?

分配金を毎月受け取っていると、受け取っていることに安心
してしまい、自分の投資元本からの配当なのか、ファンドの
収益からの配当なのか調べなくなります。

 

そこで、分配金がファンドの収益からちゃんと支払われている
のかを調べるときに役立つのが分配健全度です。

 

分配健全度とは、1年間の分配金の合計額と基準価額の変動幅を
もとに、あなたが受け取った分配金の約何%がファンドの収益
によるものなのかを計算できる指標です。

基準価額の変動幅 1年間の分配合計額 分配健全度
▲224円 580円 61%

※2019/7/27~2020/7/26

 

チャイワンの直近1年間の分配健全度は61%となっています。

 

分配健全度は100%を切ると、一部ファンドの収益以外から
分配金が支払われていることを意味しますが、0%を下回る
ということは、ファンドの収益からの支払いは一切ない
ということを意味します。

 

コロナショックの影響も当然ありますが、あなたが受け
取っている分配金の約40%はファンドの収益以外から
支払われていたことを意味します。

 

現実はなかなか難しいですが、できる限り分配健全度が
100%に近いファンドを選ぶようにしましょう。

 

そのためには、運用利回りがしっかりと高いファンドを
選ばなければまず100%に近づくことはありません。

 

分配金利回りはどれくらい?

毎月分配型のファンドに投資をしている場合、どれくらいの
分配金が受け取れるのかを知るために分配金利回りを参考
にします。

 

分配金利回りは1年間で受け取った分配金の合計を基準価額
で割り戻すことで計算できます。

 

ただし、投資信託の場合、分配金利回りだけをみていると、
受け取っている分配金がファンドの収益から出ている
ものなのか、投資元本が削られているのか、判断できません。

 

そのため、ファンドの運用利回りと分配金利回りを比較して、
ファンドの運用利回りのほうが高ければ、あなたが受け取って
いる分配金がファンドの運用の収益から支払われていると
判断することができます。

 

チャイワンの分配金利回りは24%なので、かなり高いです。

 

ただ、ファンドの運用利回りよりも高いということは、
その分、あなたの投資資金から支払われていることを
意味します。

 

未だ多くの投資家が勘違いをしながら、分配金利回りが
高いファンドに投資をしていますが、くれぐれも気を
つけてほしいと思います。

運用利回り 分配金利回り
1年 9.70% 24%
3年 4.34%
5年 ▲1.38%
10年

※2020年7月時点

 

分配金余力はどれくらい?

毎月分配型ファンドに投資をしている場合、もう1つ気になる
のが今後いつごろ、減配されそうかという点です。

 

そんなときに役立つのが分配金余力という考え方です。

 

分配金余力というのは、今の分配金の水準をあと何か月
続けられそうかを判断するための指標です。

 

明確にこの水準になったら減配されるという指標では
ありませんが、12カ月を切ったファンドはたいてい近々、
減配されることが多いです。

 

チャイワンの分配金余力はまだ88カ月程度あります。

 

かなり分配利回りは高いですが、まだ余力があると言えますね。

分配金 繰越対象額 分配金余力
103期 50円 4,301円 87.0カ月
104期 50円 4,306円 87.0カ月
105期 50円 4,314円 87.2カ月
106期 50円 4,320円 87.4カ月
107期 50円 4,327円 87.5カ月
108期 50円 4,333円 87.6カ月
109期 50 4,342円 87.8カ月
110期 50 4,349円 87.9カ月
111期 50 4,358円 88.1カ月
112期 50 4,365円 88.3カ月
113期 50 4,374円 88.4カ月
114期 50 4,381円 88.6カ月

積立NISAとiDeCoの対応状況は?

積立NISAやiDeCoで積立投資を検討している人も多いと
思います。

 

そこで、積立NISAやiDeCoの対応状況をまとめました。

積立NISA iDeCo
× ×

※2020年7月時点

 

評判はどう?

チャイワンの評判を知るうえで、月々の資金流出入額が参考になります。

 

資金が流入超過となっていれば、ファンドを購入している人が多い
ということになりますので、評判が良くなっているということです。

 

チャイワンへの評判は、銀行が積極的に販売するようなタイプの
ファンドでは無いため証券会社で購入した人が大層だと思われますが、
中国株式が投資対象であることと毎月分配型ファンドである点に
ネガティブなコメントが多いようです。

 

2018年末にパフォーマンスが悪化して以来、資金の流出が
止まりません。

毎年、相当高いパフォーマンスを出さなければ、持ち直すこと
は難しいので、今後も流出が続くものと思われます。

 


※引用:モーニングスター

 

中華圏株式ファンド(毎月分配型)「チャイワン」の評価まとめと今後の見通し

中国株式の値動きについては、2017年ほどの力強い動きは望み
にくいものの、企業業績の向上や各種経済統計データの良好な
数値にみられる通り引き続き緩やかに上昇していくと考えられます。

 

特に中国A株のMSCI指数への組み入れ、上海・香港ストックコネクト
による中国株式の流動性向上は新たな投資機会を求める海外からの
新規資金を呼び込むことになりそうです。

 

これを受けて「チャイワン」の運用成果も良好になることが期待
できます。

 

しかし、これまでのトータルリターンについては中国株式に
投資する他の同種ファンドと比べて優れているとはとても言えない
水準のため、果たして「チャイワン」が良好な投資環境の恩恵を
最大限に享受できるかは微妙なところです。

 

中国株式は楽観的な見通しが可能と思われますが、やはり
「チャイワン」のような高コストで、過剰な分配を出し続けて
いるファンドというのは、健全な状態にあるとは言えません。

 

そもそも毎月分配型のファンドはあまりおすすめしませんが、
どうしても分配金を受け取りたいということであれば、アライ
アンス・バーンスタインの米国成長株投信Dコースへの
乗り換えを検討するべきです。

 

 

最後に、投信運用には多くのメリットもありますが、
当然ながら、弱点もあります。

今も私は投信運用を続けてはいますが、私がなぜ
投資信託の運用を主軸におかなくなったのか。

その理由をこちらで話をしています。

>>なぜ私が投信運用に限界を感じたのか。多くの投資家が見逃している投信運用の弱点