近年、非常に話題となっているEV(電気自動車)関連ファンド。

 

化石燃料を必要としない新エネルギー車の開発が世界中で
進んでおり、ブルームバーグによれば、今後20年のうちに
世界の自動車の3分の1がEVに置き換わるとまで言われて
います。

 

大和証券が力を入れて販売しているグローバルEV関連株
ファンドと併せて、日興が販売に注力しているモビリティ
・イノベーション・ファンドが大きく純資産額を伸ばしています。

 

今日は、このファンドについて独自目線で分析していきます。

 

 

モビリティ・イノベーション・ファンドの基本情報

投資対象は?

投資対象は、日本を含む世界の自動車関連企業の株式に
投資をしていきます。

 

自動車関連企業というのは、自動運転車、電動自動車(EV)、
車のIT化、車のシェアリングに関連した企業を指します。

 

国別の比率で見ると、アメリカが約60%、日本が約10%、
台湾が約5%程度となっています。

 


※引用:マンスリーレポート

 

テーマ別にみると、車のIT化は約40%、EVが約25%、
自動運転車が比率が約30%と高くなっています。

 


※引用:マンスリーレポート

 

もう少しイメージがつきやすいように組入銘柄上位を見て
みましょう。

 

1位のアンシスはエンジニアリング分野で利用されるシュミ
レーションソフトを開発する会社です。

 

2位のスプランクはAIを活用したデータ解析を行うソフト
ウェアを提供する会社です。自動運転や車のメンテナンス
などに大容量のデータ収集や解析が行われますが、その際に
活かされます。

 

3位のメディアテックは台湾の半導体設計・開発の大手企業です。

 

純資産総額は?

続いて、純資産総額はどうなっているか見てみましょう。
純資産総額というのは、あなたを含めた投資家から集めた
資金の総額だと思ってください。

 

ファンドの純資産総額が小さいと、適切なタイミングで銘柄
を入れ替えることができなかったり、純資産総額が大きく
減少していると、ファンドの組み替えがうまくできず、予期
せぬマイナスを生む可能性がありますので、事前に確認すべき
ポイントの1つです。

まさか知らない?絶対知っておきたい純資産総額のマメ知識

 

モビリティ・イノベーション・ファンドは、設定以来、急速な
スピードで純資産総額を増やし、3000億円を越えるまでに成長
しましたが、その後パフォーマンスが優れず下落傾向にあります。

 

現在は1100億円程度ですので、規模としては全く問題ありません。

 

証券会社は同じテーマのファンドをあえて同じタイミングで
出すことでマーケティング効果を最大化させようとしますが、
日興SMBCもまさに恩恵を受けた形ですね。

 


※引用:マンスリーレポート

 

実質コストは?

私たちが支払うコストには、目論見書に記載の信託報酬
以外に、株式売買委託手数料や、保管費用、印刷費用など
が含まれています。

 

そのため、実際に支払うコストは、目論見書記載の額より
高くなるのが通例で、実際にかかる実質コストをもとに
投資判断をしなければなりません。

信託報酬を信用するな。知らないうちに差し引かれている実質コストの調べ方

 

モビリティ・イノベーション・ファンドの実質コストは
1.932%で、かなり割高となっています。

 

販売手数料と併せると初年度は5%程度取られてしまうので、
普通に考えればかなり割高ですね。

購入時手数料 3.3%(税込)※上限
信託報酬 1.7985%(税込)
信託財産留保額 0
実質コスト 1.932%(概算値)

※引用:最新運用報告書

 

実質コスト以外にも、多くの投資家が気づいていない
投信運用での成果を出すのに妨げとなる間違った考え方
をまとめました。参考にしてください。

無料ファンド相談から見えた。多くの人が気づいていない投信運用で成果を阻む9つの誤り

 

モビリティ・イノベーション・ファンドの評価分析

基準価格をどう見る?

モビリティ・イノベーション・ファンドの基準価額は2018年
以降、10,000円を割り込んでおり、2020年にようやく戻って
きたかというタイミングでまた大きく下落してしまいました。

 


※引用:モーニングスター

 

利回りはどれくらい?

モビリティ・イノベーション・ファンドの直近1年間の利回りは
▲12.07%となっています。同カテゴリーのファンドの中で平均
的な水準なので、海外株式もかなりコロナショックの影響で
マイナスを出していますね。

 

ちなみにあなたは実質利回りの計算方法はすでに理解していますか?
もし、理解していないのであれば、必ず理解しておいてください。

これがわかっていないとマズイ。実質利回りの計算方法。

平均利回り %ランク
1年 ▲12.07% 51%
3年
5年
10年

※2020年4月時点

 

10年間高いパフォーマンスを出し続けている優秀なファンド達も
参考にしてみてください。

10年間圧倒的に高いリターンを出している海外株式ファンドランキング

 

標準偏差は?

標準偏差まで確認する人はあまりいませんが、モビリティ・
イノベーション・ファンドの基準価額の変動幅の大きさを
知るには役立ちます。

 

もともと標準偏差がかなり大きいファンドだったので、
コロナショックで大きく上昇することはなかったので
すが、通常の株式ファンドと比べると、かなり値動きが
大きいファンドです。

 

標準偏差から将来リターンがある程度予測できるのはご存じでしょうか?
まだ計算方法を知らないと言う方はこの機会に覚えておいてくださいね。

本当にできてる?標準偏差から予測する将来リターンの計算方法

標準偏差 %ランク
1年 28.18 86%
3年
5年
10年

※2020年4月時点

 

年別のパフォーマンスは?

モビリティ・イノベーション・ファンドの年別のパフォー
マンスも見てみましょう。

 

2018年、2020年には20%以上のマイナスで、2019年は
20%以上のプラスということで、かなり値動きは大きい
です。

 

直近3年間は株式市場全体の値動きが大きかったので、
多くのファンドが似たような結果とはなっていますが、
この値動きはさすがに怖いと思う投資家も多いでしょう。

年間利回り
2020年 ▲22.05%(1-3月)
2019年 +28.19%
2018年 ▲22.57%
2017年

※2020年4月時点

 

投信運用は長期投資が前提なので、つい出口戦略を
考えずに投資をしてしまいがちです。

しかし、「投資は出口戦略にあり」と言われるほど、
重要なテーマです。

ぜひこれを機会に投資の出口戦略を考えてみて
ください。

>>ここまで考えるのが本当の資産運用。多くの投資家が考えられていない投信運用の出口戦略とは

 

インデックスファンドとのパフォーマンス比較

モビリティ・イノベーション・ファンドに投資を検討する上で、
より低コストで運用ができるインデックスファンドとのパフォー
マンス比較をしてみましょう。

 

今回は、先進国株式の代表的指数であるMSCIコクサイに連動する
eMAXIS Slim先進国株式インデックスと比較をしてみました。

 

結果は、eMAXIS Slim 先進国株式インデックスの圧勝となって
います。これでは、高いコストを支払ってまで投資をする価値は
ありません。

 


※引用:モーニングスター

 

参考までに、他のモビリティ関連のファンドともパフォーマンスを
比較してみます。

 

すべてのファンドでパフォーマンスがマイナスとなっています。
その中でもモビリティ・イノベーション・ファンドは最下位で、
厳しい結果となっています。


※引用:モーニングスター

 

最大下落率は?

モビリティ・イノベーション・ファンドに投資をする前に、
最大でどの程度下落する可能性があるのかを知っておくこと
は非常に重要です。

 

どの程度下落する可能性があるかを把握しておけば、大きく
下落した相場でも落ち着いて保有を続けられるからです。

 

それではここでモビリティ・イノベーション・ファンドの
最大下落率を見てみましょう。

 

最大下落率は半年間で20%超の下落となっています。

 

最大下落率を知ってしまうと、少し足が止まってしまう
かもしれません。

 

しかし、以下のことをしっかり理解しておけば、元本割れ
の可能性を限りなく低くすることが可能です。

元本割れを回避するためにできるたったひとつのこととは?

期間 下落率
1カ月 ▲14.06%
3カ月 ▲19.64%
6カ月 ▲21.32%
12カ月 ▲19.58%

※2020年4月時点

 

評判はどう?

それでは、モビリティ・イノベーション・ファンドの評判は
どうでしょうか?

 

ネット等で口コミを調べることもできますが、資金の流出入を
見ることで、評判がわかります。

 

評判がよければ、資金が流入超過になりますし、評判が悪くなって
いれば、資金が流出超過になります。

 

モビリティ・イノベーション・ファンドは新規設定と同時に
大きな資金流入がありました。しかし、パフォーマンスが優れず、
すぐに資金流出超過となっています。

 

今の状況では、評判がよくなってくることはなさそうですね。


※引用:モーニングスター

 

モビリティ・イノベーション・ファンドの今後の見通しと評価まとめ

いかがでしょうか?

 

今後、環境を考えた電気自動車や自動運転車の普及は進んでいく
と思います。ただ、私個人としては、市場に与えるインパクトと
いう点に関しては疑問が残ります。

 

例えば、AIであれば、老若男女までキーワードは知っていますし、
「人間の仕事がAIに奪われる」ですとか、「AIが囲碁で名人を倒した」
ですとか、身近なところにAIが入り込んできており、AIで生活が劇的に
変化していくという大きな期待感を多くの投資家が持っています。

 

そのため、多くの投資家がAIに関連するテーマの株式を積極的に
購入するため、ファンドの基準価額も上がっていくわけです。

 

一方で、電気自動車や自動運転車は将来性はあるものの、自動車を
保有していない層も増えてきており、車に興味がある人というのは、
そこまで多くないと思います。

 

このように考えますと、微増はすると思いますが、AIファンドなどと
比べると、大きく伸びづらいのではないかと考えています。

 

こういった新規設定のテーマ型ファンドというのは、将来の
可能性について、期待をさせて、購入させるというのが常套
手段です。

 

私個人は、アクティブファンドへの投資が趣味なので、コスト
が高すぎる!と思っても、それ以上のリターンが望めそうで
あれば、積極的に投資をしていきます。

 

ただし、インデックスファンドにパフォーマンスで負けている
ようなファンドでは投資するに値しません。AIファンドのほう
がよほど期待が持てるでしょう。

 

 

最後に、投信運用には多くのメリットもありますが、
当然ながら、弱点もあります。

今も私は投信運用を続けてはいますが、私がなぜ
投資信託の運用を主軸におかなくなったのか。

その理由をこちらで話をしています。

>>私が痛感する投資信託の限界。多くの投資家が見逃している投信運用の弱点