近年、非常に話題となっているEV(電気自動車)関連ファンド。
化石燃料を必要としない新エネルギー車の開発が世界中で
進んでおり、ブルームバーグによれば、今後20年のうちに
世界の自動車の3分の1がEVに置き換わるとまで言われて
います。
設定当時は悲惨なパフォーマンスだったBNYメロンの
モビリティ・イノベーション・ファンドはどうなのでしょうか?
「モビリティ・イノベーション・ファンドって投資対象としてどうなの?」
「モビリティ・イノベーション・ファンドって持ってて大丈夫なの?」
「モビリティ・イノベーション・ファンドより良いファンドってある?」
といったことでお悩みの方は、この記事を最後まで読めば、
悩みは解消すると思います。
モビリティ・イノベーション・ファンドの基本情報
投資対象は?
投資対象は、日本を含む世界の自動車関連企業の株式に
投資をしていきます。
自動車関連企業というのは、自動運転車、電動自動車(EV)、
車のIT化、車のシェアリングに関連した企業を指します。
国別の比率で見ると、アメリカが約60%、次いで、中国、
ドイツとなっています。
※引用:マンスリーレポート
テーマ別にみると、EVが約40%、車のIT化は約25%
自動運転車が比率が約25%と高くなっています。
※引用:マンスリーレポート
純資産総額は?
続いて、純資産総額はどうなっているか見てみましょう。
純資産総額というのは、あなたを含めた投資家から集めた
資金の総額だと思ってください。
ファンドの純資産総額が小さいと、適切なタイミングで銘柄を入れ
替えることができなかったり、ファンドの運用で必ず発生する
運営コストが相対的に高くなるので、ファンドのパフォーマンスを
悪化させる原因になります。
モビリティ・イノベーション・ファンドは、設定以来、急速な
スピードで純資産総額を増やし、3000億円を越えるまでに成長
しましたが、その後パフォーマンスが優れず下落傾向にあります。
それでも、いまだ1060億円程度ありますので、規模としては
全く問題ありません。
証券会社は同じテーマのファンドをあえて同じタイミングで
出すことでマーケティング効果を最大化させようとしますが、
日興SMBCもまさに恩恵を受けた形ですね。
※引用:マンスリーレポート
実質コストは?
私たちが支払うコストには、目論見書に記載の信託報酬
以外に、株式売買委託手数料や、保管費用、印刷費用など
が含まれています。
そのため、実際に支払うコストは、目論見書記載の額より
高くなるのが通例で、実際にかかる実質コストをもとに
投資判断をしなければなりません。
信託報酬を信用するな。知らないうちに差し引かれている実質コストの調べ方
モビリティ・イノベーション・ファンドの実質コストは
1.961%で、かなり割高となっています。
販売手数料と併せると初年度は5%程度取られてしまうので、
普通に考えればかなり割高ですね。
購入時手数料 | 3.3%(税込)※上限 |
信託報酬 | 1.7985%(税込) |
信託財産留保額 | 0 |
実質コスト | 1.961%(概算値) |
※引用:最新運用報告書
実質コスト以外にも、多くの投資家が気づいていない
投信運用での成果を出すのに妨げとなる間違った考え方
をまとめました。参考にしてください。
無料ファンド相談から見えた。多くの人が気づいていない投信運用で成果を阻む9つの誤り
モビリティ・イノベーション・ファンドの評価分析
基準価格をどう見る?
モビリティ・イノベーション・ファンドの基準価額は設定当初から
ずっと10000円を割り込むという、かなり厳しい戦いが続いて
いました。
ようやくコロナショックで一時期6000円台まで落ちたときは、
どうなることかと思いましたが、その後、大きく反発し、
現在では、10,000円を回復しています。
※引用:モーニングスター
利回りはどれくらい?
つづいて、モビリティ・イノベーション・ファンドの運用実績を
見てみましょう。
直近1年間の利回りは46.60%と驚異的な結果です。
文句のつけようのないパフォーマンスですね。
ちなみにあなたは実質利回りの計算方法はすでに理解していますか?
もし、理解していないのであれば、必ず理解しておいてください。
平均利回り | |
1年 | 46.60% |
3年 | 20.24% |
5年 | – |
10年 | – |
※2021年9月時点
10年間高いパフォーマンスを出し続けている優秀なファンド達も
参考にしてみてください。
10年間圧倒的に高いリターンを出している海外株式ファンドランキング
同カテゴリー内での利回りランキングは?
モビリティ・イノベーション・ファンドは、日本を含む
グローバル株式カテゴリーに属しています。
投資をするのであれば、同じカテゴリーでも優秀な
パフォーマンスのファンドに投資をすべきなので、
同カテゴリー内でのパフォーマンスのランキングは
事前に調べておいて損はありません。
モビリティ・イノベーション・ファンドは同カテゴリー内でも
上位6%に入っており、直近の1年はかなり優秀な運用が
できていることがわかります。
上位●% | |
1年 | 6% |
3年 | 12% |
5年 | – |
10年 | – |
※2021年9月時点
年別のパフォーマンスは?
モビリティ・イノベーション・ファンドの年別のパフォー
マンスも見てみましょう。
2018年の2桁マイナスがかなり大きく響いていますが、
2019年、2020年で初年度のマイナス分をしっかりと
挽回しつつあります。
直近3年間は株式市場全体の値動きが大きかったので、
多くのファンドが似たような結果とはなっていますが、
この値動きの大きさはリスクの取れる投資家でないと
厳しいですね。
年間利回り | |
2021年 | +22.02%(1-6月) |
2020年 | +38.32% |
2019年 | +28.19% |
2018年 | ▲22.57% |
2017年 | – |
※2021年9月時点
考えずに投資をしてしまいがちです。 しかし、「投資は出口戦略にあり」と言われるほど、
重要なテーマです。 ぜひこれを機会に投資の出口戦略を考えてみて
ください。 >>まさか考えたことがない?運用が成功するか失敗するかすべてのカギを握る投信運用の出口戦略
インデックスファンドとのパフォーマンス比較
モビリティ・イノベーション・ファンドに投資を検討する上で、
より低コストで運用ができるインデックスファンドとのパフォー
マンス比較をしておいて損はありません。
今回は、先進国株式の代表的指数であるMSCIコクサイに連動する
eMAXIS Slim先進国株式インデックスと比較をしてみました。
※引用:モーニングスター
終始、eMAXIS Slim 先進国株式インデックスが上回っていましたが、
2020年後半からモビリティ・イノベーション・ファンドが逆転しま
した。
3年間を通じてみると、モビリティ・イノベーション・ファンドのほうが
eMAXIS Slim 先進国株式インデックスを抑えていますね。
とりあえず、低コストのインデックスファンドに投資をするのと
同程度のリターンは期待できますので、及第点ではあるといった
ところです。
モビリティイノベ | slim 先進国株式 | |
1年 | 46.60% | 36.41% |
3年 | 20.24% | 15.30% |
5年 | – | – |
10年 | – | – |
※2021年9月時点
アクティブファンドとのパフォーマンス比較
せっかくアクティブファンドに投資をするのであれば、
同じカテゴリーの中でも優秀なファンドに投資をしたい
と思うもの。
今回は、同じく海外株式ファンドで非常に優秀な運用が
されている大和住銀DC海外株式アクティブファンドと
パフォーマンスを比較しました。
※引用:モーニングスター
モビリティ・イノベーション・ファンドも直近1年間は優れた
運用ができていますが、中長期で高い成果を出し続けている
大和住銀DC 海外株式アクティブファンドと比較をすると、
見劣りします。
無理に今流行りのテーマ型ファンドを選ばずとも、長期で
高いパフォーマンスを維持し続けている優れたファンドに
投資をしたほうが最終的には大きなリターンが手に入ります。
モビリティ・イノベ | 大和住銀DC | |
1年 | 46.60% | 36.39% |
3年 | 20.24% | 22.17% |
5年 | – | 23.82% |
10年 | – | 20.51% |
※2021年9月時点
最大下落率は?
モビリティ・イノベーション・ファンドに投資をする前に、
最大でどの程度下落する可能性があるのかを知っておくこと
は非常に重要です。
どの程度下落する可能性があるかを把握しておけば、大きく
下落した相場でも落ち着いて保有を続けられるからです。
それではここでモビリティ・イノベーション・ファンドの
最大下落率を見てみましょう。
最大下落率は2020年1月~3月の3カ月間で20%超の下落と
なっています。
最大下落率を知ってしまうと、少し足が止まってしまう
かもしれません。
しかし、以下のことをしっかり理解しておけば、元本割れ
の可能性を限りなく低くすることが可能です。
期間 | 下落率 |
1カ月 | ▲15.17% |
3カ月 | ▲22.05% |
6カ月 | ▲21.32% |
12カ月 | ▲19.58% |
※2021年9月時点
評判はどう?
それでは、モビリティ・イノベーション・ファンドの評判は
どうでしょうか?
ネット等で口コミを調べることもできますが、資金の流出入を
見ることで、評判がわかります。
評判がよければ、資金が流入超過になりますし、評判が悪くなって
いれば、資金が流出超過になります。
モビリティ・イノベーション・ファンドは新規設定と同時に
大きな資金流入がありました。しかし、パフォーマンスが優れず、
すぐに資金流出超過となっています。
今の状況では、評判がよくなってくることはなさそうですね。
※引用:モーニングスター
モビリティ・イノベーション・ファンドの評価まとめと今後の見通し
いかがでしょうか?
今後、環境を考えた電気自動車や自動運転車の普及は進んでいく
と思います。ただ、私個人としては、市場に与えるインパクトと
いう点に関しては疑問が残ります。
例えば、AIであれば、老若男女までキーワードは知っていますし、
「人間の仕事がAIに奪われる」ですとか、「AIが囲碁で名人を倒した」
ですとか、身近なところにAIが入り込んできており、AIで生活が劇的に
変化していくという大きな期待感を多くの投資家が持っています。
そのため、多くの投資家がAIに関連するテーマの株式を積極的に
購入するため、ファンドの基準価額も上がっていくわけです。
一方で、電気自動車や自動運転車は将来性はあるものの、自動車を
保有していない層も増えてきており、車に興味がある人というのは、
そこまで多くないと思います。
このように考えますと、微増はすると思いますが、AIファンドなどと
比べると、大きく伸びづらいのではないかと考えています。
こういった新規設定のテーマ型ファンドというのは、将来の
可能性について、期待をさせて、購入させるというのが常套
手段です。
私個人は、アクティブファンドへの投資が趣味なので、コスト
が高すぎる!と思っても、それ以上のリターンが望めそうで
あれば、積極的に投資をしていきます。
ただし、インデックスファンドにパフォーマンスで負けている
ようなファンドでは投資するに値しません。AIファンドのほう
がよほど期待が持てるでしょう。
当然ながら、弱点もあります。 今も私は投信運用を続けてはいますが、私がなぜ
投資信託の運用を主軸におかなくなったのか。 その理由をこちらで話をしています。 >>私が痛感する投資信託の限界。多くの投資家が見逃している投信運用の弱点