大和住銀のEV革命やBNYメロンのモビリティ・イノベーションファンド、日興アセットのグローバルMaaSなど、傍から見ると、いったい何が違うのかわからないファンドが運用会社各社で設定されています。
組み入れ銘柄を見ていくと、実は色々と違いがあることがわかるのですが、今日は、三井住友アセットマネジメントのグローバル自動運転関連株式ファンドについて、私が独自の目線で分析、評価していきます。
「グローバル自動運転関連株式ファンドって投資対象としてどうなの?」
「グローバル自動運転関連株式ファンドって持ってて大丈夫なの?」
「グローバル自動運転関連株式ファンドより良いファンドってある?」
といったことでお悩みの方は、この記事を最後まで読めば、悩みは解消すると思います。
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グローバル自動運転関連株式ファンドの基本情報
投資対象は?
まずグローバル自動運転関連株式ファンドの投資対象は、自動運転技術の進化・普及により業績拡大が期待される世界の企業の株式です。
自動運転技術が進化することで、下記のようなレーダー、センサー、データ制御分などの分野が成長していくと考えられています。
※引用:交付目論見書
現在の組入銘柄数は62銘柄となっており、国別の構成比は60%超がアメリカとなっています。
※引用:マンスリーレポート
業種別の組入比率を見てみると、自動運転技術を支えるテクノロジー、半導体、電気通信サービス等の比率が高くなっています。
※引用:マンスリーレポート
運用体制は?
実際の運用においては、ニューバーガー・バーマン・グループが投資助言を行っています。ニューバーガー・バーマンは1939年創立の運用会社で社員数1900名を誇るかなり規模、歴史ともに深い会社となります。
純資産総額は?
続いて、グローバル自動運転関連株式ファンドの純資産総額はどうなっているか見てみましょう。純資産総額というのは、あなたを含めた投資家から集めた資金の総額だと思ってください。
ファンドの純資産総額が小さいと、適切なタイミングで銘柄を入れ替えることができなかったり、純資産総額が大きく減少していると、ファンドの組み替えがうまくできず、予期せぬマイナスを生む可能性がありますので、事前に確認すべきポイントの1つです。
グローバル自動運転関連株式ファンドは2017年の設定以来、着実に純資産総額を増やしていましたが、2018年の後半からは純資産が減少していました。
コロナショック後にパフォーマンスが非常によくなったため、純資産総額が増加に転じており、現在は760億円となっています。この規模であれば、全く問題ありませんね。
※引用:マンスリーレポート
実質コストは?
私たちが支払うコストには、目論見書に記載の信託報酬以外に、株式売買委託手数料や、保管費用、印刷費用などが含まれています。そのため、実際に支払うコストは、目論見書記載の額より高くなるのが通例で、実際にかかる実質コストをもとに投資判断をしなければなりません。
信託報酬を信用するな。知らないうちに差し引かれている実質コストの調べ方
グローバル自動運転関連株式ファンドの実質コストは、1.251%となっており、割高な水準です。購入時手数料も合わせると1年目は5%弱取られますので、普通であれば、まず投資しないファンドです。
購入時手数料 | 3.3%(税込)※上限 |
信託報酬 | 1.243%(税込) |
信託財産留保額 | 0 |
実質コスト | 1.251%※概算値 |
※引用:最新運用報告書
「ファンドの運用で成果を出すために一番大事なことは何ですか?」と聞かれてあなたは何と答えますか?
もし『ファンド選び』だと思ったとしたら、あなたはドツボに
はまっていますので、こちらの記事を読んでみてください。
グローバル自動運転関連株式ファンドの評価分析
基準価格をどう見る?
グローバル自動運転関連株式ファンドの基準価額はコロナショックで大きく10000円を割り込みましたが、その後は急伸しました。ただ、2022年は株式相場全体が下落基調でもあることから、グローバル自動運転関連株式ファンドに転じています。
※引用:モーニングスター
利回りはどれくらい?
つづいて、グローバル自動運転関連株式ファンドの運用実績を見ていきます。
直近1年間の利回りは▲5.40%とマイナスですが、3年平均利回りは20%、5年平均利回りでは8%と悪くない水準です。
なんとなく、この時点で良いパフォーマンスであることは予想がつきますが、他のファンドとパフォーマンスを比較してから投資をするようにしてください。
ちなみにあなたは実質利回りの計算方法はすでに理解していますか?もし、理解していないのであれば、必ず理解しておいてください。
平均利回り | |
1年 | ▲5.40% |
3年 | +20.31% |
5年 | +8.34% |
10年 | - |
※2022年10月時点
10年間高いパフォーマンスを出し続けている優秀なファンド達も参考にしてみてください。
10年間圧倒的に高いリターンを出している海外株式ファンドランキング
同カテゴリー内での利回りランキングは?
グローバル自動運転関連株式ファンドは、日本を含むグローバル株式カテゴリーに属しています。
投資をするのであれば、同じカテゴリーでも優秀なパフォーマンスのファンドに投資をすべきなので、同カテゴリー内でのパフォーマンスのランキングは事前に調べておいて損はありません。
グローバル自動運転関連株式ファンドは直近1年のパフォーマンスは平均的ですが、3年平均、5年平均は上位10%にランクインしており、非常に優秀です。
上位●% | |
1年 | 53% |
3年 | 7% |
5年 | 4% |
10年 | - |
※2022年10月時点
年別のパフォーマンスは?
グローバル自動運転関連株式ファンドの年別のパフォーマンスも見ていきます。2018年は30%近いマイナスとなっており、スタートからかなり厳しい展開でした。
ただ、その後、2019年、2020年、2021年も30%超のプラスとなっており、2022年はまた二桁マイナスになってはいますが、総じて好調と言えます。
年間利回り | |
2022年 | ▲16.45% |
2021年 | +36.41% |
2020年 | +34.28% |
2019年 | +31.58% |
2018年 | ▲28.85% |
2017年 | - |
※2022年10月時点
投信運用は長期投資が前提なので、つい出口戦略を考えずに投資をしてしまいがちです。
しかし、「投資は出口戦略にあり」と言われるほど、重要なテーマです。ぜひこれを機会に投資の出口戦略を考えてみてください。
>>まさか考えたことがない?運用が成功するか失敗するかすべてのカギを握る投信運用の出口戦略インデックスファンドとのパフォーマンス比較
テーマ型ファンドへの投資を検討するのであれば、少なくとも低コストのインデックスファンドよりはパフォーマンスが優れていなければ、投資するに値しません。
グローバル自動運転関連株式ファンドは米国株の比率がかなり高いので、米国株の比率が同程度の先進国株式ファンドと比較をしてみましょう。
今回は、超低コストで人気のeMAXIS slim 先進国株式インデックスと比較をしてみました。
※引用:モーニングスター
直近3年間のパフォーマンスはグローバル自動運転関連株式ファンドに軍配があがりました。ただ、より長期のパフォーマンスで比較をするとeMAXIS Slim先進国株式のほうが優勢となっており、このパフォーマンスであれば低コストのインデックスファンドに投資をしておけば十分と言えます。
グロ自動運転関連 | slim 先進国株式 | |
1年 | ▲5.40% | +5.43% |
3年 | +20.31% | +16.65% |
5年 | +8.34% | +11.72% |
10年 | - | - |
※2022年10月時点
アクティブファンドとのパフォーマンス比較
せっかくアクティブファンドに投資をするのであれば、同じカテゴリーの中でも優秀なファンドに投資をしたいと思うもの。
今回は、同じく海外株式ファンドで非常に優秀な運用がされている大和住銀DC海外株式アクティブファンドとパフォーマンスを比較しました。
※引用:モーニングスター
かなり拮抗していますが、直近ではグローバル自動運転関連株式ファンドが優位となっています。ただ、より長期のパフォーマンスを見てみると、大和住銀DC 海外株式アクティブファンドに軍配があがります。
投資信託は長期保有が前提となりますので、原則長期のパフォーマンスのほうが信頼性は高いです。そういう意味では、大和住銀DC 海外株式アクティブファンドのほうが優れたファンドと言えます。
テーマ型ファンドはどうしてもテーマの流行り廃りがあるので、eMAXIS Slim先進国株式もそうですが、テーマに縛りを入れていないファンドのほうが安定したリターンが期待できますね。
グロ自動運転関連 | 大和住銀DC | |
1年 | ▲5.40% | ▲14.29% |
3年 | +20.31% | +17.00% |
5年 | +8.34% | +12.98% |
10年 | - | +17.63% |
※2022年10月時点
為替ヘッジあり?なし?どちらがいい?
グローバル自動運転関連株式ファンドへの投資を検討している人は為替ヘッジありがいいかなしがいいか悩んでいる人もいると思います。
そこでグローバル自動運転関連株式ファンドの為替ヘッジ有と無のパフォーマンスを比較してみました。
※引用:モーニングスター
結果は為替ヘッジ無の圧勝です。直近は円安が進んでいることもあり、特に為替の影響が出ていますね。
日本はなかなか金利を上げられない局面に入っていることからも、当面この円安傾向は持続すると考えられるので、ヘッジ無しを選んでおいた方がいいと思います。
最大下落率は?
グローバル自動運転関連株式ファンドに投資をする前に、最大でどの程度下落する可能性があるのかを知っておくことは非常に重要です。どの程度下落する可能性があるかを把握しておけば、大きく下落した相場でも落ち着いて保有を続けられるからです。
それではここでグローバル自動運転関連株式ファンドの最大下落率を見てみましょう。
期間 | 下落率 |
1カ月 | ▲16.01% |
3カ月 | ▲21.80% |
6カ月 | ▲24.76% |
12カ月 | ▲28.85% |
※2022年10月時点
最大下落率は2018年1月~12月の▲28.85%となっています。コロナショックのほうがもっと大きく下落しているかと思いましたが、どうやら2018年のほうが厳しかったようですね。
最大下落率を知ってしまうと、少し足が止まってしまうかもしれません。しかし、以下のことをしっかり理解しておけば、元本割れの可能性を限りなく低くすることが可能です。
評判はどう?
ネットでの書き込みなどで調べる方法もありますが、評判を知るうえで一番役に立つのが、月次の資金流出入額です。資金が流入しているということは、それだけこのファンドを購入している人が多いということなので、評判がいいとわかります。
グローバル自動運転関連株式ファンドは2018年、2021年には大きく流入しましたが、一時的な流入超過で、それ以外の月は流出超過となっています。
中長期で見たときにインデックスファンドに負けてしまっているので、評判があがってこないというのも納得ですね。
※モーニングスター
グローバル自動運転関連株式ファンドの評価まとめと今後の見通し
スマートフォンが私たちの世界に欠かせないツールになったように、自動運転や自動宅配といった世界もすぐそこまで来ていることが何となくイメージできるのではないでしょうか?
一方で、内閣府が出した下記の資料を見ると、疑問点が出てきます。
他社のアナリストも同じようなことを言っているので、ある程度共通認識になっていると思うのですが、自動運転が普及するのは、早くても2020年代後半以降になるということです。
私も興味深いテーマではあると思いつつも、まだ10年程度はかかるのではないかと思っています。スマートフォンや携帯電話も一時期から急激に市場に浸透しましたが、自動運転車もまさに同じようなパターンで浸透すると見ています。
そう考えると、今から投資をするのは時期尚早だと思っていたのですが、市場はどうやらすでに期待をし始めているようです。
ただ、ボラティリティが相当大きいので、あえてグローバル自動運転関連株式ファンドに投資をするかというと疑問が残ります。それよりは、大和住銀DC海外株式アクティブファンドのように長期で安定して高いパフォーマンスで運用ができているファンドへ投資をしたほうが安心ですね。
最後に、投信運用には多くのメリットもありますが、当然ながら、弱点もあります。
今も私は投信運用を続けてはいますが、私がなぜ投資信託の運用を主軸におかなくなったのか。その理由をこちらで話をしています。
>>私が痛感する投資信託の限界。多くの投資家が見逃している投信運用の弱点