日本株においては、大型株より中小型株のほうが中長期で見てパフォーマンスが優れているというのは有名な話です。
そして、小型株というのは銘柄数で見ても圧倒的に数が多く、十分に企業が調査されておらず、将来の日本を担うような優れた企業が眠っています。
そんな小型株に特化したファンドが新光日本小型株ファンド『愛称:風物語』です。今日はこの風物語について独自目線で分析していきます。
「風物語って投資対象としてどうなの?」
「風物語って持ってて大丈夫なの?」
「風物語より良いファンドってある?」
といったことでお悩みの方は、この記事を最後まで読めば、悩みは解消すると思います。今日は、風物語について徹底分析していきます。
新光日本小型株ファンド『風物語』の基本情報
投資対象は?
風物語は新光小型株マザーファンドを通じて、日本の小型株に投資をしていきます。
そして、成熟産業の勝ち組企業、地味な業種変化企業、リベンジ企業、新規公開企業の4つのカテゴリーにおおきく分けて、企業を選定していきます。
風物語の組入銘柄数は76銘柄となっており、その上位銘柄を見てみましょう。
1位サイゼリヤ、2位ビジョン、3位東洋炭素となっています。
※引用:マンスリーレポート
純資産総額は?
続いて、風物語の純資産総額はどうなっているか見てみましょう。
純資産総額というのは、あなたを含めた投資家から集めた資金の総額だと思ってください。ファンドの純資産総額が小さいと、適切なタイミングで売買できなかったり、コストが嵩みますので、事前に確認すべきポイントの1つです。
風物語の純資産総額は、現在170億円程度となっています。中小型株ファンドはあまり純資産が増え過ぎると、運用に支障が出るので、この規模あれば十分でしょう。
※引用:マンスリーレポート
実質コストは?
私たちが支払うコストには、目論見書に記載の信託報酬以外に、株式売買委託手数料や、保管費用、印刷費用などが含まれています。
そのため、実際に支払うコストは、目論見書記載の額より高くなるのが通例で、実際にかかる実質コストをもとに投資判断をしなければなりません。
信託報酬を信用するな。知らないうちに差し引かれている実質コストの調べ方
風物語の実質コストは1.80%となっており、非常に割高となっています。購入時手数料もかかってくるので、普通のファンドであれば、まず投資をしてはいけないファンドです。
購入時手数料 | 3.3%(税込)※上限 |
信託報酬 | 1.76%(税込) |
信託財産留保額 | 0.3% |
実質コスト | 1.80%(概算値) |
※引用:最新運用報告書
「ファンドの運用で成果を出すために一番大事なことは何ですか?」と聞かれてあなたは何と答えますか?
もし『ファンド選び』だと思ったとしたら、あなたはドツボに
はまっていますので、こちらの記事を読んでみてください。
新光日本小型株ファンド『風物語』の評価分析
基準価額をどう見る?
風物語の基準価額は、2022年に大きく下落し、2023年も大して、上昇していません。
日経平均が30,000円を回復し、さらに大きく上昇している中で、ほぼその恩恵を受けられていないのが残念ですね。
※引用:ウエルスアドバイザー
利回りはどれくらい?
つづいて、風物語の運用実績を見てみましょう。
直近1年間の利回りは+5.91%となっています。ただ、3年、5年平均利回りは1桁中盤と悪くはありませんが、際立ってもいません。
唯一10年平均利回りは14%以上のプラスとなっており、非常に優秀です。
ただ、この情報だけでは判断できないので、他の類似ファンドと比較をしたうえで、投資をするようにしてください。
ちなみにあなたは実質利回りの計算方法はすでに理解していますか?もし、理解していないのであれば、必ず理解しておいてください。
平均利回り | |
1年 | +5.91% |
3年 | +5.38% |
5年 | +7.95% |
10年 | +14.58% |
※2023年9月時点
10年間高いパフォーマンスを出し続けている優秀なファンド達も参考にしてみてください。
10年間圧倒的に高いリターンを出している国内中小型株式ファンドランキング
同カテゴリー内での利回りランキングは?
風物語は、国内小型株のグロースカテゴリーに属しています。
投資をするのであれば、同じカテゴリーでも優秀なパフォーマンスのファンドに投資をすべきなので、同カテゴリー内でもパフォーマンスのランキングは事前に調べておいて損はありません。
風物語は直近1年、3年平均利回りは平均的な水準です。5年、10年の長期になると、上位20%程度に入っており、優秀な成果を出していることが分かります。
上位●% | |
1年 | 45% |
3年 | 49% |
5年 | 9% |
10年 | 22% |
※2023年9月時点
年別の運用利回りは?
風物語の年別の運用パフォーマンスを見てみましょう。
2018年、2022年はマイナスリターンとなっていますが、それ以外の年ではかなり高いパフォーマンスを残すことができています。
20%程度のマイナスもあれば、20%以上のプラスもあるので、投資をする前にこれくらいの変動は覚悟した上で投資してください。
年間利回り | |
2023年 | +5.73%(1-9月) |
2022年 | ▲16.19% |
2021年 | +6.29% |
2020年 | +40.22% |
2019年 | +28.70% |
2018年 | ▲11.13% |
2017年 | +51.65% |
2016年 | +3.16% |
2015年 | +14.26% |
2014年 | +16.37% |
※2023年9月時点
投信運用は長期投資が前提なので、つい出口戦略を考えずに投資をしてしまいがちです。
しかし、「投資は出口戦略にあり」と言われるほど、重要なテーマです。ぜひこれを機会に投資の出口戦略を考えてみてください。
>>ここまで考えるのが本当の資産運用。多くの投資家が考えられていない投信運用の出口戦略とはインデックスファンドとのパフォーマンス比較
風物語に投資するにあたって、より低コストで運用できるインデックスファンドとのパフォーマンスを比較しておいて損はありません。
今回は、日経225をベンチマークとするニッセイ 日経225インデックスファンドとパフォーマンスを比較してみました。
※引用:ウエルスアドバイザー
2022年以降は風物語は大きく差をつけられて負けています。特に2023年以降は日経平均が大きく上昇する中、中小型株中心の風物語はほぼ恩恵を受けられなかったことが影響しています。
それではさらに長期のパフォーマンスではどうなっているでしょうか?
年平均利回り | 風物語 | ニッセイ日経 225 |
1年 | +5.91% | +18.36% |
3年 | +5.38% | +13.94% |
5年 | +7.95% | +9.22% |
10年 | +14.58% | +11.08% |
※2023年9月時点
10年平均利回りで見ると、風物語が大きく差をつけています。安定した利回りを求めるなら、日経225に連動するインデックスファンドで十分ですが、長期で見て、より高いリターンが欲しい人は風物語に投資をする価値があります。
アクティブファンドとのパフォーマンス比較
せっかくアクティブファンドに投資をするのであれば、同じカテゴリーの中でも優秀なファンドに投資をしたいと思うもの。
今回は、風物語と同じく小型株カテゴリーで非常に優秀な運用を行っている東京海上・ジャパン・オーナーズ株式オープンと比較をしました。
※引用:ウエルスアドバイザー
3年間の運用では、かなり拮抗しています。
ただし、10年平均利回りでは、東京海上・ジャパン・オーナーズ株式オープンが上回っています。どちらも優れたファンドですので、日本株ファンドに投資をするのであれば、こういったファンドに投資をしていきましょう。
年平均利回り | 風物語 | 東京海上ジャパン |
1年 | +5.91% | +8.31% |
3年 | +5.38% | +4.44% |
5年 | +7.95% | +7.23% |
10年 | +14.58% | +17.23% |
※2023年9月時点
最大下落率は?
風物語への投資を検討するのであれば、どの程度下落する可能性があるのかは事前に知っておきたいところです。
どの程度下落するのかを知っておくことで、急落相場に遭遇しても、精神的に余裕を持って投資を続けられるからです。
標準偏差から変動幅を予測することはできますが、やはり過去に実際にどの程度下落したことがあるのかを調べたほうがイメージしやすいので、おすすめです。
期間 | 下落率 |
1カ月 | ▲17.31% |
3カ月 | ▲21.57% |
6カ月 | ▲22.23% |
12カ月 | ▲21.11% |
※2023年9月時点
風物語は2021年11月~2022年4月までの半年間で最大▲22.23%下落しています。小型株ファンドでこの程度の下落で済んでいるというのは悪くないですね。
最大下落率を知ってしまうと、少し足が止まってしまうかもしれません。しかし、以下のことをしっかり理解しておけば、元本割れの可能性を限りなく低くすることが可能です。
分配金の推移は?
風物語は毎年7月に分配金を出しています。2014年以前から1000円の分配を安定的に出していますが、私からすると、この程度の分配金を出すのであれば、分配金は税金もかかるので、再投資してほしいと思ってしまいます。
計算するとよくわかる!分配金を受け取ることによるデメリットとは?
分配金 | |
2023年 | 1,000円 |
2022年 | 0円 |
2021年 | 1,000円 |
2020年 | 1,000円 |
2019年 | 1,000円 |
2018年 | 1,000円 |
2017年 | 1,000円 |
2016年 | 1,000円 |
※2023年9月時点
評判はどう?
風物語の評判はネットでの書き込みなどで調べる方法もありますが、評判を知るうえで一番役に立つのが、月次の資金流出入額です。
資金が流入しているということは、それだけ風物語を購入している人が多いということなので、評判がよくなっているということです。
風物語は、2022年に入り、資金の流入超過が続いています。日経平均のパフォーマンスが優れていることから、そちらに資金が流出しているのかもしれません。
少なくとも評判はあまりよくないことが分かりますね。
※引用:ウエルスアドバイザー
NISAとiDeCoの対応状況は?
投資をしようとする際、NISAやiDeCoの制度を使って投資を検討している人も多いと思うので、NISAやiDeCoの対応状況を見ていきます。
風物語は残念ながらどちらにも対応していません。
NISA | iDeCo |
× | × |
※2023年9月時点
新光日本小型株ファンド『風物語』の評価まとめと今後の見通し
いかがでしょうか?
アクティブファンドに投資をする際、特に気を付けてほしいのが、常にインデックスファンドを上回るパフォーマンスのアクティブファンドは存在しないということです。
優秀なアクティブファンドは、インデックスファンドのパフォーマンスを大きく上回る年と下回る年があり、トータルで見ると、インデックスファンドをアウトパフォームします。
直近は、日経225に連動するインデックスファンドが非常に好調であることから、中小型株のアクティブファンドと比較をする魅力を感じづらいかもしれませんが、これがアクティブファンドの運用です。
目先のパフォーマンスがどうしても気になってしまうという人は、シンプルにインデックスファンドへの投資をすすめるのが良いです。
一方、私と同じようにインデックスファンドへの投資だけは面白みがないと感じる人は、今パフォーマンスが奮ってないからこそ、仕込んでおくチャンスと見ることもできますので、あなたのポートフォリオの一部に国内中小型株ファンドを組み入れることを検討してはいかがでしょうか。
最後に、投信運用には多くのメリットもありますが、当然ながら、弱点もあります。
今も私は投信運用を続けてはいますが、私がなぜ投資信託の運用を主軸におかなくなったのか。その理由をこちらで話をしています。
>>なぜ私が投信運用に限界を感じたのか。多くの投資家が見逃している投信運用の弱点