2019年のレバレッジ型ファンドブームにのって新規設定
されたのが、三井DSアセットの米国分散投資戦略ファンド
(5倍コース)『愛称:USブレイン5』です。
米国の株式、債券、リート、コモディティに分散投資を
しながら、レバレッジをかけられるファンドということで
今までにありそうでなかったファンドです。
USプレインにはレバレッジが1倍のUSブレイン1、レバレッジが
3倍のUSブレイン3と、レバレッジ5倍のUSブレイン5があります
が、今回は一番人気の高いUSブレイン5を徹底分析してきます。
USブレイン1とUSブレイン3についての分析も併せてしていき
ますので、参考にしてください。
「USブレイン5って投資対象としてどうなの?」
「USブレイン5って持ってて大丈夫なの?」
「USブレイン5より良いファンドってある?」
といったことでお悩みの方は、この記事を最後まで読めば、
悩みは解消すると思います。
『USブレイン5』米国分散投資戦略ファンドの基本情報
投資対象は?
USブレイン5の投資対象は、米国の株式、債券、リートおよび
コモディティの先物です。
実質的な運用はケイマン籍の外投を通じて行います。
投資対象は以下のようになっており、米国の代表的な
指数を中心に投資をしていきます。
※引用:交付目論見書
AIを活用した機械学習を活用した独自のアセットアロ
ケーション戦略により、徹底したリスク分散を図ること
で、良好なポートフォリオの構築を目指します。
USブレイン5の具体的な組入比率は以下のようになって
おり、米国債の比率が430%と最も高くなっています。
直近、基準価額が大きく下落しているのは、この米国債券
の保有比率が高いためです。
当初、私が想定していたUSブレイン5というのは、
かなり積極的にレバレッジをかけて運用していく
いわゆるギャンブルファンドのような印象をもって
いました。
しかし、こうして中身を見てみると、かなり堅実な
アセットアロケーション戦略をとっており、相場に
合わせてしっかりとリスク分散をしていることが
わかります。
株式100%でレバレッジ5倍のファンドとなると、
リスクが高すぎて投資をする気になれませんが、
アセットアロケーションを相場状況に合わせて、
変更してくれるので、投資する側としても、安心です。
つみたてNISAとiDeCoの対応状況は?
USブレイン5のつみたてNISAとiDeCoの対応状況を確認して
おきましょう。
レバレッジ型ファンドはリスクが高いと思われていますので、
残念ながらどちらも対応していません。
つみたてNISA | iDeCo |
× | × |
※2021年4月時点
運用会社は?
実質的な運用はTCWが行います。
TCWは1971年に設立されたTCWグループ傘下のグローバル
資産運用会社で、高度のコンピューターサイエンス、電気
工学および計算神経科学への強みをバックグラウンドとして、
AIなど機械学習に関する専門知識を有します。
USブレインの運用にもAIを活用したTCW独自の機械学習
モデルが活用されています。
純資産総額は?
続いて、USブレイン5の純資産総額はどうなっているか
見てみましょう。
純資産総額というのは、あなたを含めた投資家から
集めた資金の総額だと思ってください。
純資産総額は大きいほうが、ファンドマネージャーが資金
を運用する際に効率よくできたり、保管費用や監査費用が
相対的に低くなりますので、コストが低く抑えられます。
また投資信託の規模が小さくなると運用会社自体がその
投資信託に力を注がなくなりパフォーマンスが悪くなる
こともありますので注意が必要です。
USブレイン5の純資産総額は現在140億円程度です。
コロナショックをうまく乗り切ったということで、
純資産が大きく増えましたが、その後の運用がうまく
いかずに、純資産は減少傾向です。
ただ、100億円はあるので、規模のデメリットは
ないですね。
※引用:マンスリーレポート
実質コストは?
私たちが支払うコストには、目論見書に記載の信託報酬以外に、
株式売買委託手数料や、保管費用、印刷費用などが含まれています。
そのため、実際に支払うコストは、目論見書記載の額より
高くなるのが通例で、実際にかかる実質コストをもとに
投資判断をしなければなりません。
信託報酬を信用するな。知らないうちに差し引かれている実質コストの調べ方
USブレイン5の実質コストは1.89%となっています。
購入時手数料もしっかり3.3%取られますので、初年度は5%近く
資産が減ることになります。
ただ、レバレッジを効かせて5倍の資産を運用できていると考えると
我慢できる人もいるでしょうか。
購入時手数料 | 3.3%(税込)※上限 |
信託報酬 | 1.8825%(税込) |
信託財産留保額 | 0 |
実質コスト | 1.89%※概算値 |
※引用:最新交付目論見書
と聞かれてあなたは何と答えますか?
もし『ファンド選び』だと思ったとしたら、あなたはドツボに
はまっていますので、こちらの記事を読んでみてください。
>>無料ファンド相談から見えた。多くの人が気づいていない投信運用で成果を阻む9つの誤り
『USブレイン5』米国分散投資戦略ファンドの評価分析
基準価格の推移は?
USブレイン5はの基準価額の推移を見てみましょう。
通常のファンドとはかなり異なる値動きをしている
ことがチャートからわかります。
コロナショックは大きな下落をせずに乗り切ることが
できています。
しかし、その後、金利上昇に伴い、米国債券の価格が下落し、
保有比率が高かっため、2020年後半から下落傾向が続いて
います。
※引用:モーニングスター
利回りはどれくらい?
つづいて、USブレイン5の運用実績を見てみましょう。
直近1年間の利回りは▲13.52%と厳しい結果となっています。
株式相場が好調であるからこそ、米国債券の価格が下落している
というのもありますので、今後、米国株が下落してきた局面で
はたしてどういったパフォーマンスになるのか気になりますね。
ちなみにあなたは実質利回りの計算方法はすでに理解していますか?
もし、理解していないのであれば、必ず理解しておいてください。
平均利回り | |
1年 | ▲13.52% |
3年 | – |
5年 | – |
10年 | – |
※2021年4月時点
10年間高いパフォーマンスを出し続けている優秀なファンド達も
参考にしてみてください。
10年間圧倒的に高いリターンを出している海外株式ファンドランキング
同カテゴリー内での利回りランキングは?
USブレイン5は、バランスファンドのバランスカテゴリーに
属しています。
投資をするのであれば、同カテゴリーでも優秀なパフォ
ーマンスのファンドに投資すべきですので、同カテゴリー
内でのパフォーマンスのランキングを調べました。
最下位になってはいますが、もともとレバレッジを5倍かけて
いますので、単純にバランスファンドのカテゴリーに分類
できないという背景があります。
ですので、この順位はあまり参考になりません。
上位●% | |
1年 | 100% |
3年 | – |
5年 | – |
10年 | – |
※2021年4月時点
年別の運用利回りは?
つづいて、USブレイン5の年別のパフォーマンスを見てみましょう。
2019年は2桁のプラス、2020年は2桁のマイナスとなっています。
今後も金利上昇が続くとなると、USブレイン5にはかなり厳しい
展開が予想されます。
年間利回り | |
2021年 | ▲14.14%(1-3月) |
2020年 | +14.18% |
※2021年4月時点
考えずに投資をしてしまいがちです。 しかし、「投資は出口戦略にあり」と言われるほど、
重要なテーマです。 ぜひこれを機会に投資の出口戦略を考えてみて
ください。 >>まさか考えたことがない?運用が成功するか失敗するかすべてのカギを握る投信運用の出口戦略
インデックスファンドとのパフォーマンス比較
USブレイン5に投資をするのであれば、より低コストの
インデックスファンドとパフォーマンスを比較しておき
たいところです。
USブレイン5は米国株、米国債券、米国RIETなどに分散
投資をしていますので、本来はバランスファンドというのが
正しい認識です。
しかし、レバレッジが5倍となっているので、値動きとしては、
株式並みに変動します。
そこで今回は、S&P500に連動しているeMAXIS Slim
米国株式(S&P500)と比較をしてみました。
※引用:モーニングスター
コロナショック前まではパフォーマンスで拮抗していましたが、
2020年後半にはUSブレイン5が大きくパフォーマンスで劣後
するようになりました。
すでに30%近い差をつけられていますので。あえて高コストの
USブレイン5に投資をするメリットはないと言えます。
USブレイン5 | Slim 米国株式 | |
1年 | ▲13.52% | +55.49% |
3年 | – | – |
5年 | – | – |
10年 | – | – |
※2021年4月時点
アクティブファンドとのパフォーマンス比較
USブレイン5に投資をするのであれば、類似のアクティブ
ファンドとパフォーマンスを比較してからでも遅くはありません。
残念ながらUSブレイン5と同じポートフォリオのファンドは
ありませんので、今回はS&P500の中から優れた銘柄を絞り
込んで運用しているアライアンス・バーンスタインの米国成長
株投信Bコースとパフォーマンスを比較しました。
※引用:モーニングスター
こちらも2020年後半からは大きく差がついており、
すでに40%近い差がついています。
改めて、暴落相場で下落幅を抑えることも重要ですが、
その後の反発局面でしっかりと利益を積み上げられる
ファンドでないと優れたパフォーマンスは残せない
ことがわかりますね。
USブレイン5 | 米国成長株投信 | |
1年 | ▲13.52% | +50.22% |
3年 | – | +22.32% |
5年 | – | +19.07% |
10年 | – | +18.65% |
※2021年4月時点
レバレッジ型ファンドとのパフォーマンス比較
USブレイン5への投資を検討している人であれば、USブレイン1
とUSブレイン3とパフォーマンスを比較をしておきたいと
いう人もいると思います。
そこで3つのファンドのパフォーマンスを比較しました。
※引用:モーニングスター
どのファンドも米国債券の比率が高かっため、2020年以降は
下落しています。
米国の金利上昇が懸念される中、今後どのように運用されるのか
注目ですね。
最大下落率は?
USブレイン5に投資をする前に、最大でどの程度下落する
可能性があるのかを知っておくことは非常に重要です。
どの程度下落する可能性があるかを把握しておけば、大きく
下落した相場でも落ち着いて保有を続けられるからです。
それではここでUSブレイン5の最大下落率を見てみましょう。
USブレイン5の最大下落率は2020年10月~2021年3月の
半年間で最大17.23%下落しています。
コロナショックではなく、その後の金利上昇局面で大きく
パフォーマンスが悪化しているファンドは珍しいですね。
以下のことをしっかり理解しておけば、元本割れの可能性を
限りなく低くすることが可能です。
下落率 | |
1カ月 | ▲8.23% |
3カ月 | ▲14.14% |
6カ月 | ▲17.23% |
12カ月 | ▲13.52% |
※2021年4月時点
評判はどう?
続いて、USブレイン5の評判を見てみましょう。
ネットでの書き込みなどで調べる方法もありますが、
評判を知るうえで一番役に立つのが、月次の資金流出入額です。
資金が流入しているということは多くの投資家がファンドを
購入しているということなので、評判がいいということに
なります。
USブレイン5は2020年後半からパフォーマンスが悪化している
こともあり、資金が流出超過となっています。
このパフォーマンスであれば、流出超過となってしまっても
仕方ないですね。
※引用:モーニングスター
『USブレイン5』米国分散投資戦略ファンドの評価まとめと今後の見通し
USブレインはエース証券・東洋証券からの要望で
三井DSアセットが設定したものだと思いますが、
当初はレバレッジ5倍はやりすぎだと思っていました。
投資と言うよりも一発ドカンのギャンブルであり、
レバレッジ型ファンドブームにのって、販売会社と
運用会社が組んで、とんでもない商品を出したものだ
と思っていました。
しかし、運用の中身をしっかり見てみると、株式
にレバレッジをかけて、ハイリスクの運用をする
というよりは、債券にレバレッジをかけて運用
することで、リスクを抑える戦略となっています。
(厳密には、REITやコモディティにも分散して
いますが)
ですので、コロナショックでの下落度合いをみても、
株式100%のファンドと比較しても下落幅が抑えられ
ています。
株式にレバレッジをかけて運用していたら、このような
結果にはまずなっていません。
今回は、米国債券の組み入れ比率を高めたために、
大きくパフォーマンスがマイナスとなりましたが、
コロナショックでの運用は目を見張るものがあります。
今後、どのような運用がされるのか注目していきたいと
思います。
当然ながら、弱点もあります。 今も私は投信運用を続けてはいますが、私がなぜ
投資信託の運用を主軸におかなくなったのか。 その理由をこちらで話をしています。 >>私が痛感する投資信託の限界。多くの投資家が見逃している投信運用の弱点