2018年に息を吹き返したように見えたJ-REITはコロナ
ショックにより、また大きく下落に転じました。
そして、株式ファンドがコロナショックからすでに回復
基調にある中で、J-REITファンドは20~30%分しか
戻していません。
リモートワークが主流になりつつある中で、オフィス需要
が低下している影響もあると思いますが、果たして、
どの程度の運用ができているのでしょうか。
「オーナーズ・インカムって投資対象としてどうなの?」
「オーナーズ・インカムって持ってて大丈夫なの?」
「オーナーズ・インカムより良いファンドってある?」
といったことでお悩みの方は、この記事を最後まで読めば、
悩みは解消すると思います。
今日は、DIAM J-REITオープン(毎月決算コース)
『愛称:オーナーズ・インカム』について徹底分析していきます。
DIAM J-REITオープン『オーナーズ・インカム』の基本情報
投資対象は?
オーナーズ・インカムは東証REIT指数に採用されているJ-REITに
投資をしていきます。
J-REITについてはもうご存知の方が多いと思いますが、日本の
不動産投資信託証券のことで、投資家から集めた資金を不動産等で
運用し、そこから得られる賃貸収入や売買益を投資家に分配していきます。
REITの魅力は何と言っても、少額から不動産に投資ができると
言う点です。
私も不動産を保有していますが、数千万の買い物ですので、
気軽にはできません。
その点、REITであれば、十万程度で投資できるものもありますので、
リスクを取りたくない人にとってはおすすめでしょう。
現在の組入銘柄数は50銘柄となっており、日本のREITは約60銘柄
であることを考えると約8割くらいの銘柄をカバーしていることに
なります。
※引用:マンスリーレポート
純資産総額は?
続いて、オーナーズ・インカムの純資産総額はどうなっているか
見てみましょう。
純資産総額というのは、あなたを含めた投資家から集めた資金の
総額だと思ってください。
ファンドの純資産総額が小さいと、適切なタイミングで売買でき
なかったり、コストが嵩みますので、事前に確認すべきポイント
の1つです。
オーナーズ・インカムの純資産総額は、現在720億円程度と
なっています。
一時期は1500億円を超える巨大ファンドでしたが、毎月分配型
ということで風当たりも資金の流出が止まりません。
※引用:マンスリーレポート
実質コストは?
私たちが支払うコストには、目論見書に記載の信託報酬以外に、
株式売買委託手数料や、保管費用、印刷費用などが含まれています。
そのため、実際に支払うコストは、目論見書記載の額より高くなる
のが通例で、実際にかかる実質コストをもとに投資判断をしなければ
なりません。
信託報酬を信用するな。知らないうちに差し引かれている実質コストの調べ方
オーナーズ・インカムの実質コストは1.13%となっており、カテゴリー内
で見ると、割安となっています。
ただ、後述しますが、インデックスファンドにパフォーマンスで負けて
いるだけでなく、購入時手数料もかかるということで、正直投資する
理由は見当たりません。
購入時手数料 | 3.3%(税込)※上限 |
信託報酬 | 1.1%(税込) |
信託財産留保額 | 0 |
実質コスト | 1.13%(概算値) |
※引用:最新運用報告書
と聞かれてあなたは何と答えますか?
もし『ファンド選び』だと思ったとしたら、あなたはドツボに
はまっていますので、こちらの記事を読んでみてください。
>>無料ファンド相談から見えた。多くの人が気づいていない投信運用で成果を阻む9つの誤り
DIAM J-REITオープン『オーナーズ・インカム』の評価分析
基準価額の推移は?
オーナーズ・インカムの基準価額は、2017年~2019年頃までは
5000円前後を推移していましたが、コロナショックで20%ほど
下落しています。
分配金を再投資して運用したときの基準価額(青線)を見てみると、
2018年に入ってから右肩上がりに上昇しており、非常に好調でしたが
コロナショックで状況は一変しました。
※引用:モーニングスター
利回りはどれくらい?
つづいて、オーナーズ・インカムの利回りを見てみましょう。
直近1年間の利回りは▲13.70%となっています。
10年平均利回りは9%台とかなり高くなっていますが、3年、
5年平均りまわりもなんともいまいちなパフォーマンスです。
J-REITファンドは今後も苦戦が続きそうです。
ちなみにあなたは実質利回りの計算方法はすでに理解していますか?
もし、理解していないのであれば、必ず理解しておいてください。
平均利回り | |
1年 | ▲13.70% |
3年 | 3.29% |
5年 | 1.34% |
10年 | 9.25% |
※2020年8月時点
10年間高いパフォーマンスを出し続けている優秀なファンド達も
参考にしてみてください。
10年間圧倒的に高いリターンを出しているJリートファンド ランキング
同カテゴリー内での利回りランキングは?
オーナーズ・インカムは国内RIETカテゴリーに属しています。
投資をするのであれば、同じカテゴリーでも優秀なパフォーマンス
のファンドに投資をすべきなので、同カテゴリー内でもパフォー
マンスのランキングは事前に調べておいて損はありません。
オーナーズ・インカムは短期的には、平均よりも少し上の順位に
ランクインしていますが、5年、10年と長期になるほど、
ランキングの順位を落としています。
平均以下のパフォーマンスであることから、他にもっと優れた
パフォーマンスのファンドがいくつもあるということです。
上位●% | |
1年 | 41% |
3年 | 24% |
5年 | 83% |
10年 | 95% |
※2020年8月時点
年別のパフォーマンスは?
オーナーズ・インカムの年別の運用パフォーマンスも見てみましょう。
プラスの年もありますが、それを相殺するかのように大きな
マイナスを出しており、なかなかトータルのリターンも
伸びません。
今のままであれば、株式ファンドのほうがはるかに高い
リターンが期待できます。
年間利回り | |
2020年 | ▲18.35%(1-6月) |
2019年 | +24.50% |
2018年 | +11.53% |
2017年 | ▲7.91% |
2016年 | +4.46% |
2015年 | ▲5.01% |
2014年 | +25.88% |
※2020年8月時点
考えずに投資をしてしまいがちです。 しかし、「投資は出口戦略にあり」と言われるほど、
重要なテーマです。 ぜひこれを機会に投資の出口戦略を考えてみて
ください。 >>まさか考えたことがない?運用が成功するか失敗するかすべてのカギを握る投信運用の出口戦略
インデックスファンドとのパフォーマンス比較
オーナーズ・インカム(DIAM J-RIET オープン)に投資を
するのであれば、より低コストで投資ができるインデックス
ファンドとのパフォーマンスは比較してから投資をしても
遅くはありません。
今回は、東証REIT指数と連動するeMAXIS 国内リート
インデックスとパフォーマンスを比較してみました。
※引用:モーニングスター
かなり拮抗していますが、直近でわずかにオーナーズ・インカム
が上回りました。
ただ、5年、10年平均利回りで比較をしてみると、eMAXIS 国内
リートインデックスのほうが高いリターンを実現しています。
これではあえて高いコストを支払ってオーナーズ・インカムに
投資をする必要がありませんね。
オーナーズ | eMAXIS国内リート | |
1年 | ▲13.70% | ▲14.71% |
3年 | 3.29% | 2.80% |
5年 | 1.34% | 2.35% |
10年 | 9.25% | 10.30% |
※2020年8月時点
類似ファンドとのパフォーマンス比較
毎月分配型のアクティブファンドに投資するのであれば、
同じく毎月分配型のアクティブファンドとパフォーマンスを
比較してから投資をしても遅くはありません。
今回は同じくJ-RIETに投資ができるJ-REITリサーチ・
オープン(毎月分配型)と比較をしてみました。
※引用:モーニングスター
コロナショック前までパフォーマンスは拮抗していましたが、
コロナショック後にオーナーズ・インカムは差をつけられ
始めています。
より、長期のパフォーマンスで見ると、明らかにオーナーズ・
インカムのほうが劣っていますね。
オーナーズ | J-RIETリサーチ | |
1年 | ▲13.70% | ▲11.76% |
3年 | 3.29% | 4.51% |
5年 | 1.34% | 3.33% |
10年 | 9.25% | 10.80% |
※2020年8月時点
最大下落率は?
投資するのであれば、ファンドがどの程度下落する可能性があるのか
は知っておきたいところです。
もちろん標準偏差から変動幅を予測することはできますが、やはり
過去にどの程度下落したことがあるのかを調べるのがよいでしょう。
オーナーズ・インカムは2007年11月~2008年10月までの間に
最大▲50.71%下落しています。
注意しておいてほしいのは、J-REITでも大きく下落するときは
下落するということです。
最大下落率を知ってしまうと、少し足が止まってしまうかもしれません。
しかし、以下のことをしっかり理解しておけば、元本割れの可能性を
限りなく低くすることが可能です。
期間 | 下落率 |
1カ月 | ▲21.14% |
3カ月 | ▲29.40% |
6カ月 | ▲37.19% |
12カ月 | ▲50.71% |
※2020年8月時点
分配健全度はどれくらい?
分配金を毎月受け取っていると、受け取っていることに安心
してしまい、自分の投資元本からの配当なのか、ファンドの
収益からの配当なのか調べなくなります。
そこで、分配金がファンドの収益からちゃんと支払われている
のかを調べるときに役立つのが分配健全度です。
分配健全度とは、1年間の分配金の合計額と基準価額の変動幅を
もとに、あなたが受け取った分配金の約何%がファンドの収益
によるものなのかを計算できる指標です。
基準価額の変動幅 | 1年間の分配合計額 | 分配健全度 |
▲1,132円 | 500円 | ▲126% |
※2019/8/29~2020/8/28
オーナーズ・インカムの直近1年間の分配健全度は
▲126%となっています。
分配健全度は100%を切ると、一部ファンドの収益以外から
分配金が支払われていることを意味しますが、0%を下回る
ということは、ファンドの収益からの支払いは一切ない
ということを意味します。
コロナショックの影響も当然ありますが、あなたが受け
取っている分配金はすべてファンドの収益以外から支払われ
ていたことを意味します。
かつ、投資元本が大きく削られてしまっているということです。
分配金利回りはどれくらい?
毎月分配型のファンドに投資をしている場合、どれくらいの
分配金が受け取れるのかを知るために分配金利回りを参考
にします。
分配金利回りは1年間で受け取った分配金の合計金額を
基準価額で割ることで計算できます。
ただし、投資信託の場合、分配金利回りだけをみていると、
受け取っている分配金がファンドの収益から出ている
ものなのか、投資元本が削られているのか、判断できません。
そのため、ファンドの運用利回りと分配金利回りを比較して、
ファンドの運用利回りのほうが高ければ、あなたが受け取って
いる分配金がファンドの運用の収益から支払われていると
判断することができます。
オーナーズ・インカムの分配金利回りは12.3%なので、
J-REITファンドの中では、比較的健全な運用がされて
います。
ただ、ここ最近のパフォーマンスから考えると、どう
考えても、分配金利回りが高く、ファンドの運用利回りだけ
で分配金を賄えていないことがここからもわかります。
未だ多くの投資家が勘違いをしながら、分配金利回りが
高いファンドに投資をしていますが、くれぐれも気を
つけてほしいと思います。
運用利回り | 分配金利回り | |
1年 | ▲13.70% | 12.3% |
3年 | 3.29% | |
5年 | 1.34% | |
10年 | 9.25% |
※2020年8月時点
分配金余力はどれくらい?
毎月分配型ファンドに投資をしている場合、もう1つ気になる
のが今後いつごろ、減配されそうかという点です。
そんなときに役立つのが分配金余力という考え方です。
分配金余力というのは、今の分配金の水準をあと何か月
続けられそうかを判断するための指標です。
明確にこの水準になったら減配されるという指標では
ありませんが、12カ月を切ったファンドはたいてい近々、
減配されることが多いです。
オーナーズ・インカムの分配金余力は、まだ100カ月以上
ありますので、減配の心配はいったんしなくても大丈夫そうです。
ただし、分配金余力があるのと、タコ足配当が続いているのは
別問題ですので、タコ足配当が続いている限り、あなたの
投資資金から分配金が支払われているという構造は変わりません。
分配金 | 繰越対象額 | 分配金余力 | |
176期 | 50円 | 7,389円 | 148カ月 |
177期 | 50円 | 7,367円 | 148カ月 |
178期 | 50円 | 7,324円 | 147カ月 |
179期 | 50円 | 7,283円 | 146カ月 |
180期 | 50円 | 7,291円 | 146カ月 |
181期 | 50円 | 7,433円 | 149カ月 |
182期 | 50円 | 7,577円 | 152カ月 |
183期 | 50円 | 7,634円 | 153カ月 |
184期 | 50円 | 7,901円 | 159カ月 |
185期 | 50円 | 7,855円 | 158カ月 |
186期 | 50円 | 7,818円 | 157カ月 |
187期 | 50円 | 7,787円 | 156カ月 |
積立NISAとiDeCoの対応状況は?
積立NISAやiDeCoで積立投資を検討している人も多いと
思います。
そこで、積立NISAやiDeCoの対応状況をまとめました。
積立NISA | iDeCo |
× | × |
※2020年8月時点
評判はどう?
オーナーズ・インカムの評判はネットでの書き込みなどで調べる
方法もありますが、評判を知るうえで一番役に立つのが、月次の
資金流出入額です。
資金が流出しているということは、それだけオーナーズ・インカムを
解約している人が多いということなので、評判が悪くなっていると
いうことです。
オーナーズ・インカムは、2017年から毎月資金の流出がしており、
2018年はパフォーマスが回復しているにもかかわらず、資金の流出が
続きました。
しかし、2019年に入ると、パフォーマンスが非常に好調であることを
背景に流入超過で終わる月も出てきており、評判が戻ってきています。
※引用:モーニングスター
DIAM J-REITオープン『オーナーズ・インカム』の今後の見通し
いかがでしょうか?
毎月分配金を受け取っているだけだと、分配金を受け取れた
ことに満足してしまい、ファンド自体のパフォーマンスが
どうなのかという視点が抜けてしまいがちです。
そのため、分配金が減った瞬間に、はじめてこのファンドは
大丈夫なのか?と思い始める人がほとんどです。
一方で、しっかりとファンドの収益力(パフォーマンス)
を確認しておけば、分配金が自分の投資元本から支払われて
いるタコ足配当ファンドなのか、ちゃんと利益から支払われて
いるファンドなのかわかり、
実は全然利益がでていないファンドに投資をするリスクを
下げられます。
株式とは相関係数が低いことから、REITを保有している人も
いると思いますが、コロナ禍でオフィス需要が低迷している
ことを考えると、コロナ前の高値まで戻すのにはまだまだ
時間がかかりそうです。
オーナーズ・インカムはタコ足配当になってはいるのの、
まだ分配金は比較的健全なほうです。
ただし、パフォーマンスはインデックスファンドにも
負けるような結果ですので、少なくとも、J-REITファンドの
中でも優秀なファンドに乗り換えるくらいのことは検討した
ほうがよいでしょう。
当然ながら、弱点もあります。 今も私は投信運用を続けてはいますが、私がなぜ
投資信託の運用を主軸におかなくなったのか。 その理由をこちらで話をしています。 >>なぜ私が投信運用に限界を感じたのか。多くの投資家が見逃している投信運用の弱点