投資信託に投資することを検討したことがある人であれば、まず名前を聞いたことがあるひふみ投信。
ひふみプラスとひふみ投信は何が違うのかと聞かれることがあるのですが、本質的には同じファンドです。レオスキャピタルが直接販売しているのがひふみ投信であり、他の販売会社が販売しているのがひふみプラスですね。
ひふみは、ファンドのパフォーマンス実績に加え、「長期の積立・分散投資に適した一定の投資信託」を要件とする「つみたてNISA」制度の対象ファンドのひとつに選ばれているとおり、金融庁のお墨付きを得ていることも大きな人気となっています。
今日は、このひふみ投信について、徹底分析していきたいと思います。
「ひふみ投信って持ってて大丈夫なの?」
「ひふみ投信って投資対象としてどうなの?」
「ひふみ投信より良いファンドってある?」
といったことでお悩みの方は、この記事を最後まで読めば、悩みは解消すると思います。
ひふみ投信の基本情報
レオスキャピタルとは?
まず、ひふみ投信を運用しているのは、レオス・キャピタルについて簡単に説明しておきます。
同社を率いるのは、ゴールドマンサックス・アセットマネジメントなどで主に日本の中小型株ファンドマネージャーとして辣腕を振るってきた、藤野英人さんです。藤野さんは同社の最高投資責任者でもあり、ひふみ投信とひふみ投信の運用実務に携わるメンバーのひとりです。
2003年設立の比較的若い資産運用会社で、日本の資産運用会社としては珍しく、ブティック型の自社運用に特化しています。
運用する投資信託の純資産残高が業界中堅クラスであるにも関わらず、設定している投資信託はマザーファンドを除き、10本程度というのは運用の自信がなければできません。
このような特徴と運用するファンドの好調さも相俟って、日本の資産運用会社の中でもユニークな存在として、注目を集めています。
投資対象は?
ひふみ投信は国内害の上場株式を投資対象とし、市場価値が割安と考えられる銘柄を選別して投資していきます。
株式の割安感や株価水準といった定量調査と、経営者や製品、現場の声といった定性調査の双方からアプローチし、成長企業を発掘していきます。
※引用:交付目論見書
もともと海外株式は組入られていなかったのですが、資金が集まり過ぎたことにより現在は海外株式も組み入れられるようになっています。
現在では約5%が海外株式となっています。以前と比べると、海外株式の比率がかなり下がってきているというのが特徴です。キャッシュポジションが5%あるのも珍しいですね。
※引用:マンスリーレポート
純資産総額は?
純資産総額というのは、あなたを含めた投資家から集めた資金の総額だと思ってください。
ファンドの純資産総額が小さいと、適切なタイミングで売買できなかったり、コストが嵩みますので、事前に確認すべきポイントの1つです。
ひふみ投信は2018年以降、純資産が減少傾向にありましたが、それでも1500億円近い規模です。規模としては全く問題ないレベルですね。
※引用:マンスリーレポート
実質コストは?
私たちが支払うコストには、目論見書に記載の信託報酬以外に、株式売買委託手数料や、保管費用、印刷費用などが含まれています。
そのため、実際に支払うコストは、目論見書記載の額より高くなるのが通例で、実際にかかる実質コストをもとに投資判断をしなければなりません。
信託報酬を信用するな。知らないうちに差し引かれている実質コストの調べ方
ひふみ投信の実質コストは、1.41%と同カテゴリー内ではまだ割安となっています。
ただ、あくまでもアクティブファンド内では割安というだけで、インデックスファンドと比べると割高なので、結局はパフォーマンス次第ですね。
購入時手数料 | なし |
信託報酬 | 1.078%(税込) |
信託財産留保額 | 0 |
実質コスト | 1.41%(概算値) |
※引用:最新運用報告書
「ファンドの運用で成果を出すために一番大事なことは何ですか?」と聞かれてあなたは何と答えますか?
もし『ファンド選び』だと思ったとしたら、あなたはドツボに
はまっていますので、こちらの記事を読んでみてください。
ひふみ投信の評価分析
基準価額をどう見る?
ひふみ投信の基準価額を見てみましょう。2021年末から大きく下落し、2022年は停滞していましたが、2023年に入り、また大きく上昇に転じました。
※引用:ウエルスアドバイザー
利回りはどれくらい?
それでは、ひふみ投信の利回りはどうでしょうか?
直近1年間の利回りは+19.89%と大きくプラスとなっています。3年、5年平均利回りは1桁台のプラスですが、10年平均利回りは10%を超えるプラスの運用ができています。
この時点では、どの程度ひふみ投信の利回りが良いのか悪いのかわかりませんので、必ず他のファンドと比較をしてから投資判断するようにしてください。
ちなみにあなたは実質利回りの計算方法はすでに理解していますか?もし、理解していないのであれば、必ず理解しておいてください。
平均利回り | |
1年 | +19.89% |
3年 | +4.44% |
5年 | +3.86% |
10年 | +11.57% |
※2023年10月時点
10年間高いパフォーマンスを出し続けている優秀なファンド達も参考にしてみてください。
10年間圧倒的に高いリターンを出している国内大型株式ファンドランキング
同カテゴリー内での利回りランキングは?
せっかく投資をするのであれば、同じカテゴリー内でも、優れたファンドに投資をするべきです。
ひふみ投信は国内中型株の成長カテゴリーに属しています。10年平均利回りだけは上位30%に入っていますが、より短期の利回りでは、平均以下のパフォーマンスとなっています。
10年平均利回りだけが優秀と言う場合、ここ数年何か運用体制や運用手法に問題が出てきている可能性があるので要注意です。
上位●% | |
1年 | 36% |
3年 | 67% |
5年 | 55% |
10年 | 22% |
※2023年10月時点
年別のパフォーマンスは?
ひふみ投信の年別のパフォーマンスを見てみましょう。
年別の利回りを見ることで、平均利回りを見るだけではわからない基準価額の変動の大きさを知ることができます。
2018年、2022年だけは2桁のマイナスとなりましたが、それ以外の年では、2桁以上のプラスを出している年がとても多いことがわかります。
これだけの結果を残しているファンドであれば、高いコストを支払ってでも投資する価値があるように思えますが、同カテゴリーの順位を見ると、ずば抜けて優れた成果を残しているわけではないことは覚えておいてください。
年間利回り | |
2023年 | +17.48%(1-9月時点) |
2022年 | ▲13.60% |
2021年 | +3.13% |
2020年 | +20.52% |
2019年 | +22.81% |
2018年 | ▲21.37% |
2017年 | +44.82% |
2016年 | +4.53% |
2015年 | +21.75% |
※2023年10月時点
投信運用は長期投資が前提なので、つい出口戦略を考えずに投資をしてしまいがちです。
しかし、「投資は出口戦略にあり」と言われるほど、重要なテーマです。ぜひこれを機会に投資の出口戦略を考えてみてください。
>>まさか考えたことがない?運用が成功するか失敗するかすべてのカギを握る投信運用の出口戦略インデックスファンドとのパフォーマンス比較
アクティブファンドに投資をするのであれば、事前にインデックスファンドとのパフォーマスを比較しておいて損はありません。
ひふみ投信はTOPIXを参考ベンチマークとしておいていますが、直近、日本を代表する指数としては日経225のほうがパフォーマンスが優れているので、ニッセイアセットのニッセイ 日経225インデックスファンドと比較してみました。
※引用:ウエルスアドバイザー
直近3年間では、ほぼ全期間において、ニッセイ日経225インデックスファンドが大きく差をつけています。
10年平均利回りだけは、ひふみ投信の方がパフォーマンスで上回っており、長期保有を前提に考えるのであれば、ひふみ投信に投資をするというのも悪くないですね。
ただ、現状のパフォーマンスであれば、あえて高いコストを支払ってでもひふみ投信に投資しなくとも、ニッセイ日経225インデックスファンドに投資をするだけでも十分です。
年平均利回り | ひふみ投信 | ニッセイ 日経225 |
1年 | +19.89% | +25.03% |
3年 | +4.44% | +13.02% |
5年 | +3.86% | +7.56% |
10年 | +11.57% | +9.99% |
※2023年10月時点
アクティブファンドとのパフォーマンス比較
アクティブファンドに投資をするのであれば、他のアクティブファンドとパフォーマンスを比較してから投資をしても遅くはありません。
今回は、国内大型株カテゴリーで非常に優れた成果を出しているスパークスの新・国際優良日本株ファンド『厳選投資』と比較を行いました。
※引用:ウエルスアドバイザー
直近3年間では、ほぼ全期間において、厳選投資が大きくリードする形となりました。
この傾向は、より長期の利回りで見ても、変わりません。
ひふみ投信も決して悪いファンドではありませんが、こう比較してしまうと、あえてパフォーマンスの悪いひふみ投信を選ぶ理由はないですね。
年平均利回り | ひふみ投信 | スパークス厳選投資 |
1年 | +19.89% | +27.48% |
3年 | +4.44% | +8.05% |
5年 | +3.86% | +5.79% |
10年 | +11.57% | +13.60% |
※2023年10月時点
最大下落率は?
投資を始めようとしている、もしくは始めたばかりの人が気になるのが、最大どの程度、資産が下落する可能性があるのかという点かと思います。
どの程度下落するのかを知っておくことで、急落相場に遭遇しても、精神的に余裕を持って投資を続けられます。
標準偏差からある程度の変動範囲を予測することもできますが、過去に実際にどの程度下落したのかを確認するのがおすすめです。
それでは、ひふみ投信の最大下落率を調べてみましょう。
期間 | 下落率 |
1カ月 | ▲13.45% |
3カ月 | ▲22.54% |
6カ月 | ▲21.53% |
12カ月 | ▲21.37% |
※2023年10月時点
ひふみ投信の最大下落率は、2018年10月~2018年12月の3カ月で▲22.54%となっています。
株式ファンドの場合は、リーマンショック級の下落が来ると、40~50%下落する可能性がある点だけは頭に入れながら投資を続けるのがおすすめです。
最大下落率を知ってしまうと、少し足が止まってしまうかもしれません。しかし、以下のことをしっかり理解しておけば、元本割れの可能性を限りなく低くすることが可能です。
評判はどう?
資金の流出入を見るのはそのファンドの評判を確認するために有効な手段です。資金が多く入っていれば人気があるファンドですし、流出が続いているようであれば、評判が悪いファンドと言えます。
それではひふみ投信はどうでしょうか。
ひふみ投信は2021年、2022年と資金が流入超過となっていますが、全体を通して、資金が流出超過となっている月が多くあります。
日経225に連動するインデックスファンドにパフォーマンスで負けていることもあり、いくらひふみ投信と言えど、評判を落としていますね。
※引用:ウエルスアドバイザー
ひふみ投信の今後の見通しと評価まとめ
いかがでしょうか?
私は前々からもっと多くの運用会社のファンドマネージャーには表舞台に出てきてもらって、どのような考えで運用しているのか等、話をしてほしいと思っていますが、サラリーマン体質の抜けない運用会社はまったくそのそぶりを見せません。
とは言ったものの、レオスの藤野さんを筆頭に独立系の運用会社は積極的に表舞台に出てきて、投資家とコミュニケーションをとることで、純資産を増やしているという事実がありますので、今後はもう少し増えてきてもおかしくないと思っています。
今、ひふみ投信の人気を支えているのは藤野さんの影響が大きいですが、いくら藤野さんが有名だからと言っても、ひふみ投信のパフォーマンスがインデックスファンドに負けてしまっているようでは、最近の賢い投資家は離れていってしまいます。
とはいえ、とても酷いパフォーマンスというわけでもないので、人柄も含めて藤野さんに運用をお願いしたいという人はひふみ投信に預ければいいですが、純粋にパフォーマンスを重視するのであれば、インデックスファンドやアクティブファンドでも厳選投資のような優れたアクティブファンドに投資をしたほうがあなたの資産は増える可能性が高いです。
最後に、投信運用には多くのメリットもありますが、当然ながら、弱点もあります。
今も私は投信運用を続けてはいますが、私がなぜ投資信託の運用を主軸におかなくなったのか。その理由をこちらで話をしています。
>>私が痛感する投資信託の限界。多くの投資家が見逃している投信運用の弱点