オーストラリア株式に投資をできる数少ないファンドである
ニッセイ オーストラリア高配当株ファンド。
いざ、投資を検討しはじめると、あることに気づきます。
同時期に、ニッセイアセットマネジメントからニッセイ豪州ハイ・
インカム株式ファンド『ラッキーカントリー』というファンドが
出ており、中身を見てもほぼ同じ。何が違うんだと思った人も
いるのではないでしょうか?
結論から言ってしまえば、マネープールファンドに自分で
スイッチングができるかできないかの差くらいなもので、
ほぼ同じファンドです。
今日は、ニッセイ オーストラリア高配当株ファンドについて
徹底分析していきます。
ニッセイ オーストラリア高配当株ファンドの基本情報
投資対象は?
ニッセイ オーストラリア高配当株ファンドの投資対象は、
相対的に配当利回りの高い「株式」および「リート」を
実質的な投資対象とします。
業種別に見ると、金融の比率が高く、次いでリート、
生活必需品と続きます。
※引用:マンスリーレポート
ファンドの仕組みは?
ニッセイ オーストラリア高配当株ファンドの運用はファンド・
オブ・ファンズ方式で行い、オーストラリア株式の実質的な
運用はレッグ・メイソン・アセット・マネジメント・オース
トラリアが行います。
レッグ・メイソンは1899年に設立され、米国メリーランド州
ボルティモアに本部を置く歴史ある資産運用会社です。
グループ全体では、85兆円もの資産を運用しています。
オーストラリア株式の運用については30年以上の実績が
あります。
さきほども言いましたが、ニッセイ オーストラリア高配当株
ファンドの場合、相場が下落しそうだと思ったときに、マネー
プールファンド(現金と同義)に一時的に資金を避難できる
という仕組みがあるのも特徴です。
※引用:交付目論見書
純資産総額は?
続いて、純資産総額はどうなっているか見てみましょう。
純資産総額というのは、あなたを含めた投資家から集めた
資金の総額だと思ってください。
ファンドの純資産総額が小さいと、適切なタイミングで銘柄
を入れ替えることができなかったり、純資産総額が大きく
減少していると、ファンドの組み替えがうまくできず、予期
せぬマイナスを生む可能性がありますので、事前に確認すべき
ポイントの1つです。
ニッセイ オーストラリア高配当株ファンドは現在、740億円
ほどの規模になっていますので、特に心配はありません。
ラッキーカントリーは直近2年ほどで大きく純資産を増やして
いるのですが、同じファンドであるにもかかわらず、かなり
純資産総額の動きには違いがあります。
※引用:マンスリーレポート
実質コストは?
私たちが支払うコストには、目論見書に記載の信託報酬以外に、
株式売買委託手数料や、保管費用、印刷費用などが含まれています。
そのため、実際に支払うコストは、目論見書記載の額より高く
なるのが通例で、実際にかかる実質コストをもとに投資判断を
しなければなりません。
信託報酬を信用するな。知らないうちに差し引かれている実質コストの調べ方
そして、ニッセイ オーストラリア高配当株ファンドの実質コスト
は1.826%とかなり高いです。
後述しますが、利回りがそもそも高くないにもかかわらず、
これだけの信託報酬を取られるとお金を出している投資家より
運用会社のほうが儲かる構造になっています。
このように投資家をないがしろにするファンドには投資したく
ないですね。
購入時手数料 | 3.85%(税込) |
信託報酬 | 1.826%(税込) |
信託財産留保額 | 0 |
実質コスト | 1.826%(概算値) |
※引用:最新運用報告書
実質コスト以外にも、多くの投資家が気づいていない
投信運用での成果を出すのに妨げとなる間違った考え方
をまとめました。参考にしてください。
無料ファンド相談から見えた。多くの人が気づいていない投信運用で成果を阻む9つの誤り
ニッセイ オーストラリア高配当株ファンドの評価分析
基準価額をどう見る?
ニッセイ オーストラリア高配当株ファンドの基準価額は
約3600円です。
2017年から右肩下がりに基準価額が下がり続けています。
一方で、分配金を受け取らずに再投資をした場合の
分配金再投資基準価額(青線)は3年間ほぼ平行線なので、
運用もうまくいっていません。
※引用:モーニングスター
利回りはどれくらい?
続いて、ニッセイ オーストラリア高配当株ファンド利回りを
見ていきます。
直近1年間の利回りは3.84%とまずまずの結果です。ただし、
オセアニアカテゴリーでは下位2割に入るパフォーマンス
なので、決して優れているというわけではありません。
5年平均利回りを見ると、0.71%となっており、毎年取られる
信託報酬のほうが大きくなってしまっています。
5年平均利回りが1%切っていても、同カテゴリー内では平均的
な水準となっていますので、オーストラリア市場の厳しさを
物語っています。
ちなみにあなたは実質利回りの計算方法はすでに理解していますか?
もし、理解していないのであれば、必ず理解しておいてください。
平均利回り | %ランク | |
1年 | 3.84% | 88% |
3年 | 2.63 | 74% |
5年 | 0.71% | 47% |
10年 | – | – |
※2019年12月時点
10年間高いパフォーマンスを出し続けている優秀なファンド達も
参考にしてみてください。
10年間圧倒的に高いリターンを出している海外株式ファンドランキング
標準偏差は?
標準偏差は年間の基準価額の変動幅を示しています。他のファンドと
比較をすることで、基準価額の変動幅が大きいのか小さいのかを
判断できます。
ニッセイ オーストラリア高配当株ファンドの標準偏差は
国内株式ファンドと比べるとわずかに小さくなっていますが、
パフォーマンスの割には標準偏差が高くなっています。
標準偏差から将来リターンがある程度予測できるのはご存じでしょうか?
まだ計算方法を知らないと言う方はこの機会に覚えておいてくださいね。
標準偏差 | %ランク | |
1年 | 16.56 | 39% |
3年 | 13.22 | 34% |
5年 | 15.93 | 50% |
10年 | – | – |
※2019年12月時点
年別のパフォーマンスは?
ニッセイ オーストラリア高配当株ファンドの年別のパフォーマンスを
見てみると、10%超のリターンを出している年もあります。
2018年の大きな下落がなければ、高い利回りを維持できている
という判断もできましたが、20%ちかく下落してしまったことで
ここ数年のプラスリターンを相殺してしまいました。
年間利回り | |
2019年 | 11.95%(1-9月) |
2018年 | ▲19.69% |
2017年 | 10.50% |
2016年 | 8.41% |
2015年 | ▲5.87% |
2014年 | 16.44% |
※2019年12月時点
考えずに投資をしてしまいがちです。
しかし、「投資は出口戦略にあり」と言われるほど、
重要なテーマです。
ぜひこれを機会に投資の出口戦略を考えてみて
ください。
>>まさか考えたことがない?運用が成功するか失敗するかすべてのカギを握る投信運用の出口戦略
最大下落率はどれくらい?
投資をするにあたって、気になるのがどの程度下落するかでしょう。
標準偏差である程度は理解できるものの、やはり実際にどの程度下落
したかは気になります。
ニッセイ オーストラリア高配当株ファンドは2018年1月~2018年12月
までの1年間で最大▲19.69%の下落をしています。
株式ファンドのわりには、下落幅は思ったよりも小さいですね。
最大下落率を知ってしまうと、少し足が止まってしまうかもしれません。
しかし、以下のことをしっかり理解しておけば、元本割れの可能性を
限りなく低くすることが可能です。
期間 | 下落率 |
1カ月 | ▲9.72% |
3カ月 | ▲15.60% |
6カ月 | ▲17.68% |
12カ月 | ▲19.69% |
※2019年12月時点
分配金の推移は?
ニッセイ オーストラリア高配当株ファンドの分配金は
2017年3月以降毎月100円となっていましたが、ついに
月80円に減配されました。
分配金の内訳を確認すると約20%程度が当期の収益以外
から出ていることがわかります。思ったよりはひどくない
状況のようです。
ただし、繰越対象額が500円程度しかないため、減配したとは
いえ、分配金余力は7カ月程度しかないため、近々さらなる
減配が行われてもおかしくないと言えますね。
現在、基準価額に対する分配金の割合を示す分配利回りは25%近くに
なっていますので、基準価額の下落も止められないでしょう。
また、このブログでは何度も言っていますが、特別な事情がない限りは
毎月分配型のファンドに投資すべきではありません。
計算するとよくわかる!分配金を受け取ることによるデメリットとは?
分配金 | 当期収益以外 | 繰越対象額 | |
79期 | 100円 | 21円 | 663円 |
80期 | 100円 | 18円 | 645円 |
81期 | 100円 | 19円 | 626円 |
82期 | 100円 | 21円 | 604円 |
83期 | 80円 | 31円 | 574円 |
84期 | 80円 | 28円 | 545円 |
評判はどう?
ネットでの書き込みなどで調べる方法もありますが、評判を知るうえで
一番役に立つのが、月次の資金流出入額でしょう。
資金が流出しているということは、それだけこのファンドを解約している
人が多いということなので、評判が悪いということです。
ニッセイ オーストラリア高配当株ファンドは2017年以降資金が流出しており、
分配金が減り始めてようやく泥船にのっていることに気づいたのでしょう。
※引用:モーニングスター
ニッセイ オーストラリア高配当株ファンドの今後の見通し
まず、オーストラリアの株式市場は、経済の回復基調や
好調な企業収益の下支えもあり、株価の押し上げ要因に
なると考えます。
またオーストラリア準備銀行が当面、政策金利を据え置くと
予想されており、相場の下支え要因になると考えられます。
一方で、米中貿易戦争の行方によってはオーストラリア株式
市場にも影響が出てきますので、引き続き慎重に見守る必要が
あると言えます。
直近で分配金を80円に下げましたが、分配金余力への影響は
わずかであり、基準価額の下落は止まりません。本来であれば、
分配金を大きく下げたいはずですが、一度に下げてしまうと、
資金の流出が止まりませんので、それを懸念してのことだと
思われます。
このままいけば、そう遠くないうちに再度、分配金が減額
されるでしょう。
正直、保有しているメリットは何一つないので、早めに
解約することをお勧めします。
当然ながら、弱点もあります。
今も私は投信運用を続けてはいますが、私がなぜ
投資信託の運用を主軸におかなくなったのか。
その理由をこちらで話をしています。
>>私が痛感する投資信託の限界。多くの投資家が見逃している投信運用の弱点