世界でも有数のイノベーション都市として近年注目が集まっている
中国の深セン。
中国のシリコンバレーと言われるほど将来有望なスタートアップが
終結しており、多くの投資家が注目しています。
米中貿易摩擦の解決にはまだまだ時間が必要だと思われますが、
最悪期は脱した可能性が高く今後さらに注目を集めるでしょう。
日興アセットマネジメントがこの流れをとらえて、深センに
フォーカスしたファンドを新しく設定しましたので、独自の
目線で分析していきたいと思います。
深セン・イノベーション株式ファンドの基本情報
深センとは?
深センは1980年に中国政府に経済特区として指定されて以降、飛躍的な
成長を遂げており、米国のシリコンバレーに匹敵する新たなイノベーション
都市として注目が集まっています。
深センの優れている点は、1人当たりのGDPが中国主要都市トップで、
国際特許出願件数もトップ、技術革新力などで評価する「グローバル・
イノベーション・インデックス」のトップと中国国内だけでなく、
グローバルで見ても、有数のイノベーション都市となっています。
投資対象は?
深セン・イノベーション株式ファンドの投資対象は、深セン証券取引所に
上場している人民元建ての中国本土株式(中国A株)を主要投資対象とし、
中長期的な値上がり益を目指します。
現在は64銘柄で構成されており、組入銘柄の比率を見ると、深セン市場
中小企業板や深セン市場創業板の比率が高く、今後成長余力の高い中小型の
銘柄を中心に組み入れていることがわかります。
そして業種別でみると、情報技術が約50%となっており、シリコンバレー同様、
最先端の技術を開発する企業に投資をしていますね。
※引用:マンスリーレポート
純資産総額は?
続いて、純資産総額はどうなっているか見てみましょう。
純資産総額というのは、あなたを含めた投資家から集めた資金の
総額だと思ってください。
ファンドの純資産総額が小さいと、適切なタイミングで銘柄を入れ
替えることができなかったり、純資産総額が大きく減少していると、
ファンドの組み替えがうまくできず、予期せぬマイナスを生む可能性が
ありますので、事前に確認すべきポイントの1つです。
深セン・イノベーション株式ファンドは現在380億円ほど集まって
いますので、規模としては全く問題ありません。
これだけパフォーマンスが良いにもかかわらず、資金が流入
してこないのは、前年に大きなマイナスを出してしまったこと
が要因と言えます。設定のタイミングが悪かったですね。
※マンスリーレポート
実質コストは?
私たちが支払うコストには、目論見書に記載の信託報酬
以外に、株式売買委託手数料や、保管費用、印刷費用など
が含まれています。
そのため、実際に支払うコストは、目論見書記載の額より
高くなるのが通例で、実際にかかる実質コストをもとに
投資判断をしなければなりません。
信託報酬を信用するな。知らないうちに差し引かれている実質コストの調べ方
深セン・イノベーション株式ファンドの実質コストは2.303%
となっています。
高いパフォーマンスを出してくれるのであれば、我慢しなく
もないですが、大きくプラスを出しても、すぐに大きな
マイナスを出すような運用をしているファンドでは、積極的
に投資はできませんね。
購入時手数料と合わせると5%を超えてきますので、投資する
際には慎重にならざるをえません。
購入時手数料 | 3.3%(税込)※上限 |
信託報酬 | 1.705%(税込) |
信託財産留保額 | 0 |
実質コスト | 2.303%(概算値) |
※引用:最新運用報告書
実質コスト以外にも、多くの投資家が気づいていない
投信運用での成果を出すのに妨げとなる間違った考え方
をまとめました。参考にしてください。
無料ファンド相談から見えた。多くの人が気づいていない投信運用で成果を阻む9つの誤り
深セン・イノベーション株式ファンドの評価分析
基準価額をどう見る?
深セン・イノベーション株式ファンドの現在の基準価額はこの
2年間で、7000円近辺まで下落したあと、また10000円近辺
まで戻してきました。
この反発力は評価に値しますが、下落が大きすぎて結局、
ほとんどプラスになっていないことを見ると、積極的に
投資をしたいとは思えませんね。
※引用:モーニングスター
利回りはどれくらい?
深セン・イノベーション株式ファンドの利回りはどうでしょうか?
直近1年間の利回りは34.44%となっています。直近1年間だけ
をみれば、非常に優秀な成績を残しているファンドだと言えます。
ちなみにあなたは実質利回りの計算方法はすでに理解していますか?
もし、理解していないのであれば、必ず理解しておいてください。
平均利回り | %ランク | |
1年 | 34.44 | 7% |
3年 | – | – |
5年 | – | – |
10年 | – | – |
※2019年12月時点
10年間高いパフォーマンスを出し続けている優秀なファンド達も
参考にしてみてください。
10年間圧倒的に高いリターンを出している海外株式ファンドランキング
標準偏差は?
標準偏差は基準価額の変動幅を他のファンドと比較する
ときに役立ちます。
深セン・イノベーション株式ファンドの標準偏差は29.52と
なっており、普通の株式ファンドと比べると約2倍ほどの
リスクがあります。
2018年に▲30%で、2019年に+30%なので、標準偏差は
当然大きくなりますが、さすがにここまで大きいと怖くて
なかなか手が出せません、
標準偏差から将来リターンがある程度予測できるのはご存じ
でしょうか?
まだ計算方法を知らないと言う方はこの機会に覚えておいて
くださいね。
標準偏差 | %ランク | |
1年 | 29.52 | 100% |
3年 | – | – |
5年 | – | – |
10年 | – | – |
※2019年12月時点
年別のパフォーマンスは?
深セン・イノベーション株式ファンドの年別のパフォーマンスを
見てみましょう。
2019年はすでに40%近いリターンを出しており、素晴らしいの
一言ですが、2018年がひどすぎます。結局大きなプラスを
出せても、大きなマイナスをすぐに出すようなファンドでは、
投資対象として優れているとは言えませんね。
年間利回り | |
2019年 | 39.12%(1-9月) |
2018年 | ▲34.98% |
※2019年12月時点
考えずに投資をしてしまいがちです。
しかし、「投資は出口戦略にあり」と言われるほど、
重要なテーマです。
ぜひこれを機会に投資の出口戦略を考えてみて
ください。
>>ここまで考えるのが本当の資産運用。多くの投資家が考えられていない投信運用の出口戦略とは
類似ファンドとのパフォーマンス比較
アクティブファンドに投資をするのであれば、最低限インデックス
ファンドよりもパフォーマンスが優れていなければ、投資をする
価値がありません。
今回は、新興国株式の代表的なファンドであるeMAXIS Slim
新興国株式インデックスと先進国株式の代表格であるeMAXIS
Slim 先進国株式インデックスと比較をしてみました。
eMAXIS Slim 新興国株式インデックスとの比較では、ほぼ
同じ程度のパフォーマンスとなっていますが、深セン・
イノベーション株式ファンドのほうがかなり下落幅が
大きくなっています。
また新興国株式ファンドと先進国株式ファンドを比較すると、
先進国株式のほうが圧倒的に優れています。
こう比較してしまうと、あえて新興国株式ファンドや
このファンドにも投資をする必要性を感じません。
※引用:モーニングスター
最大下落率は?
深セン・イノベーション株式ファンドに投資を検討する上で、
事前にどの程度下落する可能性があるのかを把握しておいて
損はありません。
まだ運用期間が短いですが、現在の最大下落率は▲34.98%と
なっています。
最大下落率を知ってしまうと、少し足が止まってしまうかもしれません。
しかし、以下のことをしっかり理解しておけば、元本割れの可能性を
限りなく低くすることが可能です。
期間 | 下落率 |
1カ月 | ▲14.32% |
3カ月 | ▲21.54% |
6カ月 | ▲29.88% |
12カ月 | ▲34.98% |
※2019年12月時点
評判はどう?
ネットでの書き込みなどで調べる方法もありますが、評判を知る
うえで一番役に立つのが、月次の資金流出入額でしょう。
資金が流入しているということは、それだけこのファンドを購入
している人が多いということなので、評判が良いということです。
深セン・イノベーション株式ファンドは2017年に新規設定されて
以来、毎月多くの資金が流入していましたが、2018年末には
ついに流出超過となってしまいました。
これだけパフォーマンスが悪いと、いくら深センへの期待値
が高いと言っても仕方ありませんね。
※引用:モーニングスター
深セン・イノベーション株式ファンドの今後の見通し
現状でいえば、期待外れの運用結果と言えますが、この大部分は
米中の貿易摩擦による市場の不確実性が高まっていることが原因です。
短期的には、慎重姿勢ですが、中長期的には強気の見方ができるでしょう。
深センは「中国の未来」ともいわれており、決済はスマートフォンが当たり前、
公共交通機関は電気自動車に置き換わり、タクシー配車サービスアプリやスマホを
活用したレンタサイクルもすでに日常的なサービスとなっています。
続々と中国国内から有望なスタートアップが深セン証券取引所への上場を目指して
集まってきています。中国のイノベーション企業は世界でも存在感を高めており、
アリババやテンセントは世界の株式時価総額ランキングの上位にランクインしており、
直近10年で第二のアリババやテンセントが出てきてもおかしくない状況です。
そして、MSCIエマージング指数の組み入れ対象に中国A株が採用されたので、
今後、大きな資金流入が期待できるというのもプラス要因でしょう。
短期的には伸び悩んでいますが、中長期的には非常に期待がもてるファンドですので、
自分のポートフォリオに組み入れるに値するか引き続きウォッチしていこうと思います。
当然ながら、弱点もあります。
今も私は投信運用を続けてはいますが、私がなぜ
投資信託の運用を主軸におかなくなったのか。
その理由をこちらで話をしています。
>>なぜ私が投信運用に限界を感じたのか。多くの投資家が見逃している投信運用の弱点