先進国高利回り債券と聞くと、複数の先進国に分散投資をしていく
イメージを持つ人が多いと思いますが、この先進国高金利債券ファンド
『グローバル・トップ』はその時々で金利の高い国の債券に集中して
投資をしていく珍しい運用を行っています。
なかなか債券ファンドで思うようなパフォーマンスを出せている
ところは少ないですが、グローバル・トップはどうなのでしょうか?
グローバルトップには、毎月決算型と年1回決算型がありますが、
今日は、人気の高い毎月決算型を中心に分析していきます。
年1回決算型を保有している人もしくは、購入を検討している人にも
参考になるように分析していますので、参考にしてくださいね。
先進国高金利債券ファンド『グローバル・トップ』の基本情報
投資対象は?
グローバル・トップの投資対象は、世界主要国の国債、政府保証債、
国際機関債等です。
先進国の中で、利回りが相対的に高い国を複数選定し、重点配分する
ことで利子収入の獲得を目指します。
現在の国別の構成比を見ると、アメリカとシンガポールに偏って
いることがわかります。
組入られている債券の格付けを見てみると、AAA格のみで
構成されており、信用リスクはほぼないと言えますね。
※引用:マンスリーレポート
純資産総額は?
続いて、グローバル・トップ の純資産総額はどうなっているか
見てみましょう。
純資産総額というのは、あなたを含めた投資家から集めた資金の
総額だと思ってください。
ファンドの純資産総額が小さいと、適切なタイミングで銘柄を入れ
替えることができなかったり、純資産総額が大きく減少していると、
ファンドの組み替えがうまくできず、予期せぬマイナスを生む可能性
がありますので、事前に確認すべきポイントの1つです。
グローバル・トップ は一時期1000億円を超えていましたが、直近では
600億円前後を推移しています。
規模の大きさとして問題はなさそうです。
※引用:マンスリーレポート
実質コストは?
私たちが支払うコストには、目論見書に記載の信託報酬以外に、
株式売買委託手数料や、保管費用、印刷費用などが含まれています。
そのため、実際に支払うコストは、目論見書記載の額より高くなる
のが通例で、実際にかかる実質コストをもとに投資判断をしなければ
なりません。
信託報酬を信用するな。知らないうちに差し引かれている実質コストの調べ方
グローバル・トップ の実質コストは1.23%とカテゴリー内では
平均的な水準です。
ただ、そもそもそこまで高くないリターンしか期待できない中で、
1.23%も手数料を取られては、投資家の利益が全然出ません。
購入時手数料 | 2.2%(税込) |
信託報酬 | 1.21%(税込) |
信託財産留保額 | 0 |
実質コスト | 1.23%(概算値) |
※引用:最新の運用報告書
と聞かれてあなたは何と答えますか?
もし『ファンド選び』だと思ったとしたら、あなたはドツボに
はまっていますので、こちらの記事を読んでみてください。
>>無料ファンド相談から見えた。多くの人が気づいていない投信運用で成果を阻む9つの誤り
先進国高金利債券ファンド『グローバル・トップ』の評価分析
基準価額をどう見る?
グローバル・トップの基準価額は、3年間で15%近く下落しています。
一方、分配金再投資基準価額(青線)を見ると、3年間で約10%は
上昇していますので、過剰な分配が行われていることがわかります。
※引用:モーニングスター
利回りはどれくらい?
グローバル・トップ の直近1年間の利回りは2.40%となっており、
3年平均利回りが+4.18%、5年平均利回りが+1.08%となっています。
海外債券カテゴリーで上位20%以内のパフォーマンスなので、優れた
結果を残していますね。
ちなみにあなたは実質利回りの計算方法はすでに理解していますか?
もし、理解していないのであれば、必ず理解しておいてください。
平均利回り | %ランク | |
1年 | +2.40% | 25% |
3年 | +4.18% | 13% |
5年 | +1.08% | 15% |
10年 | – | – |
※2019年10月時点
標準偏差は?
標準偏差は基準価額の変動の大きさを比較するときに役立ちます。
グローバル・トップの標準偏差は日本株式ファンドや海外株式ファンドと
比較すると約3分の1程度の変動に抑えられており、リスクを抑えて、
運用したい人にとってはおすすめです。
標準偏差から将来リターンがある程度予測できるのはご存じでしょうか?
まだ計算方法を知らないと言う方はこの機会に覚えておいてくださいね。
標準偏差 | %ランク | |
1年 | 3.68 | 46% |
3年 | 5.71 | 65% |
5年 | 7.93 | 68% |
10年 | – | – |
※2019年10月時点
年別の運用パフォーマンスは?
グローバル・トップの年別のパフォーマンスを見てみると、
マイナスリターンとなっている年も多く、あまり積極的には
投資をしたいお思えないパフォーマンスになっています。
年間利回り | |
2019年 | +3.27%(1-9月) |
2018年 | ▲2.40% |
2017年 | +6.28% |
2016年 | ▲2.21% |
2015年 | ▲7.62% |
2014年 | +16.09% |
※2019年10月時点
考えずに投資をしてしまいがちです。
しかし、「投資は出口戦略にあり」と言われるほど、
重要なテーマです。
ぜひこれを機会に投資の出口戦略を考えてみて
ください。
>>まさか考えたことがない?運用が成功するか失敗するかすべてのカギを握る投信運用の出口戦略
類似ファンドの実質コスト比較
高いコストを支払ってまでアクティブファンドに投資をするのであれば、
低コストのインデックスファンドとのパフォーマンスを比較しておいて、
損はありません。
今回は、先進国債券の代表的なインデックスファンドである、
eMAXIS Slim 先進国債券インデックスとグローバル・トップを
比較してみました。
結果は終始、eMAXIS Slim 先進国債券インデックスの圧勝です。
これでは、あえて高いコストを支払ってまで投資をする理由が
ありません。
※引用:モーニングスター
最大下落率は?
投資を検討するうえで、標準偏差などから、価格変動の範囲をある
程度は予想できますが、やはり実際に下落した度合いをみたほうが
イメージがわきます。
グローバル・トップ は2013年5月~2013年7月の間に最大▲12.45%
下落しています。
先進国債券であれば、これぐらいの下落率で済むでしょう。
最大下落率を知ってしまうと、少し足が止まってしまうかもしれません。
しかし、以下のことをしっかり理解しておけば、元本割れの可能性を
限りなく低くすることが可能です。
期間 | 下落率 |
1カ月 | ▲8.82% |
3カ月 | ▲12.45% |
6カ月 | ▲10.12% |
12カ月 | ▲11.56% |
※2019年10月時点
分配金の推移は?
続いて、分配金の推移を見ていきましょう。
グローバル・トップは、2014年ごろから毎月70円の分配金を出し
続けていましたが、直近で35円に切り下げられました。
基準価格に対する分配金の割合を示す分配利回りが5~6%と
下がったこもあり、分配金が健全な範囲に近づいてきては
いるものの、未だタコ足配当が続いています。
加えて、未だ分配金余力は20カ月を切っているため、近々
減配が行われてもおかしくない状況です。
このブログでは何度も言っていますが、特別な事情がない限りは
毎月分配型のファンドに投資すべきではありません。
計算するとよくわかる!分配金を受け取ることによるデメリットとは?
分配金 | 当期収益以外 | 繰越対象額 | |
105期 | 35円 | 19円 | 722円 |
106期 | 35円 | 18円 | 703円 |
107期 | 35円 | 24円 | 679円 |
108期 | 35円 | 19円 | 661円 |
109期 | 35円 | 20円 | 640円 |
110期 | 35円 | 20円 | 621円 |
評判はどう?
グローバル・トップの評判はネットでの書き込みなどで調べる
方法もありますが、評判を知るうえで一番役に立つのが、月次の
資金流出入額です。
資金が流入しているということは、それだけグローバル・トップ
を購入している人が多いということなので、評判が良いということです。
グローバル・トップ は、2017年~2018年は一次的に資金の
流入超過となっていましたが、2018年からはまた流出超過と
なっています。
近々また減配が行われそうな気配もあり、タコ足配当かつ
高い手数料ではあえてグローバル・トップに投資をする
理由が見つかりませんね。
※引用:モーニングスター
先進国高金利債券ファンド『グローバル・トップ』の今後の見通し
先進国の債券に投資をしていくのであれば、大きな失敗をすることは
ないと思います。
しかし、高い手数料とタコ足配当により運用がうまくできているとは
到底言えません。先進国債券に投資をしたいのであれば、eMAXIS Slim
先進国債券インデックスに投資をしたほうがよほど高いリターンが
期待できるでしょう。
しかし、債券ファンドの場合は、債券を満期まで保有するわけでなく、
途中で売却して、新しい債券を買い直すこともありますので、運用が
うまく行かないとマイナスが生じます。
債券ファンドに投資するような人は、手堅く資産を増やしたい人ですので、
債券ファンドのように、マイナスになる可能性があるものより、米国債等に
直接投資をして、満期まで保有し、着実に収益を得るという戦略のほうが
良い結果となると思います。
販売会社が儲からないので、積極的に紹介はしていませんが、SBI証券など
のネット証券でもタイミングによっては、出回りますので、定期的に
チェックをしていれば、米国債を購入することはできますよ。
当然ながら、弱点もあります。
今も私は投信運用を続けてはいますが、私がなぜ
投資信託の運用を主軸におかなくなったのか。
その理由をこちらで話をしています。
>>私が痛感する投資信託の限界。多くの投資家が見逃している投信運用の弱点