大和証券投資信託が設定するロボット・テクノロジー関連株ファンド『ロボテック』。
このファンドが投資対象とするロボティクス関連企業の株式は、AIやヘルスケアと並んで投資家に人気のテーマです。
今日は、ロボテックが果たして投資価値があるファンドなのか、独自目線で徹底的に分析していきたいと思います。
「ロボテックって投資対象としてどうなの?」
「ロボテックって持ってて大丈夫なの?」
「ロボテックより良いファンドってある?」
といったことでお悩みの方は、この記事を最後まで読めば、悩みは解消すると思います。
[br num="1"]
ロボット・テクノロジー関連株ファンド『ロボテック』の基本情報
投資対象は?
ロボテックの投資対象は、日本を含む世界のロボット関連企業の株式に投資をします。
ロボット関連企業とは、ロボット・テクノロジーの開発や製造などにより、ビジネスを展開する企業です。
少子高齢化による労働力不足、高成長を続ける新興国の労働力代替、医療技術発展への寄与など、ロボット技術の成長への期待と需要は年々高まっており、ロボット製品を提供する企業の株式は大変有望です。
このような銘柄を投資対象とすることは、時宜を捉えていると言えるでしょう。
※引用:交付目論見書
ロボテックの組入銘柄数は55銘柄で、約6割が米国となっています。
※引用:マンスリーレポート
組入上位銘柄を見てみると、ほとんどがアメリカの企業となっており、キーエンスとファナックが日本の企業となっています。
※引用:マンスリーレポート
つみたてNISAとiDeCoの対応状況は?
ロボテックのつみたてNISAやiDeCoの対応状況ですが、残念ながら、どちらも対応していません。
つみたてNISA | iDeCo |
× | × |
※2022年10月時点
運用の特徴は?
ロボテックの実質的な運用者は、フランスの大手保険系運用会社であるアクサ・インベストメント・マネージャーズです。同社はグローバル株式運用に定評があります。
ところが残念なことに、ロボテックは昔ながらの非効率かつ高コストな設計のファンドです。
ロボテックはアクサ・インベストメント・マネージャーズが運用する「アクサIM・グローバル・ロボット関連株式ファンド(為替ヘッジ無し)(適格機関投資家専用)」にほぼ100%投資し、そこからマザーファンドを通じて運用対象の株式を買い付けています。
※引用:交付目論見書
これならば、「アクサIM・グローバル・ロボット関連株式ファンド」を公募ファンド化して投資家はそれを買い付けるようにすればコストの大幅な削減につながります。
しかし、このような二重構造にした理由は設定当初の最大の販売会社である大和証券の思惑が働いているように思えます。
すなわち、投資家とアクサ・インベストメント・マネージャーズとの間に大和証券系列の運用会社を挟むことで、投資家から報酬を中抜きしてグループ全体の利益を最大化しようとしているのです。
純資産総額は?
続いて、ロボテックの純資産総額はどうなっているか見てみましょう。
純資産総額というのは、あなたを含めた投資家から集めた資金の総額だと思ってください。純資産総額は大きいほうが、ファンドマネージャーが資金を運用する際に効率よくできたり、保管費用や監査費用が相対的に低くなりますので、コストが低く抑えられます。
また投資信託の規模が小さくなると運用会社自体がその投資信託に力を注がなくなりパフォーマンスが悪くなることもありますので注意が必要です。
ロボテックの純資産残高は2015年の設定以来、右肩上がりに上昇していましたが、2018年に入ってからはパフォーマンスが優れず、4000億あった純資産も今や2150億円程度です。ただ、それでもかなり規模としては大きいファンドです。
※引用:マンスリーレポート
実質コストは?
私たちが支払うコストには、目論見書に記載の信託報酬以外に、株式売買委託手数料や、保管費用、印刷費用などが含まれています。
そのため、実際に支払うコストは、目論見書記載の額より高くなるのが通例で、実際にかかる実質コストをもとに投資判断をしなければなりません。
信託報酬を信用するな。知らないうちに差し引かれている実質コストの調べ方
ロボット・テクノロジー関連株ファンド『ロボテック』の実質コストは1.815%となっており、かなり割高です。上述の通り、理解しがたい二重構造になっていることにより、投資家としてはコスト増になってしまっています。
購入時手数料 | 3.3%(税込)※上限 |
信託報酬 | 1.815%(税込) |
信託財産留保額 | 0 |
実質コスト | 1.815%(概算値) |
※引用:最新運用報告書
「ファンドの運用で成果を出すために一番大事なことは何ですか?」と聞かれてあなたは何と答えますか?
もし『ファンド選び』だと思ったとしたら、あなたはドツボに
はまっていますので、こちらの記事を読んでみてください。
ロボット・テクノロジー関連株ファンド『ロボテック』の評価分析
基準価格をどう見る?
ロボット・テクノロジー関連株ファンド『ロボテック』の基準価額はコロナショックで大きく下落しましたが、その後は大きく上昇しました。しかし、2021年以降は緩やかに下落しています。
一方、分配金を再投資した場合の基準価額(青線)は2021年末まで上昇し、2022年以降は下落しています。少なくともこの3年でファンドは大きな利益を上げているようです。
※引用:モーニングスター
利回りはどれくらい?
続いて、ロボット・テクノロジー関連株ファンドの利回りを見ていきます。
直近1年間の利回りは▲14.31%となっていますが、3年平均、5年平均利回りも10%近くありますので、優れたパフォーマンスとなっています。
ただ、この時点ではどの程度優れたパフォーマンスなのかわかりません。ですので、他のファンドとパフォーマンスを比較して、投資判断するようにしてください。
ちなみにあなたは実質利回りの計算方法はすでに理解していますか?もし、理解していないのであれば、必ず理解しておいてください。
平均利回り | |
1年 | ▲14.31% |
3年 | +15.19% |
5年 | +9.83% |
10年 | - |
※2022年10月時点
10年間高いパフォーマンスを出し続けている優秀なファンド達も参考にしてみてください。
10年間圧倒的に高いリターンを出している先進国株式ファンドランキング
同カテゴリー内での利回りランキングは?
ロボット・テクノロジー関連株ファンド『ロボテック』は日本株を含むグローバル株式カテゴリーに属しています。
投資をするのであれば、同カテゴリーでも優秀なパフォーマンスのファンドに投資をしたいと思うので、同カテゴリー内でのパフォーマンスのランキングを調べました。
ロボテックは、3年、5年平均利回りは上位30%程度にランクインしていますので、十分優秀なファンドとわかりました。
上位●% | |
1年 | 75% |
3年 | 27% |
5年 | 29% |
10年 | - |
※2022年10月時点
年別のパフォーマンスは?
ロボテックの年別のパフォーマンスを見てみましょう。
2018年、2022年は20%近いマイナスとなっていますが、30%以上のプラスを出している年も多数あり、かなり大きく値動きするファンドであることがわかります。
これくらいの変動はあるものと理解した上で投資するのがいいですね。
年間利回り | |
2022年 | ▲26.11%(1-9月) |
2021年 | +30.03% |
2020年 | +34.95% |
2019年 | +36.02% |
2018年 | ▲18.30% |
2017年 | +36.22% |
2016年 | +7.36% |
※2022年10月時点
投信運用は長期投資が前提なので、つい出口戦略を考えずに投資をしてしまいがちです。
しかし、「投資は出口戦略にあり」と言われるほど、重要なテーマです。ぜひこれを機会に投資の出口戦略を考えてみてください。
>>まさか考えたことがない?運用が成功するか失敗するかすべてのカギを握る投信運用の出口戦略インデックスファンドとのパフォーマンス比較
ロボテックへの投資を検討するのであれば、少なくとも低コストのインデックスファンドよりはパフォーマンスが優れていなければ投資する価値がありません。
ロボテックは、米国を中心とした先進国株式に投資をしています。
ですので、先進国株式の代表的指数であるMSCIコクサイに連動するように運用しているeMAXIS Slim 先進国株式インデックスとパフォーマンスを比較しました。
※引用:モーニングスター
コロナショック以降、ロボテックがeMAXIS Slim 先進国株式インデックスを大きく突き放しましたが、2022年に入ってからはかなり拮抗しています。
より長期のパフォーマンスはどうなっているか見てみましょう。
ロボテック | Slim 先進国 | |
1年 | ▲14.31% | +5.43% |
3年 | +15.19% | +16.65% |
5年 | +9.83% | +11.72% |
10年 | - | - |
※2022年10月時点
5年平均利回りでも、eMAXIS Slim 先進国株式インデックスのほうが上回っています。こうなってくると、あえて高いコストを支払ってロボテックに投資をするメリットがなくなりますね。
類似ファンドとのパフォーマンス比較
アクティブファンドに投資をするのであれば、他のアクティブファンドとパフォーマンスを比較しておいて損はありません。
今回は、ロボテックと同じように米国を中心に先進国株に分散投資をしている大和住銀 DC海外株式アクティブファンドと比較を行いました。
※引用:モーニングスター
ロボテックも決してパフォーマンスが悪いわけではないのですが、大和住銀 DC海外株式アクティブファンドの圧勝です。
このあたりのファンドは確かにコストは割高ですが、その分しっかりプラスのリターンを出してくれているので、十分検討する価値があるファンドと言えるでしょう。
ロボテック | 大和住銀DC海外 | |
1年 | ▲14.31% | ▲14.29% |
3年 | +15.19% | +17.00% |
5年 | +9.83% | +12.98% |
10年 | - | +17.63% |
※2022年10月時点
最大下落率はどれくらい?
投資をするにあたって、気になるのがどの程度下落することがあるかでしょう。標準偏差である程度は理解できるものの、やはり実際に下落したかを調べたほうがイメージが湧きます。
ロボテックは2022年1月~6月の6カ月間で▲24.39%下落しました。
期間 | 下落率 |
1カ月 | ▲13.55% |
3カ月 | ▲20.59% |
6カ月 | ▲24.39% |
12カ月 | ▲18.30% |
※2022年10月時点
ファンドの運用においては、大きく下落することもありますが、長期保有をすることでしっかりプラスのリターンが出ていますので、くれぐれもパニック売りはしないようにしてください。
最大下落率を知ってしまうと、少し足が止まってしまうかもしれません。しかし、以下のことをしっかり理解しておけば、元本割れの可能性を限りなく低くすることが可能です。
分配金の推移は?
ロボテックの分配金の推移を見てみましょう。そもそも分配金に期待して投資をしている投資家は少ないと思いますが、パフォーマンスが良かった年は、分配金が多いです。
ただ、あまり安定していないですね。
そもそも、このブログでは何度も言っていますが、分配金は受け取らずに再投資したほうが投資効率は確実に高くなります。
計算するとよくわかる!分配金を受け取ることによるデメリットとは?
分配金 | |
2022年 | 0円 |
2021年 | 3,800円 |
2020年 | 800円 |
2019年 | 0円 |
2018年 | 300円 |
2017年 | 1,250円 |
2016年 | 0円 |
※2022年10月時点
評判はどう?
ネットでの書き込みなどで調べる方法もありますが、評判を知るうえで一番役に立つのが、月次の資金流出入額でしょう。資金が流入しているということは、それだけこのファンドを購入している人が多いということなので、評判がいいということです。
ロボテックは、2018年頭までは順調に資金流入が続いていましたが、パフォーマンスの悪化とともに、直近では資金が流出超過となっています。
先進国株式のインデックスファンドと比較をして、若干ではあるもののパフォーマンスで負けてしまっているので、そのあたりも影響しているのだと思います。
※引用:モーニングスター
ロボット・テクノロジー関連株ファンド『ロボテック』の評価まとめと今後の見通し
いかがでしょうか?
テーマ型ファンドというのは、廃れるのも早いもので、なかなか長期で高い利回りで運用できないことが多いです。
低コストで人気のeMAXIS Slim 先進国株式インデックスと比較をすると、かなり競ってはいるものの、パフォーマンスで負けてしまっており、現時点であえて高いコストを支払ってまで投資をするメリットを感じません。
ロボットをテーマにした分野はまさに今から伸びる分野であり、今後も高い利回りが期待できる分野だと思っていますが、あえてテーマ型ファンドに投資をする理由もありません。
先進国株式インデックスの中に、ロボット関連銘柄も多数含まれるわけなので、それでいいのではないかと思います。
最後に、投信運用には多くのメリットもありますが、当然ながら、弱点もあります。
今も私は投信運用を続けてはいますが、私がなぜ投資信託の運用を主軸におかなくなったのか。その理由をこちらで話をしています。
>>なぜ私が投信運用に限界を感じたのか。多くの投資家が見逃している投信運用の弱点