日興アセットマネジメントが力を入れて販売している
スマート・ファイブ。
初心者投資家に人気のあるバランス型ファンドであり、
モーニングスターのファンド・オブ・ザ・イヤー2016、
2017、2018、2019と4年連続で受賞しています。
そう聞くと、優秀なファンドに違いないと思ってしまい
がちですが、実際のところはどうなのでしょうか?
今日はスマート・ファイブについて徹底的に分析していきます。
スマート・ファイブ(毎月決算型)の基本情報
投資対象は?
スマート・ファイブの投資対象は、中長期的に収益が期待できる
5つの資産(日本国債、海外債券、グローバル株式、グローバルREIT、
金)となっています。
現在の組入比率は以下のようになっており、日本債券の比率が50%
とかなり高くなっています。
このブログをよく読んでいただいている方はすぐ気づくと思いますが、
アクティブファンドで日本国債が組入られている場合、手数料負け
する可能性がかなり高まります。
今は国債の金利が下落している関係で、国債の価格が上昇している
ため、手数料負けしていませんが、日本国債の最終利回りは0.36%しか
ありません。
つまり、利回り0.36%の日本国債を買うために年1%以上の手数料を
支払っているということです。あなたの投資資金のうち50%は日本国債
に投資をされているので、いかにナンセンスかわかったでしょうか。
※引用:マンスリーレポート
運用の特徴は?
スマート・ファイブの運用の特徴として、値動きの異なる5つの
資産に分散投資をすることで、基準価額の変動を抑えながら、
収益の獲得を目指すというものがあります。
一般的には、景気の良し悪しで各資産クラスは以下の図のように
動くとされています。
これは良い見方をすれば、リスクが分散できるといえますが、
結局どの要因で上がるのか下がるのか非常に把握しづらく
なってしまうというデメリットもあります。
※引用:交付目論見書
もう一つの特徴は、リスク・パリティ戦略といって、各資産クラス
のリスクに応じて、リスクの大きい資産は保有する比率を下げ、
リスクの低い資産は保有する比率を上げるという戦略をとっています。
これにより市場変動に左右されにくい運用を行っています。
ただ、これは私のブログで常に言っていますが、市場変化に合わせて、
ファンドを入れ替えるのはプロでも相当難しく、そう簡単にうまくは
いきません。
もしこれができるのであれば、どのファンドも非常に優秀な結果を
出せるでしょう。
※引用:交付目論見書
純資産総額は?
続いて、スマート・ファイブの純資産総額はどうなっているか
見てみましょう。
純資産総額というのは、あなたを含めた投資家から集めた資金の
総額だと思ってください。
ファンドの純資産総額が小さいと、適切なタイミングで銘柄を入れ
替えることができなかったり、純資産総額が大きく減少していると、
ファンドの組み替えがうまくできず、予期せぬマイナスを生む可能性
がありますので、事前に確認すべきポイントの1つです。
スマート・ファイブ(毎月決算型)の純資産額は現在3,400億円
程度まで積みあがっています。
ファンド・オブ・ザ・イヤーを毎年受賞しており、一見すると
優れたファンドのように見えることと、ゆうちょが力を入れて
販売していることが大きな要因です。
ただ実態は、ゆうちょと運用会社が儲かる設計になっており、
投資家にとってはメリットが少ない商品でしかありません。
※引用:マンスリーレポート
実質コストは?
私たちが支払うコストには、目論見書に記載の信託報酬以外に、
株式売買委託手数料や、保管費用、印刷費用などが含まれています。
そのため、実際に支払うコストは、目論見書記載の額より高くなる
のが通例で、実際にかかる実質コストをもとに投資判断をしなければ
なりません。
信託報酬を信用するな。知らないうちに差し引かれている実質コストの調べ方
スマート・ファイブ(毎月決算型)の実質コストは1.47%と
なっており、バランスファンドのカテゴリーの中では、平均的な
水準です。
ただし、利回りが0.36%しかない国債を購入しているだけにも
かかわらず、この手数料は高すぎますね。
ゆうちょ銀行でスマート・ファイブを購入している投資家は
投資初心者が多いのでカモにされているとしか思えません。
購入時手数料 | 2.2%(税込)※上限 |
信託報酬 | 1.4715%(税込) |
信託財産留保額 | 0 |
実質コスト | 1.47%(概算値) |
※引用:最新運用報告書
実質コスト以外にも、多くの投資家が気づいていない
投信運用での成果を出すのに妨げとなる間違った考え方
をまとめました。参考にしてください。
無料ファンド相談から見えた。多くの人が気づいていない投信運用で成果を阻む9つの誤り
スマート・ファイブ(毎月決算型)の評価分析
基準価格をどう見る?
2013年にファンドを設定して以来、10000円近辺を推移していましたが、
コロナショックの影響で、9500円台まで値下がりしています。
分配金を受け取らずに運用をした場合の基準価額(青線)を見ると、
3年間で5%程度は上昇していますので、かなり手堅く運用ができて
いると言えばできています。
※引用:モーニングスター
利回りはどれくらい?
スマート・ファイブ(毎月決算型)の直近1年間の利回りは、0.62%
となっており、3年平均、5年平均利回りは2%前後です。
半年前と比べると、コロナの影響で、平均利回りは下がって
いますが、長期の5年平均で見ると、ほとんど変わっていません。
この程度の利回りの中で、信託報酬は1.5%近く取られているわけ
ですから、ファンドの収益の40%近くは運用会社と販売会社に
抜かれているような構造となっています。
あえてリスクを抑えることで、投資家は損をしにくくなっていますが、
運用会社と販売会社だけが儲かり、投資家の資産はほとんど増えない
といった状況になっています。
ちなみにあなたは実質利回りの計算方法はすでに理解していますか?
もし、理解していないのであれば、必ず理解しておいてください。
平均利回り | 2020年1月 | 2020年7月 |
1年 | 9.04% | 0.62% |
3年 | 3.02% | 1.91% |
5年 | 2.34% | 2.21% |
10年 | – | – |
※2020年7月時点
10年間高いパフォーマンスを出し続けている優秀なファンド達も
参考にしてみてください。
10年平均利回りランキングで見る圧倒的に優れた投資信託まとめ
同カテゴリー内における利回りランキング(上位●%)の変化
スマート・ファイブ(毎月決算型)は、バランス型ファンドの安定
カテゴリーに属しています。
投資をするのであれば、同じカテゴリーでも優秀なパフォーマンス
のファンドに投資をしたいと思うので、同カテゴリー内でもパフォー
マンスのランキングは事前に調べておいて損はありません。
スマート・ファイブ(毎月決算型)は半年前まで平均以下の
ランキングでしたが、コロナショックを経て、上位10%に
ランクインするようになっています。
こういった下落相場でランキングがあがるというのは、
評価できるポイントです。
平均利回り(上位●%) | 2020年1月 | 2020年7月 |
1年 | 76% | 31% |
3年 | 68% | 5% |
5年 | 69% | 3% |
10年 | – | – |
※2020年7月時点
年別のパフォーマンスは?
つづいて、スマート・ファイブの年別のパフォーマンスを見て
みましょう。
2015年、2018年ははマイナスとなっていますが、下落幅も小さい
ので、投資初心者の方にはリスクが小さく安心かもしれません。
トータルで見れば、手堅い運用ができていると言えますね。
年間利回り | |
2020年 | ▲1.89%(1-6月) |
2019年 | 9.04% |
2018年 | ▲3.88% |
2017年 | 4.33% |
2016年 | 6.77% |
2015年 | ▲3.83% |
2014年 | 12.42% |
※2020年7月時点
考えずに投資をしてしまいがちです。 しかし、「投資は出口戦略にあり」と言われるほど、
重要なテーマです。 ぜひこれを機会に投資の出口戦略を考えてみて
ください。 >>ここまで考えるのが本当の資産運用。多くの投資家が考えられていない投信運用の出口戦略とは
類似ファンドとのパフォーマンス比較
スマート・ファイブに投資をするのであれば、他のバランス型の
アクティブファンドとパフォーマンスを比較しておいて損は
ありません。
今回は、株、債券、RIETにリスクを抑えた分散投資をする
投資のソムリエとパフォーマンスを比較してみます。
コロナショック前までは、パフォーマンスは拮抗していましたが、
コロナショック後は大きくパフォーマンスに差がつきました。
投資のソムリエもスマート・ファイブと同じように機動的に
ポートフォリオを組み替えるファンドですが、運用チームの
差が見事に表れてしまっています。
※引用:モーニングスター
スマート・ファイブ | 投資のソムリエ | |
1年 | 0.62% | 4.85% |
3年 | 1.91% | 3.50% |
5年 | 2.21% | 2.48% |
10年 | – | – |
※2020年7月時点
分配健全度はどれくらい?
分配金を毎月受け取っていると、受け取っていることに安心
してしまい、自分の投資元本からの配当なのか、ファンドの
収益からの配当なのか調べなくなります。
そこで、分配金がファンドの収益からちゃんと支払われている
のかを調べるときに役立つのが分配健全度です。
分配健全度とは、1年間の分配金の合計額と基準価額の変動幅を
もとに、あなたが受け取った分配金の約何%がファンドの収益
によるものなのかを計算できる指標です。
基準価額の変動幅 | 1年間の分配合計額 | 分配健全度 |
▲372円 | 480円 | 22.5% |
※2019/7/22~2020/7/21
スマート・ファイブ(毎月決算型)の直近1年間の
分配健全度は22.5%となっています。
分配健全度は100%を切ると、一部ファンドの収益以外から
分配金が支払われていることを意味します。
22.5%となると、直近1年間の大半はファンドの収益以外
から分配金が支払われているということです。
今までは比較的健全に運用していたファンドですが、
基準価額がコロナショックで下落し始めたことで、
分配健全度が大きく悪化をし始めていますので、
今後注意が必要です。
分配金利回りはどれくらい?
毎月分配型のファンドに投資をしている場合、どれくらいの
分配金が受け取れるのかを知るために分配金利回りを参考
にします。
ただし、投資信託の場合、分配金利回りだけをみていると、
受け取っている分配金がファンドの収益から出ている
ものなのか、投資元本が削られているのか、判断できません。
そのため、ファンドの運用利回りと分配金利回りを比較して、
ファンドの運用利回りのほうが高ければ、あなたが受け取って
いる分配金がファンドの運用の収益から支払われていると
判断することができます。
スマート・ファイブ(毎月決算型)の分配利回りは5%程度
なので、健全な水準ではあります。
ただ、ファンドの運用利回り自体が低いので、あなたが
受け取っている分配金のほとんどはファンドの収益では
ないということがわかります。
運用利回り | 分配利回り | |
1年 | 0.62% | 5.0% |
3年 | 1.91% | |
5年 | 2.21% | |
10年 | – |
※2020年7月時点
分配金余力はどれくらい?
毎月分配型ファンドに投資をしている場合、もう1つ気になる
のが今後いつごろ、減配されそうかという点です。
そんなときに役立つのが分配金余力という考え方です。
分配金余力というのは、今の分配金の水準をあと何か月
続けられそうかを判断するための指標です。
明確にこの水準になったら減配されるという指標では
ありませんが、12カ月を切ったファンドはたいてい近々、
減配されることが多いです。
スマート・ファイブ(毎月決算型)の分配金余力は、
38カ月程度ありますので、当分減配の心配はなさそうです。
分配金 | 繰越対象額 | 分配金余力 | |
70期 | 40円 | 1,475円 | 37.8カ月 |
71期 | 40円 | 1,477円 | 37.9カ月 |
72期 | 40円 | 1,476円 | 37.9カ月 |
73期 | 40円 | 1,472円 | 37.8カ月 |
74期 | 40円 | 1,474円 | 37.8カ月 |
75期 | 40円 | 1,473円 | 37.8カ月 |
76期 | 40円 | 1,474円 | 37.8カ月 |
77期 | 40円 | 1,474円 | 37.8カ月 |
78期 | 40円 | 1,481円 | 38.0カ月 |
79期 | 40円 | 1,489円 | 38.2カ月 |
80期 | 40円 | 1,491円 | 38.2カ月 |
81期 | 40円 | 1,484円 | 38.1カ月 |
積立NISAとiDeCoの対応状況は?
積立NISAやiDeCoで積立投資を検討している人も多いと
思います。
そこで、積立NISAやiDeCoの対応状況をまとめました。
積立NISA | iDeCo |
× | × |
※2020年7月時点
評判はどう?
スマート・ファイブ(毎月決算型)の評判はネットでの書き込みなど
で調べる方法もありますが、評判を知るうえで一番役に立つのが、
月次の資金流出入額です。
資金が流入しているということは、それだけスマート・ファイブ
(毎月決算型)を購入している人が多いということなので、評判が
良いということです。
スマート・ファイブは、毎月資金が流入超過となっており、直近
コロナショックの影響で流出超過となりましたが、すぐに流入超過
となりました。
つまり、このファンドが良いと思って投資をしている人が増えている
ということなので、評判は未だ良いということです。
ただ、注意しなければいけないのは、この上昇の要因はゆうちょが
積極的に販売していることによります。
ですので、投資知識のない投資初心者が窓口の販売員にすすめられて
購入しているのが大半なので、本当に人気がある良いファンドなのか
でいうと、私はそうではないと思っています。
※引用:モーニングスター
スマート・ファイブ(毎月決算型)の評価まとめと今後の見通し
まず、販売会社であるゆうちょ銀行の販売員が何も考えず、販売し
続けているので、リスクは取らずに運用したいという投資家がカモ
となり、純資産自体はどんどん増加をしていくと思います。
一方で、投資資金の半分程度が国債で運用されており、金利の下落が
続かなければ、あなたの投資資金のうち半分は手数料負けすることが
ほぼ確定する商品です。
この手の毎月決算型の投資信託は、販売用資料も力を入れて作られて
おり、つい良い商品だと思ってしまいがちですが、手を出したが最後、
あなたの資産が大きく増えることはありません。
かんぽ生命の不適切な保険販売が大きな話題となっていますが、
そのうち投資信託についても同じようにリスクを取らせ過ぎた
販売というのが大きな問題とされるのも時間の問題だと思っています。
運用会社と販売会社を儲けさせたいのであれば、スマート・ファイブ
への投資を継続するのがよいですが、あなたが利益を得たいのであれば、
別の投資先を検討すべきだと思います。
当然ながら、弱点もあります。 今も私は投信運用を続けてはいますが、私がなぜ
投資信託の運用を主軸におかなくなったのか。 その理由をこちらで話をしています。 >>なぜ私が投信運用に限界を感じたのか。多くの投資家が見逃している投信運用の弱点