2019年、2020年とモーニングスターのファンド・オブ・ザ・
イヤーを受賞して、評価されているファンドが、野村アセットの
ダブル・ブレインです。
最先端の金融テクノロジーを活用して、収益を追求しながら、
24時間休まず世界中の動きを観測し、相場の異変を早期に
発見し素早く対応することで下落リスクも抑えるファンドが
登場しました。
まさに近年流行りのAIファンドという部類に入るものです。
ダブル・ブレインは正直目論見書を読んでも、どのような
戦略で運用をおこなっているのか非常にわかりにくいので、
今日はダブル・ブレインの投資戦略も含めて徹底分析していきます。
「ダブル・ブレインって投資対象としてどうなの?」
「ダブル・ブレインって持ってて大丈夫なの?」
「ダブル・ブレインより良いファンドってある?」
といったことでお悩みの方は、この記事を最後まで読めば、
悩みは解消すると思います。
ダブル・ブレインの基本情報
投資対象は?
ダブル・ブレインの主要投資対象は、世界の株式・債券・
デリバティブ・為替予約取引など多岐にわたります。
金融市場は経済環境や市場の特性、投資家の行動などが
複雑に絡み合って形成されているわけですが、その膨大な
情報をAIが分析しファンドの売買を行っています。
ダブル・ブレインは「株式」「国債」「インフレ連動債」
「クレジット」「コモディティ」の5つのセクターごとで
同等のリスクをとるように運用されます。
そのため、リスクの低いセクターの保有比率は高くなり、
リスクの高いセクターの保有比率は低くなります。
ダブル・ブレインではレバレッジをかけて、保有比率を
300%程度まで高めていましたが、コロナショック後は
150%程度まで下げているようです。
※引用:マンスリーレポート
投資戦略は?
ダブル・ブレインを語る上で必須なのが、投資戦略です。
ダブル・ブレインではリスクコントコール戦略とトレンド
戦略という2つの戦略をうまく組み合わせながら運用を
していきます。
目論見書だけを見ると、どのように運用するイメージなのか
全くわからないと思いますので、具体的に説明しておきます。
一つ目のリスクコントロール戦略は、
①株式と債券の相関を10分毎にAIが価格動向を分析し、異変を
察知した場合
②投資対象市場の50市場の値動きに異変があると察知した場合
に投資割合を大幅に下げることで、損失の抑制を図ります。
下図のように資産価格が右肩上がりに上昇しているときに、
大きく下落する予兆を察知し、事前に投資金額を減らす
という戦略です。
コロナショックが来るまでは果たして、どの程度リスク
コントロール戦略が機能するかと疑いの目でみていましたが、
コロナショックはいち早くリスクを察知し、ポートフォリオ
全体の投資比率を下げることに成功していますので、さすが
AHLだという印象です。
※引用:交付目論見書
2つ目の投資戦略がトレンド戦略です。
すべての市場相場の7割程度が上昇トレンドか下降トレンドを
形成していると言われています。
ダブル・ブレインでは上昇トレンドだけでなく下降トレンドが
形成されているタイミングでも利益を追求するような戦略を
取っています。
約500の市場を24時間365日モニタリングし、上昇のトレンドが
続くと買いポジションを増やし、下落トレンドが続くと、売り
ポジションを増やしします。
※引用:交付目論見書
ダブル・ブレインでは下図のようにリスクコントロール戦略を
主軸に置きながら、トレンド戦略で収益の追求をしています。
※引用:マンスリーレポート
なぜ、このように2つの戦略を組み合わせているのかというと、
それぞれ得意な相場があるからです。
リスクコントロール戦略は買いの戦略ですので、下落局面に
なると、下落幅は抑えることができたとしても、プラスの
リターンを生み出すことができません。
そこにトレンド戦略が組み合わさると、下落局面でもリターン
を狙っていけるというわけです。
現状、2つの戦略の相関は0.2~0,3程度なので、相関が低く、
この2つを組み合わせることで安定したリターンを得やすく
なるというのが理由です。
ただ、注意点として、相場が急反発するような場面では、
リスクの上限を決めている関係で、利益を取りこぼす傾向が
あるようです。
つみたてNISAとiDeCoの対応状況は?
ダブル・ブレインのつみたてNISAとiDeCoの対応状況を
確認しておきます。
残念ながら、つみたてNISA、iDeCoともに対応していません。
つみたてNISA | iDeCo |
× | × |
※2021年4月時点
純資産総額は?
純資産総額は投資信託を購入する前に必ず確認しておきたい
ポイントです。
純資産総額が少ないと、銘柄の入れ替えに支障をきたすことが
あったり、運用時に必ずかかる印刷費用や監査費用が相対的に
高くなります。
さらに投資信託の規模が小さくなると運用会社自体がその
投資信託に力を注がなくなりパフォーマンスが悪くなること
もあります。
ダブル・ブレインは現在1500億円程度まで純資産総額を
伸ばしており、新規設定されて以来、非常に順調に
純資産を伸ばしています。
ファンド・オブ・ザ・イヤーを2年受賞しており、かつ
コロナショックの下落をうまく乗り切ったということが
評価されているようですね。
※引用:マンスリーレポート
実質コストは?
投資信託には、購入時の手数料や信託報酬の他にも費用が
かかっていることをご存知ですか?
これを実質コストと言いますが、実質コストには、株式売買
手数料や有価証券取引税、監査費用などが含まれています。
特に純資産総額が小さいときには、信託報酬より実質コストが
かなり割高になっている場合もあるので、注意が必要です。
信託報酬を信用するな。知らないうちに差し引かれている実質コストの調べ方
ダブル・ブレインの実質コストは2.015%とかなり割高な
水準となっています。
AIに運用の一部を任せている割に信託報酬が高くなっているのは、
ダブル・ブレインの運用は実際にはマン・グループのAHLが
行っており、AHLに支払う報酬が信託報酬の半分以上を占めて
います。
AHLは1980年代に創設されて以来、一貫してコンピューター運用
の実績をもち、機械学習を活用した運用に定評があるのですが、
それにしても報酬は高すぎますね。
購入時手数料 | 3.3%(税込)※上限 |
信託報酬 | 2.013%(税込) |
信託財産留保額 | なし |
実質コスト | 2.015%(概算値) |
※引用:最新運用報告書
と聞かれてあなたは何と答えますか?
もし『ファンド選び』だと思ったとしたら、あなたはドツボに
はまっていますので、こちらの記事を読んでみてください。
>>無料ファンド相談から見えた。多くの人が気づいていない投信運用で成果を阻む9つの誤り
ダブル・ブレインの評価分析
基準価額をどう見る?
ダブル・ブレインの基準価額は、コロナショックのダメージを
かなり抑えた運用ができていますが、その後の株の急反発場面では
うまく波に乗ることができず、コロナ前の水準にもどしたのは
2020年末でした。
どのようなファンドでも一長一短あるということですね。
※引用:モーニングスター
利回りはどれくらい?
ダブル・ブレインの直近1年間の利回りは9.01%です。
株式ファンド等と比べると、リターンが小さくなっていますが、
ダブル・ブレインはもともとリスクを抑えて安定運用を目指す
ファンドですので、目的が異なります。
とはいえ、コロナショックの下落を回避したにもかからわず、
その後の急反発場面で力を発揮できなかったのは少し期待はずれ
でした。
ちなみにあなたは実質利回りの計算方法はすでに理解していますか?
もし、理解していないのであれば、必ず理解しておいてください。
平均利回り | |
1年 | 9.01% |
3年 | – |
5年 | – |
10年 | – |
※2021年4月時点
10年間高いパフォーマンスを出し続けている優秀なファンド達も
参考にしてみてください。
10年間圧倒的に高いリターンを出している国内大型株式ファンドランキング
同カテゴリー内での利回りランキングは?
ダブル・ブレインは、ヘッジファンドカテゴリーに
属しています。
投資をするのであれば、同じカテゴリーでも優秀な
パフォーマンスのファンドに投資をすべきなので、
同カテゴリー内でのパフォーマンスのランキングは
事前に調べておいて損はありません。
ダブル・ブレインは上位30%程度の順位ですので、
悪くはありませんが、とても優れた結果を残して
いるとも言えません。
上位●% | |
1年 | 30% |
3年 | – |
5年 | – |
10年 | – |
※2021年4月時点
年別の運用利回りは?
ダブル・ブレインの年別パフォーマンスでは、2019年、
2020年と安定運用ができています。
年間利回り | |
2021年 | 1.79%(1-3月) |
2020年 | +3.44% |
2019年 | +18.25% |
考えずに投資をしてしまいがちです。 しかし、「投資は出口戦略にあり」と言われるほど、
重要なテーマです。 ぜひこれを機会に投資の出口戦略を考えてみて
ください。 >>ここまで考えるのが本当の資産運用。多くの投資家が考えられていない投信運用の出口戦略とは
インデックスファンドとのパフォーマンス比較
ダブル・ブレインの場合、類似した運用を行っているバランス
ファンドがないので、一概に比較をすることはできませんが、
参考までに様々なインデックスファンドとパフォーマンスを
比較してみました。
今回は、株式・債券・RIETに一度に投資ができるということで
人気の高いeMAXIS Slim バランス(8資産均等型)と、日経225を
参考指数としているeMAXIS Slim 国内株式(日経平均)、
先進国株式の代表的な指数であるMSCIコクサイに連動する
eMAXIS Slim 先進国株式と比較をしました。
※引用:モーニングスター
まず、一番の特徴はコロナショック前まではダブルブレインが
パフォーマンスで圧倒しており、コロナショックの急落場面でも
下落幅をかなり抑えることができているとわかります。
この下落幅を抑えられたというのはかなり評価できるポイント
です。
ただ、その後、コロナ前の水準にまで戻したタイミングは、
2020年末で、他のインデックスファンドと変わりませんでした。
そして、2021年以降はeMAXIS Slim 先進国株式インデックスや
国内株式(日経平均)のほうが上回っています。
ですので、株式型のインデックスファンドほどのリターンは
期待できないかもしれませんが、その分、下落におびえること
なく、安心して投資ができるというメリットがありますね。
アクティブファンドとの利回り比較
ダブル・ブレインのようなヘッジファンドに投資をするので
あれば、同じく安定運用ができると定評の高い投資のソムリエ
とパフォーマンスを比較しておいて損はありません。
投資戦略が違うので、そのまま比較できないのですが、
どちらもコロナショックの下落を小さく抑えて、うまく
運用してきたファンドです。
※引用:モーニングスター
結果を見ると、ダブル・ブレインのほうがパフォーマンスは高いことが
わかります。
このあたりは株式の組み入れ比率等も違いますので、何とも評価しがたい
ですが、投資のソムリエのほうが上下の変動幅は小さく運用ができています。
年3%程度のリターンであれば、投資のソムリエで十分ですし、もう少し
高いリターンを安定して得たいという場合はダブル・ブレインというのも
良いかもしれません。
ダブル・ブレイン | 投資のソムリエ | |
1年 | 9.01% | 3.54% |
3年 | – | 3.78% |
5年 | – | 2.82% |
10年 | – | – |
※2021年4月時点
最大下落率は?
ダブル・ブレインに投資をする前に、最大でどの程度下落
する可能性があるのかを知っておくことは非常に重要です。
どの程度下落する可能性があるかを把握しておけば、大き
く下落した相場でも落ち着いて保有を続けられるからです。
それではここでダブル・ブレインの最大下落率を見てみま
しょう。
最大下落率は2020年2月~2020年4月の▲4.82%です。
株式の比率をそこまで抑えた運用をしているわけでもない
にもかかわらず、この下落率はすごいですね。
最大下落率を知ってしまうと、少し足が止まってしまう
かもしれません。
しかし、以下のことをしっかり理解しておけば、元本割れの
可能性を限りなく低くすることが可能です。
期間 | 下落率 |
1カ月 | ▲2.63% |
3カ月 | ▲4.82% |
6カ月 | ▲3.47% |
12カ月 | ▲0.63% |
※2021年4月時点
評判はどう?
それでは、ダブル・ブレインのの評判はどうでしょうか?
ネット等で口コミを調べることもできますが、資金の流出入を
見ることで、評判がわかります。
評判がよければ、資金が流入超過になりますし、評判が悪く
なっていれば、資金が流出超過になります。
以下のグラフを見てみると、新規設定されて以来、毎月
資金が流入していましたが、2020年末にかけて、資金が
流出超過するようになりました。
2020年は株式市場が好調だったこともあり、多くの投資家が
株式ファンドに投資をしていると考えられます。
相場が下を向いてきたときにはじめてダブル・ブレインの
人気が再燃する可能性が高いですね。
※引用:モーニングスター
ダブル・ブレインの個人的評価と今後の見通し
いかがでしょうか?
正直、私が知る限り、今までも数多くのAIファンドが登場
してきましたが、正直どれもパッとしないパフォーマンス
しか残すことができていませんでした。
AHLが提供する期間ファンドであるAHLダイバーシファイド
はリーマンショックをプラスのリターンで乗り切ったということ
で非常に有名だったのですが、近年ではあまりその名前を
聞かなくなっていたところです。
ただ、今回のコロナショックでは、明らかに他のファンド
よりも下落幅を抑えることに成功しており、優れたAIが
運用していると認めざるを得ません。
実質コストが2%以上のファンドなので、かなり高いコスト
のファンドであることは間違いありませんが、マングループ
のAHLが運用するファンドに投資をできるのであれば、
高いコストを支払う価値があると言えます。
ただ、やはり得意分野があれば、不得意分野があるということで、
ダブル・ブレインの場合、暴落は回避できたものの、そのあとの
急反発の波にうまくのれず、伸び悩みました。
ですので、リスクを取ってでも資産を増やしたいという人は、
株式100%のインデックスファンドで積極的に運用をしていくのが
よいと思います。
一方で、資産形成期は終わり、資産活用期に入っているような
投資家の場合は、何よりも資産が大きく減少するのが避けるべき
事態ですので、ダブル・ブレインのようなとにかく損をしない
運用ができるファンドは投資する価値があると言えます。
今はレバレッジを抑えて運用をしていますが、これがまた
コロナ前の水準でレバレッジをかけて運用をはじめたときに、
どのようなパフォーマンスになるのか楽しみですね。
当然ながら、弱点もあります。 今も私は投信運用を続けてはいますが、私がなぜ
投資信託の運用を主軸におかなくなったのか。 その理由をこちらで話をしています。 >>私が痛感する投資信託の限界。多くの投資家が見逃している投信運用の弱点