2019年、2020年、2021年とモーニングスターのファンド・オブ・ザ・イヤーを受賞して、評価されているファンドが、野村アセットのダブル・ブレインです。

最先端の金融テクノロジーを活用して、収益を追求しながら、24時間休まず世界中の動きを観測し、相場の異変を早期に発見し素早く対応することで下落リスクも抑えるファンドが登場しました。

まさに近年流行りのAIファンドという部類に入るファンドですね。

ダブル・ブレインは正直目論見書を読んでも、どのような戦略で運用をおこなっているのか非常にわかりにくいので、今日はダブル・ブレインの投資戦略も含めて徹底分析していきます。

「ダブル・ブレインって投資対象としてどうなの?」

「ダブル・ブレインって持ってて大丈夫なの?」

「ダブル・ブレインより良いファンドってある?」

といったことでお悩みの方は、この記事を最後まで読めば、悩みは解消すると思います。


ダブル・ブレインの基本情報

投資対象は?

ダブル・ブレインの主要投資対象は、世界の株式・債券・デリバティブ・為替予約取引など多岐にわたります。

金融市場は経済環境や市場の特性、投資家の行動などが複雑に絡み合って形成されているわけですが、その膨大な情報をAIが分析しファンドの売買を行っています。

ダブル・ブレインは「株式」「国債」「インフレ連動債」「クレジット」「コモディティ」の5つのセクターごとで同等のリスクをとるように運用されます。そのため、リスクの低いセクターの保有比率は高くなり、リスクの高いセクターの保有比率は低くなります。

ダブルブレインの現在の組入れ比率は以下のようになっており、社債や債券の比率が高くなっています。合計すると100%を超えるのはレバレッジを効かせているからですね。

ダブル・ブレインではレバレッジをかけて、保有比率を300%~400%程度まであげられるようですが、相場の状況によって、かなり比率を調整していることがわかります。


※引用:マンスリーレポート

投資戦略は?

ダブル・ブレインを語る上で必須なのが、投資戦略です。ダブル・ブレインではリスクコントコール戦略とトレンド戦略という2つの戦略をうまく組み合わせながら運用をしていきます。

目論見書だけを見ると、どのように運用するイメージなのか全くわからないと思いますので、具体的に説明しておきます。

一つ目のリスクコントロール戦略は、

①株式と債券の相関を10分毎にAIが価格動向を分析し、異変を
察知した場合

②投資対象市場の50市場の値動きに異変があると察知した場合

に投資割合を大幅に下げることで、損失の抑制を図ります。

下図のように資産価格が右肩上がりに上昇しているときに、大きく下落する予兆を察知し、事前に投資金額を減らすという戦略です。


※引用:販売用資料

コロナショックが来るまでは果たして、どの程度リスクコントロール戦略が機能するかと疑いの目でみていましたが、コロナショックはいち早くリスクを察知し、ポートフォリオ
全体の投資比率を下げることに成功していました。

そして、2つ目の投資戦略がトレンド戦略です。

すべての市場相場の7割程度が上昇トレンドか下降トレンドを形成していると言われています。そこで、ダブル・ブレインでは上昇トレンドだけでなく下降トレンドが形成されているタイミングでも利益を追求するような戦略を取っています。

約500の市場を24時間365日モニタリングし、上昇のトレンドが続くと買いポジションを増やし、下落トレンドが続くと、売りポジションを増やしていく戦略のようです。


※引用:販売用資料

ダブル・ブレインでは下図のようにリスクコントロール戦略を主軸に置きながら、トレンド戦略で収益の追求をしています。


※引用:マンスリーレポート

なぜ、このように2つの戦略を組み合わせているのかというと、それぞれ得意な相場があるからです。

リスクコントロール戦略は買いの戦略ですので、下落局面になると、下落幅は抑えることができたとしても、プラスのリターンを生み出すことができません。

そこにトレンド戦略が組み合わさると、下落局面でもリターンを狙っていけるというわけです。

現状、2つの戦略の相関は0.2~0.3程度なので、相関が低く、この2つを組み合わせることで安定したリターンを得やすくなるというのが理由です。

ただ、注意点として、相場が急反発するような場面では、リスクの上限を決めている関係で、利益を取りこぼす傾向があるようです。

つみたてNISAとiDeCoの対応状況は?

ダブル・ブレインのつみたてNISAとiDeCoの対応状況ですが、残念ながら、つみたてNISA、iDeCoともに対応していません。

つみたてNISA iDeCo
× ×

※2022年10月時点

純資産総額は?

純資産総額は投資信託を購入する前に必ず確認しておきたいポイントです。

純資産総額が少ないと、銘柄の入れ替えに支障をきたすことがあったり、運用時に必ずかかる印刷費用や監査費用が相対的に高くなります。さらに投資信託の規模が小さくなると運用会社自体がその投資信託に力を注がなくなりパフォーマンスが悪くなることもあります。

ダブル・ブレインは現在2500億円程度まで純資産総額を伸ばしており、新規設定されて以来、非常に順調に純資産を伸ばしています。

2022年に入ってからはお世辞にもパフォーマンスがいいとは言えませんが、野村の影響万が頑張って販売しているということでしょう。


※引用:マンスリーレポート

実質コストは?

投資信託には、購入時の手数料や信託報酬の他にも費用がかかっていることをご存知ですか?

これを実質コストと言いますが、実質コストには、株式売買手数料や有価証券取引税、監査費用などが含まれています。特に純資産総額が小さいときには、信託報酬より実質コストがかなり割高になっている場合もあるので、注意が必要です。

信託報酬を信用するな。知らないうちに差し引かれている実質コストの調べ方

ダブル・ブレインの実質コストは2.020%とかなり割高な水準となっています。

AIに運用の一部を任せている割に信託報酬が高くなっているのは、ダブル・ブレインの運用は実際にはマン・グループのAHLが行っており、AHLに支払う報酬が信託報酬の半分以上を占めています。

AHLは1980年代に創設されて以来、一貫してコンピューター運用の実績をもち、機械学習を活用した運用に定評があるのですが、それにしても報酬は高すぎますね。

購入時手数料 3.3%(税込)※上限
信託報酬 2.013%(税込)
信託財産留保額 なし
実質コスト 2.020%(概算値)

※引用:最新運用報告書

「ファンドの運用で成果を出すために一番大事なことは何ですか?」と聞かれてあなたは何と答えますか?

もし『ファンド選び』だと思ったとしたら、あなたはドツボに
はまっていますので、こちらの記事を読んでみてください。

>>無料ファンド相談から見えた。多くの人が気づいていない投信運用で成果を阻む9つの誤り

ダブル・ブレインの評価分析

基準価額をどう見る?

ダブル・ブレインの基準価額は、コロナショックのダメージをかなり抑えた運用ができており、その後も2021年までは好調でしたが、2022年以降は急落しています。

特殊な運用をしていることもあり、通常の株式ファンドとはかなり異なる値動きとなっています。


※引用:モーニングスター

利回りはどれくらい?

ダブル・ブレインの直近1年間の利回りは▲11.48%です。3年平均利回りでもかろうじてプラスですので、これはかなり厳しいです。

いくら、コロナショックの下落を回避できていたとしても、その後のパフォーマンスがついてこなければ、あえて高いコストを支払って特殊なアクティブファンドに投資をするメリットがありません。

ちなみにあなたは実質利回りの計算方法はすでに理解していますか?もし、理解していないのであれば、必ず理解しておいてください。

これがわかっていないとマズイ。実質利回りの計算方法。

平均利回り
1年 ▲11.48%
3年 +0.38%
5年
10年

※2022年10月時点

10年間高いパフォーマンスを出し続けている優秀なファンド達も参考にしてみてください。

10年間圧倒的に高いリターンを出している国内大型株式ファンドランキング

同カテゴリー内での利回りランキングは?

ダブル・ブレインは、ヘッジファンドカテゴリーに属しています。

パフォーマンスが良く見えても、実はもっと優れたファンド見つかることもありますので、同カテゴリー内でのパフォーマンスは必ず比較するようにしてください。

ダブル・ブレインは1年平均は下位20%、3年平均も平均程度の順位ですので、他にもっと優れたファンドが多数あることがわかります。

上位●%
1年 82%
3年 53%
5年
10年

※2022年10月時点

年別の運用利回りは?

ダブル・ブレインの年別パフォーマンスでは、2019年、2020年、2021年とプラスで運用はできていますが、他のファンドと比べると利回りが高いというわけではないですね。

年間利回り
2022年 ▲13.74%(1-9月)
2021年 +12.74%
2020年 +3.44%
2019年 +18.25%

投信運用は長期投資が前提なので、つい出口戦略を考えずに投資をしてしまいがちです。

しかし、「投資は出口戦略にあり」と言われるほど、重要なテーマです。ぜひこれを機会に投資の出口戦略を考えてみてください。

>>ここまで考えるのが本当の資産運用。多くの投資家が考えられていない投信運用の出口戦略とは

インデックスファンドとのパフォーマンス比較

ダブル・ブレインの場合、類似した運用を行っているバランスファンドがないので、一概に比較をすることはできませんが、参考までに様々なインデックスファンドとパフォーマンスを比較してみました。

今回は、株式・債券・RIETに一度に投資ができるということで人気の高いeMAXIS Slim バランス(8資産均等型)と、日経225を参考指数としているeMAXIS Slim 国内株式(日経平均)、先進国株式の代表的な指数であるMSCIコクサイに連動するeMAXIS Slim 先進国株式と比較をしました。


※引用:モーニングスター

コロナショック時点だけ、ダブルブレインが下落幅を抑えることで一番優れたパフォーマンスになっていました。しかし、その後はeMAXIS Slimバランス(8資産均等型)にも負けてしまっており、これでは高いコストを支払ってまで難しい戦略のアクティブファンドに投資をするメリットがありません。

eMAXIS Slim 先進国株式インデックスや国内株式(日経平均)と比較をしても、明らかにこれらのファンドのほうがパフォーマンスで上回っていることが分かります。

アクティブファンドとの利回り比較

ダブル・ブレインのようなヘッジファンドに投資をするのであれば、同じく安定運用ができると定評の高い投資のソムリエとパフォーマンスを比較しておいて損はありません。

投資戦略が違うので、そのまま比較できないのですが、どちらもコロナショックの下落を小さく抑えて、うまく運用してきたファンドです。


※引用:モーニングスター

結果を見ると、ダブル・ブレインのほうがパフォーマンスは高いことがわかります。

このあたりは株式の組み入れ比率等も違いますので、何とも評価しがたいですが、投資のソムリエのほうが上下の変動幅は小さく運用ができています。

とはいえ、どちらも直近は何とも厳しい結果ですので、あまり比較をしても意味がなかったですね。

ダブル・ブレイン 投資のソムリエ
1年 ▲11.48% ▲12.03%
3年 0.38% ▲2.69%
5年 ▲0.21%
10年

※2022年10月時点

最大下落率は?

ダブル・ブレインに投資をする前に、最大でどの程度下落する可能性があるのかを知っておくことは非常に重要です。どの程度下落する可能性があるかを把握しておけば、大きく下落した相場でも落ち着いて保有を続けられるからです。

それではここでダブル・ブレインの最大下落率を見てみましょう。

期間 下落率
1カ月 ▲5.04%
3カ月 ▲8.15%
6カ月 ▲10.73%
12カ月 ▲11.48%

※2022年10月時点

最大下落率は2021年10月~2022年9月の▲11.48%です。下落幅が思った以上に小さいのは大きなメリットと言えますね。あとはプラスのリターンを埋めるかどうかです。

最大下落率を知ってしまうと、少し足が止まってしまうかもしれません。しかし、以下のことをしっかり理解しておけば、元本割れの可能性を限りなく低くすることが可能です。

元本割れを回避するためにできるたったひとつのこととは?

評判はどう?

それでは、ダブル・ブレインのの評判はどうでしょうか?

ネット等で口コミを調べることもできますが、資金の流出入を見ることで、評判がわかります。評判がよければ、資金が流入超過になりますし、評判が悪くなっていれば、資金が流出超過になります。

以下のグラフを見てみると、新規設定されて以来、毎月資金が流入していましたが、2020年末にかけて、資金が流出超過するようになりました。

しかし、また2021年、2022年と資金が流入超過するようになり、直近ではまた流出しています。正直インデックスファンドにも負けているようなファンドにここまで資金が流入するのは謎が残ります。


※引用:モーニングスター

ダブル・ブレインの個人的評価と今後の見通し

いかがでしょうか?

正直、私が知る限り、今までも数多くのAIファンドが登場してきましたが、正直どれもパッとしないパフォーマンスしか残すことができていませんでした。

AHLが提供する期間ファンドであるAHLダイバーシファイドはリーマンショックをプラスのリターンで乗り切ったということで非常に有名だったのですが、近年ではあまりその名前を聞かなくなっていたところです。

ですので、常にAIを使って機動的にポートフォリオを入れ替えて複雑な運用をすると言うものに対して私は懐疑的なスタンスでいます。

こういったファンドは本当によく登場しますが、大抵パフォーマンスはたいしたことありません。

ですので、今後あなたがダブル・ブレインのような複雑な戦略を用いるファンドに投資をしようと思うときは、少なくとも3年~5年は運用実績があるものを選ぶべきです。

色々な相場を経験させて、本当にちゃんと高いリターンが得られるのか検証してからでも遅くありません。

ダブル・ブレインのようにコロナショックで下落幅を大きく抑えられたことで注目が集まっていたとしても、その後の相場をうまく乗り切れるかは別問題です。案の定、2022年の相場では大きく躓いており、コロナショックをうまく立ち回った分の利益はほぼ帳消しになったと言えます。

ダブル・ブレインに投資をするくらいであれば、低コストのインデックスファンドに投資をしたほうがはるかに高いパフォーマンスが期待できますので、まずは基本の投資スタンスを貫き、ダブル・ブレインは遊び心で少額投資するくらいにしておいてください。

最後に、投信運用には多くのメリットもありますが、当然ながら、弱点もあります。

今も私は投信運用を続けてはいますが、私がなぜ投資信託の運用を主軸におかなくなったのか。その理由をこちらで話をしています。

>>私が痛感する投資信託の限界。多くの投資家が見逃している投信運用の弱点