野村アセットから、最先端の金融テクノロジーを活用して、
収益を追求しながら、24時間休まず世界中の動きを観測し、
相場の異変を早期に発見し素早く対応することで下落リスク
も抑えるファンドが登場しました。
まさに近年流行りのAIファンドという部類に入るものです。
ダブル・ブレインは正直目論見書を読んでも、どのような
戦略で運用をおこなっているのか非常にわかりにくいので、
今日はダブル・ブレインの投資戦略も含めて徹底分析していきます。
ダブル・ブレインの基本情報
投資対象は?
ダブル・ブレインの主要投資対象は、世界の株式・債券・
デリバティブ・為替予約取引など多岐にわたります。
金融市場は経済環境や市場の特性、投資家の行動などが
複雑に絡み合って形成されているわけですが、その膨大な
情報をAIが分析しファンドの売買を行っています。
ダブル・ブレインは基本ポートフォリオでは、債券や
信用取引の割合が高いようですが、リスクに合わせて、
AIが資産構成比を調整しています。
コロナショック時はいち早く相場の危険を察知し、ポート
フォリオ全体のリスクを大きく下げたことで、損失が
かなり少なくて済んでいます。
※引用:マンスリーレポート
投資戦略は?
ダブル・ブレインを語る上で必須なのが、投資戦略です。
ダブル・ブレインではリスクコントコール戦略とトレンド
戦略という2つの戦略をうまく組み合わせながら運用を
していきます。
目論見書だけを見ると、どのように運用するイメージなのか
全くわからないと思いますので、具体的に説明しておきます。
一つ目のリスクコントロール戦略というのは、10分毎にAIが
価格動向を分析し、相場異変を察知した場合はリスク資産への
投資割合を大幅に削減し、損失の抑制を図る戦略です。
下図のように資産価格が右肩上がりに上昇しているときに、
大きく下落する予兆を察知し、事前に投資金額を減らす
という戦略です。
コロナショックが来るまでは果たして、どの程度リスク
コントロール戦略が機能するかと疑いの目でみていましたが、
コロナショックはいち早くリスクを察知し、ポートフォリオ
全体の投資比率を下げることに成功していますので、さすが
AHLだという印象です。
※引用:交付目論見書
2つ目の投資戦略がトレンド戦略です。
すべての市場相場の7割程度が上昇トレンドか下降トレンドを
形成していると言われています。
ダブル・ブレインでは上昇トレンドだけでなく下降トレンドが
形成されているタイミングでも利益を追求するような戦略を
取っています。
唯一の弱点は相場が反転するときや相場がもみ合っている
ときには損失が出てしまうということです。
今回も短期的な下落局面を察知し、ショート戦略をうまく
取り入れたことで、リターンを得ることに成功しています。
※引用:交付目論見書
ダブル・ブレインでは下図のようにリスクコントロール戦略を
主軸に置きながら、トレンド戦略で収益の追求をしています。
※引用:マンスリーレポート
参考までにコロナショック直前、直後でどの程度、投資の
ウェイトを変更したのかを見ておきましょう。
橙が平常時。青がコロナショック直前のポートフォリオです。
リスクを察知したAIがすべてのアセットクラスのウェイトを
大幅に引き下げていることがわかります。
このおかげで、ダブル・ブレインは他の株式ファンドと
比較して圧倒的に損失を軽減できました。
※引用:マンスリーレポート
純資産総額は?
純資産総額は投資信託を購入する前に必ず確認しておきたい
ポイントです。
純資産総額が少ないと、銘柄の入れ替えに支障をきたすことが
あったり、運用時に必ずかかる印刷費用や監査費用が相対的に
高くなります。
さらに投資信託の規模が小さくなると運用会社自体がその
投資信託に力を注がなくなりパフォーマンスが悪くなること
もあります。
ダブル・ブレインは現在1200億円程度まで純資産総額を
伸ばしており、新規設定されて以来、非常に順調に
純資産を伸ばしています。
好調の要因はひとえにパフォーマンスが好調だから
なのですが、近年のAIファンドの中では非常に好調な
滑り出しと言えます。
コロナショックを最低限の損失でおさえた点も今後評価
され純資産はますます増えていくと思います。
※引用:マンスリーレポート
実質コストは?
投資信託には、購入時の手数料や信託報酬の他にも費用が
かかっていることをご存知ですか?
これを実質コストと言いますが、実質コストには、株式売買
手数料や有価証券取引税、監査費用などが含まれています。
特に純資産総額が小さいときには、信託報酬より実質コストが
かなり割高になっている場合もあるので、注意が必要です。
信託報酬を信用するな。知らないうちに差し引かれている実質コストの調べ方
ダブル・ブレインの実質コストは2.015%とかなり割高な
水準となっています。
AIに運用の一部を任せている割に信託報酬が高くなっているのは、
ダブル・ブレインの運用は実際にはマン・グループのAHLが
行っており、AHLに支払う報酬が信託報酬の半分以上を占めて
います。
AHLは1980年代に創設されて以来、一貫してコンピューター運用
の実績をもち、機械学習を活用した運用に定評があるのですが、
それにしても報酬は高すぎますね。
購入時手数料 | 3.3%(税込)※上限 |
信託報酬 | 2.013%(税込) |
信託財産留保額 | なし |
実質コスト | 2.015%(概算値) |
実質コスト以外にも、多くの投資家が気づいていない
投信運用での成果を出すのに妨げとなる間違った考え方
をまとめました。参考にしてください。
無料ファンド相談から見えた。多くの人が気づいていない投信運用で成果を阻む9つの誤り
ダブル・ブレインの評価分析
基準価額の推移は?
ダブル・ブレインの基準価額は、2018年に設定されて以来、
非常に好調で、2020年3月のコロナショックの影響がかなり
小さくなっている点がなにより評価できるポイントです。
※引用:モーニングスター
利回りはどれくらい?
ダブル・ブレインの直近1年間の利回りは6.04%です。この
期間でプラスのリターンを出せているのは、素晴らしいですね。
もう少し長期の運用実績をみてから判断したいところですが、
コロナショックをうまく乗り切ったというのは、かなり大きな
評価ポイントです。
ちなみにあなたは実質利回りの計算方法はすでに理解していますか?
もし、理解していないのであれば、必ず理解しておいてください。
平均利回り | %ランク | |
1年 | 6.04% | 11% |
3年 | – | – |
5年 | – | – |
10年 | – | – |
※2020年4月時点
10年間高いパフォーマンスを出し続けている優秀なファンド達も
参考にしてみてください。
10年間圧倒的に高いリターンを出している国内大型株式ファンドランキング
標準偏差は?
標準偏差は基準価額の変動幅の大きさを把握するときに
役立ちます。
ダブル・ブレインの標準偏差は7.60とコロナショック前
とほとんど変わっていません。
ここからもダブル・ブレインが安定した運用ができて
いることがわかります。
標準偏差から将来リターンがある程度予測できるのは
ご存じでしょうか?
まだ計算方法を知らないと言う方はこの機会に覚えて
おいてくださいね。
標準偏差 | %ランク | |
1年 | 7.60 | 62% |
3年 | – | – |
5年 | – | – |
10年 | – | – |
※2020年4月時点
年別のパフォーマンスは?
ダブル・ブレインの年別パフォーマンスでは、2019年は
非常に好調で20%近いプラスを出すことができました。
そして、2020年はまだ3%程度のマイナスにしかなって
おらず、素晴らしいの一言です。
ちなみにあなたは実質利回りの計算方法はすでに理解していますか?
もし、理解していないのであれば、必ず理解しておいてください。
年間利回り | |
2020年 | ▲3.41%(1-3月) |
2019年 | +18.25% |
考えずに投資をしてしまいがちです。 しかし、「投資は出口戦略にあり」と言われるほど、
重要なテーマです。 ぜひこれを機会に投資の出口戦略を考えてみて
ください。 >>まさか考えたことがない?運用が成功するか失敗するかすべてのカギを握る投信運用の出口戦略
類似ファンドとのパフォーマンス比較
ダブル・ブレインの場合、類似した運用を行っているバランス
ファンドがないので、一概に比較をすることはできませんが、
参考までに様々なインデックスファンドとパフォーマンスを
比較してみました。
eMAXIS Slim バランス(8資産均等型)、eMAXIS Slim 国内株式
(日経平均)、eMAXIS Slim 先進国株式はどれも似たような動き
をしていますが、ダブル・ブレインはパフォーマンスで
はるかに上をいっています。
ここまで安定的な運用ができていると、高いコストを支払って
でもダブル・ブレインに投資をする価値があるといえます。
※引用:モーニングスター
最大下落率は?
ダブル・ブレインに投資をする前に、最大でどの程度下落
する可能性があるのかを知っておくことは非常に重要です。
どの程度下落する可能性があるかを把握しておけば、大き
く下落した相場でも落ち着いて保有を続けられるからです。
それではここでダブル・ブレインの最大下落率を見てみま
しょう。
最大下落率は2019年10月~2020年3月の▲3.47%です。
株式の比率をそこまで抑えた運用をしているわけでもない
にもかかわらず、この下落率はすごいですね。
最大下落率を知ってしまうと、少し足が止まってしまう
かもしれません。
しかし、以下のことをしっかり理解しておけば、元本割れの
可能性を限りなく低くすることが可能です。
期間 | 下落率 |
1カ月 | ▲2.63% |
3カ月 | ▲3.41% |
6カ月 | ▲3.47% |
12カ月 | +6.04% |
※2020年4月時点
評判はどう?
それでは、ダブル・ブレインのの評判はどうでしょうか?
ネット等で口コミを調べることもできますが、資金の流出入を
見ることで、評判がわかります。
評判がよければ、資金が流入超過になりますし、評判が悪く
なっていれば、資金が流出超過になります。
以下のグラフを見てみると、新規設定されて以来、毎月資金が
流入しており、かつ直近になるにつれて流入額が増加しています。
これはつまり多くの投資家が注目をし始めているということで
評判が良いということですね。
※引用:モーニングスター
ダブル・ブレインの個人的評価と今後の見通し
いかがでしょうか?
正直、私が知る限り、今までも数多くのAIファンドが登場
してきましたが、正直どれもパッとしないパフォーマンス
しか残すことができていませんでした。
AHLが提供する期間ファンドであるAHLダイバーシファイド
はリーマンショックをプラスのリターンで乗り切ったということ
で非常に有名だったのですが、近年ではあまりその名前を
聞かなくなっていたところです。
ただ、今回のコロナショックでは、明らかに他のファンド
よりも下落幅を抑えることに成功しており、優れたAIが
運用していると認めざるを得ません。
実質コストが2%以上のファンドなので、かなり高いコスト
のファンドであることは間違いありませんが、マングループ
のAHLが運用するファンドに投資をできるのであれば、
高いコストを支払う価値があると言えます。
果たして、2020年はどのような運用結果になるのか、
引き続きモニタリングをしていきたいと思います。
当然ながら、弱点もあります。 今も私は投信運用を続けてはいますが、私がなぜ
投資信託の運用を主軸におかなくなったのか。 その理由をこちらで話をしています。 >>私が痛感する投資信託の限界。多くの投資家が見逃している投信運用の弱点