純資産総額はそこまで大きくはないものの、毎月安定して
資金流入が続いているDIAM 世界好配当株式ファンド(毎月
決算型)『愛称:ハッピーインカム』。
今後安定的な配当が続くであろう企業に投資をすることで、
安定的な分配金を確保する戦略ですが、果たして運用はうまく
いっているのでしょうか?
ハッピーインカムには為替ヘッジ無/有の2種類がありますが、
今日はより人気の高い為替ヘッジ無を見ていきたいと思います。
「ハッピーインカムって投資対象としてどうなの?」
「ハッピーインカムって持ってて大丈夫なの?」
「ハッピーインカムより良いファンドってある?」
といったことでお悩みの方は、この記事を最後まで読めば、
悩みは解消すると思います。
DIAM 世界好配当株式ファンド(毎月決算型)『ハッピーインカム』の基本情報
投資対象は?
ハッピーインカムの投資対象は、日本を除く世界の好配当
株式に投資し、安定的な配当収入の確保と中長期的な値上が
り益の確保を目指します。
ハッピーインカムの投資対象は大きく安定好配当株、成長好配当株、
潜在好配当株の3つに分類し、投資していきます。
※引用:交付目論見書
国別の構成比率を見てみると、1位がアメリカで約40%、
2位のイギリスが約15%、3位のフランスが約6%となって
います。
ある程度成熟したマーケットである北米と欧州が中心となって
いる点にも特徴があると言えますね。
※引用:マンスリーレポート
業種は特に絞っていませんので、さまざまな分野に分散投資され
ていることがわかります。
※引用:マンスリーレポート
純資産総額は?
続いて、ハッピーインカム の純資産総額はどうなっているか見て
みましょう。
純資産総額というのは、あなたを含めた投資家から集めた資金の
総額だと思ってください。
ファンドの純資産総額が小さいと、適切なタイミングで銘柄を入れ
替えることができなかったり、純資産総額が大きく減少していると、
ファンドの組み替えがうまくできず、予期せぬマイナスを生む可能性が
ありますので、事前に確認すべきポイントの1つです。
ハッピーインカム の純資産総額は、約190億円となっており、
直近のコロナショックで純資産を減らしましたが、それまで
は堅調に純資産を増やしていました。
純資産の規模としては、問題ありませんね。
※引用:マンスリーレポート
実質コストは?
私たちが支払うコストには、目論見書に記載の信託報酬
以外に、株式売買委託手数料や、保管費用、印刷費用など
が含まれています。
そのため、実際に支払うコストは、目論見書記載の額より
高くなるのが通例で、実際にかかる実質コストをもとに投資
判断をしなければなりません。
信託報酬を信用するな。知らないうちに差し引かれている実質コストの調べ方
ハッピーインカムの実質コストは1.27%となっており、
かなり高いというわけではありませんが、1%を超えて
いますので、割高です。
初年度の手数料を考えると、かなり高い印象ですが、あとは
パフォーマンス次第といったところです。
購入時手数料 | 3.3%(税込)※上限 |
信託報酬 | 1.21%(税込) |
信託財産留保額 | 0.3% |
実質コスト | 1.27%(概算値) |
※引用:最新運用報告書
と聞かれてあなたは何と答えますか?
もし『ファンド選び』だと思ったとしたら、あなたはドツボに
はまっていますので、こちらの記事を読んでみてください。
>>無料ファンド相談から見えた。多くの人が気づいていない投信運用で成果を阻む9つの誤り
DIAM 世界好配当株式ファンド(毎月決算型)『ハッピーインカム』の評価分析
基準価額の推移は?
ハッピーインカムの基準価額は、直近3年間で約50%ほど
下落しています。
分配金を受け取らずに再投資して運用したときの基準価額
(青線)は、3年間で20%ほど下落していますので、コロナ
ショックの影響で相当大きなダメージを受けています。
後述しますが、基準価額が下落したことで、分配金の支払い
がかなり厳しくなっていますので、今後、さらに下落は
加速していってしまうでしょう。
※引用:モーニングスター
利回りはどれくらい?
つづいて、ハッピーインカムの利回りを見てみましょう。
直近1年間の利回りは▲13.68%となっています。
5年平均利回りまで、マイナスとなっており、コロナショックの
影響がいかに大きかったかがわかります。
ちなみにあなたは実質利回りの計算方法はすでに理解していますか?
もし、理解していないのであれば、必ず理解しておいてください。
平均利回り | |
1年 | ▲13.68% |
3年 | ▲4.43% |
5年 | ▲1.40% |
10年 | 6.87% |
※2020年11月時点
10年間高いパフォーマンスを出し続けている優秀なファンド達も
参考にしてみてください。
10年間圧倒的に高いリターンを出している海外株式ファンドランキング
同カテゴリー内での利回りランキングは?
ハッピーインカムは日本を除く海外株式カテゴリーに属しています。
投資をするのであれば、同じカテゴリーでも優秀なパフォーマンス
のファンドに投資をすべきなので、同カテゴリー内でもパフォー
マンスのランキングは事前に調べておいて損はありません。
ハッピーインカムは常に下位20%程度に入っているので、配当は
安定しているかもしれませんが、基準価額の上昇は期待できない
ということです。
上位●% | |
1年 | 81% |
3年 | 82% |
5年 | 82% |
10年 | 82% |
※2020年11月時点
年別運用パフォーマンスは?
ハッピーインカムの年別の運用パフォーマンスを見てみましょう。
2018年、2020年が2桁のマイナスとなっており、直近5年間くらいは
ほぼトントンの成績です。
これではいくら配当金が大きくてもあまり投資をする気にはなれません。
年間利回り | |
2020年 | ▲11.05%(1-9月) |
2019年 | +21.44% |
2018年 | ▲14.96% |
2017年 | +10.87% |
2016年 | +1.30% |
2015年 | ▲4.52% |
2014年 | +17.11% |
※2020年11月時点
考えずに投資をしてしまいがちです。
しかし、「投資は出口戦略にあり」と言われるほど、
重要なテーマです。
ぜひこれを機会に投資の出口戦略を考えてみて
ください。
>>ここまで考えるのが本当の資産運用。多くの投資家が考えられていない投信運用の出口戦略とは
インデックスファンドとのパフォーマンス比較
ハッピーインカムに投資をするのであれば、より低コストで
投資ができるインデックスファンドとのパフォーマンスは
比較してから投資をしても遅くはありません。
今回は、ハッピーインカムと同じく世界の先進国株式に
投資ができるeMAXIS Slim先進国株式インデックスと
比較をしました。
※引用:モーニングスター
結果はしっかりと見るまでもなく、eMAXIS Slim先進国株式インデックスが
勝っており、高いコストを支払ってまで、投資をするメリットが感じられません。
ハッピーインカム | Slim 先進国株 | |
1年 | ▲13.68% | 1.51% |
3年 | ▲4.43% | 4.19% |
5年 | ▲1.40% | – |
10年 | 6.87% | – |
※2020年11月時点
最大下落率は?
投資する上で、ファンドがどの程度、下落する可能性が
あるのかを事前に知っておくことは非常に重要です。
もちろん標準偏差を使って、求めることはできますが、
やはり実際にどの程度下落したのかを見ておいたほうが
イメージがわきます。
ハッピーインカムは2020年1月~2020年3月までに最大23.97%
下落しました。ファンドによっては、コロナショックが最大
下落率を記録していないことも多いですが、ハッピーインカムは
かなり影響を受けたことがわかりますね。
最大下落率を知ってしまうと、少し足が止まってしまうかもしれません。
しかし、以下のことをしっかり理解しておけば、元本割れの可能性を
限りなく低くすることが可能です。
期間 | 下落率 |
1カ月 | ▲12.43% |
3カ月 | ▲23.97% |
6カ月 | ▲17.05% |
12カ月 | ▲17.66% |
※2020年11月時点
分配健全度はどれくらい?
分配金を毎月受け取っていると、受け取っていることに安心
してしまい、自分の投資元本からの配当なのか、ファンドの
収益からの配当なのか調べなくなります。
そこで、分配金がファンドの収益からちゃんと支払われている
のかを調べるときに役立つのが分配健全度です。
分配健全度とは、1年間の分配金の合計額と基準価額の変動幅を
もとに、あなたが受け取った分配金の約何%がファンドの収益
によるものなのかを計算できる指標です。
基準価額の変動幅 | 1年間の分配合計額 | 分配健全度 |
▲2,124円 | 1,560円 | ▲36% |
※2019/11/9~2020/11/8
ハッピーインカムの直近1年間の分配健全度は▲36%と
なっています。
分配健全度は100%を切ると、一部ファンドの収益以外から
分配金が支払われていることを意味します。
コロナショックの影響も当然ありますが、あなたが受け
取っている分配金はすべてファンドの収益以外から支払われ
ていたということですね。
分配金利回りはどれくらい?
毎月分配型のファンドに投資をしている場合、どれくらいの
分配金が受け取れるのかを知るために分配金利回りを参考
にします。
分配金利回りは1年間で受け取った分配金の合計金額を
基準価額で割ることで計算できます。
ただし、投資信託の場合、分配金利回りだけをみていると、
受け取っている分配金がファンドの収益から出ている
ものなのか、投資元本が削られているのか、判断できません。
そのため、ファンドの運用利回りと分配金利回りを比較して、
ファンドの運用利回りのほうが高ければ、あなたが受け取って
いる分配金がファンドの運用の収益から支払われていると
判断することができます。
ハッピーインカムの分配金利回り23.7%なので、かなり高い分配
利回りとなっています。
ただ、ここ最近のパフォーマンスから考えると、どう
考えても、分配金利回りが高く、ファンドの運用利回りだけ
で分配金を賄えていないことがここからもわかります。
未だ多くの投資家が勘違いをしながら、分配金利回りが
高いファンドに投資をしていますが、くれぐれも気を
つけてほしいと思います。
運用利回り | 分配金利回り | |
1年 | ▲13.68% | 23.7% |
3年 | ▲4.43% | |
5年 | ▲1.40% | |
10年 | 6.87% |
※2020年11月時点
分配金余力はどれくらい?
毎月分配型ファンドに投資をしている場合、もう1つ気になる
のが今後いつごろ、減配されそうかという点です。
そんなときに役立つのが分配金余力という考え方です。
分配金余力というのは、今の分配金の水準をあと何か月
続けられそうかを判断するための指標です。
明確にこの水準になったら減配されるという指標では
ありませんが、12カ月を切ったファンドはたいてい近々、
減配されることが多いです。
ハッピーインカムの分配金余力は、残18カ月程度しかなく、
このままだと、近いうちに減配されるのは間違いないでしょう。
分配金 | 繰越対象額 | 分配金余力 | |
113期 | 130円 | 3,355円 | 26.8カ月 |
114期 | 130円 | 3,253円 | 26.0カ月 |
115期 | 130円 | 3,144円 | 25.1カ月 |
116期 | 130円 | 3,030円 | 24.3カ月 |
117期 | 130円 | 2,913円 | 23.5カ月 |
118期 | 130円 | 2,817円 | 22.6カ月 |
119期 | 130円 | 2,731円 | 22.0カ月 |
120期 | 130円 | 2,621円 | 21.1カ月 |
121期 | 130円 | 2,513円 | 20.3カ月 |
122期 | 130円 | 2,398円 | 19.4カ月 |
123期 | 130円 | 2,338円 | 18.9カ月 |
124期 | 130円 | 2,276円 | 18.5カ月 |
積立NISAとiDeCoの対応状況は?
積立NISAやiDeCoで積立投資を検討している人も多いと
思います。
そこで、積立NISAやiDeCoの対応状況をまとめました。
積立NISA | iDeCo |
× | × |
※2020年11月時点
評判はどう?
ハッピーインカムの評判はネットでの書き込みなどで調べる
方法もありますが、評判を知るうえで一番役に立つのが、
月次の資金流出入額です。
資金が流入しているということは、それだけハッピーインカムを
購入している人が多いということなので、評判がよくなっている
ということです。
ハッピーインカムは、2014年ごろから、ほぼ毎月資金が流入して
おり、毎月決算型ファンドにしては、とても人気のあるファンド
となっています。
分配金利回りが高いため、無知な投資家がとりあえず投資をしている
といった構造になっているのでしょう。分配金のうち半分以上が
自分が投資した元本が戻ってきているという事実を知ったら、どの程度
の人が投資を続けるかは疑問です。
※引用:モーニングスター
DIAM 世界好配当株式ファンド(毎月決算型)『ハッピーインカム』の評価まとめと今後の見通し
いかがでしょうか?
まず理解しておいてほしいのは、株式の配当と投資信託の
分配金を同じ感覚で考えないことです。
株の場合は、配当利回りが高いと利益を投資家にたくさん
還元してくれる投資家想いの会社ということになりますが、
投資信託の場合は一概にそうとは言えません。運用がどれ
だけうまくいっていなかったとしても、基準価額が下がっ
てきてしまうと、自動的に分配金利回りは上昇します。
これを理解せず分配金利回りの高いファンドに投資をして
しまうと、分配金は受け取れたとしても、それは、あなた
が投資した元本がただ戻ってきているだけの可能性も
高いです。
ハッピーインカムのようなタコ足配当ファンドは、分配金が
ファンドの儲けなのか、自分の元本が戻ってきただけなのか
把握することが難しく、とりあえず分配金が出ているからと
安心していると痛い目をみます。
基準価額が下落したことで、さらに分配金利回りが高くなり
危険な状況ですので、今後減配されるのは間違いないですね。
当然ながら、弱点もあります。
今も私は投信運用を続けてはいますが、私がなぜ
投資信託の運用を主軸におかなくなったのか。
その理由をこちらで話をしています。
>>なぜ私が投信運用に限界を感じたのか。多くの投資家が見逃している投信運用の弱点