毎月分配型のファンドというと、リートや債券ファンドが
多いですが、分配金の原資を配当で賄うという運用スタイル
の株式型ファンドもいくつか存在します。
その中でも圧倒的に多くの資金が集まっているのが、アジア・
オセアニア好配当成長株(毎月分配型)です。
一時期は純資産総額が1兆円に迫る勢いでしたので、いかに
注目を集めていたかがわかります。
今日は、アジア・オセアニア好配当成長株(毎月分配型)について
徹底分析していきます。
アジア・オセアニア好配当成長株(毎月分配型)の基本情報
投資対象は?
アジア・オセアニア好配当成長株(毎月分配型)の投資対象は、
日本を除くアジア・オセアニア地域の株式です。
MSCIオール・カントリー・アジア・パシフィック指数採用国が
対象なのですが、どの国が対象かよくわからないと思いますので、
下に載せておきます。以下の13か国が現在の投資対象となっています。
※引用:交付目論見書
ただし、アジア・オセアニア好配当成長株(毎月分配型)の
実際の組入状況は以下のようになっており、香港が約45%、
台湾が約13%、オーストラリアが約16%、次いで韓国と
なっています。
均等にアジア・オセアニアの国に分散投資されているわけでは
ないので、注意してください。
※引用:マンスリーレポート
業種別の比率で見てみると、銀行の比率が最も高く次いで、
半導体、テクノロジーが続いています。
※引用:マンスリーレポート
純資産総額は?
純資産総額というのは、投資家から集めた資金の総額を
さしますが、必ず確認しておきたいポイントです。
純資産総額が少なければ、効率よく運用ができないため、コストが
嵩みますし、運用会社としても運用に力を入れないため、パフォー
マンスに影響が出てきます。
アジア・オセアニア好配当成長株(毎月分配型)の純資産総額は、
約1800億円となっており、かなり人気の高いファンドです。
一時期は9000億円ほどありましたが、毎月分配型ファンドへ
の風当たりが強くなっていることと、パフォーマンスも優れない
ことが要因と言えます。
※引用:マンスリーレポート
実質コストは?
投資信託には、販売時の手数料・信託報酬・信託財産保留金
以外にも費用がかかっているのをご存知でしょうか?
これを実質コストと言いますが、実質コストにはファンドの
銘柄を入れ替える際にかかる売買手数料や有価証券取引税、
監査費用や印刷費用が含まれます。
目論見書の信託報酬よりも実質コストがかなり割高になっている
ファンドもあるので、必ずチェックしたいポイントです。
信託報酬を信用するな。知らないうちに差し引かれている実質コストの調べ方
アジア・オセアニア好配当成長株(毎月分配型)の実質コストは
1.77%で、割高になっています。
購入時手数料も3.3%と高めの設定がされており、この程度の
パフォーマンスでは、そうそう投資したいと思えませんね。
購入時手数料 | 3.3%(税込) |
信託報酬 | 1.76%(税込) |
信託財産留保額 | 0.3% |
実質コスト | 1.77%(概算値) |
※引用:最新運用報告書
実質コスト以外にも、多くの投資家が気づいていない
投信運用での成果を出すのに妨げとなる間違った考え方
をまとめました。参考にしてください。
無料ファンド相談から見えた。多くの人が気づいていない投信運用で成果を阻む9つの誤り
アジア・オセアニア好配当成長株(毎月分配型)の評価分析
基準価額の推移は?
アジア・オセアニア好配当成長株(毎月分配型)の基準価額は、
ここ3年間で25%ほど下落しています。
分配金を受け取らずに再投資した基準価額(青線)を見てみると、
こちらも3年間でわずかに減少しています。
つまりファンドの運用自体もうまくいっておらず、そこに
過剰な分配をしていることでさらに基準価額が下落して
いるという構造です。
基準価額が1000円台となっており、いかに過剰な分配が
継続してきたかがわかりますね。
※引用:モーニングスター
利回りはどれくらい?
それでは、アジア・オセアニア好配当成長株(毎月分配型)の
利回りはどうでしょうか?
直近1年間の利回りは▲10.92%と大きくマイナスとなりました。
半年前と比較して、かなりパフォーマンスが悪化している
ことがわかります。
3年、5年平均利回りもマイナスで、これでは何のために
投資をしているのかわかりません。
運用会社や販売会社を儲からせたいために投資をしたい
という稀な人以外は投資をしないほうが無難です。
ちなみにあなたは実質利回りの計算方法はすでに理解していますか?
もし、理解していないのであれば、必ず理解しておいてください。
平均利回り | 2020年1月 | 2020年7月 |
1年 | 14.68% | ▲10.91% |
3年 | 4.48% | ▲4.40% |
5年 | 0.56% | ▲3.27% |
10年 | 5.81% | 4.29% |
※2020年7月時点
10年間高いパフォーマンスを出し続けている優秀なファンド達も
参考にしてみてください。
10年間圧倒的に高いリターンを出している海外株式ファンドランキング
同カテゴリー内における利回りランキング(上位●%)の変化
アジア・オセアニア好配当成長株(毎月分配型)はグローバル株式の
エマージングカテゴリーに属しています。
投資をするのであれば、同じカテゴリーでも優秀なパフォーマンス
のファンドに投資をすべきなので、同カテゴリー内でもパフォー
マンスのランキングは事前に調べておいて損はありません。
アジア・オセアニア好配当成長株(毎月分配型)は、もともと
平均以下のパフォーマンスでしたが、半年前と比較して、
わずかに順位を落としています。
どちらにしても、平均以上のパフォーマンスのファンドが
ありますので、あえてアジア・オセアニア好配当成長株
(毎月分配型)を選択する理由はありません。
2020年1月 | 2020年7月 | |
1年 | 59% | 64% |
3年 | 72% | 72% |
5年 | 71% | 68% |
10年 | 38% | 44% |
※2020年7月時点
年別のパフォーマンスは?
アジア・オセアニア好配当成長株(毎月分配型)の年別の
利回りを見てみると、2015年、2018年、2020年は
10%超のマイナスとなっています。
20%近くプラスとなっている年もあるのですが、この
マイナスの年が多いのが厳しいです。
せっかく増えても翌年に大きく下落してしまって
いるので、実質ほとんど増えていないことになります。
年間利回り | |
2020年 | ▲13.1%(1-6月) |
2019年 | 14.68% |
2018年 | ▲16.88% |
2017年 | 19.66% |
2016年 | 3.74% |
2015年 | ▲13.12% |
2014年 | 19.63% |
※2020年7月時点
考えずに投資をしてしまいがちです。
しかし、「投資は出口戦略にあり」と言われるほど、
重要なテーマです。
ぜひこれを機会に投資の出口戦略を考えてみて
ください。
>>ここまで考えるのが本当の資産運用。多くの投資家が考えられていない投信運用の出口戦略とは
類似ファンドとのパフォーマンス比較
アジア・オセアニア好配当成長株(毎月分配型)への投資を
検討するのであれば、類似ファンドとのパフォーマンス
比較はしておいて損はありません。。
アジア・オセアニア好配当成長株(毎月分配型)と類似した
ファンドがありませんでしたので、今回は世界中の
好配当株式に分散投資ができるピクテ グローバル・
インカム株式ファンドとパフォーマンスを比較しました。
一時期はパフォーマンスが逆転している時期もありますが、
ほとんどの期間でアジア・オセアニア好配当成長株(毎月分配型)
はパフォーマンスで劣っています。
あなたの受け取る分配金はファンドの収益から本来支払われる
べきものなので、これだけファンドのパフォーマンスが違う
と、アジア・オセアニア好配当成長株(毎月分配型)を選択する
理由が見つかりません。
※引用:モーニングスター
5年、10年平均利回りで比較をしても、アジア・オセアニア
好配当成長株(毎月分配型)はどの期間でも勝てていません。
この事実を見ると、アジア・オセアニア好配当成長株(毎月分配型)に
投資はしづらいですね。
アジア・オセアニア好配当 | グロイン | |
1年 | ▲10.91% | ▲3.11% |
3年 | ▲4.40% | 1.61% |
5年 | ▲3.27% | 0.53% |
10年 | 4.29% | 6.23% |
※2020年7月時点
最大下落率は?
投資を検討するうえで、最大どの程度下落する可能性があるのかは
事前にある程度把握しておきたいところです。
もちろん、標準偏差からある程度予測することはできますが、
実際にどれくらい下落したことがあるのか確認するのは参考になります。
アジア・オセアニア好配当成長株(毎月分配型)の最大下落率は、
2007年11月~2008年10月の1年間で、▲49.40%となっています。
毎月分配型でこれだけの下落をしてしまうと、分配金余力が一気に
減りますので、恐いですね。
最大下落率を知ってしまうと、少し足が止まってしまうかもしれません。
しかし、以下のことをしっかり理解しておけば、元本割れの可能性を
限りなく低くすることが可能です。
期間 | 下落率 |
1カ月 | ▲25.42% |
3カ月 | ▲38.96% |
6カ月 | ▲44.96% |
12カ月 | ▲49.40% |
※2020年7月時点
分配健全度はどれくらい?
分配金を毎月受け取っていると、受け取っていることに安心
してしまい、自分の投資元本からの配当なのか、ファンドの
収益からの配当なのか調べなくなります。
そこで、分配金がファンドの収益からちゃんと支払われている
のかを調べるときに役立つのが分配健全度です。
分配健全度とは、1年間の分配金の合計額と基準価額の変動幅を
もとに、あなたが受け取った分配金の約何%がファンドの収益
によるものなのかを計算できる指標です。
基準価額の変動幅 | 1年間の分配合計額 | 分配健全度 |
▲368円 | 240円 | ▲53% |
※2019/7/31~2020/7/30
アジア・オセアニア好配当成長株(毎月分配型)の直近1年間の
分配健全度は▲53%となっています。
分配健全度は100%を切ると、一部ファンドの収益以外から
分配金が支払われていることを意味しますが、0%を下回る
ということは、ファンドの収益からの支払いは一切ない
ということを意味します。
コロナショックの影響も当然ありますが、分配金のすべてを
ファンドの収益ではカバーできていませんので、あなたが
受け取っている分配金はあなたの投資元本だということです。
分配金利回りはどれくらい?
毎月分配型のファンドに投資をしている場合、どれくらいの
分配金が受け取れるのかを知るために分配金利回りを参考
にします。
(分配金利回りは1年間に受け取った分配金の合計金額を
基準価額で割ることで算出できます。)
ただし、投資信託の場合、分配金利回りだけをみていると、
受け取っている分配金がファンドの収益から出ている
ものなのか、投資元本が削られているのか、判断できません。
そのため、ファンドの運用利回りと分配金利回りを比較して、
ファンドの運用利回りのほうが高ければ、あなたが受け取って
いる分配金がファンドの運用の収益から支払われていると
判断することができます。
アジア・オセアニア好配当成長株(毎月分配型)の分配金
利回りは15%と比較的高い水準となっています。
ただ、ファンドの運用利回りがマイナスなので、あなたが
受け取っている分配金のほとんどはあなたが投資した資金
が戻ってきているに過ぎないということです。
未だ多くの投資家が勘違いをしながら、分配金利回りが
高いファンドに投資をしていますが、くれぐれも気を
つけてほしいと思います。
運用利回り | 分配金利回り | |
1年 | ▲10.91% | 15% |
3年 | ▲4.40% | |
5年 | ▲3.27% | |
10年 | 4.29% |
※2020年7月時点
分配金余力はどれくらい?
毎月分配型ファンドに投資をしている場合、もう1つ気になる
のが今後いつごろ、減配されそうかという点です。
そんなときに役立つのが分配金余力という考え方です。
分配金余力というのは、今の分配金の水準をあと何か月
続けられそうかを判断するための指標です。
明確にこの水準になったら減配されるという指標では
ありませんが、12カ月を切ったファンドはたいてい近々、
減配されることが多いです。
アジア・オセアニア好配当成長株(毎月分配型)の分配金
余力は60カ月ほどありますので、まだ余裕があります。
減配の可能性はまだ低いですが、根本的にタコ足配当が
続いているファンドであることには変わりありません。
ですので、分配金を受け取れているから安心ができる
というわけではないので、くれぐれも注意してください。
分配金 | 繰越対象額 | 分配金余力 | |
162期 | 20円 | 1,341円 | 68.0カ月 |
163期 | 20円 | 1,331円 | 67.5カ月 |
164期 | 20円 | 1,326円 | 67.3カ月 |
165期 | 20円 | 1,312円 | 66.6カ月 |
166期 | 20円 | 1,298円 | 65.9カ月 |
167期 | 20円 | 1,281円 | 65.0カ月 |
168期 | 20円 | 1,262円 | 64.1カ月 |
169期 | 20円 | 1,243円 | 63.1カ月 |
170期 | 20円 | 1,225円 | 62.2カ月 |
171期 | 20円 | 1,205円 | 61.2カ月 |
172期 | 20円 | 1,188円 | 60.4カ月 |
173期 | 20円 | 1,168円 | 59.4カ月 |
積立NISAとiDeCoの対応状況は?
積立NISAやiDeCoで積立投資を検討している人も多いと
思います。
そこで、積立NISAやiDeCoの対応状況をまとめました。
積立NISA | iDeCo |
× | × |
※2020年7月時点
評判はどう?
アジア・オセアニア好配当成長株(毎月分配型)の評判を確認する上で、
毎月の資金の流出入が役立ちます。
資金流入が多くなっていれば、人気が出てきているファンドである
とわかりますし、流出が続いているようであれば、評判が悪くなって
いるファンドと言えます。
それでは、アジア・オセアニア好配当成長株(毎月分配型)の評価は
どうでしょうか?
2016年以降は、毎月資金が流出しており、評判が悪くなっていること
がわかります。
パフォーマンスも優れてないので、当然といえば、当然の結果ですね。
※引用:モーニングスター
アジア・オセアニア好配当成長株(毎月分配型)の評価まとめと今後の見通し
いかがでしたでしょうか?
毎月分配型の株式ファンドが少ないとはいえ、アジア・
オセアニア好配当成長株(毎月分配型)程度のパフォーマンスの
ファンドであれば、いくらでもあります。
当面、分配金余力はまだありますので、すぐに減配には
ならないと思いますが、タコ足配当を続けている限り、
あなたが受け取る分配金はあなたの投資元本から支払わ
れていることには変わりありません。
少なくともファンドのパフォーマンスがそこそこ優れて
いないとあなたの受け取る分配金がファンドの運用益
から支払われることはありませんので、くれぐれも
注意してください。
手堅く分配金を受け取りたいということであれば、まだ
ピクテ グローバル・インカム株式ファンドへの投資を
検討したほうがよいでしょう。
ファンドの運用がうまくいっている毎月分配型ファンド
へ投資をしたいということであれば、AB・米国成長株
投信Dコースを検討すると良いと思います。
少なくとも、アジア・オセアニア好配当成長株(毎月分配型)
よりは間違いなく優れています。
当然ながら、弱点もあります。
今も私は投信運用を続けてはいますが、私がなぜ
投資信託の運用を主軸におかなくなったのか。
その理由をこちらで話をしています。
>>私が痛感する投資信託の限界。多くの投資家が見逃している投信運用の弱点