毎月分配型ファンドの草分けである「グローバル・ソブリン
・オープン」には及ばないものの、未だ多くの投資家が投資
をしているワールド・リート・オープン(毎月決算型)。
これだけ、毎月分配型のファンドに対する風当たりが強い中
でも、いまだに1,500億円以上の残高があります。
今日は、三菱UFJ国際投信のワールド・リート・オープン
(毎月決算型)について徹底的に分析します。
「ワールド・リート・オープン(毎月決算型)って持ってて大丈夫なの?」
「ワールド・リート・オープン(毎月決算型)って投資対象としてどうなの?」
「ワールド・リート・オープン(毎月決算型)より良いファンドってある?」
といったことでお悩みの方は、この記事を最後まで読めば、
悩みは解消すると思います。
ワールド・リート・オープン(毎月決算型)の基本情報
投資対象は?
ワールド・リート・オープン(毎月決算型)の投資対象は
世界各国の様々なリートに分散投資をしていきます。
リートは複数の投資家から集めた資金で様々な不動産に
投資をし、その投資先の不動産から生じる賃料や売却益等
を配当金として投資家に分配する仕組みです。
リートのメリットは、何と言っても、少額で不動産に投資
ができる点と、様々な不動産に分散投資ができることですね。
※引用:交付目論見書
ワールド・リート・オープン(毎月決算型)の現在の投資先は、
下図のように主要な先進国リートが大半を占めており、日本を含め
12か国に分散しています。
※引用:マンスリーレポート
業種別の投資比率で見ると、小売りやオフィスへの投資が
多くなっています。
しかし、「ワールド・リート」と謳っている割にはポート
フォリオの半分以上をアメリカのリートに投資しており、
カントリーアロケーション上はやや偏ったポートフォリオ
と言わざるを得ません。
この理由は、運用委託先であるMSIMがアメリカ以外の国
のリートの低流動性とリスクの高さを嫌気していること、
リートにおける同社のもっとも得意とするカントリータイプ
がアメリカであることによります。
※引用:交付目論見書
つみたてNISAとiDeCoの対応状況は?
ワールド・リート・オープン(毎月決算型)のつみたてNISAや
iDeCoの対応状況を確認しておきましょう。
残念ながらどちらも対応していません。
つみたてNISA | iDeCo |
× | × |
※2021年9月時点
運用の特徴は?
国内籍投資信託の設定・運用は三菱UFJ国際投信ですが、
運用は実質的にアメリカの大手運用会社であるモルガン・
スタンレー・インベストメント・マネジメント(MSIM)
の世界各国拠点に全面委託しています。
したがって、運用パフォーマンスはMSIMの手腕次第と
いうことになります。
ファンドの形態はファミリーファンド方式であり、MSIM
の指図によりマザーファンドから世界各国のリートに投資
しています。
※引用:交付目論見書
純資産総額は?
続いて、ワールド・リート・オープン(毎月決算型)の
純資産総額はどうなっているか見てみましょう。
純資産総額というのは、あなたを含めた投資家から集めた
資金の総額だと思ってください。
純資産総額が少なければ、効率よく運用ができないため、
コストが嵩みますし、運用会社としても運用に力を入れないため、
パフォーマンスに影響が出てきます。
現在のワールド・リート・オープン(毎月決算型)の純資産
総額は1,500億円程度と、ピーク時の5分の1程度の数値まで落ち
込みましたが、未だ規模としてはかなり大型です。
ファンドのコンセプトから高い信託報酬に至るまで、金融庁
や各メディアからの批判の的となっている典型的なタイプの
投資信託であるため、残念ながら今後の運用残高の伸びは
期待できないでしょう。
※引用:マンスリーレポート
実質コストは?
私たちが支払うコストには、目論見書に記載の信託報酬
以外に、株式売買委託手数料や、保管費用、印刷費用など
が含まれています。
そのため、実際に支払うコストは、目論見書記載の額より
高くなるのが通例で、実際にかかる実質コストをもとに
投資判断をしなければなりません。
信託報酬を信用するな。知らないうちに差し引かれている実質コストの調べ方
ワールド・リート・オープン(毎月決算型)の実質コストは
2.11%となっており、かなり割高です。
これでは投資をする気になれません。
購入時手数料 | 2.75%(税込)※上限 |
信託報酬 | 1.705%(税込) |
信託財産留保額 | 0 |
実質コスト | 2.11%(概算値) |
※引用:最新運用報告書
と聞かれてあなたは何と答えますか?
もし『ファンド選び』だと思ったとしたら、あなたはドツボに
はまっていますので、こちらの記事を読んでみてください。
>>無料ファンド相談から見えた。多くの人が気づいていない投信運用で成果を阻む9つの誤り
ワールド・リート・オープン(毎月決算型)の評価分析
基準価格をどう見る?
ワールド・リート・オープン(毎月決算型)の基準価額は
ここ3年で20%ほど下落しています。
分配金を受け取らずに運用を続けた場合の基準価額(青)は
3年間で微増していますので、過剰な分配をしていることが
わかります。
また基準価額が1000円台となっており、普通に運用をして
いれば、まずこのような価格帯にはならないので、今まで
かなりひどいタコ足配当をしてきたことがわかりますね。
※引用:モーニングスター
利回りはどれくらい?
つづいて、ワールド・リート・オープン(毎月決算型)の
運用実績を見てみましょう。
直近1年間の利回りは39.89%とかなり大きな上昇となって
います。
しかし3年、5年平均利回りはなんとかプラスを確保した
状況ですね。
ちなみにあなたは実質利回りの計算方法はすでに理解していますか?
もし、理解していないのであれば、必ず理解しておいてください。
平均利回り | |
1年 | 39.89% |
3年 | 1.03% |
5年 | 1.90% |
10年 | 8.29% |
※2021年9月時点
同カテゴリー内での利回りランキングは?
ワールド・リート・オープン(毎月決算型)は、日本を含む
海外RIETカテゴリーに属しています。
投資をするのであれば、同じカテゴリーでも優秀な
パフォーマンスのファンドに投資をすべきなので、
同カテゴリー内でのパフォーマンスのランキングは
事前に調べておいて損はありません。
ワールド・リート・オープン(毎月決算型)は直近1年を除いて
下位10%に入っており、早急にファンドの見直しを
検討するべきだと言えます。
上位●% | |
1年 | 38% |
3年 | 99% |
5年 | 97% |
10年 | 93% |
※2021年9月時点
年別のパフォーマンスは?
ワールド・リート・オープン(毎月決算型)の年別のパフォ
ーマンスも見てみましょう。
マイナスの年も多々ありますし、プラスの年でもわずかに
プラス程度の年が多々あります。
平均すると何とかプラスの利回りを維持できてはいますが、
かなり大きくマイナスになる年もあることを前提に投資を
検討するようにしてください。
年間利回り | |
2021年 | +24.78%(1-6月) |
2020年 | ▲21.60% |
2019年 | +13.29% |
2018年 | ▲11.76% |
2017年 | +2.60% |
2016年 | +0.11% |
2015年 | ▲1.37% |
2014年 | +37.73% |
※2021年9月時点
考えずに投資をしてしまいがちです。 しかし、「投資は出口戦略にあり」と言われるほど、
重要なテーマです。 ぜひこれを機会に投資の出口戦略を考えてみて
ください。 >>ここまで考えるのが本当の資産運用。多くの投資家が考えられていない投信運用の出口戦略とは
類似ファンドとのパフォーマンス比較
ワールド・リート・オープン(毎月決算型)への投資を
検討するのであれば、類似のインデックスファンドより
パフォーマンスが高くなければ、投資する価値がありません。
今回は、S&Pグローバルリートインデックスに連動する
ニッセイ Gリートインデックスファンドとパフォーマンス
を比較してみました。
※引用:モーニングスター
結果は、一瞬でわかりますが、ワールド・リート・オープン
(毎月決算型)の惨敗です。
ここまでパフォーマンスに差があると、ワールド・リート・
オープンをあえて選択する理由が全くありません。
平均利回り | ワールド・リート | ニッセイGリート |
1年 | 39.89% | 40.32% |
3年 | 1.03% | 7.86% |
5年 | 1.90% | 7.03% |
10年 | 8.29% | – |
※2021年9月時点
最大下落率は?
ワールド・リート・オープン(毎月決算型)に投資をする
前に、最大でどの程度下落する可能性があるのかを知って
おくことは非常に重要です。
どの程度下落する可能性があるかを把握しておけば、大きく
下落した相場でも落ち着いて保有を続けられるからです。
それではここでワールド・リート・オープン(毎月決算型)の
最大下落率を見てみましょう。
最大下落率はリーマンショック時で▲60.26%となっています。
コロナショックもかなりのインパクトでしたが、まだリーマン
ショックレベルの下落には至っていませんね。
ただ、肝に銘じておいてほしいのは、REITも株式と同じ
くらい下落するときは下落するということです。
それを理解しておかないと慌てふためいて、最悪なタイミング
でファンドを売却することになりかねません。
最大下落率を知ってしまうと、少し足が止まってしまうかも
しれません。
しかし、以下のことをしっかり理解しておけば、元本割れの
可能性を限りなく低くすることが可能です。
期間 | 下落率 |
1カ月 | ▲35.84% |
3カ月 | ▲50.84% |
6カ月 | ▲59.75% |
12カ月 | ▲60.26% |
※2021年9月時点
分配健全度はどれくらい?
分配金を毎月受け取っていると、受け取っていることに安心
してしまい、自分の投資元本からの配当なのか、ファンドの
収益からの配当なのか調べなくなります。
そこで、分配金がファンドの収益からちゃんと支払われている
のかを調べるときに役立つのが分配健全度です。
分配健全度とは、1年間の分配金の合計額と基準価額の変動幅を
もとに、あなたが受け取った分配金の約何%がファンドの収益
によるものなのかを計算できる指標です。
基準価額の変動幅 | 1年間の分配合計額 | 分配健全度 |
428円 | 120円 | 457% |
※2020/9/29~2021/9/28
ワールド・リート・オープン(毎月決算型)の直近1年間の
分配健全度は457%となっています。
分配健全度は100%を切ると、一部ファンドの収益以外から
分配金が支払われていることを意味しますが、0%を下回る
ということは、ファンドの収益からの支払いは一切ない
ということを意味します。
100%を超えているということは、受け取った分配金以上に
ファンドが運用益を出しているということなので、まさに
理想の状態と言えます。
直近1年間はファンドの運用益から分配金をすべて支払う
ことができていますが、分配金利回りから考えると、今後この
状態を維持するのは難しいと思われます
分配金利回りはどれくらい?
毎月分配型のファンドに投資をしている場合、どれくらいの
分配金が受け取れるのかを知るために分配金利回りを参考
にします。
ただし、投資信託の場合、分配金利回りだけをみていると、
受け取っている分配金がファンドの収益から出ている
ものなのか、投資元本が削られているのか、判断できません。
そのため、ファンドの運用利回りと分配金利回りを比較して、
ファンドの運用利回りのほうが高ければ、あなたが受け取って
いる分配金がファンドの運用の収益から支払われていると
判断することができます。
ワールド・リート・オープン(毎月決算型)の分配金利回りは、
約7%です。
一方で、ファンドの運用利回りはプラスを確保していますが、
分配利回りを下回っている時期がありますので、少なくとも、
直近5年以内に投資をした人はタコ足配当になっています。
運用利回り | 分配利回り | |
1年 | 39.89% | 6.7% |
3年 | 1.03% | |
5年 | 1.90% | |
10年 | 8.29% |
※2021年9月時点
分配金余力はどれくらい?
毎月分配型ファンドに投資をしている場合、もう1つ気になる
のが今後いつごろ、減配されそうかという点です。
そんなときに役立つのが分配金余力という考え方です。
分配金余力というのは、今の分配金の水準をあと何か月
続けられそうかを判断するための指標です。
明確にこの水準になったら減配されるという指標では
ありませんが、12カ月を切ったファンドはたいてい近々、
減配されることが多いです。
ワールド・リート・オープン(毎月決算型)の分配金余力は、
まだ270カ月程度あるので、余裕はありますが、あなたの
受け取っている分配金がタコ足配当であることには変わりは
ありません。
分配金 | 繰越対象額 | 分配金余力 | |
190期 | 10円 | 2,760円 | 277.0カ月 |
191期 | 10円 | 2,752円 | 276.2カ月 |
192期 | 10円 | 2,743円 | 275.3カ月 |
193期 | 10円 | 2,739円 | 274.9カ月 |
194期 | 10円 | 2,733円 | 274.3カ月 |
195期 | 10円 | 2,727円 | 273.7カ月 |
196期 | 10円 | 2,723円 | 273.3カ月 |
197期 | 10円 | 2,715円 | 272.5カ月 |
198期 | 10円 | 2,710円 | 272.0カ月 |
199期 | 10円 | 2,706円 | 271.6カ月 |
200期 | 10円 | 2,699円 | 270.9カ月 |
201期 | 10円 | 2,691円 | 270.1カ月 |
評判はどう?
当然ながら、ワールド・リート・オープン(毎月決算型)の
評判は、総じて良くありません。
ワールド・リート・オープン(毎月決算型)は、単純に銀行
で勧められたから購入したという人が多いようです。
そのため、基準価額や分配金額が下がったことに対する不満
が多く見受けられますが、これはファンドの性質上やむをえ
ない話です。
実際に月別の資金流出入額を見ても、毎月流出が続いています。
つまり、解約が増えているということですね。
※引用:モーニングスター
ワールド・リート・オープン(毎月決算型)の評価まとめと今後の分配金の見通し
いかがでしょうか?
世界のリート指数は、年平均利回りにして5%程度の運用は
十分に期待ができます。
現在のワールド・リート・オープン(毎月決算型)の
分配金利回りが7%台なので、長期でみれば、大きく
タコ足配当になる心配はないと言えます。
ただ、改めてになりますが、ファンドの運用利回りと
分配金利回りは全くの別物です。
運用利回り10%と言えば、100万円を投資した場合、
年10万円の運用益を受け取ることができます。
一方で、分配金利回り10%という場合は違います。
仮にファンドの運用利回りが3%しかなくても分配金利回りを
10%にすることはできるのです。
その結果、100万円投資をして、ファンドの運用益は3万円
しかないにもかかわらず、あなたは10万円の分配金を受け取る
ことになります。
では、運用益と分配金の差額の7万円はどこから出てきている
のかと言えば、あなたの投資した元本の100万円から支払われて
いるのです。
つまり、分配金利回りがいくら高くても、ファンドの運用利回り
が低ければ、まったく意味がないということです。
毎月分配型ファンドは私はそもそもおすすめはしませんが、
それでも投資をしたいという場合、ファンドの選定基準は
分配金利回りが高いか低いかではありません。
ファンドの運用利回りがちゃんとプラス(大きいほど良い)で、
運用利回りの範囲内か、少し超える程度で分配金を出している
ファンドを選ぶべきです。
世界のREITに投資をしたいのであれば、インデックスファンド
で十分ですし、毎月分配型ファンドに投資をしたいのであれば、
アライアンス・バーンスタインの米国成長株投信Dコースのような
健全な分配がなされているファンドを選択すべきです。
当然ながら、弱点もあります。 今も私は投信運用を続けてはいますが、私がなぜ
投資信託の運用を主軸におかなくなったのか。 その理由をこちらで話をしています。 >>なぜ私が投信運用に限界を感じたのか。多くの投資家が見逃している投信運用の弱点