一時期は純資産が3000億円を越えていたゴールドマン・サックス米国REITファンド『愛称:コロンブスの卵』。
米国のリートは世界のリート市場の6割超を占めており、REITへの投資を検討したことがある人であれば、一度は投資対象として検討したことがあるでしょう。
コロンブスの卵は毎月分配型と年1回型、為替ヘッジありとなしの4コースがありますが、一番人気の高いBコース(毎月分配型/為替ヘッジなし)を徹底分析していきます。
「コロンブスの卵って投資対象としてどうなの?」
「コロンブスの卵って持ってて大丈夫なの?」
「コロンブスの卵より良いファンドってある?」
といったことでお悩みの方は、この記事を最後まで読めば、悩みは解消すると思います。
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ゴールドマン・サックス米国REITファンド Bコース『コロンブスの卵』の基本情報
投資対象は?
コロンブスの卵の投資対象は、米国に上場されているREITです。
REITが所有する物件からの賃貸収入をもとに毎月分配を目指します。米国に上場しているREITは約160銘柄程度ありますが、その中から30~60銘柄を選別していきます。
現在は29銘柄に投資をしています。
1つのリートにつき300の物件を所有していると仮定すると、約9000~18000の不動産物件に投資するのとほぼ同じ効果を得ることができるのがREITの魅力です。
※引用:交付目論見書
セクター別の投資先を見てみると、様々なセクターにバランスよく分散投資されていることがわかります。
※引用:マンスリーレポート
つみたてNISAとiDeCoの対応状況は?
つみたてNISAやiDeCoで積立投資を検討している人も多いと思いますが、残念ながらどちらも対応していません。
つみたてNISA | iDeCo |
× | × |
※2022年10月時点
純資産総額は?
投資を検討するうえで、純資産総額は必ず確認するようにしてください。
純資産総額が大きいほうが、ファンドマネージャーが資金を運用する際に効率よく運用できますし、ファンドの運用で必ず発生する保管費用や監査費用が相対的に低くなりますので、コストが相対的に低く抑えられます。
また投資信託の規模が小さくなると運用会社自体がその投資信託に力を注がなくなりパフォーマンスが悪くなることもありますので注意が必要です。
コロンブスの卵は2016年には3000億円を越える巨大なファンドでしたが、今では600億円程度の規模になっています。
パフォーマンスが他の米国リートに比べて劣るのと、過剰な分配を続けているのが要因ですね。
※引用:マンスリーレポート
実質コストは?
投資信託には、購入時の手数料や信託報酬の他にも費用がかかっていることをご存知ですか?
これを実質コストと言いますが、実質コストには、株式売買手数料や有価証券取引税、監査費用などが含まれています。特に純資産総額が小さいときには、信託報酬より実質コストがかなり割高になっている場合もあるので、注意が必要です。
信託報酬を信用するな。知らないうちに差し引かれている実質コストの調べ方
コロンブスの卵の実質コストは1.66%と割高です。それに加えて高い購入時手数料もかかりますので、購入した初年度は4%程度のマイナススタートになります。
最近は、多くのファンドで購入時手数料がゼロになっていますので、今どき購入時手数料を取るファンドは相当パフォーマンスがよくなければ、投資家も購入したいと思いません。
購入時手数料 | 2.75%(税込)※上限 |
信託報酬 | 1.573%(税込) |
信託財産留保額 | なし |
実質コスト | 1.66%(概算値) |
※引用:最新運用報告書
「ファンドの運用で成果を出すために一番大事なことは何ですか?」と聞かれてあなたは何と答えますか?
もし『ファンド選び』だと思ったとしたら、あなたはドツボに
はまっていますので、こちらの記事を読んでみてください。
ゴールドマン・サックス米国REITファンド Bコース『コロンブスの卵』の評価分析
基準価額をどう見る?
コロンブスの卵の基準価額はコロナショックで大きく下落後、上昇してはいますが、3年前とほとんど同水準です。
分配金を受け取らずに運用した場合の分配金再投資基準価額(青線)を見ると、3年間で一応上昇はしていますのが、かなり苦戦していることがわかります。
基準価額が2000円台になっていることからも、いままでいかにファンドの収益に見合わない分配金を出し続けていたかがよくわかります。
※引用:モーニングスター
利回りはどれくらい?
コロンブスの卵の直近1年間の利回りは+3.34%となっています。
10年平均利回りは8%を超えていますので、悪くないですが、3年平均は2%台、5年平均は4%台のパフォーマンスしかないため、年によって運用成績が大きく変わっていることが予想できます。
こういった年によって利回りが大きく変わるファンドは要注意です。
ちなみにあなたは実質利回りの計算方法はすでに理解していますか?もし、理解していないのであれば、必ず理解しておいてください。
平均利回り | |
1年 | +3.34% |
3年 | +2.72% |
5年 | +4.33% |
10年 | +8.98% |
※2022年10月時点
10年間高いパフォーマンスを出し続けている優秀なファンド達も参考にしてみてください。
10年間圧倒的に高いリターンを出している海外REIT ランキング
同カテゴリー内での利回りランキングは?
コロンブスの卵は、国際REITの特定地域カテゴリーに属しています。
投資をするのであれば、同じカテゴリーでも優秀なパフォーマンスのファンドに投資をすべきなので、同カテゴリー内でもパフォーマンスのランキングは事前に調べておいて損はありません。
コロンブスの卵は、どの期間でみても、平均な順位となっており、他にもっと優れたファンドが多数あることがわかります。
上位●% | |
1年 | 51% |
3年 | 59% |
5年 | 48% |
10年 | 42% |
※2022年10月時点
年別のパフォーマンスは?
コロンブスの卵の年別のパフォーマンスを見てみましょう。
40%以上のプラスを出している年もありますが、マイナスで終わっている年がかなり多いです。
平均すると年数%のプラスになりますが、かなり年によってパフォーマンスが増減することは投資する前にしっかりと理解しておいてください。
年間利回り | |
2022年 | ▲11.61%(1-9月) |
2021年 | +56.82% |
2020年 | ▲20.03% |
2019年 | +16.75% |
2018年 | ▲5.15% |
2017年 | ▲1.68% |
2016年 | +4.25% |
2015年 | ▲3.88% |
2014年 | +43.61% |
※2022年10月時点
投信運用は長期投資が前提なので、つい出口戦略を考えずに投資をしてしまいがちです。
しかし、「投資は出口戦略にあり」と言われるほど、重要なテーマです。ぜひこれを機会に投資の出口戦略を考えてみてください。
>>まさか考えたことがない?運用が成功するか失敗するかすべてのカギを握る投信運用の出口戦略インデックスファンドとのパフォーマンス比較
コロンブスの卵に投資をする前により低コストで運用できるインデックスファンドとのパフォーマンスは比較しておいて損はありません。
今回は、S&P米国リート指数に連動するeMAXIS 米国リートインデックスとパフォーマンスを比較してみました。
※引用:モーニングスター
コロナショック前まではかなり拮抗していましたが、コロナショック後は、コロンブスの卵のパフォーマンスが下回っています。
コロナショックでの銘柄の入れ替えがうまくいかなかったのか保有している銘柄が悪かったのか、どちらにしても、インデックスファンドに負けるようでは、話になりません。
コロンブスの卵 | eMAXIS 米国リート | |
1年 | +3.34% | +4.00% |
3年 | +2.72% | +6.45% |
5年 | +4.33% | +6.53% |
10年 | +8.98% | - |
※2022年10月時点
類似ファンドとのパフォーマンス比較
続いて、コロンブスの卵に投資をするのであれば、同じくアクティブファンドで、米国リートに投資をしているファンドとパフォーマンスを比較しておきたいところです。
今回は、ダイワ・US-REIT・オープン(毎月決算型)Bコースと同じく米国リートに投資をしているアクティブファンドであるフィデリティ・USリート・ファンドBとダイワ US-REIT オープン(毎月決算型)Bコースと比較をしました。
※引用:モーニングスター
同じ米国リートの中から銘柄を選定しているとはいえ、かなり大きく差がつきました。
その中でも、コロンブスの卵だけ大きくパフォーマンスが劣っていることがわかります。ここまで差がついてしまうと、厳しいですね。
コロンブスの卵 | ダイワ US-RIET | |
1年 | +3.34% | +6.66% |
3年 | +2.72% | +9.11% |
5年 | +4.33% | +9.27% |
10年 | +8.98% | +12.36% |
※2022年10月時点
5年平均、10年平均利回りで見ても、コロンブスの卵は終始パフォーマンスが劣っています。
基本、米国リートのアクティブファンドはそこまでパフォーマンスが変わらないものが多いので、どれを選ぶかはそこまで重要ではないのですが、コロンブスの卵はやめておいたほうがよいでしょう。
最大下落率は?
コロンブスの卵に投資をする前に、最大でどの程度下落する可能性があるのかを知っておくことは非常に重要です。
どの程度下落する可能性があるかを把握しておけば、大きく下落した相場でも落ち着いて保有を続けられるからです。
それではコロンブスの卵の最大下落率を見てみましょう。
最大下落率は2008年4月~2009年3月の1年間で63.33%でした。
期間 | 下落率 |
1カ月 | ▲34.76% |
3カ月 | ▲56.78% |
6カ月 | ▲64.19% |
12カ月 | ▲63.33% |
※2022年10月時点
REITと聞くと、株式ファンドほど下落しないようなイメージを持ってしまいがちですが、下落するときは大きく下落しますので注意してください。
最大下落率を知ってしまうと、少し足が止まってしまうかもしれません。しかし、以下のことをしっかり理解しておけば、元本割れの可能性を限りなく低くすることが可能です。
分配健全度はどれくらい?
分配金を毎月受け取っていると、受け取っていることに安心してしまい、自分の投資元本からの配当なのか、ファンドの収益からの配当なのか調べなくなります。
そこで、分配金がファンドの収益からちゃんと支払われているのかを調べるときに役立つのが分配健全度です。
分配健全度とは、1年間の分配金の合計額と基準価額の変動幅をもとに、あなたが受け取った分配金の約何%がファンドの収益によるものなのかを計算できる指標です。
基準価額の変動幅 | 1年間の分配合計額 | 分配健全度 |
▲217円 | 120円 | ▲80% |
※2021/11/4~2022/11/4
コロンブスの卵の直近1年間の分配健全度は▲80%となっています。
分配健全度は100%を切ると、一部ファンドの収益以外から分配金が支払われていることを意味しますが、0%を下回るということは、ファンドの収益からの支払いは一切ないということを意味します。
コロンブスの卵は0%を下回っていますので、分配金はすべて投資元本から支払われていることが分かります。
分配金利回りはどれくらい?
毎月分配型のファンドに投資をしている場合、どれくらいの分配金が受け取れるのかを知るために分配金利回りを参考にします。
ただし、投資信託の場合、分配金利回りだけをみていると、受け取っている分配金がファンドの収益から出ているものなのか、投資元本が削られているのか、判断できません。
そのため、ファンドの運用利回りと分配金利回りを比較して、ファンドの運用利回りのほうが高ければ、あなたが受け取っている分配金がファンドの運用の収益から支払われていると判断することができます。
運用利回り | 分配金利回り | |
1年 | +3.34% | 5.50% |
3年 | +2.72% | |
5年 | +4.33% | |
10年 | +8.98% |
※2022年10月時点
コロンブスの卵の分配金利回りは5.5%なので、他の米国リートと比べると、比較的健全な水準ではあります。分配金が月10円になったことで、ようやく適正な水準まで分配金利回りが下がってきました。
分配金余力はどれくらい?
毎月分配型ファンドに投資をしている場合、もう1つ気になるのが今後いつごろ、減配されそうかという点です。
そんなときに役立つのが分配金余力という考え方です。分配金余力というのは、今の分配金の水準をあと何か月続けられそうかを判断するための指標です。
明確にこの水準になったら減配されるという指標ではありませんが、12カ月を切ったファンドはたいてい近々、減配されることが多いです。
コロンブスの卵の分配金余力は、まだ200カ月以上ありますので、減配の心配はないと言えます。
分配金 | 繰越対象額 | 分配金余力 | |
214期 | 10円 | 1,872円 | 188.2カ月 |
215期 | 10円 | 1,923円 | 193.3カ月 |
216期 | 10円 | 1,913円 | 192.3カ月 |
217期 | 10円 | 1,905円 | 191.5カ月 |
218期 | 10円 | 1,923円 | 193.3カ月 |
219期 | 10円 | 2,199円 | 220.9カ月 |
※引用:最新運用報告書
評判はどう?
それでは、コロンブスの卵の評判はどうでしょうか?
ネット等で口コミを調べることもできますが、資金の流出入を見ることで、評判がわかります。
評判がよければ、資金が流入超過になりますし、評判が悪くなっていれば、資金が流出超過になります。
ゴールドマン・サックス米国REITファンド Bコースは2018年以降、毎月資金の流出が続いています。これは減配されたことにより多くの投資家が離脱したのが原因です。
※引用:モーニングスター
ゴールドマン・サックス米国REITファンド Bコース『コロンブスの卵』の今後の見通し
いかがでしょうか?
米国リート市場は、経済活動が徐々に再開されたことや景気の持ち直しが想定よりも早まったことを支援材料に上昇したものの、コロナの感染増加ペースが再加速したことから、不安定な動きが続いています。
直近で分配金を10円/月にした関係で、ファンドの運用益から分配金を支払えるくらいの水準にまで下落してきました。そのため、ここからは比較的健全な運用がされると期待できます。
ただ、コロンブスの卵は明らかに他のファンドと比較をしてパフォーマンスで劣ります。
毎月分配型の投資自体を私はあまりおすすめしませんが、あえて投資するにしてもパフォーマンスが優れたファンドに投資をするようにしてください。
最後に、投信運用には多くのメリットもありますが、当然ながら、弱点もあります。
今も私は投信運用を続けてはいますが、私がなぜ投資信託の運用を主軸におかなくなったのか。その理由をこちらで話をしています。
>>私が痛感する投資信託の限界。多くの投資家が見逃している投信運用の弱点