リーマンショック以前には3000億円規模の巨大ファンドだった三菱UFJグローバル・ボンド・オープン(毎月決算型)『愛称:花こよみ』。
債券=リスクが低いというイメージがありますので、世界の債券に分散投資をするならリスクがさらに低いだろうということで多くの投資家が投資をしています。
今日は、三菱UFJ グローバル・ボンド・オープン(毎月決算型)について独自の目線で分析していきます。
「花こよみって持ってて大丈夫なの?」
「花こよみって投資対象としてどうなの?」
「花こよみより良いファンドってある?」
といったことでお悩みの方は、この記事を最後まで読めば、悩みは解消すると思います。
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三菱UFJ グローバル・ボンド・オープン(毎月決算型)『花こよみ』の基本情報
投資対象は?
花こよみの投資対象は世界主要国の債券で、信用力が高く、相対的に利回りが高い国の債券です。信用力の高さというのは、元本返済や利払いが確実に行われるかを測る指標ですが、これは格付会社の信用格付けが参考になります。
以下は、ムーディーズの信用格付けです。一般的にBaa3以上は投資適格債券と呼ばれており、元本返済や利払いの返済が滞る可能性が低いとみなされます。
ですので、債券ファンドの場合は、まず格付が投資適格の債券なのかを確認してください。
※引用:交付目論見書
花こよみの組入状況を見てみると、オーストラリア国債とニュージーランド国債でほぼ99%を占めています。格付は95%以上がAAAとなっているのでデフォルトの心配はしなくてもよいでしょう。
グローバル債券と言っていますが、実態はオーストラリアとニュージーランドの国債を組入れたファンドということですね。
※引用:マンスリーレポート
つみたてNISAとiDeCoの対応状況は?
花こよみのつみたてNISAやiDeCoの対応状況ですが、残念ながら、どちらも対応できていません。
つみたてNISA | iDeCo |
× | × |
※2022年10月時点
純資産総額は?
投資を検討するうえで、純資産総額は必ず確認するようにしてください。
純資産総額が大きいほうが、ファンドマネージャーが資金を運用する際に効率よく運用できますし、ファンドの運用で必ず発生する保管費用や監査費用が相対的に低くなりますので、コストが相対的に低く抑えられます。
また投資信託の規模が小さくなると運用会社自体がその投資信託に力を注がなくなりパフォーマンスが悪くなることもありますので注意が必要です。
花こよみはリーマンショック以前には3000億円程度の規模がありましたが、現在では、950億円程度となっています。減少したとはいえ、いまだ900億円以上の規模がありますので、規模のデメリットはないですね。
※引用:マンスリーレポート
実質コストは?
投資信託には、購入時の手数料や信託報酬の他にも費用がかかっていることをご存知ですか?
これを実質コストと言いますが、実質コストには、株式売買手数料や有価証券取引税、監査費用などが含まれています。
特に純資産総額が小さいときには、信託報酬より実質コストがかなり割高になっている場合もあるので、注意が必要です。
信託報酬を信用するな。知らないうちに差し引かれている実質コストの調べ方
花こよみの実質コストは1.25%となっており、債券ファンドの場合はただでさえリターンが小さいので、このコストがかかると運用益に大きな影響を与えます。また、購入時の手数料がかかってしまうのも評価減ですね。
購入時手数料 | 2.2%(税込)※上限 |
信託報酬 | 1.21%(税込) |
信託財産留保額 | なし |
実質コスト | 1.25%(概算値) |
※引用:最新運用報告書
「ファンドの運用で成果を出すために一番大事なことは何ですか?」と聞かれてあなたは何と答えますか?
もし『ファンド選び』だと思ったとしたら、あなたはドツボに
はまっていますので、こちらの記事を読んでみてください。
三菱UFJ グローバル・ボンド・オープン(毎月決算型)『花こよみ』の評価分析
基準価額をどう見る?
花こよみの基準価額はコロナショックの影響はほぼ受けることなく、2021年中頃まで上昇していましたが、2022年は下落基調が続いています。
※引用:モーニングスター
利回りはどれくらい?
つづいて、花こよみの運用実績を見てみましょう。
直近1年間の利回りは▲0.85%です。3年以上で見れば、3%以上のリターンを安定的に
得ることができており、債券ファンドとしては、十分ではないでしょうか。
ちなみにあなたは実質利回りの計算方法はすでに理解していますか?もし、理解していないのであれば、必ず理解しておいてください。
平均利回り | |
1年 | ▲0.85% |
3年 | +4.28% |
5年 | +2.84% |
10年 | +4.21% |
※2022年10月時点
同カテゴリー内での利回りランキングは?
花こよみは、日本を除くグローバル債券カテゴリーに属しています。
投資をするのであれば、同じカテゴリーでも優秀なパフォーマンスのファンドに投資をすべきなので、同カテゴリー内でのパフォーマンスのランキングは事前に調べておいて損はありません。
花こよみは、1年・10年の順位は優れませんが、他の期間においては、上位20%程度にはランクインしています。他のファンドと比べて、運用にムラがあるようですね。
上位●% | |
1年 | 83% |
3年 | 20% |
5年 | 13% |
10年 | 64% |
※2022年10月時点
年別のパフォーマンスは?
花こよみの年別のパフォーマンスを見てみましょう。
2桁プラスの年もあれば、マイナスの年も思ったより多いです。安定して毎年プラスの運用ができているわけではないので、その前提で投資をしてください。
年間利回り | |
2022年 | ▲2.81%(1-9月) |
2021年 | +0.76% |
2020年 | +13.84% |
2019年 | +5.05% |
2018年 | ▲2.40% |
2017年 | +6.27% |
2016年 | ▲2.23% |
2015年 | ▲7.61% |
2014年 | +16.10% |
※2022年10月時点
投信運用は長期投資が前提なので、つい出口戦略を考えずに投資をしてしまいがちです。
しかし、「投資は出口戦略にあり」と言われるほど、重要なテーマです。ぜひこれを機会に投資の出口戦略を考えてみてください。
>>ここまで考えるのが本当の資産運用。多くの投資家が考えられていない投信運用の出口戦略とはインデックスファンドとのパフォーマンス比較
花こよみへの投資を検討するのであれば、より低コストで投資ができるインデックスファンドとパフォーマンスを比較してからでも遅くはありません。
今回は、グローバル債券の代表的な指数であるFTSE世界国債インデックスをベンチマークとするSMT グローバル債券インデックスと比較をしています。
※引用:モーニングスター
結果は花こよみがほぼ全期間で圧倒しています。
これだけパフォーマンスに差がつくと、高いコストを支払ってでも、花こよみに投資をする価値があると言えます。
花こよみ | SMTグローバル債券 | |
1年 | ▲0.85% | +1.40% |
3年 | +4.28% | +3.00% |
5年 | +2.84% | +1.86% |
10年 | +4.21% | +5.18% |
※2022年10月時点
最大下落率は?
花こよみに投資をする前に、最大でどの程度下落する可能性があるのかを知っておくことは非常に重要です。どの程度下落する可能性があるかを把握しておけば、大きく下落した相場でも落ち着いて保有を続けられるからです。
それでは花こよみの最大下落率を見てみましょう。
最大下落率は2008年8月~2009年1月の半年間で33.53%でした。
期間 | 下落率 |
1カ月 | ▲17.14% |
3カ月 | ▲28.91% |
6カ月 | ▲33.53% |
12カ月 | ▲30.31% |
※2022年10月時点
債券ファンドでも30%超の下落を記録することがあるので、そのくらいの下落はあるものだと思って投資をしてください。
最大下落率を知ってしまうと、少し足が止まってしまうかもしれません。しかし、以下のことをしっかり理解しておけば、元本割れの可能性を限りなく低くすることが可能です。
分配健全度はどれくらい?
分配金を毎月受け取っていると、受け取っていることに安心してしまい、自分の投資元本からの配当なのか、ファンドの収益からの配当なのか調べなくなります。
そこで、分配金がファンドの収益からちゃんと支払われているのかを調べるときに役立つのが分配健全度です。
分配健全度とは、1年間の分配金の合計額と基準価額の変動幅をもとに、あなたが受け取った分配金の約何%がファンドの収益によるものなのかを計算できる指標です。
基準価額の変動幅 | 1年間の分配合計額 | 分配健全度 |
▲241円 | 120円 | ▲2% |
※2021/11/4~2022/11/4
花こよみの直近1年間の分配健全度は▲2%となっています。
分配健全度は100%を切ると、一部ファンドの収益以外から分配金が支払われていることを意味しますが、0%を下回るということは、ファンドの収益からの支払いは一切ないということを意味します。
花こよみの分配健全度は▲2%ですので、分配金はファンドの運用益から支払われているのではなく、すべて投資資金が戻ってきているだけであることがわかります。
分配金利回りはどれくらい?
毎月分配型のファンドに投資をしている場合、どれくらいの分配金が受け取れるのかを知るために分配金利回りを参考にします。
ただし、投資信託の場合、分配金利回りだけをみていると、受け取っている分配金がファンドの収益から出ているものなのか、投資元本が削られているのか、判断できません。
そのため、ファンドの運用利回りと分配金利回りを比較して、ファンドの運用利回りのほうが高ければ、あなたが受け取っている分配金がファンドの運用の収益から支払われていると判断することができます。
運用利回り | 分配利回り | |
1年 | ▲0.85% | 1.9% |
3年 | +4.28% | |
5年 | +2.84% | |
10年 | +4.21% |
※2022年10月時点
花こよみの分配金利回りはもともと2%程度しかないこともあり、長期での保有を前提で考えれば、一時的にタコ足配当になることはあったとしても、ファンドの運用益で分配金を賄えるレベルですね。
分配金余力はどれくらい?
毎月分配型ファンドに投資をしている場合、もう1つ気になるのが今後いつごろ、減配されそうかという点です。
そんなときに役立つのが分配金余力という考え方です。分配金余力というのは、今の分配金の水準をあと何か月続けられそうかを判断するための指標です。
明確にこの水準になったら減配されるという指標ではありませんが、12カ月を切ったファンドはたいてい近々、減配されることが多いです。
花こよみの分配金余力は、直近で30カ月ほどまで、回復していますので、少し余力ができました。
分配金 | 繰越対象額 | 分配金余力 | |
214期 | 10円 | 309円 | 31.9カ月 |
215期 | 10円 | 307円 | 31.7カ月 |
216期 | 10円 | 303円 | 31.3カ月 |
217期 | 10円 | 300円 | 31.0カ月 |
218期 | 10円 | 300円 | 31.0カ月 |
219期 | 10円 | 303円 | 31.3カ月 |
220期 | 10円 | 300円 | 31.0カ月 |
221期 | 10円 | 296円 | 30.6カ月 |
222期 | 10円 | 292円 | 30.2カ月 |
223期 | 10円 | 289円 | 29.9カ月 |
224期 | 10円 | 292円 | 30.2カ月 |
225期 | 10円 | 346円 | 35.6カ月 |
評判はどう?
それでは、花こよみの評判はどうでしょうか?
ネット等で口コミを調べることもできますが、資金の流出入を見ることで、評判がわかります。評判がよければ、資金が流入超過になりますし、評判が悪くなっていれば、資金が流出超過になります。
花こよみは2017年以降、毎月資金の流出が続いています。
高コストと毎月分配型のせいで評判はすこぶる悪いようですね。
※引用:モーニングスター
三菱UFJ グローバル・ボンド・オープン(毎月決算型)『花こよみ』の評価まとめと今後の見通し
いかがでしょうか?
オーストラリア国債やシンガポール国債は他の先進国の債券と比べても非常に魅力的であるため、世界中の債券に分散投資をするよりもパフォーマンスが高くなっています。
直近のコロナショック前後の運用は明らかにインデックスをアウトパフォームしており、高評価できます。
ただ、パフォーマンスが好調の背景にあるのは為替です。為替が円安に振れたことで全体のパフォーマンスを底上げしています。
厄介なことに将来の為替の動きというのは、株式よりもさらに予想が難しく、いつ円安が進むのかいつ円高が進むのかは判断ができません。つまり、花こよみのパフォーマンスが今後どのタイミングで悪化してくるかも予想がつかないわけです。
そう考えると、悪くなるかもしれないし、悪くならないかもしれない、予測が全くつかないファンドよりも長期で保有を続けていれば成長が期待できる株式ファンドに投資をしておいたほうが無難な選択だと思います。
最後に、投信運用には多くのメリットもありますが、当然ながら、弱点もあります。
今も私は投信運用を続けてはいますが、私がなぜ投資信託の運用を主軸におかなくなったのか。その理由をこちらで話をしています。
>>私が痛感する投資信託の限界。多くの投資家が見逃している投信運用の弱点