30年以上前から運用されていながら、ここ数年で急激に人気が出ているのが、インベスト世界厳選株式オープン(毎月決算型)『愛称:世界のベスト』です。
人気の理由はパフォーマンスもさることながら、配当利回りが20%近くもあるからです。
「世界のベストって投資対象としてどうなの?」
「世界のベストって持ってて大丈夫なの?」
「世界のベストより良いファンドってある?」
といったことでお悩みの方は、この記事を最後まで読めば、悩みは解消すると思います。
なお、世界のベストは為替ヘッジあり(毎月決算型)と為替ヘッジなし(毎月決算型)がありますが、今回は一番資金が集まっている為替ヘッジなし(毎月決算型)を分析していきます。
インベスコ 世界厳選株式<為替ヘッジなし>(毎月決算型)『世界のベスト』の基本情報
投資対象は?
世界のベストの投資対象は、日本を含む世界各国(エマージング国を除く)の株式です。独自のバリュー・アップローチによりグローバル比較で見た割安銘柄を厳選し投資します。
成長+配当+割安の3つの観点を特に重視しています。
国別の組入上位銘柄を見ていくと、約40%がアメリカ、次いでイギリスとなっています。
組入れ銘柄は48銘柄なので、とにかく厳選しているというわけではないですが、ポートフォリオは一般的な先進国株式に投資をするアクティブファンドとは違うようですね。
※引用:マンスリーレポート
世界のベストの組入れ上位5銘柄は以下のようになっています。
1位が投資会社となっているのは面白いですね。5位にREITが入っているのも珍しいと言えます。
※引用:マンスリーレポート
つみたてNISAとiDeCoの対応状況は?
世界のベストについて、つみたてNISAやiDeCoで積立投資を検討している人も多いと思いますが、残念ながら、どちらも対応していません。
つみたてNISA | iDeCo |
× | × |
※2023年10月時点
純資産総額は?
投資を検討するうえで、純資産総額は必ず確認するようにしてください。
純資産総額は大きいほうが、ファンドマネージャーが資金を運用する際に効率よくできたり、保管費用や監査費用が相対的に低くなりますので、コストが低く抑えられます。
また投資信託の規模が小さくなると運用会社自体がその投資信託に力を注がなくなりパフォーマンスが悪くなることもありますので注意が必要です。
世界のベストは、ここ数年で純資産がとてつもないスピードで増えており、8100億円までになっています。
高い分配金利回りというにんじんをぶら下げている効果がここまで大きいとは驚きです。
ただ規模として問題はありません。
※引用:マンスリーレポート
実質コストは?
投資信託には、購入時の手数料や信託報酬の他にも費用がかかっていることをご存知ですか?
これを実質コストと言いますが、実質コストには、株式売買手数料や有価証券取引税、監査費用などが含まれています。特に純資産総額が小さいときには、信託報酬より実質コストがかなり割高になっている場合もあるので、注意が必要です。
信託報酬を信用するな。知らないうちに差し引かれている実質コストの調べ方
世界のベストの実質コストは2.22%とかなり割高です。それに加えて高い購入時手数料もかかりますので、購入した初年度から5%以上資産が目減りしてしまいます。
購入時手数料 | 3.3%(税込)※上限 |
信託報酬 | 1.903%(税込) |
信託財産留保額 | 0.3% |
実質コスト | 2.22%(概算値) |
※引用:最新運用報告書
「ファンドの運用で成果を出すために一番大事なことは何ですか?」と聞かれてあなたは何と答えますか?
もし『ファンド選び』だと思ったとしたら、あなたはドツボに
はまっていますので、こちらの記事を読んでみてください。
インベスコ 世界厳選株式<為替ヘッジなし>(毎月決算型)『世界のベスト』の評価分析
基準価額をどう見る?
世界のベストの基準価額はここ3年間は8,000~10,000円の間を推移しています。
ただ分配金を受け取らずに再投資して運用した時の基準価額(青線)を見ると、3年間で2倍近くになっているので、運用パフォーマンス自体はすぐれており、過剰な分配金を支払っていることがわかります。
※引用:ウエルスアドバイザー
利回りはどれくらい?
つづいて、世界のベストの運用実績を見てみましょう。
直近1年間の利回りは+31.23%なっています。3年平均も+25%、5年10年平均利回りも10%近くありますので、かなり優れたパフォーマンスとなっているように見えます。
ただし、この利回りだけを見て、投資判断をしてはいけません。他のファンドとパフォーマンスを比較してから、確信をもって、投資をするようにしてください。
ちなみにあなたは実質利回りの計算方法はすでに理解していますか?もし、理解していないのであれば、必ず理解しておいてください。
平均利回り | |
1年 | +31.23% |
3年 | +25.01% |
5年 | +11.04% |
10年 | +9.94% |
※2023年10月時点
10年間高いパフォーマンスを出し続けている優秀なファンド達も参考にしてみてください。
10年間圧倒的に高いリターンを出しているJリート ランキング
同カテゴリー内での利回りランキングは?
世界のベストは、日本を含むグローバル株式カテゴリーに属しています。
投資をするのであれば、同じカテゴリーでも優秀なパフォーマンスのファンドに投資をすべきなので、同カテゴリー内でのパフォーマンスのランキングは事前に調べておいて損はありません。
世界のベストは、1年、3年利回りでは上位1割に入っており、5年、10年利回りでは平均的な水準となっています。ここから、この数年が特に好調なファンドであることがわかりますね。
上位●% | |
1年 | 2% |
3年 | 8% |
5年 | 50% |
10年 | 48% |
※2023年10月時点
年別のパフォーマンスは?
世界のベストの年別のパフォーマンスも見てみましょう。
2019年、2021年、2023年は20%以上の利回りとなっており、かなり好調であることがわかります。
一方、2020年は他の株式ファンドが好調な中、マイナスだったこともあり、これが長期でのパフォーマンスを押し下げている原因と言えそうです。
年間利回り | |
2023年 | +22.25%(1-6月) |
2022年 | +2.94% |
2021年 | +33.94% |
2020年 | ▲8.04% |
2019年 | +22.49% |
※2023年10月時点
投信運用は長期投資が前提なので、つい出口戦略を考えずに投資をしてしまいがちです。
しかし、「投資は出口戦略にあり」と言われるほど、重要なテーマです。ぜひこれを機会に投資の出口戦略を考えてみてください。
>>ここまで考えるのが本当の資産運用。多くの投資家が考えられていない投信運用の出口戦略とはインデックスファンドとのパフォーマンス比較
世界のベストに投資をするのであれば、より低コストのインデックスファンドとパフォーマンスを比較してから投資判断をしても遅くはありません。
世界のベストはMSCIワールドインデックスをベンチマークとしています。MSCIワールドインデックスは先進国23か国の大型・中型銘柄を対象に投資をするファンドです。
そのため、今回は、先進国株式の代表的なインデックスファンドであるeMAXIS Slim先進国株式インデックスと比較をしました。
※引用:ウエルスアドバイザー
直近3年間においては、ほぼ全期間において、世界のベストが大きくリードしています。
ただ、より長期のパフォーマンスを見ても、eMAXIS Slim先進国株式インデックスのほうが優位となっています。
世界のベスト | slim 先進国株式 | |
1年 | +31.23% | +21.49% |
3年 | +25.01% | +21.52% |
5年 | +11.04% | +15.06% |
10年 | +9.94% | - |
※2023年10月時点
どちらも良いファンドではありますが、リターンのぶれが小さいという意味では、無難にインデックスファンドに投資をするだけでも悪くありません。
類似ファンドとのパフォーマンス比較
世界のベストに高い手数料を支払うのであれば、他のアクティブファンドとパフォーマンスを比較してから投資をしても遅くはありません。
今回は、先進国株式を投資対象としている大和住銀 DC海外アクティブファンドと比較をしました。
※引用:モーニングスター
直近の3年間のパフォーマンスでは、ほぼ全期間において、世界のベストが大きくリードしています。
ただ、より長期のパフォーマンスを見ると、大和住銀DC海外アクティブファンドが優位となっています。
世界のベスト | 大和住銀DC海外アクティブ | |
1年 | +31.23% | +20.33% |
3年 | +25.01% | +13.90% |
5年 | +11.04% | +14.59% |
10年 | +9.94% | +15.98% |
※2023年10月時点
判断が分かれるところではありますが、短期的に優れたパフォーマンスは長く続かないこともあるので、私であれば長期で優れた大和住銀DC海外株式アクティブファンドを選択します。
最大下落率は?
世界のベストに投資をする前に、最大でどの程度下落する可能性があるのかを知っておくことは非常に重要です。どの程度下落する可能性があるかを把握しておけば、大きく下落した相場でも落ち着いて保有を続けられるからです。
それではここで世界のベストの最大下落率を見てみましょう。
世界のベストは2008年1月~12月で最大54%近く下落しています。
リーマンショック級の下落が来た場合は、これくらいの下落は覚悟しておいてください。
期間 | 下落率 |
1カ月 | ▲21.54% |
3カ月 | ▲40.14% |
6カ月 | ▲46.40% |
12カ月 | ▲54.65% |
※2023年10月時点
最大下落率を知ってしまうと、少し足が止まってしまうかもしれません。しかし、以下のことをしっかり理解しておけば、元本割れの可能性を限りなく低くすることが可能です。
分配健全度はどれくらい?
分配金を毎月受け取っていると、受け取っていることに安心してしまい、自分の投資元本からの配当なのか、ファンドの収益からの配当なのか調べなくなります。
そこで、分配金がファンドの収益からちゃんと支払われているのかを調べるときに役立つのが分配健全度です。
分配健全度とは、1年間の分配金の合計額と基準価額の変動幅をもとに、あなたが受け取った分配金の約何%がファンドの収益によるものなのかを計算できる指標です。
基準価額の変動幅 | 1年間の分配合計額 | 分配健全度 |
770円 | 1800円 | 142% |
※2022/9/28~2023/9/27
世界のベストの直近1年間の分配健全度は142%となっており、かなり健全な水準です。
分配健全度は100%を切ると、一部ファンドの収益以外から分配金が支払われていることを意味しますが、100%を上回るということは、ファンドの収益だけで分配金をすべて賄えているということを意味します。
分配金利回りはどれくらい?
毎月分配型のファンドに投資をしている場合、どれくらいの分配金が受け取れるのかを知るために分配金利回りを参考にします。(分配金利回りは基準価額に対する分配金合計額で計算ができます。)
ただし、投資信託の場合、分配金利回りだけをみていると、受け取っている分配金がファンドの収益から出ているものなのか、投資元本が削られているのか、判断できません。
そのため、ファンドの運用利回りと分配金利回りを比較して、ファンドの運用利回りのほうが高ければ、あなたが受け取っている分配金がファンドの運用の収益から支払われていると判断することができます。
運用利回り | 分配金利回り | |
1年 | +31.23% | 20.5% |
3年 | +25.01% | |
5年 | +11.04% | |
10年 | +9.94% |
※2023年10月時点
世界のベストの分配金利回りは20.5%とかなり高めの設定となっています。
ファンドの運用利回りを考えると、直近数年は運用益から分配金を支払えていますが、長くは続かないことが目に見えています。
分配金余力はどれくらい?
毎月分配型ファンドに投資をしている場合、もう1つ気になるのが今後いつごろ、減配されそうかという点です。
そんなときに役立つのが分配金余力という考え方です。分配金余力というのは、今の分配金の水準をあと何か月続けられそうかを判断するための指標です。
明確にこの水準になったら減配されるという指標ではありませんが、12カ月を切ったファンドはたいてい近々、減配されることが多いです。
世界のベストの分配金余力は、まだ50カ月以上ありますので、減配の心配はないと言えます。
分配金 | 繰越対象額 | 分配金余力 | |
103期 | 150円 | 8,334円 | 56.6カ月 |
104期 | 150円 | 8,324円 | 56.5カ月 |
105期 | 150円 | 8,174円 | 54.5カ月 |
106期 | 150円 | 8,024円 | 54.4カ月 |
107期 | 150円 | 8,186円 | 54.6カ月 |
108期 | 150円 | 8,037円 | 53.6カ月 |
109期 | 150円 | 7,897円 | 52.6カ月 |
110期 | 150円 | 8,089円 | 53.9カ月 |
111期 | 150円 | 7,940円 | 52.9カ月 |
112期 | 150円 | 8,026円 | 53.5カ月 |
113期 | 150円 | 8,244円 | 55.0カ月 |
114期 | 150円 | 8,506円 | 57.7カ月 |
※引用:最新運用報告書
評判はどう?
それでは、世界のベストの評判はどうでしょうか?
ネット等で口コミを調べることもできますが、資金の流出入を見ることで、評判がわかります。評判がよければ、資金が流入超過になりますし、評判が悪くなっていれば、資金が流出超過になります。
世界のベストは2022年以降急激に純資産が流入しており、まさに直近の流入額が最高となっているので、人気の絶頂期と言えますね。
Jリート・アジ
※引用:ウエルスアドバイザー
インベスコ 世界厳選株式<為替ヘッジなし>(毎月決算型)『世界のベスト』の評価まとめと今後の見通し
世界のベストは株式ファンドとしてのパフォーマンスは悪くないので、投資対象の1つとして検討の余地はあると思います。
ただ、分配金利回りが20%を超えており、これはいくら何でも高い分配金を出し過ぎです。
ファンドの運用状況に応じて、分配金を減らすのであれば、まだ悪くないですが、ここ5年近くは高い分配金を出し続けています。
今はまだ大丈夫ですが、こういったファンドはパフォーマンスが悪い年があると、一気に投資元本が減っていくことになります。
典型的なタコ足配当ファンドの予備軍のようなファンドですので、基本的には解約をおすすめします。
ただ、どうしても毎月分配型のファンドに投資をしたいという人もいると思います。そういう方におすすめなのが、アライアンス・バーンスタインの米国成長株投信Dコースです。
パフォーマンスが非常に優れており、出た利益の中からだけ分配金を支払っていますので、とても健全な運用がされています。毎月分配金狙いの人は一度検討してみることをおすすめします。
最後に、投信運用には多くのメリットもありますが、当然ながら、弱点もあります。
今も私は投信運用を続けてはいますが、私がなぜ投資信託の運用を主軸におかなくなったのか。その理由をこちらで話をしています。
>>私が痛感する投資信託の限界。多くの投資家が見逃している投信運用の弱点