フィデリティ・USリート・ファンドと並び、かつて純資産総額が1兆円をこえていたフィデリティ・USハイ・イールド・ファンド。
私のお客様でもフィデリティ・USハイ・イールド・ファンドを保有している方が複数名おり、実際どうすればよいかよく聞かれるので、私なりにこちらのファンドを分析してみました。
「 フィデリティ・USハイ・イールド・ファンドって投資対象としてどうなの?」
「 フィデリティ・USハイ・イールド・ファンドって持ってて大丈夫なの?」
「 フィデリティ・USハイ・イールド・ファンドより良いファンドってある?」
といったことでお悩みの方は、この記事を最後まで読めば、悩みは解消すると思います。
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フィデリティ・USハイ・イールド・ファンドの基本情報
投資対象は?
フィデリティ・USハイ・イールド・ファンドは米ドル建ての高利回り事業債(ハイ・イールド債)を中心に約600銘柄に分散投資をしています。
ハイ・イールド債というのは、ムーディーズやS&P社といった格付機関が、債券の元本・利息が償還時まで、どの程度確実に支払われるかを評価しており、下記の分類される債券をハイ・イールド債と呼んでいます。
※引用:交付目論見書
投資家目線で言えば、利回りは高いに越したことはありませんが、注意してほしいのは、ハイ・イールド債は投資のプロである機関投資家が「投資不適格」と判断し、通常であれば投資をしない債券です。
分散することでリスクヘッジはしていますが、プロから見ると、そこまで魅力的な債券ではないということは理解しておいてください。
フィデリティ・USハイ・イールド・ファンドの現在の格付別の比率は以下のようになっています。
最終利回りで7%程度なので、通常の債券よりはかなりリスクの高い債券が組入られていることがわかります。
※引用:マンスリーレポート
業種別で見ると、エネルギーや通信のハイ・イールド債の比率が高くなっているようです。
※引用:マンスリーレポート
つみたてNISAとiDeCoの対応状況は?
つみたてNISAやiDeCoの対応状況ですが、残念ながらどちらも対応していません。
つみたてNISA | iDeCo |
× | × |
※2022年10月時点
純資産総額は?
純資産総額というのは、あなたを含めた投資家から集めた資金の総額だと思ってください。ファンドの純資産総額が小さいと、適切なタイミングで売買できなかったり、コストが嵩みますので、事前に確認すべきポイントの1つです。
フィデリティ・USハイ・イールド・ファンドの純資産総額は、約5000億円となっています。一時期は1兆円を超えていたので、そこから考えるとかなり規模は小さくなりましたが、それでもまだ巨大ファンドです。
※引用:マンスリーレポート
実質コストは?
私たちが支払うコストには、目論見書に記載の信託報酬以外に、株式売買委託手数料や、保管費用、印刷費用などが含まれています。
そのため、実際に支払うコストは、目論見書記載の額より高くなるのが通例で、実際にかかる実質コストをもとに投資判断をしなければ
なりません。
信託報酬を信用するな。知らないうちに差し引かれている実質コストの調べ方
フィデリティ・USハイ・イールド・ファンドの実質コストは1.75%とかなり割高です。購入手数料と合わせると5%近く初年度は取られるので、購入は慎重にならざるを得ません。
購入時手数料 | 3.3%(税込)※上限 |
信託報酬 | 1.738%(税込) |
信託財産留保額 | 0 |
実質コスト | 1.75%(概算値) |
※引用: 最新運用報告書
「ファンドの運用で成果を出すために一番大事なことは何ですか?」と聞かれてあなたは何と答えますか?
もし『ファンド選び』だと思ったとしたら、あなたはドツボに
はまっていますので、こちらの記事を読んでみてください。
フィデリティ・USハイ・イールド・ファンドの評価情報
基準価額をどう見る?
フィデリティ・USハイ・イールド・ファンドの基準価額はコロナショックで大きく下落しましたが、3年前と比べてほとんど変わらない水準にいます。
分配金を受け取らずに再投資した場合の基準価額(青線)を見ると、コロナショックで大きく下落したものの、順調に上昇しており、3年間で30%以上上昇しています。
ハイイールド債の場合、企業の業績の影響を大きく受けるため、コロナショック時には株式と同じタイミングで下落するという特徴があります。分散投資という意味では、ハイイールド債券はあまり効果を発揮しないことは覚えておいてください。
※引用:モーニングスター
利回りはどれくらい?
フィデリティ・USハイ・イールド・ファンドの直近1年の利回りは+13.13%となっています。3年、5年、10年平均利回りをみても、6%を維持できており、これだけみると、パフォーマンスは悪くないように感じます。
ただし、この時点で投資判断するのは時期尚早です。他の類似ファンドとパフォーマンスを比較してから投資判断するようにしてください。
ちなみにあなたは実質利回りの計算方法はすでに理解していますか?もし、理解していないのであれば、必ず理解しておいてください。
平均利回り | |
1年 | +13.13% |
3年 | +10.18% |
5年 | +6.61% |
10年 | +9.92% |
※2022年10月時点
同カテゴリー内での利回りランキングは?
フィデリティ・USハイ・イールド・ファンドは、ハイイールド債券カテゴリーに属しています。
投資をするのであれば、同じカテゴリーでも優秀なパフォーマンスのファンドに投資をしたいと思うので、同カテゴリー内でもパフォーマンスのランキングは事前に調べておいて損はありません。
フィデリティ・USハイ・イールド・ファンドは、どの期間で見ても、上位20%前後に位置しており、カテゴリー内では優秀な部類に入ることがわかります。
上位●% | |
1年 | 23% |
3年 | 9% |
5年 | 11% |
10年 | 3% |
※2022年10月時点
年別の運用利回りは?
フィデリティ・USハイ・イールド・ファンドの年別のパフォーマンスを見てみましょう。
債券ファンドでありながら、10%、20%を超える年も多々あります。ハイ・イールド債券なので、これだけ高い利回りが実現できているわけですね。(当然リスクも高いですが)
年間利回り | |
2022年 | +9.21%(1-9月) |
2021年 | +20.45% |
2020年 | ▲2.44% |
2019年 | +12.99% |
2018年 | ▲6.19% |
2017年 | +4.50% |
2016年 | +10.26% |
2015年 | ▲4.41% |
2014年 | +17.10% |
※2022年10月時点
投信運用は長期投資が前提なので、つい出口戦略を考えずに投資をしてしまいがちです。
しかし、「投資は出口戦略にあり」と言われるほど、重要なテーマです。ぜひこれを機会に投資の出口戦略を考えてみてください。
>>まさか考えたことがない?運用が成功するか失敗するかすべてのカギを握る投信運用の出口戦略インデックスファンドとの利回り比較
フィデリティ・USハイ・イールド・ファンドに投資するうえで、より低コストのインデックスファンドとパフォーマンスを比較しておいて損はありません。
今回は、ハイ・イールド債券のインデックスファンドであるiシェアーズ ハイ・イールド債券インデックスと比較してみました。
※引用:モーニングスター
2020年ごろまでは、かなりパフォーマンスで競っていましたが、2021年以降は、フィデリティ・USハイ・イールドファンドがアウトパフォームしています。
インデックスファンドよりは高い利回りで運用ができていますので、これなら高いコストを支払う価値があると言えますね。
フィデリティUSハイイールド | iシェアーズハイイールド債券 | |
1年 | +13.13% | +11.92% |
3年 | +10.18% | +8.47% |
5年 | +6.61% | +5.63% |
10年 | +9.92% | - |
※2022年10月時点
最大下落率はどれくらい?
投資をするにあたって、どの程度下落する可能性があるのかは知っておきたいポイントです。標準偏差からもある程度は想定できるものの、やはり実際に下落したかが一番参考になります。
フィデリティ・USハイ・イールド・ファンドは2008年1月~12月の1年間で▲39.86%下落しています。
期間 | 下落率 |
1カ月 | ▲19.46% |
3カ月 | ▲35.79% |
6カ月 | ▲35.34% |
12カ月 | ▲39.86% |
※2022年10月時点
債券とは言えば、リスクの高い債券ですので、落ちるときは、大きく落ちます。そのことを理解した上で投資をするように、してください。
最大下落率を知ってしまうと、少し足が止まってしまうかもしれません。しかし、以下のことをしっかり理解しておけば、元本割れの可能性を限りなく低くすることが可能です。
分配健全度はどれくらい?
分配金を毎月受け取っていると、受け取っていることに安心してしまい、自分の投資元本からの配当なのか、ファンドの収益からの配当なのか調べなくなります。
そこで、分配金がファンドの収益からちゃんと支払われているのかを調べるときに役立つのが分配健全度です。
分配健全度とは、1年間の分配金の合計額と基準価額の変動幅をもとに、あなたが受け取った分配金の約何%がファンドの収益によるものなのかを計算できる指標です。
基準価額の変動幅 | 1年間の分配合計額 | 分配健全度 |
255円 | 240円 | 206% |
※2021/10/31~2022/10/31
フィデリティ・USハイ・イールド・ファンドの直近1年間の分配健全度は206%となっています。
分配金利回りは決して低いわけではありませんが、2020年以降運用が非常に好調なので、その影響ですね。ファンドからの分配金をもらえるだけでなく、投資元本も増えているという理想の状態にあります。
分配金利回りはどれくらい?
毎月分配型のファンドに投資をしている場合、どれくらいの分配金が受け取れるのかを知るために分配金利回りを参考にします。
ただし、投資信託の場合、分配金利回りだけをみていると、受け取っている分配金がファンドの収益から出ているものなのか、投資元本が削られているのか、判断できません。
そのため、ファンドの運用利回りと分配金利回りを比較して、ファンドの運用利回りのほうが高ければ、あなたが受け取っている分配金がファンドの運用の収益から支払われていると判断することができます。
運用利回り | 分配利回り | |
1年 | +13.13% | 7.12% |
3年 | +10.18% | |
5年 | +6.61% | |
10年 | +9.92% |
※2022年10月時点
フィデリティ・USハイ・イールド・ファンドは分配金利回りは7.12%と、他の毎月分配型ファンドと比べると、まだ健全な水準です。
とはいえ、他と比べればと言う話で7%というのは一般的に株式ファンドで期待できるような利回りですので、いずれこの利回りを維持できなくなる可能性が高いですね。
分配金余力はどれくらい?
毎月分配型ファンドに投資をしている場合、もう1つ気になるのが今後いつごろ、減配されそうかという点です。
そんなときに役立つのが分配金余力という考え方です。分配金余力というのは、今の分配金の水準をあと何か月続けられそうかを判断するための指標です。
明確にこの水準になったら減配されるという指標ではありませんが、12カ月を切ったファンドはたいてい近々、減配されることが多いです。
フィデリティ・USハイ・イールド・ファンドの分配金余力は、30カ月程度です。もともとそこまで高い分配金を出しているわけではないので、もう数年は減配の心配はなさそうです。
分配金 | 繰越対象額 | 分配金余力 | |
197期 | 20円 | 699円 | 36.0カ月 |
198期 | 20円 | 690円 | 35.5カ月 |
199期 | 20円 | 684円 | 35.2カ月 |
200期 | 20円 | 675円 | 34.8カ月 |
201期 | 20円 | 667円 | 34.4カ月 |
202期 | 20円 | 659円 | 34.0カ月 |
203期 | 20円 | 652円 | 33.6カ月 |
204期 | 20円 | 645円 | 33.3カ月 |
205期 | 20円 | 635円 | 32.8カ月 |
206期 | 20円 | 627円 | 32.4カ月 |
207期 | 20円 | 619円 | 32.0カ月 |
208期 | 20円 | 609円 | 31.5カ月 |
209期 | 20円 | 597円 | 30.9ヶ月 |
210期 | 20円 | 587円 | 30.4ヶ月 |
211期 | 20円 | 576円 | 29.8ヶ月 |
212期 | 20円 | 569円 | 29.5ヶ月 |
213期 | 20円 | 688円 | 35.4ヶ月 |
214期 | 20円 | 680円 | 35ヶ月 |
評判はどう?
フィデリティ・USハイ・イールド・ファンドの口コミを見てみましょう。
「ジャンク債なんて買うもんじゃない」「毎月分配型の投資信託なんて今すぐ解約したほうがいい」「USハイ・イールド債って今買っても大丈夫なんでしょうか?」
表面的な理解だけをして、このファンドのことを悪く言っている書き込みも一部にはありますが、多くの方がこのファンドって良いのか悪いのかよくわからないと、判断に困っているようなコメントが多くみられました。
ネットの書き込み以外に、当ファンドの評判を確認できる月次の資金流出入額を見てみましょう。ほぼ毎月、資金流出超過となっており、評判はよくないことがわかります。
※引用:モーニングスター
フィデリティ・USハイ・イールド・ファンドの評価まとめと今後の見通し
一般的に金利の上昇局面では、債券の価格は下落します。そのため、債券型のファンドも基準価額が下がります。ただ、ハイ・イールド債は企業の債券を購入していますので、少し事情が変わってきます。
通常、金利の上昇局面というのは、企業の業績が回復し、信用力や格付も向上するため、良好なパフォーマンスが期待できるというわけです。
直近は企業業績が好調で、株式市場も好調だったので、ハイイールド債も非常にパフォーマンスは好調でした。
ただ、長期で見ると、現在のこのファンドの運用実績から考えて平均利回りは一桁中盤が限界だと思います。そうすると、またどこかでタコ足配当が始まり、基準価額の下落が続くことになると思います。
分配金余力は残り30カ月となっていますので、20カ月台にはいれば、また分配金の減配がいつ起こってもおかしくありません。20円が10円にでもなってしまうと、受け取っていた分配金が50%減になってしまうので、かなりの大ダメージです。
ですので、くれぐれも早いタイミングで手を引いたほうが無難と言えます。もっと高いパフォーマンスのファンドはいくらでもありますので、あまり固執せずに他のファンドを探してみてください。
最後に、投信運用には多くのメリットもありますが、当然ながら、弱点もあります。
今も私は投信運用を続けてはいますが、私がなぜ投資信託の運用を主軸におかなくなったのか。その理由をこちらで話をしています。
>>なぜ私が投信運用に限界を感じたのか。多くの投資家が見逃している投信運用の弱点