フィデリティ・USリート・ファンドと並び、かつて純資産総額が1兆円をこえていたラサール・グローバルREITファンド(毎月分配型)。
私のお客様でもラサール・グローバルREITファンドを保有している方が複数名おり、実際どうすればよいか、よく聞かれるので、私なりにこちらのファンドを分析してみました。
「ラサール・グローバルREITファンドって投資対象としてどうなの?」
「ラサール・グローバルREITファンドって持ってて大丈夫なの?」
「ラサール・グローバルREITファンドより良いファンドってある?」
といったことでお悩みの方は、この記事を最後まで読めば、悩みは解消すると思います。
ぜひ参考にしてください。
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ラサール・グローバルREITファンド(毎月分配型)の基本情報
投資対象は?
ラサール・グローバルREITファンドは世界中のREITを主要投資対象とし、賃料収入を通じた比較的高い利回りの獲得と景気循環を睨んだREIT価格の上昇を狙っていきます。
※引用:交付目論見書
米国REITが全体の約7割を占め、残り3割を他の先進国のREITが占めています。住宅や商業施設への投資比率が高いのも特徴です。
※引用:マンスリーレポート
つみたてNISAとiDeCoの対応状況は?
ラサール・グローバルREITファンドのつみたてNISAやiDeCoの対応状況ですが、残念ながらどちらも対応していません。
つみたてNISA | iDeCo |
× | × |
※2022年10月時点
運用体制は?
運用体制は4名のファンドマネージャーによるチーム運用制を採用しており、平均の運用・調査経験年数は30年近くとかなり経験豊富です。
アナリストは約20名とこちらも充実した調査体制となっています。世界各国のREIT約450社を対象に最低年2回は訪問調査を行っています。
ラサール社は、総合不動産サービスを提供するジョーンズ・ラング・ラサール社のグループ会社ですので、母体であるラサール社が日々収集している豊富な不動産情報を活かし、物件価値を正確に査定できるのも強みと言えるでしょう。
純資産総額は?
続いて、純資産総額はどうなっているか見てみましょう。純資産総額というのは、あなたを含めた投資家から集めた資金の総額だと思ってください。
純資産総額は大きいほうが、ファンドマネージャーが資金を運用する際に効率よくできたり、保管費用や監査費用が相対的に低くなりますので、コストが低く抑えられます。
また投資信託の規模が小さくなると運用会社自体がその投資信託に力を注がなくなりパフォーマンスが悪くなることもありますので注意が必要です。
ラサール・グローバルREITファンドは一時は1兆円を超える超巨大ファンドでしたが、現在は規模がだいぶ小さくなっており、2770億円くらいになっています。それでも未だ巨大ファンドですので、規模によるデメリットはありませんね。
※引用:マンスリーレポート
実質コストは?
私たちが支払うコストには、目論見書に記載の信託報酬以外に、株式売買委託手数料や、保管費用、印刷費用などが含まれています。
そのため、実際に支払うコストは、目論見書記載の額より高くなるのが通例で、実際にかかる実質コストをもとに投資判断をしなければなりません。
信託報酬を信用するな。知らないうちに差し引かれている実質コストの調べ方
ラサール・グローバルREITファンドの実質コストは1.85%と、割高な設定となっています。購入時手数料と合わせると5%近くになりますので、積極的にはおすすめできません。
購入時手数料 | 3.3%(税込)※上限 |
信託報酬 | 1.65%(税込) |
信託財産留保額 | 0 |
実質コスト | 1.85%(概算値) |
※引用:最新運用報告書
「ファンドの運用で成果を出すために一番大事なことは何ですか?」と聞かれてあなたは何と答えますか?
もし『ファンド選び』だと思ったとしたら、あなたはドツボに
はまっていますので、こちらの記事を読んでみてください。
ラサール・グローバルREITファンド(毎月分配型)の評価分析
基準価額をどう見る?
ラサール・グローバルREITファンドの基準価額は、コロナショックで大きく下落したものの、3年前とほぼ同じ水準にいます。
一方、分配金を受け取らずに運用をした場合の基準価額(青線)を見ると、3年間で20%ほど上昇していますので、過剰な分配が行われていることがわかります。
そもそも基準価額が1000円台になっている時点で、普通ではありえないので、おかしいと気づかなかければいけません。
※引用:モーニングスター
利回りはどれくらい?
つづいて、ラサール・グローバルREITファンドの利回りを見てみましょう。
直近1年間の利回りは4.88%となっています。より長期の期間で見てみると、どの期間でも6%以上の利回りとなっており、今後も1桁後半の利回りは期待できそうです。
ただ、この時点で投資判断するのは時期尚早です。他の類似ファンドと比較をしてから投資をするか決めるようにしてください。
ちなみにあなたは実質利回りの計算方法はすでに理解していますか?もし、理解していないのであれば、必ず理解しておいてください。
平均利回り | |
1年 | +4.88% |
3年 | +6.24% |
5年 | +6.17% |
10年 | +9.68% |
※2022年10月時点
10年間高いパフォーマンスを出し続けている優秀なファンド達も参考にしてみてください。
10年間圧倒的に高いリターンを出している海外リートファンド ランキング
同カテゴリー内での利回りランキングは?
ラサール・グローバルREITファンドは海外RIETカテゴリーに属しています。
投資をするのであれば、同じカテゴリーでも優秀なパフォーマンスのファンドに投資をすべきなので、同カテゴリー内でもパフォーマンスのランキングは事前に調べておいて損はありません。
ラサール・グローバルREITファンドはどの期間においても上位30%程度にランクインしており、かなり優秀なパフォーマンスであることがわかります。
上位●% | |
1年 | 11% |
3年 | 22% |
5年 | 32% |
10年 | 33% |
※2022年10月時点
年別の運用利回りは?
ラサール・グローバルREITファンドの年別のパフォーマンスを見てみましょう。
2014年以降、マイナスの年のほうが多くなっています。それでも平均利回りで6%以上を維持できているのは、2014年と2021年で40%以上のリターンをたたき出しているからです。
平均利回りでみるとプラスになっていますが、毎年安定してプラスが出ているわけではないので、注意してください。
年間利回り | |
2022年 | ▲6.85%(1-9月) |
2021年 | +47.36% |
2020年 | ▲13.88% |
2019年 | +17.58% |
2018年 | ▲6.37% |
2017年 | +2.80% |
2016年 | ▲2.90% |
2015年 | ▲0.01% |
2014年 | +40.31% |
※2022年10月時点
投信運用は長期投資が前提なので、つい出口戦略を考えずに投資をしてしまいがちです。
しかし、「投資は出口戦略にあり」と言われるほど、重要なテーマです。ぜひこれを機会に投資の出口戦略を考えてみてください。
>>ここまで考えるのが本当の資産運用。多くの投資家が考えられていない投信運用の出口戦略とはインデックスファンドとの利回り比較
ラサール・グローバルREITファンドに投資をするのであれば、より低コストで投資ができるインデックスファンドとのパフォーマンスは比較してから投資をしても遅くはありません。
今回は、S&P先進国RIET指数に連動するSMT グローバルREITインデックスとパフォーマンスを比較してみました。
※引用:モーニングスター
かなり拮抗していますが、2022年に入ってからは、ラサール・グローバルREITファンドが大きくリードしています。
より長期のパフォーマンスはどうなっているでしょうか?
ラサール | SMTグローバル | |
1年 | +4.88% | +0.65% |
3年 | +6.24% | +4.75% |
5年 | +6.17% | +5.21% |
10年 | +9.68% | +10.33% |
※2022年10月時点
5年平均利回りまでは、ラサール・グローバルREITファンドのほうが高いですが、10年平均利回りになると、SMTグローバルREITインデックスのほうが上回っています。
なかなかどちらのファンドのほうが優れているかは判断しづらいですね。
類似ファンドとの利回り比較
毎月分配型のアクティブファンドに投資するのであれば、同じく毎月分配型のアクティブファンドとパフォーマンスを比較してから投資をしても遅くはありません。
今回はラサール・グローバルREITファンドと同じく世界のREITに分散投資ができるDIAM 世界リートインデックスとパフォーマンスを比較しました。
※引用:モーニングスター
直近3年間は、ラサール・グローバルREITファンドが終始、パフォーマンスで上回っています。
また参考までに米国リートの代表でもあるダイワ・US-REITBコースとも比較をしてみましたが、世界リートよりも米国リートのほうが運用がうまくいっていることがわかりますね。
ラサール | DIAM世界リート | |
1年 | +4.88% | +0.32% |
3年 | +6.24% | +4.05% |
5年 | +6.17% | +5.10% |
10年 | +9.68% | +10.08% |
※2022年10月時点
10年平均利回りだけは、DIAM世界リートインデックスのほうがパフォーマンスで上回っているわけですが、何とも甲乙つけがたいです。
最大下落率はどれくらい?
投資するにあたって、最大どの程度下落する可能性があるのか知っておくことは非常に重要です。結局、多くの人が、大きな下落を経験すると、もうこれ以上は損をしたくないと思い、基準価額が大きく下がったタイミングで売却してしまからです。
そこで、ラサール・グローバルREITファンドの最大下落率を調べてみました。
期間 | 下落率 |
1カ月 | ▲36.96% |
3カ月 | ▲53.92% |
6カ月 | ▲62.81% |
12カ月 | ▲65.10% |
※2022年10月時点
ラサール・グローバルREITファンドの最大下落率は、2008年3月~2009年2月で▲65.10%となっています。
REITというのは、平常時は基準価額の変動幅がとにかく小さいのですが、暴落相場では株式並みに大きく下落します。そういう特徴があることを理解したうえで投資をしないといけないですね。
最大下落率を知ってしまうと、少し足が止まってしまうかもしれません。しかし、以下のことをしっかり理解しておけば、元本割れの可能性を限りなく低くすることが可能です。
分配健全度はどれくらい?
分配金を毎月受け取っていると、受け取っていることに安心してしまい、自分の投資元本からの配当なのか、ファンドの収益からの配当なのか調べなくなります。
そこで、分配金がファンドの収益からちゃんと支払われているのかを調べるときに役立つのが分配健全度です。
分配健全度とは、1年間の分配金の合計額と基準価額の変動幅をもとに、あなたが受け取った分配金の約何%がファンドの収益によるものなのかを計算できる指標です。
基準価額の変動幅 | 1年間の分配合計額 | 分配健全度 |
▲101円 | 120円 | 16% |
※2021/10/22~2022/10/21
ラサール・グローバルREITファンドの直近1年間の分配健全度は16%となっています。
分配健全度は100%を切ると、一部ファンドの収益以外から分配金が支払われていることを意味しますが、0%を下回るということは、ファンドの収益からの支払いは一切ないということを意味します。
つまり、ラサール・グローバルREITファンドからあなたが受け取った分配金のうち84%はファンドの運用益ではなく、投資元本等から取り崩されたものをただ受け取っただけということです。
分配金利回りはどれくらい?
毎月分配型のファンドに投資をしている場合、どれくらいの分配金が受け取れるのかを知るために分配金利回りを参考にします。
分配金利回りは1年間で受け取った分配金の合計金額を基準価額で割ることで計算できます。
ただし、投資信託の場合、分配金利回りだけをみていると、受け取っている分配金がファンドの収益から出ているものなのか、投資元本が削られているのか、判断できません。
そのため、ファンドの運用利回りと分配金利回りを比較して、ファンドの運用利回りのほうが高ければ、あなたが受け取っている分配金がファンドの運用の収益から支払われていると判断することができます。
運用利回り | 分配金利回り | |
1年 | +4.88% | 6.1% |
3年 | +6.24% | |
5年 | +6.17% | |
10年 | +9.68% |
※2022年10月時点
ラサール・グローバルREITファンドの分配金利回りは約6%なので、かなり適正な水準まで下がってきました。ファンドの運用利回りと大して変わりませんので、この利回りであれば、タコ足配当になることなく、分配金を支払うことができそうな水準です。
未だ多くの投資家が勘違いをしながら、分配金利回りが高いファンドに投資をしていますが、くれぐれも気をつけてほしいと思います。
分配金余力はどれくらい?
毎月分配型ファンドに投資をしている場合、もう1つ気になるのが今後いつごろ、減配されそうかという点です。そんなときに役立つのが分配金余力という考え方です。
分配金余力というのは、今の分配金の水準をあと何か月続けられそうかを判断するための指標です。
明確にこの水準になったら減配されるという指標ではありませんが、12カ月を切ったファンドはたいてい近々、減配されることが多いです。
ラサール・グローバルREITファンドの分配金余力は、直近で減配したので500カ月近くあります。ここまで減配していれば、当面心配はないと言えますね。
分配金 | 繰越対象額 | 分配金余力 | |
209期 | 10円 | 4,962円 | 497.2カ月 |
210期 | 10円 | 5,028円 | 503.8カ月 |
211期 | 10円 | 5,021円 | 503.1カ月 |
212期 | 10円 | 5,059円 | 506.9カ月 |
213期 | 10円 | 5,051円 | 506.1カ月 |
214期 | 10円 | 5,172円 | 518.2カ月 |
215期 | 10円 | 5,162円 | 517.2カ月 |
216期 | 10円 | 5,156円 | 516.6カ月 |
217期 | 10円 | 5,220円 | 523.0カ月 |
218期 | 10円 | 5,211円 | 522.1カ月 |
219期 | 10円 | 5,202円 | 521.2カ月 |
220期 | 10円 | 5,200円 | 521.0カ月 |
※引用:最新運用報告書
評判はどう?
ネットでの書き込みなどで調べる方法もありますが、評判を知るうえで一番役に立つのが、月次の資金流出入額でしょう。
資金が流出しているということは、それだけこのファンドを解約している人が多いということなので、評判が悪いということです。
ラサール・グローバルREITファンドは、2018年以降、ほぼ毎月資金が流出しており、評判は良くないことがわかります。
ほぼ毎年減配を繰り返しているので、より高い分配金のファンドを求めて、投資家が写っているのだと思います。
※引用:モーニングスター
ラサール・グローバルREITファンド(毎月分配型)の評価まとめと今後の分配金の見通し
いかがでしたでしょうか?
ラサール・グローバルREITファンドの基準価額は右肩下がりに下落し続けており、分配金利回りも低下しつづけています。
改めてになりますが、ファンドの運用利回りと分配金利回りは全くの別物です。
運用利回り10%と言えば、100万円を投資した場合、年10万円の運用益を受け取ることができます。一方で、分配金利回り10%という場合は違います。
仮にファンドの運用利回りが3%しかなくても分配金利回りを10%にすることはできるのです。
その結果、100万円投資をして、ファンドの運用益は3万円しかないにもかかわらず、あなたは10万円の分配金を受け取ることになります。
では、運用益と分配金の差額の7万円はどこから出てきているのかと言えば、あなたの投資した元本の100万円から支払われているのです。
つまり、分配金利回りがいくら高くても、ファンドの運用利回りが低ければ、まったく意味がないということです。
ラサール・グローバルREITファンドは分配金10円/月に下げたことで、比較的健全な水準に分配金利回りが下がってきました。
この分配金利回りであれば、ひどいタコ足配当になることはないので、一旦は安心ですね。
最後に、投信運用には多くのメリットもありますが、当然ながら、弱点もあります。
今も私は投信運用を続けてはいますが、私がなぜ投資信託の運用を主軸におかなくなったのか。その理由をこちらで話をしています。
>>なぜ私が投信運用に限界を感じたのか。多くの投資家が見逃している投信運用の弱点