テクノロジーの進歩とデータ量の増加による5Gの商用化、eコマースの拡大に伴う爆発的な物流の増加、少子高齢化による人口構造の変化など、ここ数年だけでも私たちのライフスタイルを変える大きな変化がいくつも起こりました。
投資信託で言えば、5GやAI、ロボットといったテーマ型のファンドに人気が集まり、大きなトレンドを形成しています。こういったメガトレンドを背景に、REIT業界でも大きな変化が起き始めています。
伝統的REITと呼ばれるオフィスや商業施設、集合住宅の比率がここ7年ほどで大きく下がり、次世代REITと呼ばれるREITの分野が大きく伸び始めています。
※引用:交付目論見書
※引用:三菱UFJ国際投信HP
今日は、この次世代REITに特化して投資をしていく三菱UFJ国際の次世代REITオープンを徹底分析していきます。
なお、次世代REITオープンには、資産成長型と毎月決算型があり、さらに為替ヘッジありとなしの4コースがありますが、一番人気の資産成長型(為替ヘッジなし)を見ていきます。
「次世代REITオープンって投資対象としてどうなの?」
「次世代REITオープンって持ってて大丈夫なの?」
「次世代REITオープンより良いファンドってある?」
といったことでお悩みの方は、この記事を最後まで読めば、悩みは解消すると思います。
次世代REITオープン<資産成長型>(為替ヘッジなし)の基本情報
次世代REITとは?
まず、次世代REITについて詳しく見ていきます。次世代REITというのは、情報技術の進歩や急速な都市化の進行、人口構造の変化等、メガトレンドの影響を受ける分野のREITを指します。
特に以下の3つの分野が注目されています。まず、1つ目がテクノロジー関連REITです。
※引用:販売用資料
デジタルデータ量の増加によって、さらに高まる通信塔やデータセンターが該当します。
通信塔やデータセンターは需要は高まるもののその特殊性から参入者が限られており、利用者の長期契約が期待でき、安定した利益成長に繋がることが期待されます。
2つ目がロジスティクス関連REITです。
※引用:販売用資料
アマゾンを代表するeコマースの更なる拡大に伴い、多様なニーズに対応できる高機能の物流施設や倉庫が該当します。
配送時間の短縮化や配送の効率化の観点から都市近郊の好立地への建設希望が集中しており、優位な立地に施設を持つREITが競争優位に立つでしょう。
また個人や中小企業が洋服や書類、ワインなど保管スペースを活用するケースが増えており、顧客ニーズに合わせた保管スペースの提供も大きなビジネスチャンスとなっています。
そして、3つ目がニュースタイルREITです。
※引用:販売用資料
ベビーブーマー世代の高齢化に伴う介護住宅やミレニアル世代の世帯形成による手ごろな価格の住宅などが該当します。
投資対象は?
次世代REITオープンの投資対象は日本を含む世界各国の次世代REITに投資をしていきます。
さきほども言いましたが、人口構造の変化や情報技術の進歩等のメガトレンドの恩恵を受け、中長期的に高い成長が見込めるREITです。テーマごとの組入れ比率を見ると、物流施設の比率が最も高く、次いで、通信塔、データセンターと続きます。
国別の比率を見てみると、米国が約80%、次いで、イギリス、日本と続きます。
※引用:マンスリーレポート
純資産総額は?
純資産総額は投資信託を見極める際に大切なポイントとなります。
純資産総額が多い方が、ファンドマネージャーが資金を投資する際に有利であったり、他の投資家の解約の際の影響が小さくなりますので、良い投資信託と判断されます。また純資産総額が減少しているファンドは、解約が増えているということです。
さらに投資信託の規模が小さくなると運用会社自体がその投資信託に力を注がなくなりパフォーマンスが悪くなることもあります。
次世代REITオープンの純資産総額は、192億円です。ここ2~3年はあまり純資産が増えていないようですね。ただ規模としては十分です。
※引用:マンスリーレポート
実質コストは?
投資信託には、購入時の手数料や信託報酬の他にも費用がかかることを知っていますか?これを実質コストと言います。
実質コストには、株式売買手数料や有価証券取引税、監査費用などが含まれており、運用報告書を見なければ詳しい数字はわかりません。ただし、信託報酬と大きくずれていることもあり、かならず確認しておきたいポイントです。
信託報酬を信用するな。知らないうちに差し引かれている実質コストの調べ方
次世代REITオープンの実質コストは1.784%とかなり割高です。パフォーマンスが相当よくなければ、投資をするのは躊躇う水準です。
購入時手数料 | 3.3%(税込)※上限 |
信託報酬 | 1.694%(税込) |
信託財産留保額 | なし |
実質コスト | 1.784%(概算値) |
※引用:最新運用報告書
「ファンドの運用で成果を出すために一番大事なことは何ですか?」と聞かれてあなたは何と答えますか?
もし『ファンド選び』だと思ったとしたら、あなたはドツボに
はまっていますので、こちらの記事を読んでみてください。
次世代REITオープン<資産成長型>(為替ヘッジなし)の評価分析
基準価額をどう見る?
次世代REITオープンの基準価額は、2021年までは大きく上昇しましたが、2022年以降はゆるやかに下落しています。
※引用:ウエルスアドバイザー
利回りはどう?
つづいて、次世代REITオープンの利回りをみてみましょう。
直近1年間の平均利回りは3.19%となっています。3年平均利回りは9%となっており、悪くない利回りに見えます。
ただ、この段階ではまだ良し悪しがわかりません。他の類似ファンドとパフォーマンスを比較してから投資判断するようにしてください。
ちなみにあなたは実質利回りの計算方法はすでに理解していますか?もし、理解していないのであれば、必ず理解しておいてください。
平均利回り | |
1年 | +3.19% |
3年 | +9.26% |
5年 | - |
10年 | - |
※2023年10月時点
同カテゴリー内での利回りランキングは?
次世代REITオープンは日本株を含むグローバルREITカテゴリーに属しています。
投資をするのであれば、同じカテゴリーでも優秀なパフォーマンスのファンドに投資をすべきなので、同カテゴリー内でのパフォーマンスのランキングは事前に調べておいて損はありません。
次世代REITオープンはどの期間のおいても、下位20%にランクインしており、もっと他に優れたファンドがあることがわかります。
1年 | 80% |
3年 | 89% |
5年 | - |
10年 | - |
※2023年10月時点
年別の運用利回りは?
つづいて、次世代REITオープンの年別のパフォーマンスを見ていきます。
2022年はかなり厳しい結果となっていますが、2020年、2021年は悪くないパフォーマンスとなっています。
年間利回り | |
2023年 | +7.68%(1-9月) |
2022年 | ▲18.14% |
2021年 | +49.81% |
2020年 | +13.57%(4-9月) |
※2023年10月時点
投信運用は長期投資が前提なので、つい出口戦略を考えずに投資をしてしまいがちです。
しかし、「投資は出口戦略にあり」と言われるほど、重要なテーマです。ぜひこれを機会に投資の出口戦略を考えてみてください。
>>ここまで考えるのが本当の資産運用。多くの投資家が考えられていない投信運用の出口戦略とは類似ファンドとの利回り比較
次世代REITオープンへ投資をするのであれば、他のインデックスファンドとパフォーマンスを比較してからでも遅くはありません。
今回は、先進国REITの代表的なインデックスファンドであるeMAXIS Slim 先進国RIETインデックスと比較をしました。
※引用:ウエルスアドバイザー
似たような値動きをしていますが、直近3年間では、ほぼ全期間において、次世代REITオープンはパフォーマンスで負けています。
これではあえて高いコストを支払ってまで、次世代REITオープンに投資をするメリットを感じませんね。
次世代REITオープン | slim 先進国リート | |
1年 | +3.19% | +7.16% |
3年 | +9.26% | +15.74% |
5年 | - | - |
10年 | - | - |
※2023年10月時点
資産成長型?毎月決算型?為替ヘッジはどうする?
次世代REITオープンには、①<資産成長型>(為替ヘッジあり)、②<資産成長型>(為替ヘッジなし)、③<毎月決算型>(為替ヘッジあり)、④<毎月決算型>(為替ヘッジなし)の4パターンがあり、どれを選べばよいのか悩む人もいると思います。
そこで4つのファンドのパフォーマンスを比較しました。
直近では、為替が円安に進んでいることもあり、ヘッジなしのファンドのパフォーマンスが大きく向上しています。
為替ヘッジあり・なしについてですが、これはもうあなたの考え方次第です。私の場合は、中長期的には円安が進むと思っていますので、為替ヘッジなしを選択します。
とはいっても、為替のリスクをなくしたいということであれば、ヘッジコストを支払って為替ヘッジありを選択してください。結局、将来の為替の予測は難しいので、どちらが自分が平常心で投資を続けられるかで選択するとよいと思います。
最大下落率は?
標準偏差がわかれば、どの程度下落する可能性があるかはある程度予測できますが、実際にどれくらい下落したことがあるのか確認するほうがイメージが湧きます。
次世代REITオープンの最大下落率は、2022年1~12月の12か月間で▲18.14%となっています。
期間 | 下落率 |
1カ月 | ▲12.57% |
3カ月 | ▲11.61% |
6カ月 | ▲14.89% |
12カ月 | ▲18.14% |
※2023年10月時点
ただ、もっと短期間で見ると、30%近く下落していますので、改めてRIETが下落相場に弱いことが浮き彫りになりました。
REITと聞くと、株式よりもリスクが低いと思っている人が多いのですが、実際に暴落相場では株式以上に下落することが多いので、その点は理解したうえで投資するようにしてください。
評判はどう?
それでは、次世代REITオープンの評判はどうでしょうか?
ネットでの書き込みなどで調べる方法もありますが、評判を知るうえで一番役に立つのが、月次の資金流出入額でしょう。資金が流入しているということは多くの投資家がファンドを購入しているということなので、評判がいいということになります。
次世代REITオープンはパフォーマンスに波があるため、良いときには流入し、悪くなると流出しということを繰り返しています。より低コストの先進国リートインデックスファンドにパフォーマンスで負けてしまっているので、ある意味、仕方のない結果ですね。
※引用:ウエルスアドバイザー
次世代REITオープン<資産成長型>(為替ヘッジなし)の今後の見通しと評価まとめ
次世代REITオープンは確かに時代の流れにのっており、投資家からみても、通信塔やデータセンター、物流施設などに間接的に投資ができるのは魅力的です。
ただし、パフォーマンスという観点では、インデックスファンドに劣ってしまっているので、あえて高いコストを支払うメリットを感じられません。
また、注意点として、コロナショックを経て、あらためてREITの弱点が浮彫りとなりました。分散投資という意味で、株式とREITに分散投資をしても、どちらも似たようなタイミングで下落しますので、あまりヘッジとして機能しないということです。
不動産を自分のポートフォリオに組み入れるのであれば、直接不動産投資をするか、もしくは近年流行りのソーシャルレンディングで不動産に間接的に投資をしたほうが分散効果は得られると思います。
最後に、投信運用には多くのメリットもありますが、当然ながら、弱点もあります。
今も私は投信運用を続けてはいますが、私がなぜ投資信託の運用を主軸におかなくなったのか。その理由をこちらで話をしています。
>>私が痛感する投資信託の限界。多くの投資家が見逃している投信運用の弱点